やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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由比ヶ浜結衣①

由比ヶ浜の依頼とは、クッキー作りの手伝いだった。ある人物に感謝を伝えたいとのことだ。

そして今、四人で家庭室にいるんだが由比ヶ浜は、エプロンを着けるだけで苦戦している。この先が思いやれる。

そういえばと、俺は奉仕部の活動についてまったく知らないので雪ノ下に聞いてみた。

 

「なぁ、雪ノ下。奉仕部は、一体どんな活動をしていくんだ?」

 

「……はぁ~、本当に平塚先生から何も聞いてないようね。しかたがないから特別に教えてあげるわ。奉仕部の理念は『釣った魚を与えるのではなく、釣り方を教える』というものよ。その残念な頭でしっかりと理解しなさい」

 

マジで何なんだこの女は?人を怒らせる才能があるんじゃないかと疑いたくなるほどイライラさせる。

「へぇ~そうか。がんばれ(棒)」

と言ったのが不味かったのか、ものすごい目つきで睨んできた。

(はぁ~ホント、気に食わないことがあるとすぐに睨んでくるんだったらその性格を直せよ)

と思っているとエプロンといつまでも格闘している由比ヶ浜に雪ノ下がエプロンを着けてやった。

 

「これくらい一人でしないとこれから先、苦労するわよ」

 

「あ、ありがとう……雪ノ下さん」

 

俺は浅葱の方を見て驚いていた。浅葱もエプロンを着けているからだ。

 

「浅葱。もしかして、お前も作るのか?」

 

「そうよ。出来たら味見、よろしくね」

 

「俺、また病院に行きたくないんだけど……」

 

「もう!!昔のようにはならないわよ!!」

 

俺が何故に浅葱の料理を恐れているかというと、あれは小学生の時、家庭科で調理実習の授業で浅葱が作ったクッキーを食べたからだ。

あの時、浅葱が作ったクッキーを食べて、腹痛になってしまい俺を含めて13人も病院に搬送された。

 

ここで俺はふと思ったことを由比ヶ浜に聞いてみた。

「由比ヶ浜は、料理はどのくらいできるんだ?」

 

「えっと……ママがしてるとこはいつも見ているよ?」

と聞いた時に俺には未来が視えた。俺のサイドエフェクトが警告している。このクッキー作りは失敗すると。

 

「……雪ノ下。今すぐ、クッキーではなく別のものがいいと思うぞ。由比ヶ浜のクッキーは絶対に失敗する。それにクッキー作りに絶対に必要ないものまである。今すぐ止めた方がいい」

と俺の忠告をまったく聞く気がない様子の雪ノ下が、何を意味不明なことを言っているの?という顔で俺を見てきた。

 

「比企谷君。いくらなんでもそんな訳ないじゃないの。さあ、由比ヶ浜さんこの男は無視して、さっそく作っていきましょう」

人の忠告を無視して、由比ヶ浜と料理をしていく雪ノ下。だが料理が終わりに近付くにつれて、雪ノ下の表情が曇っていった。

 

数分後、出来上がった二つの料理に愕然としていた。一つは浅葱が作ったクッキーでもうひとつは由比ヶ浜が作ったクッキーだ。浅葱のクッキーは見た目は普通だったが、由比ヶ浜のクッキーの見た目は、もろホームセンターで売っている木炭である。

 

「すごいな、由比ヶ浜。小麦粉やバターなどから木炭を練成するなんてな。お前、錬金術士になれるぞ。そして二度と料理をするな!!」

 

「いったいどうすればこんな結果になるのかしら?取りあえず、どうすればいいか解決策をさがしましょう」

 

「だから、由比ヶ浜が二度と料理をしないしかないだろう」

 

「もしくは、誰かに作ってもらうとか?」

 

「その二つは最終手段よ」

 

「それの二つで解決しちゃうの?!」

と、俺と浅葱の提案と雪ノ下の考えにいちいちオーバーリアクションで答える由比ヶ浜。

後、お前の声がデカくて、うるさ過ぎる。

 

「……やっぱり、才能がないのかな?」

 

「その言葉は撤回しなさい。そんなことを言う人間は、本当に努力をしてからいいなさい」

とテンションが下がり気味で言うと由比ヶ浜に対して雪ノ下が少し怒り気味に言った。

何が気に入らないのか、今まさに怒っている。

 

「でも、周りのみんなはやっていないしさ」

 

「まず、その考えを改めなさい。周りに合わせては、自分の成長にならないから」

と、ちょっといいことも言うんだなと雪ノ下に驚いていると由比ヶ浜は少し黙ったと思ったら、すごいことを言ってきた。

 

「…………かっこいい!!」

と、マジか?雪ノ下の説教がまったくと効いてない。こんだけ言われて、あんなことが言えるとは筋金入りのバカだ。

と、ふと思ったことがあったので二人に言った。

 

「わざわざ、手作りに拘る必要はないんじゃないか?相手に贈ることが大事だと思うし、それに失敗したものを贈るより市販でも気持ち込めて贈られたら、大抵の男は大喜び間違いないしな」

 

「……貴方でもそんなことが言えるなんて驚いたわ」

 

「……ヒッキーも喜んだりするの?」

 

「いや。俺は喜んだりしないな」

と、俺が言うと肩を落としてがっかりする由比ヶ浜。

 

「……そうだよね。うん、自分なりに考えて何か別のものを贈ることにするね」

と、言って鞄を持って帰っていった。由比ヶ浜、使ったものを片付けて帰れ。

 

 

 

次の日、俺は浅葱と共に奉仕部に居た。まあ、読書には持ってこいの場所かと思ってると部室の扉が開いて、由比ヶ浜が現れた。

 

「やっはろー。ヒッキー、ゆきのん、あいあい」

と無駄に元気なやつだな由比ヶ浜。

どうでもいいが雪ノ下のあだ名がゆきのんか、それで浅葱があいあいってネーミングセンスの欠片もない。

 

「何か用かしら、由比ヶ浜さん?」

 

「あれ、ゆきのんは私のこと嫌いなの?」

 

「違うわ。……ただ苦手なだけよ。あとゆきのんは止めて頂戴」

 

「それ、女子の間じゃ同じ意味だから!!あ、それとこれよかったら」

と雪ノ下にラッピングした袋を渡した。

 

「ヒッキーとあいあいにもあげるね」

と、俺達にも渡したきた。中身を確認したら、昨日の木炭クッキーだったので俺は由比ヶ浜に質問した。

 

「……由比ヶ浜。これ、味見したんだろうな?」

 

「……もちろんだよ?」

と、俺の質問に目を逸らしながら答えている。ってか、なぜ疑問系が付く?これは食べたら絶対に腹を壊すよな。

 

「じゃあ、私はこれで。またね、三人とも」

と、それだけ言って由比ヶ浜は去っていった。

 

「あれで、彼女の問題は解決したのかしら?」

 

「本人が納得しているんだ。これ以上の手助けは、いらんだろうよ」

 

「八幡の言う通りだね。これ以上は手助けする必要はないでしょ」

 

「…………そうね」

と納得がいってない顔している雪ノ下。

俺的には、静かになって読書の続きができて満足だ。

ちなみに浅葱のクッキーは美味しかったが、由比ヶ浜のクッキーはやはり焦げていて不味かったのは言うまでもない。

やはり由比ヶ浜に料理をさせるべきではない。

 

 


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