足したけど2で割らなかった   作:嘴広鴻

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天然ボケと芸人ボケと苦労人

 

 

 

「じゃ、これから3人で乗り込むわけだけど、先に1つだけ言っておく。

 お前は余計なこと喋んな」

「…………」

「……いや、そんな切なさそう目で僕を見ないでくださいよ」

 

 

 

 

 

━━━━━亜門鋼太郎━━━━━

 

 

 

「しかしまさか、安久邸の地下にあんな空間があったとはな……」

「ああ、いったいどうやって嘉納はあんな研究施設を手に入れたのやら?」

 

 政道が見つけた、嘉納が所持していた他人名義の隠し不動産。安久邸。

 何かあると思い、篠原さんを筆頭に喰種捜査官の複数チームで踏み込んだが、あいにくとそのときは放棄された屋敷を探索しただけで終わってしまい、得るものがなかった。

 しかし什造がその野性的なと形容すればいいかわからない感覚で、地下室の更に地下に別の空間があることを突き止めた。

 とはいえその日は地下に何があるか検査することの出来る超音波検査装置等は持ち合わせていなかったので、その区の管轄のCCG支局に調査を依頼し、屋敷の徹底調査をしてもらった。

 

 その結果、屋敷の地下に広大な研究施設とその入り口を発見。

 そして今日、調査を頼んだ支局からの要請を受けて、クインケで武装した俺たちも改めて現場に足を踏み入れたのだが、あいにくと嘉納の姿は見えずもぬけの殻だった。

 しかし研究施設や処分されなかった資料を調査したところ、どうやらあの研究施設で人間を喰種にする“人工喰種”の研究を行っていたのではないかと思われる形跡が残っていた。

 

 ……いや、しかしそもそも安久邸地下の施設は嘉納が用意したものなのか?

 あんな巨大な研究施設を個人で用意出来るとは思えない。あの屋敷は他人名義で嘉納が手に入れたものだとされているが、もしかしたら嘉納さえもカモフラージュに使われている可能性も残っている。

 やはり嘉納の捜索はまだ続ける必要があるな。

 安久邸に残って調査を続けている篠原さんや法寺さんが、新たな手掛かりを見つけてくれればよいのだが……。

 

「それにしても、安久か……」

「確か亜門上等は面識があるのだったな?」

「ああ、一等時代にアカデミー候補生たちへ講演に行った際に話をしたことがある。女性でも立派な捜査官になれるかと聞かれたな。

 書斎に残してあった写真に写された少女2人が、おそらく安久クロナとナシロだろう。面影がある」

「フム」

「そういえば、講演の際にアキラの母上の話題も出たぞ。

 28で準特等になったことを教えたら感服していたよ」

「それは何ともこそばゆいな……おや、何やら騒がしいな?」

 

 本当だ。報告のために20区支局に到着したところだが、何やら入り口付近がざわついている。

 いったい何があった……って?

 

「あ、有馬特等!?」

「……ああ、亜門。アキラ。久しぶり」

「お久しぶりです、有馬特等」

 

 まさか有馬特等がいらっしゃるとは思わなかった。受付付近にいた職員が騒いでいるわけだ。

 それにしても何故有馬特等がここに? まさか20区で強力な喰種でも出現したのか?

 

 ん? だが有馬特等の服装がCCGの制服やコートなどではなく、スラックスとノーネクタイのシャツという感じで私服を着ていらっしゃるようだ。

 もしかして近くに来たから寄っただけ、とかなのか?

 

「あれ? 亜門さん、お久しぶりです」

「か、金木くんじゃないか? いったいどうしてここに?」

 

 名前を呼ばれたので誰かと思えば金木くんが、そしてもう1人背の低い女性が有馬特等と一緒にいた。有馬特等がいらっしゃることに気を取られ過ぎてしまって、同行者がいることに気がつかなかった。

 しかしそれが嘉納から臓器の移植手術を受けた金木くんか。俺の顔を見てホッとしたような顔をしたがどうしたんだ?

 それにもう1人の彼女はいったい……?

 

「……高槻、泉?」

「およ、お姉さん私のこと御存じ?」

「知り合いか、アキラ?」

「面識はない。だが10代のときに書いた“拝啓カフカ”で50万部のベストセラーを達成した文壇の逸材……でいらっしゃいますね?」

「そう言われると恥ずかしいッスけどねー」

 

 有馬特等と金木くんと作家の高槻泉?

 わ、わからん。いったいどういう組み合わせだ? いったい何があったんだ?

 

「あ、有馬特等。彼らをいったい何故支局へ……?」

「……彼が喰種容疑者で、彼女がその情報提供者だから……かな?」

「「は?」」

「あ、あの有馬さん。それだと僕が誤解されちゃうと思うんですけど?」

「ねぇねぇ、写真撮っていいスか?」

 

 ちょっと待ってください、有馬特等。金木くんへの捜査は慎重に行うことになっていたのでは?

 あ、だけど有馬特等は普段24区のモグラ叩きなどをしていらっしゃるから、有馬特等へは篠原さんたちに通達された内容が伝わっていなかったりするのか?

 それと撮影は控えてください。

 

「ここで話すのも迷惑だろうから、とりあえず中に入ろうか。

 亜門、アキラ。どちらかでいいから同席してくれないか」

「そ、それは構いませんが……」

「ウン。じゃ、行こうか、高槻さん、カネキくん」

「おお~、これがCCGッスかァ」

「高槻先生、少し落ち着いてくださいよ」

 

 え!? 金木くんをRc検査ゲートに通らせるのですか!?

 ちょ、ちょっと待ってください! 金木くんを検査出来るのはいいんですけど、もしまかり間違って反応してしまったら!

 しかも嘉納が人工喰種の研究をしていた施設を発見したばかりで、それが知られてしまったらCCGにも大ダメージが! 記者会見が!! ちょっ、有馬特等!? あ、ああーーっ…………って、あれ? 何も起こらない?

 

 ……フゥ、よかった。寿命が縮んだ。

 目の前で金木くんがRc検査ゲートを通ったが、ゲートが鳴ったりとかはしていない。となると、やはり金木くんは嘉納によって人工喰種などにはされていないようだな。

 いや、よかった。これで心の荷が1つ降りた。

 これは久しぶりの朗報だな。後ほど篠原さんたちへも伝えなければ。

 

「亜門上等、安久邸の報告書の作成は私が行おう。

 金木研くんのためにも、君が同席した方がいいと思う」

「あ、ああ。それもそうだな」

 

 確かにな。今、目の前でRc検査ゲートを通った金木くんだが、一緒に食事をとったことを証言出来る俺が同席した方がいいだろう。

 しかし有馬特等たち3人の後姿を見ると、いったいどういう組み合わせなのかわからんな。金木くんが喰種容疑者で、高槻泉がその情報提供者ということだが、いったい何があったんだ?

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「上井大学のオカルト研究会、ですか……?」

「ええ、そのオカ研のホームページの活動報告で、このカネキュンが喰種の臓器を移植されたせいで喰種になったんじゃないかって話が載ってましてね。

 もちろんカネキュンの実名とかは載っていなかったのですが、調べたところ無断臓器移植された上井大学の学生などの条件が当てはまるのがカネキュンだけだったんでわかったんですよ」

「ちょっと待ってくださいよ、高槻先生。それじゃますます誤解されるでしょう。

 亜門さん、僕も高槻先生に言われてオカ研のホームページを見ましたが、追加調査でその疑惑は晴れてますよ。

 そもそもその喰種疑惑というのは事故直後、しばらく食事をろくに食べていなかったことが疑われる原因になってみたいなんですけど、今は普通に食べられますから」

「そ、そうだよな。一緒に喫茶店に入ったことがあるからわかっているさ」

 

 あ、危ないところだった。民間人でもそこまで推理する人間がいたのか。

 これでもし本当に金木くんが人工喰種にされていたら、情報規制が間にあわずに大騒ぎになるところだったぞ。

 

「……それに金木くんは先程Rc検査ゲートを通っていたし、別に誤解なんてしないさ。

 大丈夫。君を喰種となんて思ったりしないぞ」

「え? 何でそんな言い聞かせるように……?」

「ほぅほぅ? Rc検査ゲートとな?

 いや実はカネキュンに喰種かどうかと聞いたのは、次回作を喰種モノにしようと思っていましてね。その取材をしているうちにカネキュンのことに辿り着いたわけでして。

 出来ればCCGの捜査官からも話を伺いたいんですけど?」

「しゅ、取材につきましては後に回してください。

 しかし何故、有馬特等が2人を支局までお連れなさったのですか?」

「いや、偶然居合わせたから……」

「は?」

「……あの、まず僕から説明していいですか?

 天然ボケと芸人ボケの人たちの話では、いつまで経っても堂々巡りになってしまいそうなんですけど……」

 

 どっちが天然でどっちが芸人なんだ、と聞いてみたいが、それを聞いたらどちらにしろ上司をボケと認めたと受け止められそうなので抑えた。

 まぁ、以前に会ったときから金木くんは頭が回ることはわかっている。まずは彼の話を聞いてみるとするか。

 

 というか、やけに疲れた顔してないか、金木くん?

 今まで2人と一緒だったみたいだが、そんなに疲れたのか?

 

 

「まず僕と高槻先生との関係は、僕が高槻先生のファンですね。近場でサイン会が開かれるなら、それに行くぐらいにはファンです。

 今日の午前にそのサイン会がありまして」

「もー、水臭いなカネキュンったら。

 付け加えるなら、私もサイン会とかに来てくれる熱心なファンのカネキュンのことは以前から知ってました。少し話してみると私の作品を読み込んでくれているってのがわかったんで、よく来てくれるカネキュンの名前と顔は覚えていたんですよ。

 まさか上井のオカ研に載ってた喰種容疑者が、私の読者とは思ってもいませんでしたけどね。

 それで先日出版した“吊るしビトのマクガフィン”も相当読み込んでくれていましてね。あ、有馬さん。有馬さんもさっき“吊るしビトのマクガフィン”を読んでくれてたみたいですけど、私の“塩とアヘン”は読んでもらえてます?」

「一応は」

「ほぅほぅ。それでは“吊るしビトのマクガフィン”に出てくるオオタ キミオ看守長が、“塩とアヘン”に出てくるタニザキ捜査官の叔父だって気づきました? カネキュンは気づきましたよ」

「? そうなの?」

「え、ええ。家族構成と会話を見返したら、時系列が一致していたので……」

「へぇ、今度読み返してみるよ」

「有馬特等も高槻さんのファンなのですか……?」

「……どうだろう?」

 

 え、違うんですか?

 わざわざ休日にサイン会に行かれるのに?

 

「ヒッデェ。私のサイン会来てくれたのにファンではないとな?」

「いや、作品は面白いと思うけど、カネキくんみたくサイン会に行くまではしない」

「ん? じゃあ何で今日はサイン会に来てくれたんですかい?」

「本屋入ったらサイン会をやってるみたいだったから、せっかくなので並んでみた」

「……もしかして、サイン会開かれる時間が1時間ズレてたら並んでくれてなかったり?」

「…………10分、かな?」

「ガクゥッ!」

 

 ハ、ハハハ……うーん、落ち込んでる高槻先生には悪いが俺からは何とも言えんな。

 そうだな。俺も休日に特に決まった用事がなかった状態で、面白い本と思った作者のサイン会が開かれていたのなら、せっかくの機会なので並んでもいいと思うが、それがもし開始時刻が1時間も後だったら並ばずに次の場所に向かっていただろう。

 10分……確かにそれぐらいだな。有馬特等と同じで俺も10分ぐらいが限度だ。

 

「そ、それで話を戻しますけど、有馬さんがサイン会に並んでいたのは覚えています。というか僕の前に並んでいました。白髪が特徴的な方だったので覚えてます。

 そしてサイン会のときに、高槻先生から話があるからサイン会終了後に少し残ってくれと言われました。

 サイン会終了後に高槻先生と合流して話をするために本屋の近くにあった喫茶店に入ったんですけど、そこに有馬さんがいらっしゃいました」

「うん、本を読んでた」

「その前のサイン会で購入した“吊るしビトのマクガフィン”をですね。

 それで喫茶店でお茶しながら僕と高槻先生が話していたんですけど、有馬さんは僕たちの隣のテーブルに座っていらっしゃいました。

 そして高槻先生が次回作に喰種モノを考えているという話から、上井大学のオカルト研究会に繋がって『君は喰種なのかい?』聞かれてしまいまして。

 そうしたら隣のテーブルにいた有馬さんが不思議そうな顔して僕たちを見てきたので、有馬さんにどうかしましたかと尋ねたら、喰種捜査官だと自己紹介されたんですよ」

「流石にあの話題には反応してしまった。盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」

「いえ、小さな店だったので会話は筒抜けでしたでしょうしね。

 高槻先生にそんな質問をされた直後に、喰種捜査官が隣のテーブルに座っていたのがわかったときは驚きましたよ」

 

 ああ、なるほど。それは有馬特等じゃなくても、喰種捜査官なら誰でも反応してしまいますね。

 しかし高槻さんも危ないな。もし本当に金木くんが喰種だったらどうするつもりだったんだろう?

 

「いや~、流石にそこまで考えなしじゃないッスよ。

 ホラ、喰種って人間しか食べないって言われているじゃないですか。カネキュンがコーヒー飲んだの確認して、喰種じゃないなとわかったから聞いたんですよ」

「喰種はコーヒー飲みます」

「は?」

「いえ、ですから喰種はコーヒーだけは飲めます」

「……そうなんですか、有馬さん?」

「そうだよ」

「はい。ですので危険ですから喰種と思わ「ちょい待ち! 次回作に喰種モノ書こうと思ってからCCGのパンフレットとかも見ましたけど、そんなこと載っていませんでしたよ!」……まぁ、一般には知られていないですね」

「そ、そういうことこそ一般に知らせるべきだと思うんですけどぉ~。

 ああもう、構想やり直しだぁ」

 

 ご、ご愁傷さまです。

 

 確かに広報では民間人に喰種の危険を知らしめるために、喰種のことは“ヒトの肉を喰らうことでしか生きながらえることが出来ない人類にとっての天敵”と紹介している。そのせいで高槻さんのように勘違いをする人が出てくるのか。

 これは少し考えどころだな。広報に相談してみるか。

 

 しかし、今の広報が間違っているわけではない。

 喰種はコーヒーを飲むことは出来るが、コーヒーだけで生きることは出来ない。絶対的に喰種はヒトの肉を食べることでしか生きながらえることが出来ない存在なのだ。

 

「ああ~、要するに人間に例えると、コーヒーだけじゃカロリーが補給出来ないって感じですかね?」

「そうですね。そのニュアンスが一番近いと思います」

「ほぅほぅなるほどなるほど。

 ちなみにコーヒーは煎り具合や挽き方で飲めたり飲めなかったりします? コーヒー豆自体は食べること出来たりします? 水は飲めます?」

「で、ですのでそういう取材は後でまとめてでお願いします。

 それで有馬特等。この2人をここに連れて来たのは、金木くんにRc検査ゲートを通ってもらうためなのですか?」

「うん」

「ええ。僕がその場でケーキを食べていたので有馬さんには喰種じゃないとわかって頂けてましたけど、話の内容からすると今後も僕が誤解されそうだったので、一度検査を受けてハッキリさせた方がいいと提案してくださったんです」

 

 なるほど、そういうことだったのか。

 確かに今の金木くんの状態で放置するのはマズいな。

 

「……何だったら後日、CCGが認可した医療機関に行ってくれれば詳しい血液検査をしてもらえるように話を通しておこうか?」

「え? 僕そこまでしなきゃ駄目なんですか、有馬さん?」

「俺はいらないと思う」

「え、ええ、そうですね。普通の食事が出来て、Rc検査ゲートを通っても何もないなら、確かにそこまでする必要はないかもしれません。

 ですが金木くんが安心するために検査を受けるのはアリだと思います。それに詳しい診断書があれば、次に誤解されても大丈夫でしょうし」

「捏造した診断書と思われたりしませんかね?」

「……俺の名刺を渡しておこう。

 もし喰種捜査官とかに疑いをかけられたとしても、俺に連絡してくれたらいいから」

「いいんですか?」

「乗り掛かった舟だし、こんなので疑われるのは流石に可哀想だ」

 

 あ、有馬特等の名刺!? レアだ!

 イカン。少し金木くんを羨ましいと思ってしまった。俺にも政道のようなミーハーなところがあるのかもしれん。

 

 しかしこの様子だと、有馬特等も金木くんについての捜査は慎重に行うことなっているのをご存じなのかもしれないな。

 だが慎重な捜査を行うためとはいえ、金木くんをこのまま放置しておけば上井大学のオカルト研究会が推理したように金木くんに疑いを持つ人間が現れるかもしれない。それで騒ぎになってしまったら、CCGを邪推してくる人間が出てくることになるだろう。

 それを防ぐため、まずは金木くんの疑いをしっかり晴らしておくべきだと、おそらく有馬特等はお考えになられたのだろう。

 

 嘉納が良からぬことを企んでいそうなのは事実だしな。

 

 しかし、とりあえずこれで金木くん関連については安心出来た。

 もちろん嘉納の捜索は必要だが、人間が喰種に変えられるなんて実例が発見されなかっただけ良しとしておくべきだろう。

 

「……私にはくれないの?」

「…………どうぞ」

「ありがとうございまーす!」

「た、高槻さん! 有馬特等はお忙しい方です!

 私の名刺もお渡ししますので、もし何かありましたら有馬特等の前に私にご連絡ください!」

「へいへい。わかりましたよ」

「くれぐれもお願いしますよっ!

 ああ、それと金木くんにも渡しておこう。すまないが、金木くんも有馬特等に連絡する前にこの20区の支局に電話をかけて、俺かもしくは俺のパートナーのアキラ、先程の女性に相談してくれ。彼女にも話は通しておく。

 何かあったなら、出来る限り力になろう」

「はい、ありがとうございます。

 ……アキラさんって、もしかしてお世話になった上司の娘さんって方ですか?」

「ぐおっ!?」

 

 し、しまった! 有馬特等と高槻さんのせいで、デパートの一件をすっかり忘れていた!

 金木くんとアキラをなるべく接触させないようにしないと…………いや、別に何かあるというわけではないんだが。

 

 

 

「ハイハイ。じゃあこれでカネキュンのことは解決したということで、さっき約束した取材お願いします」

 

 ぐっ、さっきは安請け合いをしてしまったか。

 そもそも金木くんを疑う話になったのは、高槻さんが原因だと思うんだが……。

 

「き、機密に関わらないことでしたら」

「えーっと、亜門鋼太郎……上等捜査官さんですね。

 あれ? そういえば亜門さん、さっきから有馬さんのこと特等って呼んでますけど、特等って一番偉い人じゃありませんでしたっけ? 有馬さんおいくつ?」

「29だけど」

「あれまぁ、お若い。29で特等捜査官って普通なんですか?」

「いえ、それはありません。

 捜査官の階級は上から特等、準特等、上等、一等、二等、三等の6階級に分かれていますが、一等捜査官で現役を終える方も珍しくないです」

「ほぅほぅ、それじゃ有馬さんは超エリートってヤツですな。

 でもそれだと上等捜査官の亜門さんもエリートってことですかね。亜門さんはおいくつですか?」

「……27です」

「亜門はアカデミーの首席卒業だったんだよね」

「あ、有馬特等!」

「おお! その話を詳しくお願いします!」

 

 くっ、有馬特等が隣にいらっしゃるから邪険に出来ん。

 しかしこの2人に挟まれるのがこんなに疲れるものだとは。グイグイ押してくる高槻さんと、それを止めるでもなく平然としていらっしゃる有馬特等。

 金木くんが疲れた顔してたワケがわかったよ。

 

 ハァ、でも仕方がないか。

 彼女のおかげで金木くんの疑いが完璧に晴らすことが出来たんだから、そのお礼として高槻さんが満足するまで付き合うか。

 それに高槻さんは著名な作家だ。そんな彼女の次回作が喰種モノを書くというのなら、先程のコーヒーのような喰種に関する正しくない知識を広められたりすると後々困ることになるかもしれない。ある程度は問題ない範囲で取材に答えるべきだろう。

 何より有馬特等も引き続き同席して頂けるようだから、CCG的にマズい事柄を聞かれたら有馬特等が止めてくださるだろうしな。

 

「あ、茶柱」

 

 ……金木くん。俺に高槻さんを押し付けてホッとした顔してないで、少しは高槻さんを宥めてはくれないかな?

 いや、さっきまでは君がこの2人に挟まれて苦労していたんだろうが……。

 

 

 

「それとカネキュンが言ってたアキラさんという方とのご関係について……」

「黙秘します」

 

 

 

 それは勘弁してくれ……。

 

 

 

 

 

―――――取材中―――――

 

 

 

 

 

「そんな人間いねーよっ!

 亜門さん、有馬さんが上司だからって、有馬さんの功績を大袈裟に言い過ぎてませんかねぇっ!?」

「そ、そう思われてしまうかもしれませんが事実なのです!」

「すいません、亜門さん。僕もちょっと信じられません」

「……そんなに俺って変かな、亜門?」

 

 !? ま、待ってください! そんな答えにくい質問をしないでください、有馬特等!

 ……いや、でも傘で喰種を駆逐したのは人間離れしていると思ってしまいますけど。

 

 

 

 

 

―――――取材中―――――

 

 

 

 

 

「……フゥ」

「おや、随分と疲れた表情をしているな、亜門上等。

 結局どういうことだったのだ?」

「ああ、アキラか。

 高槻泉の次回作の主人公は、有馬特等がモデルになるらしいぞ」

「ハ?」

 

 

 

 ただし主人公は純粋な人間ではなく、人間と喰種の間に生まれた半人間の青年。もう1人の主人公が手術によって人工喰種とされてしまった元人間の少年。

 そしてヒロインは人間と喰種の間に生まれた半喰種の少女。

 

『プッ、少女(25才)ですか?』

『ハイカラだな』

『ケンカ売ってんなら買うぞ、アンタら』

 

 人間として育ちながらも自らの出生について悩みを持ち続ける半人間の青年だが、同じような生まれでありながら半喰種としてしか生きられない少女と偶然に出会い、お互いの境遇を知ることで心を通わせていく。

 だが半喰種の少女は半人間の青年に憧れながらも、人間として生きていけている青年に対して、少女本人すらも気づかないうちに憎しみも抱いていくこととなる。

 そんなある日、突然現れる元人間である人工喰種の少年。

 青年は己より人間に近くて離れている少年に何を思うのか。少女は己より喰種に近くて離れている少年に何を思うのか。

 

 人として一緒に生きてくれと少女に願う青年。喰種として一緒に生きてくれと少女に願う少年。少女は自らと同じだが違ってもいる青年と、自らと違うが同じでもある少年の2人から同時に求められ、心が揺れ動いてしまう。

 自らを必要としながらも正反対のことを願ってくる2人に対して、少女はいったいどのような答えを出すのか。

 

『フィクションですものね』

『フィクションだものな』

『よーし、表出ろや』

 

 そして少し優しくされただけで少年に恋をしてしまった喰種のチョロイン少女(すぐ死にます)。

 処女作“拝啓カフカ”で50万部のベストセラーを達成した高槻泉の初となる、種族の壁を乗り越えた壮大なラブロマンス。

 

『よーし、表出ましょうか、高槻先生』

『嫉妬か』

『わ、割れるっ! 頭割れちゃうっ!』

 

 

 

 あなたは、真実の愛を知る。

 

 

 

「――という感じになるらしい」

 

 俺も主人公の青年の部下として出るらしいが、何だか気恥ずかしいな。

 

 しかしあの3人は気が合うみたいだ。3人とも読書家らしいので、俺には理解出来ないネタで盛り上がっていたようだった。

 有馬特等の捜査官としてではない、個人としての一面を見てしまった気がする。他の捜査官に知られたら羨ましがられるかもしれん。

 

「ほぅ、それはそれは。

 だが私に新作の内容を言っていいのか?」

「いや、まだ確定したというわけではないようだしな。あくまで現段階での構想らしい。

 ついでに言うと取材はまだ終わってない。休憩中だ」

「しかし人間と喰種の間に生まれた半人間……か。そのように書かれて有馬特等は平気なのか?」

「『フィクションだからな』で泰然と終わらせていたよ。

 ちなみに金木くんは『喰種を吸血鬼とかに変えても問題なさそうですよね』とか言ってたな。そのせいか高槻さんが不貞腐れてしまったが」

「そこは有馬特等らしいと言えば有馬特等らしいか」

 

 人間と喰種の間に生まれた半人間と半喰種という概念も、あまりそう言い触らしてほしいモノではないんだがな。いや、そういう存在が生まれるかどうかすら都市伝説の類で、実際にあるかどうかはわからんのだが。

 それに人工喰種は嘉納のことを考えるとこれも世の中に出してほしくない概念だが、あまり否定し過ぎると逆に怪しまれてしまうかもしれん。人工喰種も実現出来るのかどうかはわからんがな。

 しかしそもそも人工喰種って、要するに高槻先生は上井大学のオカ研のネタをパク…………いや、金木くんも言っていたが、人間と喰種のハーフという概念も人工喰種という概念も、喰種の部分を吸血鬼なんかに変えれば使い古されたネタというか、ある意味では王道な物語の登場人物の設定だ。

 あまり人間と喰種が分かり合えるような描写がある作品は書いてほしくないが、そう目くじら立てることではないのかもしれん。

 

 それに事実は小説より奇なりとも言うが、事実をそのまま書いて、一般人に有馬特等のことが喰種捜査官の標準と思われるのも困るしなぁ。そういう設定にでもしないと有馬特等の凄さを読者に納得してもらえない、と言われたのでどうしようもなかったぞ。

 ま、最終的には出版社を通して発売前に有馬特等が内容を検閲することになったので、有馬特等が良ければそれでいいんじゃないかな。

 検閲でお忙しい有馬特等の手を煩わせることになるのは気にかかるが、有馬特等ご自身が何気に自分が主人公となる小説に興味を持たれているようだったし。

 有馬特等もああいうところをお持ちなんだな。

 

 そして色々と話をしていたところ、高槻さんが頭を押さえながら「くっはぁー! ノッてきたノッてきた!」と叫びながら、手帳に長い書き込みを始めてしまった。

 一度今までのまとめをするらしく少し時間を欲しいと言われたので、金木くんもトイレに行きたいということから休憩に入ることとなったんだが、金木くんも言ってたが作家というのは変人が多いってのは本当のようだ。

 

「それで金木くんはどうだった? 問題はないということでいいのか?」

「ああ、アキラもさっき見ただろう。Rc検査ゲートも通って何もなかった。

 それにさっきもお茶を飲んでいたし、有馬特等もここに来る前にケーキを食べるところを目撃されていたとのことなので、これで金木くんはシロだと見なしていいだろう。

 CCGが認可した医療機関で血液検査をしてもらえれば更に確定的になるが、以前の会議のときに話した大学の先輩の奥さんの出産予定日が来週らしい。そのときに車を出したりする手伝いの約束をしている上に大学もバイトもあるので、今日を除いたらしばらくは忙しくなるそうだ。

 だから落ち着いたら検査に行くかもしれないとは言ってくれたが……」

「そこまでする必要あるとは思えんが……」

「まぁ、有馬特等も仰っていたが、俺も正直ないと思う。

 とはいえ嘉納の捜索は続ける必要はあるが、これで憂いが1つ消えた。喜ばしいことだろう」

「それもそうだな。ここは素直に被害者がいなかったことを幸いと思おう。

 それで、その金木くんはどうした? トイレか?」

「給湯室でコーヒーを淹れている」

「ハ? 来客にコーヒーを淹れさせているのか?」

 

 俺に言うな。日本茶を3杯飲んだ高槻さんが次はコーヒーを飲みたくなったらしく、コーヒーが名物の喫茶店でアルバイトしている金木くんに淹れるように言い出したんだよ。 

 俺としても喫茶店仕込みのコーヒーの淹れ方をすると、普段飲んでいるコーヒーメーカーで淹れたコーヒーとは味がどこまで変わるのか少し興味があるのだがな。有馬特等も金木くんのコーヒーに興味を持たれたようだし。

 

「金木くんも快く引き受けてくれたよ。高槻さんを俺に押し付けてからは暇だったんじゃないかな。

 というか高槻さんの質問攻めにあって疲れてるんだ。アキラまで質問攻めしてくるのは勘弁してくれ」

「ああ、スマンな。緊急に対処すべきことがないというのなら、取材が終わってからにしよう。

 それと安久邸の報告書はメールで亜門上等に送っておいた」

「わかった。確認次第、問題なければ俺から篠原さんたちへも送っておく。

 それではな」

 

 ハァ、アキラが俺たちチームに与えられている部屋に戻ってしまったが、何だったらアキラにも高槻さんの取材を受けてもらった方がよかっただろうか。

 高槻さんとしても女性の喰種捜査官の存在は気になるだろうし、何よりも俺1人ではもう高槻さんの相手は限界だ。高槻さんというか、高槻さんと有馬特等2人の相手はだな。

 何気に有馬特等が火に燃料を注ぐというか、所々で高槻さんをヒートアップさせる発言をなさってしまっている。だから元有馬班だったアキラがいてくれたら、少しはフォローしてもらえるかもしれないのに。

 

 天然ボケと芸人ボケか。言いえて妙な……いや、何を考えているんだ俺は! 危うく上官批判をするところだった。

 ……でもアレだな。いつまでも有馬特等と高槻さんを2人きりで放置しておくわけにはいかない。早めに応接室に戻るとするか。

 

 

 やれやれ、取材はあと何時間続くのやら。

 

 

 

 

 

━━━━━芥子━━━━━

 

 

 

「――そうか。それはよかった。

 私たちとしても君の役に立てて嬉しいよ、カネキくん」

『いえいえ、僕の方こそ本当にありがとうございました、芥子さん。これで今後はCCGに疑われることなく過ごすことが出来るようになりました。

 それにしてもVって本当に凄いんですね。僕のRc細胞パターンを検査から除外するように、CCGに入り込んでいるスパイの人が細工することが出来るなんて。

 いやー、月山財閥系列の会社で持ってたRc検査ゲートで事前に試していたとはいえ、流石にCCGの支局に入り込んでゲートを通ったときは心臓がバクバク鳴ってましたよ。しかも僕の隣に有名な有馬貴将特等捜査官がいましたので、生きた心地がしませんでした』

「ハハハ、カネキくんも意外と大胆だ。

 それでどうだい。Vに来る気になったかな?」

『今日のことでかなりグラつきました。給料は月山財閥の方がいいんですけど、やっぱり安全が第一かな、とも思いますし。

 あの…………それでなんですが、もし僕がVに入ったとしたら、もう何人かのRc細胞パターンを検査から除外するように細工してもらうことって出来ますかね?』

「もちろん可能だとも。君がVに来てくれるのならそういうことも考えよう。

 ただしそこまでいくと報酬を先払いするというわけにはいかない。あくまでカネキくんがVに入ってくれてからの話になるがね」

『わ、わかりました。Vのことを真剣に考えさせて頂きます』

「ああ、楽しみに待っているよ」

『はい。それでは失礼します』

 

 フッ、落ちたな、カネキケン。

 これなら大学卒業後はVに来ることが確定だ。

 

 功善から聞いたカネキの性格からして、給料よりも身の安全を求めるのはわかっていた。しかも自らだけではなく、先程要求してきたように恋人の安全も確保出来るというのなら迷うこともないだろう。

 功善は良い忠告をしてくれた。やはり遠回しに霧島董香から攻めていったのが決め手だったな。

 

 

「今の電話……カネキくん、ですか?」

「貴将か。お前も良くやってくれたな」

「いえ、今日のことは本当に偶然でしたので」

 

 報告を聞いたときは何事かと思ったが、良い方向に進んだのなら偶然でも何でも構わんさ。

 

 しかしカネキを勧誘するときに、貴将のことを話さなくて結果的に正解だったな。

 実のところカネキをVに勧誘するためとはいえ、CCGの内部にまでVの手が入り込んでいるかのようにカネキに教えたのは、カネキがCCGや世間にVのことをバラすのではないかという懸念を抱くことでもあった。

 なのであくまでスパイを潜り込ませている程度に匂わせるだけに留めておいた。

 

 まぁ、元よりカネキがVのことをバラすというのは状況的にも性格的にありえないとは思っているが、それでもカネキは元は軟弱な大学生だからな。ましてや今でもVとCCGの真実の姿を知ったらどう行動するかはわからない。

 だが今回のことでVのことを隠した状態で貴将とカネキの面識が出来たので、もしカネキが今後CCGにVのことをバラそうとしても打ち明ける先は貴将になるはずだ。

 これでもしバラそうとしたのなら貴将がカネキを始末すればいいことになる。瓢箪から駒というか、偶然というものは時に嬉しい結果をもたらしてくれるものだ。

 

 それにしても、上井大学に在籍していた二福が生きていたらカネキの動向をさりげなく窺わさせたり、連絡役を任せることが出来ただろうに。二福のヤツめ、アッサリと喰種レストランでカネキに殺されおって。

 カネキの実力を確認するために喰種レストランに行こうとした二福を強く止めなかったせいでもあるが、二福もあれだけ自信満々で喰種レストランに行ったのだから情報の1つでも持ち帰ればよかったのに、あの役立たずめが。

 

「フン、とりあえずこれでカネキは手に入ることになるだろう。

 功善にさせていたような仕事をさせることは出来んし、カネキの性格を考えると最悪は飼い殺しにするだけになるかもしれんが、それでも敵対する可能性を残しておくよりはマシだろう。

 それにカネキの功善に対する恩義を利用すれば、おそらくアオギリの殲滅には利用出来るだろうからな」

「はい」

「それで貴将、カネキと会ったようだが、見た感じどうだ? お前ならカネキに勝てるか?」

「……難しいかと」

「チッ、カネキはそこまで強いのか」

「いえ、真っ正面から戦えばおそらく勝てます。問題はカネキくんの戦意の無さです。

 クインケを持っていない私に対しても常に人間の高槻さんを間に挟んで行動するようにしており、私のことを警戒していたのがわかりました。今日、あの場で私が仕掛けたとしたら、おそらく人間の高槻さんを盾にして逃走したでしょう。

 それにカネキくんの身体能力を考えると、人間の盾が無くとも逃げに徹せられると仕留め切ることは出来ないかと」

 

 ああ、そういうことか。臆病な小僧を相手にするというのは、強気な喰種を相手にするのとは違った問題があるということか。

 しかも臆病なだけでなく、ある程度は頭も回るのが厄介だな。

 貴将がCCGの捜査官であるという立場上、邪魔だとはいえ白昼堂々に人間を殺すことは出来ん。一緒にいた高槻という小説家を盾にして逃げるというのは効果的な方法だ。

 

 しかし人間を盾にするとは何気に外道だな、カネキケン。

 まぁ、貴将がVということを知らないので、貴将が人間の高槻を殺すことはないから安心だと踏んでいるのだろうがな。

 

 ――そういえば高槻といえば、

 

「何でも高槻泉は喰種モノを次回作にすると聞いたが?」

「はい、私が主人公です」

「お、おう……」

「主役です」

「いや、ソッチは聞いていない」

 

 な、何だ? 自分を主役のモデルにした小説が出るのがそんなに嬉しいのか?

 貴将のことは昔から知っているが、未だによくわからんところがあるな。いつも真顔で表情が変化しないし。

 

「そ、それはもういい。CCGで対処すると聞いているからな。

 それで貴将、お前から見たカネキはどうだった? カネキの強さはともかく、処分する必要はあると思うか?」

「……今のところはないと思いますし、むしろカネキくんの情報が本当ならば半端な手出しをする方が危険かと。それともし処分するのならVとして陰で行うのではなく、CCGが総力を挙げて行うべきだと思います。

 それに今日少し話をしましたが、彼の性格的にVの深いところまで知るとVに対して嫌悪感を持つかと」

 

 チッ、生温い小僧め。それでいて力だけは持っているから扱いが難しい。

 

 だがそんな小僧を処分するために、VにもCCGにも余計な被害を出すわけにはいかん。やはり基本は放置しておいて、その間に功善の言う通りに飴を与えておいて貸しを作っておくのが上策か。

 あのカネキの力を有効活用出来ないのは勿体ないが、カネキ自体がそもそもはイレギュラーな存在だ。処分出来るならしてもよいし、手に入るとしても過剰な期待はせずに何かの役に立ったら儲けもの、程度と考えておくべきだろうな。

 どうせカネキに与える飴は、Rc検査ゲートを誤魔化すなどの小さいモノばかりだ。それくらいのものなら惜しみなく安売りしても構うまい。

 

「わかった。カネキケンは放置。様子見だ。

 貴将、お前は片手間程度で構わんからカネキと親交を深めておけ。もしカネキがVについてCCGに相談しようとしたら、お前が相談先になるぐらいにな」

「わかりました。連絡先は交換していますので、何らかの理由を付けて連絡を取り合ってみます。

 それではラボに行く予定がありますので私はこれで」

「ああ、ご苦労だったな。

 しかしラボに用事とは、問題ごとでも起きたのか?」

「先日の24区探索の際にナルカミが壊れた……というより崩壊しました」

「崩壊?」

「羽赫のクインケですし、かれこれ10年近く使っていましたので仕方がないかと。そのナルカミの代わりになるクインケの製造を相談しに行く予定です。

 それでは失礼します」

 

 ……相変わらず愛想のないヤツだ。

 ま、二福みたくヘラヘラしているよりはマシだがな。

 

 

 

 

 

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「あれー、有馬さんが難しそうな本読んでるー」

「コラ、ハイル」

「……ハイルに郡か」

「何読んでるんですかー?」

「カフカの短編集。メル友に勧められたんだ」

「へぇー、そうなん……は?」

「メ、メル友? 有馬さんにメル友?」

「ああ、メル友だ」

 

 

 

 

 







 ネロ祭が忙ゲフゲフンッ!! ……失礼。仕事が忙しくて更新が遅れました。



 それにしても有馬特等は休日でも仕事熱心な人ですね。

 しかし有馬さんとペルソナ4の主人公が重なってしまって困ります。
 声優同じだし眼鏡だし髪型似てるし顔も似てるし転校生だし天然だしと、共通点が多いと思うんですよ、この2人。

宇井「何やってん……ですかぁっ!?」
伊丙「有馬さんったらせくしぃー」
有馬「ハイカラだろ?」

 なので酔った有馬さんがシャツ肌蹴てダーツする可能性が微レ存。

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