やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷隊⑦

俺、比企谷八幡は今、ボーダー本部で一番行きたくない場所に向かっている。鬼怒田さんから聞かされた時は間違いであって欲しいとさえ思った。

でも仕方ない。所詮、俺は組織の一部だ。上からの命令には逆らえない。

向かう先は指令室だ。俺がボーダー本部で行きたくない場所、ベスト3の一つだ。

 

3位 二宮隊作戦室。

 

2位 葉山隊作戦室。

 

1位 指令室。

 

俺がボーダー本部で行きたくない場所ランキングだ。二宮隊はまだ、いい。葉山隊は絶対行きたくは無い!

それにしても指令が俺に何のようだろうか?

行きたくない。帰りたい。寝たい。

 

「……八幡。さっきから扉の前で何しているのよ?」

 

「え?浅葱に夜架、シノン、雪菜。どうしてお前らここに?」

 

俺が指令室の扉の前で行ったり来たりしていると浅葱、夜架、シノン、雪菜の比企谷隊のメンバーが勢揃いしていた。

しかしどうしてこいつらがここに居るんだ?

 

「八幡先輩と合流して指令室まで来てくれって、忍田本部長から連絡がありまして」

 

雪菜が俺の疑問に答えてくれた。それにしても忍田本部長が。

 

「それじゃ、シノンと雪菜は八幡が逃げないように両サイドをしっかり固めておいて」

 

「分かった」

 

「はい。しっかり確保しています」

 

「……え?なんで俺、腕を掴まれているんだ?」

 

浅葱の指示でシノンと雪菜が俺の腕をしっかりと掴んで離さなかった。

 

「それは主様が良く分かっておいでなのでは?」

 

夜架がニコやかな顔を向けてくる。頼むから助けて!!

 

「それじゃ行くわよ。……比企谷隊、全員揃いました」

 

『入りたまえ』

 

浅葱が全員、揃った事を言うと中から忍田本部長の声が聞こえてきた。入りたくない!!

指令室には唐沢さんもいた。そして他に二人ほど居た。

一人は根付さんだ。

 

根付栄蔵。

メディア対策室長。痩身でたれ目で鼻の大きな人だ。あらゆるメディアに対応し、ボーダーの印象向上と問題の処理・隠蔽に奔走している。ボーダーに否定的な人が少ないのはこの人のおかげだろう。

 

そしてもう一人が城戸司令だ。相変わらず、顔が怖い。

 

城戸正宗。

ボーダー本部司令で最高司令官。ボーダーのトップに立つ人物で左眉辺りに残った大きな傷が特徴の人だ。

ボーダーのルール、防衛計画、巨大基地建設などを発案・主導してきた厳格な人物で近界民を激しく憎悪している。

そしてボーダー最大の派閥の筆頭がこの人だ。

 

「比企谷隊。ご苦労」

 

城戸指令の声って、どこか威圧しているようで嫌なんだよな。用件だけ聞いて帰りたい。

 

「……それでどうして俺達、比企谷隊を呼んだんですか?」

 

「その説明は忍田本部長から」

 

城戸指令が忍田本部長を見て言ってきた。早く帰りたい。

 

「比企谷隊長や他の隊員が対処した、イレギュラーゲートの事についてだ。今現在も技術部が全力で原因を探しているが分かっていない。これ以上、イレギュラーゲートが開けば、流石に隠し切れない。そこでA級隊員の何名かにはに街のパトロールをしてもらう事になった」

 

なるほど、被害が起る前に処理するれば、いくらでもいい訳が出来ると言う事だな。根付さんでも限界はあるからな。

 

「……そのパトロールに俺達も参加しろと言う事ですか?」

 

「そうだ。今すぐにでもだ」

 

忍田本部長の顔が事態が重い事を物語っていた。すぐに動いた方がいいな。

 

「分かりまた。それで雪ノ下隊と葉山隊の合同防衛任務はどうなるのでしょうか?」

 

「こちらが最優先だ。それはしばらくいい」

 

「分かりました。比企谷隊、すぐに行動に移ります」

 

俺達は指令室からすぐに出た。だって、あの空気が耐えられないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指令室から出た俺達は一先ず比企谷隊の作戦室に集まった。これからの行動を決めるためだ。

 

「それで?八幡は何か考えがあるの?」

 

浅葱が俺に聞いてくると夜架、シノン、雪菜が俺を一斉に見てきた。

 

「……情報が少ないからな。とりあえず浅葱、今までイレギュラーゲートが開いた場所を見せてくれるか?」

 

「うん。ちょっと待って。モグワイ」

 

『あいよ』

 

浅葱に言われてモグワイは今まで開いたイレギュラーゲートが開いた場所を表示した。人口密集地域に近い場所が多いな。

これでよく人的被害がなかったな。近くにボーダー隊員が居てくれて良かったな。

 

「……とりあえず、二人一組でパトロールをしよう」

 

「別れるの?」

 

浅葱が夜架、シノン、雪菜を代表してか俺に聞いてきた。

 

「ああ、固まっていても意味ないしな。それにイレギュラーゲートから出てきたトリオン兵は一体か二体ぐらいだから二手になっても大丈夫だろ」

 

「確かにこのメンバーなら行けるわね。それどんなふうに二手に別れるの?」

 

「俺と夜架もしくは俺と雪菜、シノンと夜架もしくはシノンと雪菜だな」

 

「どうして、そのメンバー編成なの?」

 

浅葱、夜架、シノン、雪菜はこの編成が分からず首を傾げていた。

 

「近接と遠距離の二人にしたんだ。俺はライトニングを持っているからシノンと組むと夜架と雪菜は遠距離に対応できないだろ?」

 

俺に説明に四人は納得してくれたようだ。まず、夜架か雪菜のどちらかと組むかだな。

 

「それじゃ八幡は夜架と雪菜のどっちと組むの?」

 

「それなら先に雪菜からで構いませんわ」

 

俺が答える前に夜架が答えた。あれ?先に夜架だと思ったのだが?譲るのか、珍しいな。

それじゃ最初は雪菜からだな。

 

「それじゃ雪菜。最初は俺と組んでパトロールをするからよろしくな」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

雪菜は元気がいいな、若さを感じるな。てか、俺も若いだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は雪菜と組んで街をパトロールする事にした。一先ず、今まで開いたイレギュラーゲートの場所を見て回る事にした。

 

「この先がイレギュラーゲートが開いた場所ですね」

 

「……この先か」

 

これで俺が対処した以外のイレギュラーゲートで周った事になる。

 

「……八幡先輩は今回のイレギュラーゲートの原因はなんだと思いますか?」

 

「そうだな……」

 

イレギュラーゲートが開いた場所を周っていると雪菜が原因について聞いてきた。正直、情報が少なくて分からないが、いくつか候補はあるんだよな。

それでも話しておくか。

 

「……俺は今回の原因は三つほど思い浮かぶな」

 

「三つ?!そんなに思い浮かぶんですか?」

 

雪菜は俺が三つも原因が浮かぶのが信じられないような顔をしていた。

 

「ああ。一つ目が、ゲート誘導装置を回避する何らかの『穴』を敵が見つけた事。二つ目が、こっちの世界でゲートを開く装置がある事。三つ目がボーダーに裏切り者がいる事。……まあ、これくらいか?今、思い浮かぶのは……」

 

「一つ目は無いですよね?技術部が調査して何もなかったんですから。二つ目は……無いとは思えませんけど、ゲートを開くとなれば大量のトリオンが必要ですからそれをどう確保するかによりますね。三つ目はあるなら大問題ですよ!?」

 

「まあ、そうだな。一つ目と三つ目が無いとして、二つ目に絞って考えると、一番の問題はトリオンの補給なんだよな」

 

トリオンが補給出来なければ、ゲートを開く事は出来ない。それにトリオン兵自体も活動できない。

その補給の問題をどう解決するかだよな。技術部ではない俺にはさっぱりだな。

 

「それでこの後どうします?イレギュラーゲートが開いた場所は回りましたけど?」

 

「そうだな。しばらくはぶらぶら街を歩いてみるか。そしたら夜架とシノンと交代しよう」

 

「はい!」

 

それから俺と雪菜は街をぶらぶらと歩いた。学生を見かけるのが、多くなってきた。そろそろ下校時間だな。

 

「八幡先輩。聞いてもいいですか?」

 

「何を?」

 

ふと、雪菜がいつになく真剣な顔で俺を見てきた。

 

「どうしてあの二人と居たんですか?」

 

「あの二人?」

 

ああ、葉山と由比ヶ浜の事か。まったく名前を言わないから誰だか分からなかった。それしてもなんだか機嫌が悪いのは気のせいか?

 

「葉山が俺に話があるとかで話をしようという事になってな。でも俺は忍田本部長に呼び出されたから本部で話そうという事になったんだよ。ちなみに由比ヶ浜はただの付き添いだ」

 

「そうだったんですね。安心しました。浅葱先輩から修学旅行の事を聞いていたので、また何か面倒事を押し付けられたものかと思いましたよ」

 

そんな事を思っていたのか。流石にあんな事は二度とゴメンだ!!他人の恋愛事情で人生終わりにはしたくはないからな。

 

「大丈夫だ。あんな頼みは一度だけだ。二度目は無い!」

 

「そうですか。それを聞いて安心しました」

 

心底安心したような表情を見せる雪菜。そんなに信用がなかったんだろうか?俺。

 

「……俺って実は信用が無いのか?」

 

「信用はないかもしれませんね。でも信頼はしているんで安心してください」

 

「まあ、それでよしとするか」

 

いまいち、納得出来ないがな。それにしても今の所、イレギュラーゲートが開く様子が無いな。

やっぱりトリオンをどこかで補給しているのか?それに一つ気になっている事がある。今までのイレギュラーゲートはボーダー隊員が近くに居たから被害が最小限に抑える事が出来ている。

しかし本当にそうなのか?たまたま近くにボーダーが居たから?いくらなんでも都合が良くないだろうか?

 

「……どうしたんですか?八幡先輩」

 

「……え?何が?」

 

「先程から話し掛けても全然応えてくれませんでしたよ」

 

「それはすまん。ちょっと考え事で頭がいっぱいだった」

 

「何を考えていたんですか?」

 

仮説だが、一応話しておくか。

 

「今までのイレギュラーゲートは近くにボーダー隊員が居たから被害を最小限に抑える事が出来ている」

 

「はい。そうです。それが?」

 

「もしその逆だったらどうだ」

 

「どう言う事ですか?」

 

雪菜は分かっていないようで首を傾げた。ちょっと仕草が可愛いな。

 

「つまりイレギュラーゲートが開いた最大の要因はボーダー隊員だって事だよ。たまたまゲートが開いた所に居たんじゃなく、そこに居たからゲートは開いたんだよ」

 

俺の話を聞いた雪菜が少し考えて、そして絶句してしまった。まだ仮説の段階なんだけどな。

その時だった。俺のスマホが鳴った。発信者は浅葱だった。

 

「はい。もしもし」

 

『八幡!イレギュラーゲートが開いたわよ!!場所は三門第三中学校!』

 

浅葱が言った場所は数日前に空閑を送った場所だった。

 


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