やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

84 / 109
葉山隼人⑤

修学旅行1日目が終了したと言ってもまだ終わってはいない。これからホテルでの夕食を食べて風呂に入って寝る事になっている。

だが、修学旅行という行事ですんなり寝る学生はそうはいないだろう。

定番ではトランプやウノなどをしてから誰が好きだとかの言い合いが始まるのが予想できる。面倒な事に俺の部屋割りでは戸塚の他に葉山と戸部と一緒の部屋になって居る。

出来るなら回避しておきたい。

 

どうして自分の好きな人間の名前を他の人間に言わないといけないのか。それで言わないとノリが悪いと言われてしまう。

どうして言わないだけでノリが悪いと言われなければならないのか。俺はどうしても分からない。

それにしても夕食は豪華だったと思う。流石は修学旅行で泊まるホテルだと感じた。

それに戸塚の隣で食べれたのは良かったな。戸塚は幸せそうな笑顔で食べていたからな。

見ているこっちも幸せになっているようだな。

 

おっと、戸塚の幸せ顔の事は一先ず置いておくとして、今は比企谷隊のメンバーと小町のお土産を買っておくか。

有り難い事に全員、女子だから小物が好きだと思うから1日目に買って特に荷物にはならない。

それにここにしかない物がある。それは雪菜が好きなゆるキャラの「ネコまたん祇園ver」があるのだ。

雪菜からお土産には是非買って欲しいと頼まれた。しかも凄い迫力の顔でだ。

今まで見たことない雪菜の顔に内心驚きつつも買う事にした。

 

小町と浅葱に買うものは決まっているが、夜架とシノンに買うものはまだ決まっていない。あの二人と来たら「主様、八幡が買ってくれるなら何でもいい」と言ってきたのだ。

その何でもいいって、買うものに困るだろ!まあ、何かキーホルダーかもしくは櫛と簪でも買っておくかな。

 

「……ヒキタニ君。少しいいかな?」

 

「葉山か。無理だな。今はお土産選びで忙しいから後にしろ」

 

お土産を見ていると後ろから葉山が話しかけてきた。どうせ、戸部の件で来たんだろう。面倒な男だよ、こいつは。

 

「……お土産は別に今じゃなくていいだろ。こっちの方が大事なんだから」

 

「それはお前にとってはだろ?俺にはどうでもいい事だ。お前のグループが壊れようが壊れまいが、な」

 

「!?き、君は!本気で言っているのか!!」

 

葉山が俺の胸ぐらを掴んできた。海老名が見たら鼻血を出して喜びそうな場面だな。

居なくて良かった。

それにしても葉山が大声を出すものだから周りにいた生徒や一般客の人達がこっちを見ているじゃないか。

 

「場所を考えたらどうだ?」

 

「……すまない。だが、君の言い方が悪いと思うが?」

 

「事実だからな。それで本題をさっさと言ったらどうだ?」

 

俺は葉山にさっさと本題を言えと促した。どうせ、戸部の件だろ。

 

「それでね、こっちの方が可愛いと思うんだけど。ゆきのんはどう思う?」

 

「……ええ、そうね。確かに可愛いと思うけれど、大きい荷物だから最終日に買った方がいいわよ」

 

葉山の話を聞こうとしたら近くから由比ヶ浜と雪ノ下の声が聞こえてきた。由比ヶ浜が雪ノ下にお土産の事で話していた。

ここでカチ会うと雪ノ下は俺を罵倒してきそうだな。

 

「ヒキタニ君、こっちに来てくれ」

 

「お、おい。葉山?」

 

雪ノ下と由比ヶ浜の声が聞こえてきたら、葉山がいきなり引っ張られて二人から距離を空けた。どうしたんだ、葉山の奴は?

雪ノ下達に相談に行ったはずなのにどうして離れる必要があるんだ?

 

「どうした、葉山。お前が雪ノ下はともかく、由比ヶ浜まで離れる必要はないと思うが?」

 

「うん。そうなんだけど……奉仕部に一度、相談に行ったから君と居るのを見られると少し困るんだよ。それに雪ノ下さんはもうこの件にヒキタニ君が関わっていると知っているから……」

 

「……ああ、なる程な」

 

この件に俺が関わってるのが、余程嫌らしいな雪ノ下の奴は。もしかして戸部の依頼を受けたのは葉山が俺に相談すると聞いたからか?だとしたらこの上なく迷惑な話だな。

 

「今は雪ノ下達の現状を知りたいからこのまま盗み聞きをするぞ」

 

「……ああ、分かったよ」

 

葉山は盗み聞きを渋々了承したが、顔は納得してはいなかった。まあ、どうでもいいが、もしバレたら葉山に責任転嫁しておこう。

 

「それで戸部君の依頼の進み具合はどうかしら?私はクラスが違うからあんまり手伝えからごめんなさいね。由比ヶ浜さん」

 

「うんん。気にしないでゆきのん。依頼はあんまり進んでいないかな?姫菜は戸部っちの事、少し避けているような気がするんだよね」

 

気がするのではなく、完全に避けているんだよ!そんな事にも気が付かないのか?進み具合が少し気になって聞いていたが、聞く必要はなかったな。

バカの雪ノ下とアホの由比ヶ浜、この二人に恋愛相談したのが間違っていたな戸部。

それに恋愛経験が無い者が的確なアドバイスが出来るわけが無い。

 

「で、でも三日目は自由行動だしさ、ゆきのんも手伝ってくれるから何とかなるんじゃないかな?」

 

「……そうね。三日目が勝負と言った所かしら。だったら私達で最大限のサポートをしないといけないわね」

 

「うん!……ねぇゆきのん。やっぱりヒッキーに手伝ってもらうのはダメなの?」

 

「……由比ヶ浜さん。あの男の事はもう言わないと言ったはずよ。あんな卑怯者に手伝ってもらわなくても私達だけで十分依頼くらい出来るわ!」

 

由比ヶ浜が俺の名前を言った瞬間、雪ノ下の顔が面白いくらいに歪めたな。これはどんな事をして戸部の依頼を成功させるのか見てやりたいが、そんな事よりも俺の方が優先させてもらうがな。

 

「それと由比ヶ浜さん。あの男は『今』の奉仕部の部員ではないわ。それに私ならあの男が居なくても依頼を全て完遂する事は簡単なのだから不要な存在よ。それに由比ヶ浜さんもあの男に自分の有能性を示してくはないの?」

 

「そ、それは示したいよ!ヒッキーをぎゃふんと言わしてやるんだから!」

 

俺が由比ヶ浜にぎゃふんと言わされる事は一生ないだろうな。雪ノ下は自分が有能だと思っているようだが、まったく違う。

ポンコツのガラクタがいいところだろう。それが分かっていないのがたちが悪い上に始末に困る。

しばらくしてから二人は離れて行った。葉山はしばらくの間、険しい顔をしていた。

今回の件で一番もの分かりのいい奴は葉山だろう。

だが、そんな葉山は特に動こうとしないのが問題だ。

 

「それでお前はこれからどうすんだ?まさか何も考えてない。とか言わないよな?」

 

「……俺は時間ぎりぎりまで戸部を説得するよ」

 

「戸部がお前の話を聞いて、『しゃあねべ~、隼人君が言うなら納得するだべ~』とでも言うのを期待しているのか?」

 

「……戸部のものまね、意外に上手いな」

 

葉山の一言にイラッとしてしまった。戸部のものまねなんてするんじゃなかったな。

それにしても葉山は説得すると言うが、そう簡単に済めばいいがな。戸部は本気で告白しようとしている。

そして相手の海老名はその告白に応える気はない。そんなんで雪ノ下と由比ヶ浜は上手く行くと思っているのか?

そもそも雪ノ下達は海老名の気持ちを考えていない。そんなのでは振られるのは目に見えている。

 

「……それで君はどうする予定なんだい?戸部の告白をどう成功させるつもりなんだい?」

 

「そもそも俺は告白を成功せさようとは思っていない」

 

「……だったら、君は何をするつもりなんだい?」

 

「それをお前に話すとでも思っているのか?」

 

「…………」

 

俺がそう言うと葉山黙って凄い顔で睨み付けてきた。ホント、そういう事をする辺り、お前と雪ノ下は同類だと思うよ。

 

「まあ、なんにしても三日目に全てが決まるからそれまで大人しくしていろって所だな」

 

「……やっぱり君とは仲良く出来ないな」

 

「それに関しては同感だな。俺もお前とは仲良くしたくない」

 

誰が好き好んで、こんなイケメンリア充と仲良くしないといけない。それに所詮、葉山グループは俺から見たらただの上面だけのグループだ。

だからグループではない俺に恋愛相談に来たのがいい証拠だ。

 

「……俺はもう行くよ」

 

「そうか。まあ、『今回』の件でお前のグループを壊そうとはしないさ。だからお前は戸部の説得でもしていろ」

 

「!?……そうさせてもらうよ」

 

葉山は最後に俺を睨め付けて去って行った。ホント、面倒だな奴だな。

どうしてあんな奴の周りに人が集まるんだろか?所詮、人は見た目と言った所か。

 

「……まあ、今更気にしてもしょうがないか」

 

「何がしょうがないの?」

 

「うお!?……びっくりした。浅葱か、驚かすなよ」

 

後ろから浅葱の声がしたと驚いてしまった。まったく驚かさないで欲しいな。

 

「さっきの葉山君でしょ?何を話していたの?話してくれるよね?」

 

「お、おう……」

 

浅葱の笑っていない笑顔に恐怖を感じながら俺はこれまでの経緯を話した。浅葱は途中からもの凄く険しい顔になってしまった。

 

「……はぁ~どうして私達に一言相談しても良かったと思うけど?その辺は反省しているの?八幡」

 

「はい。……この比企谷八幡、深く反省しております。次からは相談しますので許していただけないでしょうか?」

 

「次は無いからね」

 

「はい」

 

お土産コーナーから少し離れたイスの上に正座させられて浅葱から説教を長々といわれてしまった。ホント、顔が怖かった……!!

次は本当に報告した方がいいな、これは。

 

「それで八幡は海老名さんの要望を叶えるのよね?」

 

「ああ、それを条件に俺の要望を言ったからな。利用出来るものは利用しないと」

 

「まあ、聞いたし私に手伝える事があったら遠慮しないで言ってね」

 

「ああ、分かっている」

 

俺がそう言うと浅葱は自分の当てられた部屋に向かって歩き出した。俺も早めに戻って寝て英気を養った方がいいな。

その前にお土産をある程度決めておかないとな。

葉山は面倒臭かったが、どうせ何も出来ないまま修学旅行を終える事になるだろうな。

それはそれで少し楽しみでもある。雪ノ下同様に何も出来ない者の顔を拝めるからな。

三日目が楽しみだな。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。