やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡VS木虎藍

九月のボーダー入隊のレクリエーションは大方何事もなく終わりつつあった。

まあ、途中で葉山、由比ヶ浜、雪ノ下さんが俺に弟子入りを希望してきたが、俺は弟子にしたくはないためにある策を講じた。

それは3人目の弟子である川崎に3人を相手して貰う事だ。

 

俺が出した弟子になるための条件は一ヶ月以内に3人の弟子から百本中六十勝以上する事にした。

葉山、由比ヶ浜、雪ノ下さんはまだ、C級隊員だから俺の弟子になるには川崎に相手してもらわないといけない。

もちろん、正規隊員である那須や双葉とはフリー対戦をすれば、戦う事も出来る。

だが那須と双葉が葉山と由比ヶ浜が俺の名前を間違えたり、変なあだ名で呼んだら2人は多分相手にしないと思う。勘だが。

 

 

 

 

 

「皆、一通り訓練をしたと思う。これからC級個人ブースの説明をしたいと思う。俺にまた付いてきてくれ」

 

今度は個人ブースに移動を始めた。どちらかと言えばブースでの対戦でポイントを得た方が訓練で貯めるより個人戦の方が早く貯まる。

しかし葉山、由比ヶ浜、雪ノ下さんの事も気になるが、それと同じ位ミクモオサムという人物も気になる。

迅さんとどのような関係なのか気になるが、今はいいだろう。

 

「さて、着いたぞ。ここがC級個人戦ブースだ」

 

俺が考え込んでいると目的の場所に到着したようだ。ここに来るのも久し振りだな。

 

「それじゃ木虎と比企谷の2人に実演してもらう。2人とも準備してくれ」

 

「はい、分かりました」

 

「……え?やんないとだめですか?嵐山さん」

 

木虎はすんなり答えたが俺は正直やりたくはなかった。だって面倒だし。

 

「確か総武高校の職場見学の時に木虎と戦う約束をしたらしいじゃないか。今まで戦ってないだろ?」

 

確かに嵐山さんの言う通りだ。俺は職場見学の時に木虎と戦う約束をした。そしてこれまで時間が合わなかったのも事実だ。

合わせようとしたが、メディア露出している嵐山隊に時間に合うようにするのは中々出来ないでいた。

 

「……分かりました。約束ですから」

 

流石に約束を破るわけにはいかないので、木虎と戦う事にした。ホント、何でレクリエーションなんて受けたんだろうな。

 

「フィールドはランダムで一本勝負でいいか?木虎」

 

「はい。時間も限られていますし、こっちはそれで構いません。それでは比企谷先輩、よろしくお願いします」

 

「ああ、こっちこそな。始めるか」

 

俺と木虎は個室に移動して転送を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職場見学の時に木虎とした約束をまさかC級入隊日にする事になるとはいい事なのだが、流石にC級隊員が見ていると思うと緊張してきた。

 

「場所は……よりにもよって工業地区かよ……」

 

このマップは不味い。数あるマップの中でも開けた場所が少なく、逆に狭く入り組んだ場所が多い。

そうなると木虎にとってこれ程戦い易い場所はないだろう。見つけるまでに時間が掛かりすぎてしまうとワイヤーを張り巡られて俺にとって不利な戦いをしないといけない。

 

「まずは……トマホーク」

 

俺は合成弾のトマホークを作りそれを4分割して近くの建物の影に向かって放った。

派手な爆発音と黒い煙が立ち込めてきた。

建物を壊し開けた場所を作っていく。これで木虎のワイヤーを回避できるはずだ。

 

 

 

 

 

 

トマホークを放ちながら走り回っているのに未だに木虎の姿を捉えられていない。これは俺が誘われているのか?これまでの木虎の戦い方とは類似するものはない。

新しい戦法か?それだとしたら準備が終わるまで待ってから仕掛けた方がいいのか?

悩んでもしょうがないので少し開けた場所に出た瞬間に左側にハンドガンを構えている木虎が目入ってきた。

 

「っ!シールド!」

 

何とかシールドで防いでサイドステップで右に飛んで木虎と距離を作ろうとした。

しかしそれは間違っていた。

 

「なっ!?!?」

 

足に何かに当たりバランスを崩して倒れてしまった。木虎は好機と思わばかりにハンドガンで俺を狙ってきたが、態勢を整えてなんとか避ける事が出来た。

そして足に当たったのは間違いなく木虎のスパイダーだ。

 

『スパイダー』

ワイヤートリガーでトリオンキューブの両端に角が付いたもので少ないトリオンで使う事が出来る。

メテオラと組んで爆発するトラップにする事もできる。

 

「バイパー!」

 

撃たれるだけにならないためにもこちらも反撃をしないといけないのでバイパーを27分割して木虎に向けて放った。

しかし態勢が崩れている状態ではそんなに狙えないのが一般的な隊員だ。しかもバイパーだと尚更だ。

だが、俺の場合違うと言っておこう。

 

俺のサイドエフェクトの『脳機関強化』は他の脳系統のサイドエフェクトとは違い、集中力次第で脳に送られてくる情報量が違う。周りがスローモーションに見えたりする。

だから態勢を崩していても相手さえ見えていれば狙う事が可能だ。

 

しかしデメリットもちゃんとある。集中しすぎて送られてくる情報量を処理することが出来ずに脳がパンク寸前になって鼻血を出して倒れてしまう事だ。だから集中しすぎないように注意をしないといけない。

おっと今は木虎との戦いに集中しないとな。木虎に失礼だな。

 

「比企谷先輩。『今日は』勝たせてもらいます」

 

「生憎だな、木虎。『今日も』勝たせるつもりはない」

 

これまでの木虎の平均的な戦績は十本中八勝二敗と言う具合だ。だからこそ木虎としては勝ちたいだろうが、俺も勝ちを譲る気は更々ない。

今の木虎はと言うと空中に立っていた。実際には張り巡らしたワイヤーの上に立っているだけだ。

目を凝らして見ないと空中に立ったように見える。

 

「それにしても上手くなってきたな」

 

「比企谷先輩にはその辺り感謝しています。けれど、今は勝たせてもらいます!」

 

「だから、譲る気はない!」

 

木虎はスコーピオンを足から出して俺に斬りかかってきた。俺も負けじと弧月で応戦するが、周りにあるワイヤーの所為で上手く動く事が出来ない。

 

「くっ!バイパー!」

 

「……どこを狙っているんですか?」

 

何とか突破口と開こうとしてバイパーを放った。しかし木虎には当たる所か一発も掠りはしなった。

狙いは木虎ではなくワイヤーの方だ。細いワイヤーを狙うのは無理でもワイヤーの角を狙うのは簡単だ。

建物で凹んでいる場所を狙えばいい。そこにワイヤーの角がある。

 

「っ!させません!」

 

木虎は俺の狙いに気付いてからの行動は早かった。使えなくなったワイヤーの代わりの新しいワイヤーをすぐに張り巡らした。

もちろん俺への攻撃もしっかりとしている。そこは流石と思う。

ワイヤーを狙ったのは少しでも俺への注意を逸らすのが目的だ。

 

「旋空弧月」

 

俺は周りの建物の柱に向けて旋空を数回放った。建物は柱を失くして重さで崩れた。

崩れて俺と木虎の周りには砂埃が立ち込めていた。視界ゼロ状態。

だけど、俺には木虎のいる位置がある程度分かっている。サイドエフェクトで相手の行動をある程度先読みする事が出来る。

迅さんのように『未来』が見えるわけではないが、俺の行動で相手を誘導するのは可能だ。

だからこそ木虎の位置は俺にはある程度分かる。

 

「悪いな、木虎」

 

俺は一瞬、動きの止まった木虎の首を弧月で横に一刀両断した。

 

『伝達系破損 ベイルアウト』

 

木虎のトリオン体は崩れて飛んでいった。

一先ずこれで入隊日のレクリエーションは終わったも同然だ。はぁ~……報告書さえ書けば帰れる。

 

 

 

 

 

個室から出て見ると木虎は負けて悔しがっていた。嵐山さんはかなり満足そうな顔をしていた。

 

「今見たようにA級の隊員同士の個人戦はあれ程のものになる。皆も実力を付けてぜひA級昇格を目指してくれ」

 

「一通り終わったらラウンジで休憩してもいいから。身体はトリオン体で疲れないけど、精神的には疲れているから気を付けてね」

 

嵐山さんはC級に無茶な事を言うな……でもそれは頑張り次第と言った所だろう。

そして時枝がラウンジでの休憩を進めた。確かにトリオン体では疲れたりしないが、精神的には疲れる。

休憩は大事だからな、俺も戦ったのでマッ缶で糖分補給をしないとやっていけない。

C級がラウンジに移動を始めた時に木虎が俺に近付いて来た。

 

「……今回は勝てると思っていました」

 

「だろうな。でも俺はいいと思うぞ。まあ、次は十本勝負までしてやるよ」

 

「はい。その時はお願いします」

 

木虎はそれだけ言って離れていった。相変わらず負けず嫌いだなあいつは。まあ、それが木虎らしいと思う。

そう言えば、小町と川崎はしっかりやっているだろうか。休憩ついでに聞いて見るか。

そう思っていると目的の人物達を見つける事が出来た。しかも葉山達と一緒にいた。

 

「小町、川崎。お疲れ」

 

「あ!お兄ちゃん!」

 

「……比企谷。あんた、よくも面倒な事を押し付けたね」

 

小町と川崎に近付いてみると川崎からもの凄い怖い顔で睨まれた。怖っ!!

 

「な、何の事ですか?川崎さん」

 

「……目を逸らして敬語になってるよ……葉山達があたしから百本中六十勝以上したら比企谷の弟子になれるって言てきたの。それでさっきまで戦っていたんだよ」

 

どうやら葉山達は全部喋ったようだ。余計な事をしてくれたな。

 

「そ、それでまずは誰と戦ったんだ?」

 

「話を変えたね……まあ、いいけど。まず葉山から戦って十本中八勝二敗で、次に由比ヶ浜とで、最後に雪ノ下のお姉さんと」

 

「そうか。でも川崎としても挑んでくる奴がいた方がいいだろ?わざわざ相手を探す手間が省けるしさ」

 

「確かにそうだけど……次からあたしを巻き込むんだったら話して。いきなりあの3人が来てビックリしたんだから」

 

これは気を付けないとな。川崎の怒りが小町経由で来たら、もう俺では対応できない。それにしても葉山の事と言うかこの場合は葉山グループの事で気になっていた事があったので葉山に聞いて見る事にした。

 

「葉山。試験を受けたのはお前のグループで由比ヶ浜とお前だけなのか?」

 

「え?……いや、優美子と姫菜も受けたんだけど、2人とも落ちてね。でも戸部は合格したんだ」

 

海老名と三浦も受けていたのか。三浦に関しては受かると思っていたのだろうか?だとしたらバカと言うしかないな。

しかし海老名が落ちたのはどうしてだろうか?もしかして戸塚と同じくトリオン量だろうか?

戸部までも受けていたとはな……正直どうでもいいな。

まあ、別にいいか。俺には関係ない事だしな。

こうして嵐山隊と合同のC級入隊日のレクリエーションは無事に終わる事が出来た。出来れば次回も何の問題なく終えたい。

 

そう言えば文化祭の実行委員を決めるのって何時だっけ?その内思い出すだろう。

これでC級入隊のレクリエーションは終わった。


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