やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡⑯

俺は昨夜の誰が倒したのか分からないトリオン兵の事を学校に向かいながら考えていた。材木座はボーダーではないトリガーで倒されたと言っていた。

なら倒したのはネイバーと言う事だろう。そうなるとそのネイバーの目的は?

倒すからには何らかの目的があるはずだ。無いなら態々、自分の首を締めるような事はしないだろう。

いや、もしかしたら底無しのお人好しか単なるバカという可能性もある。

 

ウウ――――――!!

 

俺が考え事に集中してるとサイレンが鳴り響いた。俺はすでに警戒区域の外だったの単に聞き間違いと思っていた。

だが、そうではなかった。

 

『旦那!ゲートがすぐ側で開くぞ!』

 

「モグワイ?どういう事だよ?ゲート誘導装置があるんだから……」

 

モグワイの知らせに俺は思わず絶句してしまった。俺の目の前に黒い球体のようなものが現れたのだ。そこからモルーモッドが二体程出てきた。

トリオン兵が現れたならボーダー隊員がやる事は一つだ。

 

「トリガーオン!」

 

俺がトリオン体に換装したらモルーモッドは俺に一直線に突っ込んで来た。市街地が近いので周りへの被害を最小限に抑えないとな。

まあ、俺ならそれくらいさほど難しい事もない。

 

「バイパー」

 

トリオンキューブを8分割して放った。それぞれ4発ずつに分けて二体のモルーモッドに当てた。もちろん、弱点の口の中にある『目』にピンポイントでだ。

 

「こちら比企谷。本部、応答願います」

 

『こちら忍田だ。比企谷、先程のゲートは警戒区域外で発生した事になっているが?トリオン兵は?』

 

「それならもう倒しました。回収班の手配をお願いします。一般人には見られていません」

 

『そうか。それは良くやった。それとそことは違うところで同じようにゲート誘導装置の範囲では無いところでトリオン兵が出てな。丁度、非番の隊員がいてすぐに処理する事ができた』

 

「そうですか。それで原因は?装置の故障なんでしょうか?」

 

『それはまだ分からない。もしかしたら誘導装置に穴があるのかもしれない。開発部が今、原因の特定を始めている。またこのような事が起るかもしれない。比企谷、十分注意してくれ』

 

「分かりました。では……」

 

原因はまだ分からないか。だったらこの二体のモルーモッドが特別仕様なのか?あまりそうは見えないが?

確かゲートを開くには相当量のトリオンが必要だったはずだ。このモルーモッドの内臓トリオンで開くにはトリオンが足りないな。

仮に開けたとして、それだけでトリオン切れになってしまう。

 

「……ゲートを開いたのは別のトリオン兵か?だとしても……」

 

例えバンダーかバムスターくらい大きくともトリオン切れを起こすはずだ。そもそもトリオン兵がトリオンをどう補給するかが問題だ。

人を襲って奪うわけにはいかないよな?謎だらけだな。

情報が少ない今、考えても仕方ない。学校に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が教室に着いて周りを見渡したが、いつも通りの光景だった。他の生徒はイレギュラーゲートの事は知らないようだ。

いつもの日常だとつくづく思う。ただ、葉山と由比ヶ浜が俺が教室に入ってからずっと俺を見てきている。

嫌だ嫌だ。あの連中の頭の中は常に自分達にとって都合がいいように出来ているのだろう。

早く放課後にならないだろうか?本部でソロ戦でもしたい。そんな事を考えていると俺のスマホが鳴った。

相手は忍田本部長だった。もしかして『イレギュラーゲート』の事か?

 

「はい。比企谷です」

 

『忍田だ。すまない比企谷。例のゲートの事で聞きたい事があるから至急、本部まで来てくれ』

 

「はい。分かりました」

 

俺は電話を切って、すぐに本部に行く準備をした。

 

「ヒキタニ君」

 

「ヒッキー……」

 

「……葉山、由比ヶ浜」

 

俺が本部に行こうとしたら、葉山と由比ヶ浜が声を掛けてきた。葉山の表情から面倒な話をしようとしているな。

由比ヶ浜は付き添いみたいなものだろう。オロオロしているしな。他の葉山グループは蚊帳の外状態でこっちを見ていた。

特に三浦が凄い顔で睨んできている。三浦に向かって舌を出して挑発した。

暴れる三浦を海老名が必死になって止めている。頑張れ。

 

「それで、何の用だ?」

 

「……この間の話の続きをしたいんだ」

 

「する必要があるとは思えないがな」

 

どんなに俺達が話し合ったところで事実は変わらないし、現状の問題は何も解決しない。その事を分かっているのか?葉山は。

 

「……俺はあると思っている」

 

「あ、あたしもさ……ヒッキーと話したい事があるから……その……」

 

「……話なら歩きながらでもいいよな?本部で少しやっておかないといけない事があるから。いいよな?」

 

「ああ。もちろんだよ」

 

「う、うん!」

 

葉山と由比ヶ浜は頷き、俺達は教室を出た。その後で三浦が何やら騒いでいたがスルーした。だって、面倒だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「…………………」」」

 

俺、葉山、由比ヶ浜は特に何も喋ることなくボーダー本部に近付いていた。話があるとか言っていたのに何も喋らないとかこいつらは何がしたいんだ?

まあ、別にそうでも俺は構わないけどな。こいつらが喋らないなら聞く必要はないからな。

 

ウウ―――――!!

 

『旦那。またゲートが開くぞ』

 

「またか?」

 

警戒区域に入ろうとした所でサイレンが鳴って、モグワイがゲートが開く事を教えてきた。それしても今日で二回目だぞ?まったく原因は一体何なんだ?

しかもゲートが俺達の目の前に現れた。

 

「な?!どうして、ゲートがここに?」

 

「え?どうしてなの隼人君」

 

「分からない。ヒキタ―――」

 

「トリガーオン!」

 

俺は葉山が話しかけてくる前に換装して弧月を抜刀して、そのまま『目』に突き刺した。どうやら、今回はこの一体だけのようだ。

目撃者は俺達以外はいない。本部に連絡しないとな。

 

「こちら比企谷。本部、応答願います。イレギュラーゲートが出現しました」

 

『こちら忍田だ。比企谷、よくやってくれた。またしてもイレギュラーゲートが開いてしまった』

 

「やはり原因は不明ですか?」

 

『ああ。調査が行われているが、特定には至っていない。回収班を向かわした』

 

「分かりました。それでは……」

 

葉山と由比ヶ浜はぼう然とした表情でこっちを見ていた。こいつらトリオン体に換装すらしていないとか、それでもボーダー隊員かよ。

 

「ヒキタニ君。さっきのは一体?」

 

「あれはイレギュラーゲートだよ。今日の朝からどうも警戒区域以外でゲートが開いている。誘導装置の故障なのか特殊なトリオン兵を使っているのか、原因は分かっていない。お前らこの事は外に漏らすなよ。特に由比ヶ浜」

 

「な、なんであたしだけ?!」

 

由比ヶ浜はこっちに詰め寄ってきた。当たり前のだろ。

 

「お前はお喋りだろ?雪ノ下にでも話しそうだしな」

 

「は、話さないし!ゆきのんにだって絶対に喋ったりしないもん!」

 

もん!って、今時のJKが言う事か?まあ、別にいいか。本部に行ったら報告書とか書かないとな。

そんな事を考えていると人影が近付いて来た。

 

「主様」

 

「隊長」

 

「八幡先輩」

 

「お前ら……」

 

近付いて来たのは比企谷隊の面々だった。そう言えば、今日はこの近くが防衛地点だった。

 

「イレギュラーゲートが開いたと聞いて来たのですが、流石は主様ですわ。もう倒されたのですね」

 

「まあな。出てすぐに刺し倒したからな」

 

夜架が俺に近付いてきたので、すぐに倒した事を軽く説明した。シノンと雪菜はトリオン兵を見ていた。

 

「隊長。このトリオン兵がゲートを開けたの?」

 

「……どうだろうな?その辺は俺には分からない」

 

シノンはトリオン兵をマジマジと観察していた。するとトリオン兵を見ていた雪菜が近付いて来た。

 

「そう言えば、八幡先輩。鬼怒田室長が八幡先輩が来たら『開発室まで来てくれ』と言っていました」

 

「そうか。……分かった」

 

俺は葉山と由比ヶ浜の方を向いた。

 

「そういう訳だから俺はこれから開発室に行ってくるから話はまた今度な」

 

「……ああ、これでは話せないからな」

 

「……え?で、でも……」

 

葉山は割り切っているようだが、由比ヶ浜はそうは無かった。そもそも俺は二人の話を初めから聞く気は無かった。

何か理由を作って逃げるつもりだった。

 

「結衣。こんな状態だしさ。ヒキタニ君もまた今度と言っているから後日にゆっくり話をしよう」

 

「……うん」

 

葉山に説得されて由比ヶ浜は諦めたようだ。由比ヶ浜は妙なところでしつこいからな。

それはさて置き、俺は本部の開発室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部の開発室に入ってみるとそこは地獄と化していた。研究員の人達がうな垂れていた。材木座もだ。

 

「ようやく来たか。比企谷」

 

「どうも、鬼怒田さん」

 

鬼怒田本吉。

本部開発室長で恰幅の良い体形をしている人だ。いつも偉そうにしているが、ゲート誘導システムの開発、本部基礎システムの構築、ノーマルトリガーの量産など、態度相応の功績を挙げている。

 

「……スタッフが全員、うな垂れているのは例のイレギュラーゲートが原因ですか?」

 

「まあ、そうだな。それで比企谷に聞きたい事がある。お前が倒したトリオン兵でどこか気になった事はないか?」

 

あのトリオン兵で気になった事と言ってもな。あんまりそんなのは無かったな。

 

「いえ、これと言ってないですね」

 

「そうか。まったく厄介な事だ」

 

「原因はまだ分かっていないんですか?」

 

「ああ。ゲート誘導装置はなんの問題もない。だと言うのにだ!!」

 

鬼怒田さんは相当、怒っているな。

 

「おっと、忘れる所だった。比企谷、後で指令室に来いと指令が言っていたぞ」

 

「え?……俺、何か不味い事でもしましたか?」

 

「そうではない。今後の対応について話すそうだ。早く行って来い」

 

何だ、怒られる訳ではないのか。びっくりした。いや、別に怒られる事をしたとは思っていないぞ。うん、ホントに。

 

「それじゃ、失礼します。鬼怒田さん」

 

俺は開発室を出て指令室に向かい歩き出した。それにしても俺に話とは何なんだ?

それに指令って、顔が怖いんだよな。

 


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