桜が綺麗なこの日、入学するこの――――。
こんな何処ででも聴けるフレーズを聞きながら春の出会いの儀式に差し掛かっていた。
俗に言う入学式。
こんなに長い時間を使う必要性について考えながら俺―――嘴 東苑(くちばし とうえん)は夢の世界にログインしていた。
そして幾つかの刻を過ぎた頃、ガタガタと言う音に体が反応し、夢からログアウトした。
「え―――。私がこのクラスを担当する―――。」
このセリフも聞き飽きた。
どうせ大した事もない話をされても心に響くわけでもなく、ただただ謎の演唱を聞くという儀式を済ませ、解放される。
そうして俺の学園生活が始まる。
A
「部活・・・ねぇ。」
渡されたその紙はそう書いていた。
部外活動・・・正直、普通の授業もまともに受けられない俺にそれが必要か否かを問われれば『否』と答えよう。
しかしながら入れば内申点というものが付く。
無論それは何かの功績・・・又は何かに打ち込んだという証明が必要な訳で、
運動部なんかに入るという手があるが、俺は更に疲れる運動部には微塵も興味がなかった。
というか部活そのものの存在意義のわからない俺にとって文化部と運動部の違いが文字的にしかわからないという段階で、それには興味すらなかった。
がしかしながら、
ほんの僅かな好奇心はあった。
『人類研究会』
この大学のサークルのような部活(会?)の活動内容、それに興味が沸いた。
「厨二病の集まり・・・ではなさそうだし(完全否定できないけど)・・・まぁ、行くだけ見学してみますか。」
そんな短調な思いで俺は人類研究会に足を運んでしまった。
短調ではなく複雑。存在自体が異物。そんなこと露知らず俺は足を踏み入れた。
B
「失礼しまーす。・・・ってあれ?誰も・・・いない。」
案の定、部室らしき場所には誰もいなかった。
部室からは珈琲の匂いが漂っていた。
部屋には乱雑とした感じはなく
寧ろ整理整頓が行き届いて余計なものが殆どなかった。
何というか大人の空間・・・を連想させる雰囲気だった。
「・・・カッコイイ。」
そんな言葉がコロッと口から漏れてしまうほど俺はその空間に見とれていた。
「・・・おい。」
陶酔状態の俺に唐突に声がかかった。
「・・・え?あ、は、はい!」
無論突然だった為、受ける体制が出来ておらず、咄嗟に返事という簡単単純な行為をした。
「・・・コッチだ。コッチ。」
スライド式ドアを開けた真横・・・つまり結構至近距離にその人は立っていた。
「はへ!?」
やばい。変な返事をしてしまった。
そう考えながら真横を見ると、そこには何故か制服の上から真っ黒な実験服を着た目つきの悪い男性が立っていた。
「・・・何の用だ?」
「え?えーと・・・ぶ、部活見学に・・・。」
男は溜息をつき、ソファーに座り込んだ。
「・・・まずは名前を言え、名前を。」
「あ・・・はい。お、俺は日紫 草平・・・二ムラ ソウヘイと言います。」
「そうか。僕の名は・・・先輩とでもトウエンとでも呼んでおけ。」
そしてトウエン・・・先輩は立ち上がり、俺の前に立った。
「この部活は新入部員を募集していない。よって・・・帰れ。」
「え・・・・ちょっ!それはないんじゃ・・・。」
そして先輩は俺を意地でも部室から追い出そうとした。
「ちょ・・・先輩!それはないですよ!」
「黙れ!募集していないのは募集してないんだ!」
「それと先輩!凄く力弱いです!これじゃ押してることになりませんよ!」
「だま・・・だぁまれぇ・・・僕はこにょていにょで・・・みゃきゅけあしゃるい。」
「もう言語無茶苦茶になってますよ!どんだけ疲れてんですか!」
この押し合い(?)の最中、突然ドアが開いた。
「あの・・・依頼・・・・したいのですが。」
そこには、制服を着た女子がいた。