タグ理解
廃工場
「………」
「………」
周りの風が吹き抜ける音以外何も無く、ただひたすら誰かを待ち続けている二つの存在がいた。何故か眼魔に協力しているミサキとその眼魔の戦士へと生まれ変わったシャルこと仮面ライダーネクロムゴーストだ。
「…ねぇ…一つ聞いていいかしら?」
「はい。何ですかミサキさん?」
無言でい続けるのに飽きてきたのか、ミサキはネクロムゴーストに声を掛けた。
「あなたは以前の仲間の…研究部の仲間をどう思っているの?」
ミサキは控え気味に質問した。
「大切な仲間ですよ、もちろん。でもベルが倒せって言うのなら僕はみんな倒すよ。だって僕の大切な仲間よりもベルの命令の方が一番大切なんですから」
ネクロムゴーストは淡々と答えた。今のシャルはベルの為なら何でもする存在となっている。例えそれが、シャルの大切な研究部の仲間を傷つける事になろうとも、シャルにとってはベルの命令の方がよっぽど大事なのである。
「そう…」
そんなネクロムゴーストを見てミサキは少し後悔しているのか、顔を背けた。人格は変わっていないのに、思考だけが変えられてしまった。恐らくベルはこんな変わり果てたシャルを利用して研究部に何か仕掛けるつもりなのだろう。
「どうも〜ミサキさん。遅くなってごめんなさい」
ミサキがそう思っていると、ベルがやって来た。ベルの傍らには虚ろな瞳の真耶。そして先ほど眼魔の戦士の一員となったセリスがベルに寄り添う形で現れた。
「…その子はセリスね。どうしてその子がいるのかしら?」
「この人と同じですよ、ミサキさん。チョチョイと眼魔眼魂を入れて眼魔の戦士にしてあげたんですよ。ま、その前にちょっと色々ありましたけどね〜。で、そっちの方は問題無さそうですね」
「ええ。言われた通りにしてあげたわ。シャル」
「はい。ミサキさん」
ネクロムゴーストは頷いてベルの元へと歩んでいった。
「待ってたよシャル。これからは私達ずっと一緒だよ」
「うん。ベルと一緒にいれて僕も嬉しいよ」
ベルはネクロムゴーストの肩に手をそっと置いた。
「ずっとその姿のままでいさせる気?」
「まさか。シャル」
「うん」
ネクロムゴーストは、ドライバーからネクロムゴースト眼魂を取り出し、変身を解除した。すると同時にネクロムゴースト眼魂は、セリスの時と同様にシャルの体内へと入り込み、シャルの瞳は虚ろな瞳になり、ネクロムの複眼と同様に翠色に光っていた。
こうすることでシャルはネクロムゴーストと同じ洗脳状態を保つ事が出来るのだ。
「本当はミサキさんも同じようにして眼魔の一員にしてあげようかな〜なんて思ってたんだけどねぇ…」
「ふざけないで」
「冗談ですよ〜。で、他になにか聞きたい事とかは?」
「いえ、無いわ。それよりもあなた、約束は守って貰うわよ」
「はいはい。分かってますよ」
ミサキに促され、ベルは懐から三つのゴースト眼魂を取り出し、ミサキに渡した。
「本当は実戦で使いたかったんだけどね〜…ま、それが約束だし仕方ないっか。ほら、シャルも渡して」
「うん。はい、ミサキさん。これが僕の持ってる英雄眼魂だよ」
洗脳されたシャルも、英雄眼魂が入った袋をミサキに渡した。
「……確かに全て本物ね」
計15個。全ての眼魂を確認したミサキは、あらかじめ用意しておいたアタッシュケースに全ての眼魂を入れた。
「これであなたとの取引は成立ってとこね」
「そんじゃ、私達は眼魔世界に帰るとしますよ。この後色々とやらなきゃならない事がありますからね〜」
「一つ聞くけど、いいかしら?」
アタッシュケースを持ち、去ろうとする前にミサキはベルに質問をした。
「ん?何か?」
「その子は何の為に操ったの?ただ研究部を潰す為にってだけには思えないのだけれど」
「あれ?ミサキさんも知らされてないんですか?意外…」
「何の事?」
「いや…確かではないんですけどねぇ…セリスとジェノバには何らかの繋がりがあるんじゃないかな〜って思っててね。だからセリスを私達眼魔が手に入れておけば、ジェノバも眼魔の言い分を聞いてくれるか、もしかしたら言いなりになってくれるかな〜なんて思ったりしてね〜」
それを聞いてミサキは立ち去った。
「それが上手くいかない事を祈っとくわ」
そう言い残して。
「はぁ…連れない人だなぁ〜」
ベルはそっとため息をついた。
「さぁて、こっちはこっちでやりますか。さて…セリス、シャル。セリスとシャルにはたっぷりと研究部の事について話してもらうよ」
「いいよ、ベル」
「うん♪いいわ…ベル♪」
「ふふ…いい子だよ…二人共」
ーーーーーーーーー
とある場所にて
一先程のミサキとベルのやりとりを映していた映像を煌びやかな椅子に座って見ている一人の女性がいた。
「随分と余裕じゃのう…ジェノバよ」
「ヨウコね。私の前に来るなんて、珍しいわね」
女性の名はジェノバ。ミサキを支配していた女性だ。そしてそのジェノバの後ろには、ヨウコが立っていた。
「まぁの。定期的に顔を見せてやらんと忘れられそうでの」
「冗談言うわね。あなたとの付き合いは長いんだから、忘れるはずも無いでしょうに」
「じゃの。それよりも良いのか?実質ベルはお主を裏切ったようじゃし、セリスが眼魔の支配下に置かれてしまったのじゃぞ?」
その質問に対してジェノバは余裕を持って微笑んだ。
「ふふ…問題ないわ。まだ私の想定の範囲内よ。ベルを眼魔側に送り付けたのもそもそも私だし、それで眼魔側につくのも分かっていたわ」
「セリスはどうなのじゃ?お前にとってセリスは大切な存在なのじゃろ?」
「ええ。でもセリスには更に強くなってもらわなきゃ困るのよ。それに…セリスはこの程度で壊れるような子じゃないわ。必ず乗り越えてみせるわ。その為にミサキと研究部を泳がせておいてあげてるんじゃない」
「ほう…ミサキと研究部をのぉ…奴らもお主の駒に過ぎないという訳か」
ジェノバの言葉にヨウコはほくそ笑んだ。
「そんなところね。ヨウコ、それで例の物は?」
「ああ…アレか。アレならミサキが眼魂を持って来てくれれば、後はそのデータとエネルギーを注入すればしまいじゃ。そうなれば英雄眼魂も必要ない」
「そう。じゃあミサキが来たらすぐに取り掛かってちょうだい」
「分かった。その後ミサキは…」
「ええ。自由の身よ。三人の監視も解いていいわ」
「そうか。それならミサキも喜ぶじゃろうな」
ヨウコは魔法陣を作り出し、その場から転移した。
(そうじゃ…餞別にアレをあやつにやるとしようか。まぁアレを使いこなせるかは、ミサキ次第じゃがの…)
ーーーーーーーーー
夜
ミサキはベルと別れた後、コブラケータイでヨウコに連絡をとり、眼魂を引き渡す為にヨウコの元へと向かっていた。空は曇り始めていた。
「み、ミサキさん!」
と、ミサキにとって聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。ミサキは思わず振り返る。
「フブキ…コトハまで…」
そこには息を切らせていたフブキと不安な面持ちのコトハの姿があった。
「どうしたの、二人共…」
「どうしたの、じゃありません!ミサキさん…仮面ライダーだったんですね…」
「…っ!」
ミサキは驚いた。まさか二人に自分が仮面ライダーだとバレていた事に。いつかは自分から明かそうとしていたので、ミサキは動揺が隠せない。
「知っていたのね…いつかは教えるつもりだったのだけど…」
「そんな事は今は良いです…ミサキさん…どうしてあんな事をしたんですか…」
「あんな事…?」
「どうして…仮面ライダー同士で戦ってるんですか!仮面ライダーは悪い怪人と戦ってるんですよね…何でなんですか!それにあの女の人に何をしたんですか!まるで操り人形みたいにして…そんな事をするなんてあんまりです…!こんなの…赤城先輩も悲しみます…!」
「…それは…あなた達の為に仕方なく…」
「私達の?ミサキさん…それって…?」
「その為に…あの人は操り人形になったって事ですか…ボロボロされた挙句洗脳って…酷すぎます!ミサキさんなんて…大嫌いです!」
「フブキ…!」
フブキは泣きながら走り去っていった。ミサキは追いかけようとするが、追うことが出来なかった。追いかけたところで、追いかけたところで、今の自分では何を言っても無駄なのだと。
「フブキ…ミサキさん…ちゃんと教えてね…どうしてこんな事をしたのかって」
そう言ってコトハはフブキを追いかけて去っていった。
一人ポツンと取り残されたミサキは、立ち尽くすしかなかった。曇っていた空からは、やがて雨が降り始め、ミサキはその雨に打たれる。
「…ごめんなさい…私は…やっぱり間違って…だけど…私は…」
その雨に紛れ、ミサキは涙を流す。そして悲しみながらも、ミサキは歩きだすのだった。
仕事もある程度慣れてきましたが、やはり更新速度は遅いままです。
ですが、気楽に気長にやっていきますよ。
まだまだこのストーリーは続きます。結構絶望感ありますけどね。
感想待ってます。