やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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風間隊

ネイバー遠征の訓練の二回目の相手はステルス戦闘のスペシャリストの風間隊だ。隊員全員が透明になる事が出来るトリガー『カメレオン』を入れている。

特に隊長の風間さんはボーダー№2アタッカーで強敵だ。それに風間隊は3人の連携が一番の売りだ。3人が合流する前に一人だけでも仕留めておきたかった。

だが、現実はやっぱり甘くはなかった。終わったらまたマッ缶を飲まないとな。その理由と言うのが、迅さんが開始そうそう風間隊の連携にやられてしまったのだ。

今回、どうしたんだ?迅さん!やられぱなしではないか。

『未来視』のサイドエフェクトはどうした?!未来を視てある程度は攻撃を回避出来るだろうに!!

 

その所為で俺は今、風間隊の3人を相手にしている。今回は『牙月』を使っていない。あれだけ大きい剣を風間隊相手に振り回せない。

だから俺も今回は『スコーピオン』を使っている。あまり使わないし軽い剣は俺にあまり合っていない。

そう言った理由や風間隊の連携、更に迅さんが早い段階でやられたしまった事もあり、俺は風間隊にいいように料理されようとしていた。

ここは絶対に俺が喰らいついてやるつもりだ。簡単にはいかないと思うが、それでもだ。

 

「どうした?比企谷。動きが鈍いぞ!」

 

「ご忠告、どうも!風間さん!!」

 

スコーピオンの扱いに関しては向こうが長けているから長期戦なればなるほど、こちらが防戦一方になってくる。

そうなる前になんとかしておきたいが、そう上手くはいかない。

 

「どうしたんですか?比企谷先輩。あんまり使っていないトリガーを使うから僕らに押されるんですよ。これからは自重してください。だから目が腐っているんですよ」

 

「ホント、こんな時でもケンカ腰だな!菊地原!!」

 

物理攻撃しながら精神攻撃もしてくる菊地原は本当に面倒だな!その上、風間さんとの息の合った攻撃がじりじりと俺のトリオン体に傷を付け始めている。

今は小さいので漏れ出すトリオンは多くは無いので大丈夫だと思うが、いずれトリオン切れで終わってしまう。

 

「メテオラ」

 

「ッ?!シールド!!」

 

風間さんと菊地原の攻撃の合間に歌川がシュータートリガーで攻撃してくる。歌川は今回、シューターでの援護に回るようだ。

だが、俺が隙を見せれば間違いなく近接で攻めてくるだろう。だから油断は出来ない。

そもそも迅さんがかなり早い段階でやられたのが痛い。どうしてあの人はすんなりやられてんだ?

ブラックトリガー『風刃』と迅さんのサイドエフェクトを使えば、そう簡単に風間隊にやられる事は無いはずだ。

『未来視』なんて破格なサイドエフェクトなのだから攻撃の回避は簡単に出来ても可笑しくないのに迅さんはやられた。

 

「俺達と戦っているのに考え事か?比企谷」

 

「……すいませんね。でも戦いながら別の事を考える事が出来るんで、つい」

 

風間さんの連続攻撃をなんとか捌ききった。スコーピオンはまだ使い慣れていないからやりにくい。

 

「慣れない事するから比企谷隊はいつまで経ってもA級9位なんですよ」

 

「比企谷隊が9位なのは上がったばかりだからだ!そこは関係ないだろ!!」

 

「すいません!比企谷先輩。後で菊地原には言っておくので」

 

菊地原はいつも通りムカつくな。歌川は相変わらず菊地原の事で苦労しているな。後でジュースでも奢っておいてやるか。

それしてもこの状況を打開しないと負けてしまう。それに何もしないでやられるのはもっと嫌だ!ここはアレをやるか。

 

「これでもくらえ!!」

 

俺は手に持っていたスコーピオンを消して手を地面に付けた。そこから無数のスコーピオンが出て風間さんと菊地原に向かった。

地面や壁からスコーピオンが出る技『モール・クロー』とスコーピオンを枝分かれさせ技『ブランチ・ブレード』の合わせ技で名前は決まっていないが、付けるなら『ブランチ・クロー』と言った所だろう。

 

「シールド!」

 

「そんなの当たりませんよ」

 

風間さんはシールドで、菊地原は身体を捻る事で避けた。そもそも防がれる事や避ける事が前提で攻撃したからな。俺の狙いは歌川だ。

まず風間さんと菊地原を引き離せば、歌川は間違いなく俺を攻撃してくる。そこが狙いだ。

 

「アステロイド」

 

「そうはさせん!」

 

アステロイドを放つ歌川に俺はスコーピオンを鞭のようにして歌川の首を切断した。カゲさん考案の『マンティス』を上手く扱えて良かったぜ。前にカゲさんにコツを聞いて少しずつ練習していたんだよな。

 

『トリオン体伝達系切断!ベイルアウト!』

 

「……ッ!?」

 

これで歌川は始末できた。と思っていると風間さんに右腕を切り落とされた。反撃しようとしたが、菊地原が足を切りにきていたのでとっさ後ろに跳んで回避した。

 

「もう一度くらえ!!」

 

俺はもう一度、『ブランチ・クロー』で攻撃したが、二人は回避と同時に姿を消した。『ステルス』を使ったな。

それにしても回避のタイミングが凄く良かったな。

 

「……攻撃がワンパターンなんですよ。だから僕らに負けるんですよ」

 

「少しは言葉にトゲを無くしたらどうだな、菊地原。バイパー!」

 

上からスコーピオンを振り下ろしてきた菊地原に俺はバイパーをお見舞いした。てか、こいつは言葉のトゲを無くす気は無いのか?!

 

「シールド。比企谷先輩の攻撃の対策はしてあります」

 

「そいつはどうだか」

 

菊地原は半円球状のシールドですっぽり自分を覆った。これで五方向を同時に防ぐ事が出来る。だが、俺のバイパーは曲がる事なく菊地原のシールド貫通して、トリオン体に穴を開けた。

 

「なんで……?!」

 

「対策の対策だ。少しはトゲを無くしてこい」

 

『トリオン体活動限界!ベイルアウト!』

 

さっきのバイパーは射程短めで威力最大に設定した。それで菊地原のシールドでは防げずにトリオン体に穴を開けた。菊地原の驚いた顔が見れたのは良かったな。

菊地原は威力が低いと思い少し薄くなるが広い範囲を防げるようにシールドを展開したが、それが逆にやられる原因になるとは思ってもいなかっただろう。

 

「流石だな比企谷。3対1だったのにもう俺しかいないか」

 

「……そうですね。風間さんも倒してみせましょうか?」

 

「そう上手くいくか?」

 

風間さんも俺も笑っていた。だが、俺は内心笑っていなかった。

俺のトリオン体は今までの戦闘で無数の傷があり、そこからトリオンが漏れ出していたし、右腕は切られて無いからな。その所為で左右のバランスが少し取りにくい。

それに加えて風間さんはほぼ無傷だからな……。

 

「来ないならこっちから行くぞ!」

 

「くっ!?マンティス!」

 

風間さんから仕掛けてきたが、近接戦はこっちが不利だからマンティスで中距離戦で対応しなければ、こっちがやられてしまう。

風間さんはこちらの攻撃を避けると同時にカメレオンで姿を消した。

 

「………………え?」

 

俺は目を瞑り耳を澄ませて足音を聞こうとした時、肩に何か重い物が乗り掛かり、それを確認する暇もなくスコーピオンが肩からトリオン供給機関を貫いた。

 

『トリオン供給機関破損!ベイルアウト!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いた時には天井を見ていた。やられたと思った。

風間さんはカメレオンを使うと同時に跳んで俺の肩に乗り足ブレードで肩から心臓―――トリオン供給機関を破壊した。

流石は風間さんだな。これで風間隊との訓練は終わった。

 

「……腹が減ったしラウンジで何か食べるか」

 

俺は腹が減ったのでラウンジ何か食べるために移動した。何を食べようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、八幡」

 

「……久し振り、八幡」

 

「シノンとルミルミか」

 

ラウンジで何か食べようと来てみると、そこには比企谷隊のスナイパーのシノンとその弟子のルミルミがいた。

こうして見ると少し似ているな。姉妹と間違えないが、従姉妹と言ったくらいか?

 

「ルミルミ言うな!!」

 

「八幡。留美が嫌がっている」

 

「……その、すまん」

 

つい鶴見の事をあだ名で呼んでしまった。本人はこの呼び方は嫌いらしい。

鶴見の声にラウンジにいる隊員が一斉こっちを見ている。悪目立ちしてしまったな。俺はシノンにある席を指差した。

シノンは頷き料理を持ってその席に向かった。俺も料理を取ってから席に向かった。

 

「八幡はさっきまで何していたの?」

 

「ネイバー遠征の部隊の特訓相手を迅さんとしていたんだ」

 

「……迅さんと」

 

シノンが質問してきたので俺は隠さず答えた。まあ、隠す必要はないからな。

そして迅さんの名前を聞いた途端、もの凄く嫌な顔になった。前に迅さんのセクハラにあう所だったからな。

そもそも女性で迅さんを好きな人はいないだろ。男でも好きな奴はいない。

 

「それで、八幡。私達が遠征へ行けるの?」

 

「まあ、そうだな。五分五分って所かな。まだ太刀川隊と風間隊としか戦ってないけれどな。きつい所もあるが、俺の見込みでは次の遠征までになんとかなりそうだな」

 

「……そう。わかった。それまでに腕を更に磨いてく」

 

シノンは気合い十分なようだ。他はどうか知らないが、今度しっかり聞いてみるか。

 

「ねぇ八幡。遠征って、何?」

 

「鶴見。年上には『さん』か『先輩』をつけろ。組織にいる以上、目上には気を使え」

 

「……八幡、先輩」

 

うん。よろしいな鶴見は。まあ呼び捨てにするようならソロ戦でボコボコしていたな。無理だな。鶴見はスナイパーだから出来ないな。

 

「遠征って言うのはこことは違う世界に行くことだよ。第一次侵攻で攫われた人達の捜索や他の世界の事を調べたりする事だよ」

 

「……そう。シノン師匠や八幡……先輩も行くんですか?」

 

「いや、俺達は今回は行かない。行くとすれば次回以降だな。まだやる事があるかな」

 

「ふ~ん。そうなんだ」

 

鶴見は興味なさそうな態度だった。まだ小学生だから遠征と言ってもピンと来ないよな。

それから俺達は食事を満喫した。

シノンと鶴見はもう少しだけ訓練してから帰るらしい。俺は次ぎの対戦相手に備えて少し仮眠する事にした。

次は冬島隊だ。気を更に引き締めないとな。


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