やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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嬉しいです。これからも読んでいって下さい。


三雲修

俺と雪菜は浅葱から連絡を貰い、三門第三中学へ向かっていた。俺はグラスホッパーをトリガーに入れたので、到着までそう時間は掛からない。

雪菜はしっかりと俺の後を付いてきている。そして目的の場所が見えてきた。

 

「雪菜。もうすぐだぞ!」

 

「はい!」

 

「浅葱。現れたトリオン兵の数は?」

 

『モールモッドが3体よ』

 

3体か。今回はこれまでのイレギュラーゲートと違い、数がいるな。これまでは1体、よくても2体だからだ。

3体も現れたのはこれまでで始めてだろう。

 

「雪菜。俺が後衛を務めるからお前が前衛だ。いいな?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

「よし!」

 

三門第三中学の到着すると校庭は逃げている生徒で溢れていた。外から確認しただけでも2体居た。

最後の1体は屋内か?だとしたら厄介だな。早めに始末しないとな。

 

「雪菜!」

 

「はい!」

 

俺はライトニングを出して、モールモッドの足元に向けて撃った。直接当てなかったのはライトニングの威力ではモールモッドにダメージは与えられないからだ。

それどころか、兆弾して一般人に当たる可能性があるからだ。

モールモッドは俺と雪菜に気が付いて、こちらに向かってもうスピードで突っ込んで来た。

雪菜は槍を構えて、モールモッドのタックルをジャンプで回避して、上から槍を突きたてた。モールモッドはそれで活動を停止した。

 

「流石だな、雪菜」

 

「いえ、それよりも他は?」

 

「壁に張り付いてるのが1体と後は学校の中だな」

 

俺が壁に貼り付いているモールモッドを剝がそうとしたら、いきなりモールモッドが落ちてきた。

俺はそのモールモッドに近付いた。モールモッドにはレイガストが突き刺さっていた。

 

「……一体誰が?……浅葱、残りは?」

 

『そ、それが……』

 

「どうした?」

 

『反応がもうないの』

 

「え?ない?もう倒されているという事か?」

 

『多分そうだと思う。活動しているトリオン兵の反応はもうないわ』

 

誰がトリオン兵を?ボーダー隊員がいたのか?謎だな。

 

「八幡先輩。どうします?この後……」

 

「そうだな……念のため、周辺警戒だな。浅葱、夜架とシノンをこっちに来るように言ってくれ」

 

『それならもう言ってあるわ。もう少ししたら到着すると思うわ』

 

夜架とシノンが来たら、ここのトリオン兵でも調べられるだけ調べてみるか。そんな事を考えていると学校の玄関の方が少し騒がしかった。

メガネを掛けた男子生徒が白髪の男子生徒に肩を貸して出てきた。

てか、白髪の男子は空閑じゃないか。そう言えば、メガネの男子は確かC級の三雲だったか?訓練で手こずっていたから覚えている。

話を聞いてみるか。

 

「……また会ったな、空閑」

 

「おお、はちまん先輩。ひさしぶり」

 

こいつはなんと言うかマイペースだな。俺は三雲の方を向いた。

 

「トリオン兵を倒したのはお前か?」

 

「は、はい。そうです」

 

「……C級のボーダー本部以外でのトリガーの使用は禁止されている……が、今回は仕方ないだろ。お前が戦わなかったら人が死んでいたかもしれないからな。でも本部で説明しないといけないな」

 

「はい。分かっています……」

 

仕方ないとは言え、少し同情してしまうな。頑張れ三雲。

 

「オサムがひらりと身をかわすとすばやく相手の背後をとって一刀両断!」

 

いつのまにか空閑が周りの生徒に三雲がどうトリオン兵を倒したのかを身体を使って説明していた。

 

「返す刀でもう一匹を串刺しに!」

 

「おお~!」

 

「プロの動きだね!」

 

生徒達は感心していた。だが、俺はそうは思わなかった。入隊日の訓練で三雲は訓練用のトリオン兵に手こずっていたのを見たからだ。

そんな三雲がモールモッドを串刺しに出来るだろうか?

答えは無理だ。なら周りに話している空閑が嘘を付いている事になる。

もしそうなら空閑はどうしてそんな嘘を付くのかが分からない?まあ、俺が気にする事では無いだろう。

その時だった。三つの影が近付いて来た。

 

「これは……もう終わっている……!?どうなっているんだ……!?」

 

「嵐山隊。現着しました」

 

三つの影は嵐山さん、時枝、木虎の嵐山隊だった。一人足りないって?気のせいだろ。嵐山隊が防衛地点から一番近かったのだろう。

 

「嵐山隊だ……!」

 

「A級隊員だ!」

 

ボーダーの顔だけあって誰もが知っているな。嵐山さんが周りを見渡して俺と目が合った。すると一直線に近付いてきた。

 

「比企谷。トリオン兵を倒したのはお前か?」

 

「違いますよ。三体の内一体は雪菜が倒しましたが、残りの二体はそこにいる三雲が倒したんですよ」

 

俺は見雲を指差した。嵐山さんは三雲に近付いた。

 

「君か……?」

 

「C級隊員の三雲修です。他の隊員を待っていたら間に合わないと思ったので……自分の判断でやりました」

 

「C級隊員……!?」

 

「C級……!?」

 

三雲がC級だと言うと嵐山さんと木虎は驚いていた。まあ、驚くよな。C級がモードレッドを二体も倒したのだからな。

 

「…………?」

 

周りの生徒は三雲が何をしたのかを分かっていなかった。ボーダーの事は知っていてもボーダーのルールまでは知らないよな。

 

「…………」

 

三雲は視線を下にして怒られる覚悟を決めて黙って待っていた。しかし嵐山さんは三雲の肩に手を乗せた。

 

「そうだったのか!よくやってくれた!!」

 

「…………え?」

 

三雲はいきなり嵐山さんに褒められたのがどうしてなのか分かっていなかった。

 

「君がいなかったら犠牲者が出たかもしれない!うちの弟と妹もこの学校の生徒なんだ!」

 

そうこの学校には嵐山さんの弟と妹がいる。この人は家族を守る為にボーダーに入隊したからな。

第一に家族だからな。

嵐山さんは生徒の中から弟と妹を見つけたようだ。二人に駆けて行った。

 

「うお~~~~っ!副!佐補!」

 

「うわっ!兄ちゃん!」

 

嵐山さんは二人に抱き着いて頬ずりをした。流石はブラコン&シスコンだな。

 

「心配したんだぞ~~~!!」

 

「ぎゃ―――!やめろ―――!」

 

嵐山さんの弟と妹は兄を必死に引き剥がそうと暴れていた。

 

「八幡先輩と嵐山さんって似ていますよね」

 

「いや、雪菜。俺はあそこまで酷くはないぞ」

 

雪菜はいきなり何を言ってくるんだ。俺がするわけ無いだろ。

 

「小町ちゃんにしないんですか?」

 

「するわけ無いだろ!したら嫌われるだろ!!」

 

「……やっぱりシスコンですね」

 

どことなく呆れている雪菜。酷過ぎるだろ、そのため息は!!

その時だった。新に二つの影が俺達の前に降りてきた。

 

「お待たせしましたわ。主様」

 

「……お待たせ。隊長」

 

「来たか。夜架、シノン」

 

二つの影は夜架とシノンだった。これで比企谷隊集合だな。

 

「嵐山さん。兄弟とのスキンシップはその辺で」

 

「ああ、すまない。いやしかし凄いな」

 

嵐山さんは倒されたモールモッドを改めて見た。見事に一撃で仕留められているな。

 

「殆んど一撃じゃないか!しかもC級トリガーで……こんなの正規隊員でも中々出来ないぞ!」

 

「いえ、そんな……」

 

「いえいえ、そんな」

 

どうして空閑が謙遜するんだ?もしかして倒したのは空閑なのか?もしかしてトリガーを持っているのか?

そんな事を考えていると嵐山さんがモールモッドを見てから木虎の方を向いた。

 

「お前なら出来るか?木虎」

 

すると木虎はスコーピオンでモールモッドを細切れにした。そこまでしなくていいと思うが、あえて言わない。

言えば、それなりに面倒な事になりそうだからだ。

 

「出来ますけど。私はC級トリガーで戦うような馬鹿な真似はしません」

 

どこか三雲を威圧するようなに木虎は言うな。三雲にライバル意識を持っているのか?

 

「そもそもC級隊員は訓練生……訓練以外でのトリガー使用は許可されていません。彼がしたのは明確なルール違反です、嵐山さん先輩。違反者を褒めるような事はしないでください」

 

やっぱりどこか三雲を威圧している?何て言うか木虎らしくないな。

 

「訓練生……?」

 

「違反者……?」

 

木虎が三雲の事を訓練生だの違反者だのいうものだから周りの生徒達が騒ぎ出した。

 

「確かにルール違反ではあるが結果として市民の命を救ったのだから……」

 

「そうです!」

 

「三雲先輩は俺達を助けてくれたんです!」

 

嵐山さんに続いて三雲を守るように生徒達が声を出した。だが、三雲は顔色が悪かった。どうしたんだ?

 

「……人命を救ったのは評価を値します。けれど、ここで彼を許せば他のC級隊員にも同じような違反をする人間が現れます」

 

まあ、出ないとは言えないよな。お調子者が今まで出てこなかったのはしっかりとルールがあったからだ。

 

「実力不足の隊員がヒーロー気取りで現場に出れば、いずれ深刻なトラブルを招くのは火を見るより明らかです」

 

木虎はビシッと三雲を指差した。

 

「他のC級隊員に示しをつけるため、ボーダーの規律を守るため、彼はルールに則って処罰されるべきべきです」

 

「……おまえ、遅れてきたのになんでそんなにえらそうなの?」

 

木虎のいう事は正しいのだろうが、それを決めるのは上層部だと思うけどな。そう思っていると空閑が口を挟んできた。

 

「……誰?あなた」

 

「『オサムに助けられた人間だよ』」

 

「おい!空閑!」

 

助けられてではなく助けたの間違いではないだろうか?そんな空閑を三雲が止めようとしたが、空閑は気にせず続けた。

 

「日本だと人を助けるのにだれかの許可がいるのか?」

 

「……それはもちろん個人の自由よ、ただし『トリガーを使わない』ならの話だけど。トリガーを使うのならボーダーの許可が必要よ。当然でしょ?トリガーはボーダーのものなのだから」

 

木虎の言う通りだが、正確には異世界の技術が元なんだよな。

 

「なに言ってんだ?トリガーは元々『ネイバー』のもんだろ」

 

「あなたは一体何を言っているの?」

 

木虎が空閑に若干ビビッているな。

 

「おまえらはいちいち『ネイバー』の許可とってトリガーを使っているのか?」

 

「あ……あなた、ボーダーの活動を否定する気!?」

 

「……てかいうか。おまえ、オサムがほめられるのが気にくわないだけだろ?」

 

「なっ……!?」

 

木虎の反応を見る限り空閑の言う通りなのだろ。分かり易いな木虎。

 

「何を言っているの!?わっ……私はただ組織の規律の話を―――」

 

「ふーん。おまえ……つまんないウソつくね」

 

空閑は木虎に少し怖いと思わせる顔で言い放った。

 


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