八木さんとの話を終えた後あちこち飛び回り、とあるビルの屋上に飛び乗った時。
「フラッシュライトさん、ですね。お迎えにあがりました」
後ろから声がかけられたので振り返ると・・・なんだこれ、全身黒い煙で覆われ、覆われてない場所にはシャットネクタイがあるからスーツ着用。そこまでは良い。その首回りにある、白い、なに?コルセットか何か?
見た目に少し驚愕したが落ち着いて「ボスに伝えろ、お前が来い」とカタカナで書いたメモを投げつける。
それを受け取った謎の首コルセットマンは「なるほど、少々お待ちください」と丁寧な口調で言って来てから黒い煙を広げ、コルセットごと空中に吸い込まれるように消えて行った。
何だその個性、空間移動?普通にうらやましいな。
数分待っているとどこからともなく黒い煙が現れ、その中から首コルセットマンと・・・え、なんだこいつ。上下黒の寝間着ルックに顔に手首をくっ付けた男が出て来た。なにこの変態、過去最高にキモイ。
ま、まあトップが来たし・・・・・・いやトップかコイツ。なんというか、こう、ヴィラン特有のオーラを感じない。それどころかそれ以下のチンピラよりもなんだ、雰囲気がねぇ。
うーん、良く分からん。とりあえずコイツの上にパトロンがいるだろうからそいつがトップだろ。ま、どちらにしろボスは来たんだからいいか。
「おい黒霧、本当にこんなのがあのフラッシュライトなのか」
「ええ。先生にも確認を取りましたが、情報に間違いはありません」
「おいおい想像以上にパッとしない外見だな」
顔に手くっ付けた奴が外見のインパクトを語るなよ、誰だって勝てねーわ。
とりあえず「ボスは分かった。俺に声をかけたトップはどこだ」とだけ書いて首コルセットに渡す。
「おいおい、そっちが呼び出したくせに会話もないとかコミュ障かよ。こんなのが持て囃されてるなんて・・・ファンが知ったらどう思うかねぇ」
顔に付いた手の指と指の間から目が見える。
俺とも、トガヒミコとも違う。これまで出会った連中の中でも一度しか見た記憶が無い。確か、純粋に一対一での殴り合いをしたい奴がこんな目をしてたな。
多分楽しみたい奴はこんな目をしてるんだろ。あいつはたしか、ただのバトルジャンキーだったけどこいつは違うな。なんというか・・・ああそうだ、構わなきゃいいんだ。
「トップ、ですか。そうですね、そうなると場所を変える必要がありますが」
「おい黒霧、俺が来た意味がないじゃないか」
「・・・今度交渉というモノを教えましょう」
なんというか、保護者って感じだなコルセット。苦労してるんだな黒いの。
そっと近づいて「オーケー」と書いたメモを見せると「分かりました、動かないでくださいね」と言ってから黒い煙を広げ、俺を包み込んだ。
あ、これ煙というか霧っぽいナニカなのね。
黒い霧が晴れると、そこはバーだった。随分と小洒落た所を拠点にしてやがるな羨ましい。俺もこんな場所でハードボイルドごっこしたいぞ羨ましい。
「では、先生に連絡を入れますので少々お待ちを」
そう言って白コルセットは・・・スゲェな、このご時世に黒電話だよ。
「なぁフラッシュライト。あんた本当にヴィランなのか?実はヒーローだったりしないのか」
この変態何言ってんの?ヒーローだったら顔隠さないから。
「おいこっち向いてるのは分かってるんだよ、もうこのさいメモでもいいからなんか反応したらどうなんだ」
自身満々なゆったりとした動きで俺の顔に向けて右手を広げて伸ばしてくる。
こうやって真正面から相手にするのは正直初めてだ。強いていうなら緑谷君くらいかなー。
っと、この手はマズイな。個性ですよ!って雰囲気が主張してる。
伸ばされた右腕の手首を掴み、右足で相手の右足を掬い上げる様に蹴り、掴んでいた手を離して上がった右足で地面を踏むと同時に右手で背中を押す。
少し大げさな音を上げて地面に倒れこんだ変態顔面ハンドマンの左右の肩甲骨を足を横にして踏む。地面と肩をくっ付ける様に押し付けると肩はあんまり動かせなくなるからな、手の平が個性の発動条件ならそれを出させなくするだけだ。
「あぁ!クソッ!思ってたより手が早いなフラッシュライト!」
足元で叫びながら力を込めて立ち上がろうとしているがその度に足に力を込めてそれを邪魔する。
「なぁおい、何もしないから足をどけてくれないか」とか言って来ても力を籠めるとカエルの潰れたような声が出た。うーん、チンピラ以下を虐める趣味は無いんだけどなぁ。でもこういう輩って自由にしたら襲ってくるしなぁ・・・
一回徹底的にボコすか?
「あまり僕の生徒を虐めないで欲しいな、フラッシュライト君」
真後ろから機械を通したような声が聞こえる。
機械越しでも鳥肌が立つくらい分かる、ヤバい。確実に本物。それも俺が遭遇したヴィランがチンピラに、チンピラがそれ以下に見えるほどの。
恐る恐る後ろを振り返るといつの間にかあったテレビがついていた。
一見暗く、何を映しているのか分からなかったが目から光を出した事で見えた。
口から上が火傷痕のようなケロイド状の、喉に正面から太いパイプが付けられ、そしてその奥にも数本のパイプが体に繋がっているように見える男がいた。
ごめん顔面ハンドマン、誰だって勝てねーって言ったの撤回な。こっちの方がヤベーわ。でも安心しろ、お前の方が変態度は上だから。
とりあえず足を顔面ハンドマンからどかすと、いつの間にか白コルセットが起こしていた。
そんな光景を横目にテレビの向こうのヴィランに向き合って普通の声よりも出来る限り低くしてから口を開く。
「俺を呼んだ理由は何だ」
横で白コルセットがえ?って感じで俺の方見て来たけどそりゃそうだよな、
「君の事を知りたくてね。何故ヴィランを狩っているんだい?」
開幕でこの質問してくるかぁ、まあでもこれの答えは決まっている。
「ヒーローが多すぎる。数を減らすにはまず原因を、だ」
生ゴミを放置してたら虫が湧くだろ?その虫を排除するためにはどうする?ゴミを捨てるだろ。それと同じ。
全員が自分の好きな理由で個性を振るう、それは無秩序であるだろう。しかし、そんな世界でも何も求めずに人の為に個性を使い正義を為す者が現れるはずだ。何故なら、今がそうだから。
今はきっと、間違った進化をしたのだ。ならそれをやり直す為にヴィランの数を減らし、ヒーローと言う
全人類自己責任計画。誰も自分の責任を他者に押し付けない世界。あぁ、理想郷じゃないか。
「それでヴィランを狩るのかい?何故ヒーローを狩らない」
「自分より弱い連中を狩る方が遥かに楽だろう?それに、連中は連絡をしっかり取るだろう?連絡される前に狩る、なんて面倒は嫌いなんだ」
そう、ヒーローに襲い掛かって返り討ちに合うのは自己責任。
だが、その責任は親にも向く。誰かが犯罪行為をしても親類縁者に私怨が向く。何一つ悪い事をしていないのに、だ。親の教育が悪い?まあそういう連中もいるだろう、だが俺は違う。完全に自分の意志で法律を破って、それを知っていながら続けているんだ。
だから、俺はヴィランだ。ヴィランでいい、じゃない。ヴィランがいい。
死柄木の動かし方わっかんね。もうちょっとハジけさせてもよかったんかね。
大御所ヴィランによる面接開始。
星遠君は根っこに責任云々があるので割とおかしい方向に思考を持っていってぶちまけました。これは好き嫌い分かれますね間違いない。だって俺が嫌いだから。
書き終わってから「Diesirae世界でコイツが座にでもついたらどうなんだろ」とかふと思った。さぞ陰鬱な世界になるんだろうな。