アーサー王物語。それは華やかな騎士道ロマンスに彩られるいまだに有名な物語の一つであるが、その中の一人にある不思議な男がいる。詳細不詳、解っていることはアーサー王がいた時期にキャメロットにてマーリンの付き人のようなものをやっていたという記録のみの男。
名前についてもファミリーネームは不明、周りからはケルと呼ばれており、戦闘ではなく、城の中での話によく出てくる俗にいう脇・役・の扱いである。これが世の中のケルという男への評価。だが・・・ここまで読んでいただいた諸兄ならご存知かと思う。
━━━そ・の・解・釈・は・間・違・っ・て・い・る・━━━と
彼には三人の仲間がいた。妖精の王 リーン
吸血鬼の真祖にして最もその身に同族の血を取り込んだ フラン
そして地球意思二代目現抑止力 シエル
しかしやはり残念なのは彼らがどのように初代抑止力を打倒せしめたのだろうかという一点である。彼の書いたと思われる本には最後にこう書かれていた。『シエルは抑止力になれた。』この一言だった。この本は今は切れ端しか残っておらずこの書に入れておく。
そして実権を握っているのはい今も初代の方だという記述もある。
だからこそ、このことに生涯を費やしたがそれでもそれだけがわからない。
これまでのわたしの生涯を賭けて調べ続けたケルという男についての情報をここに綴る。もしこれを読んだ者が真実を知れることを祈って。
1764年 Am 24. November
gertraud = markull
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
パタンと本を閉じて今まで溜め込んでいた息を吐く。内容的にはそこまで深くはない、生涯を賭して調べたものとしてはお粗末だろうと何も知らなければ誰もがそう言うだろう。
しかし魔術師からしてみればこの記述は無視できないものになるはずだ。正にこの記録を裏付ける様な痕跡が多く残っている。だからこそ今自分が見たこの記録が自分の家神崎家にあることに驚く。
この書を開いた経緯は父親が死に際に言った一言が要因だった。
「いいか、莉奈。神崎家の当主としてお前に教えなければならないことがある。今まで入るのを禁止していた地下の私の工房の奥の部屋、あそこのカギをお前に、神崎家19代目当主となるお前に預ける。見るも見ないも自由だ。ただし、他の者に露見してはいけない。それだけは遵守してくれ。」
死ぬ寸前なのに平生以上にしっかりと力強く言って私にそのカギを渡すとすぐに役目を果たしたかのように安らかに死んでいった。
だからこそ、そこまで父が思っていた部屋の中に何があるのだろうと入ってみれば部屋の中心に一冊の本だけだった。最初は何かの間違いと思いながらも本を開き読んでみると何度もアーサー王物語に出てきたかもしれないと思われるほどのモブだったはずのケルという男についての情報だった。
正に父の言う通りなのだろうこの本の内容が他の魔術師に知れたら何が起ころか想像もつかない。何故なら抑止力が変わっているという事実。今から世界中を回って調べるのは余りにも非現実的すぎる。だからこそ本来は一笑に伏す筈なのだが父がこれ程までに隠そうとしていたことがこの本の信憑性を上げていた。
しかし莉緒はこれと言って慌てるまでもなく「まぁ、ここから出さなければ良いよね。」とすぐさま存在を忘れていつも通りの生活に戻る筈だった。二度繰り返そう。筈・だ・っ・た・。
平穏だった彼女の日常を奪ったのは元をただせば彼女が原因なのかもしれないが彼女の手の甲に現れた赤い痣のようなものであった。勿論、莉緒は魔術師で一応その赤い痣令呪のことも知ってはいたものの信じたくはなかったのだ。彼女は常日頃から平穏に穏やかに。がモットーの生活なのに父が死んでからここまで非日常に巻き込まれてしまい見当違いにも死んだ父を恨まずにはいられなかった。
しかし令呪を手に入れてしまったならば他の魔術師に殺されてしまう前に召喚しなければならない。だから彼女は触媒を探した。彼女の家は呪術の家としてあるので、一つくらいあるかと思っていたものの、思い出してみれば今自分の手の甲にある令呪は聖杯戦争。魔術師の魔術師による魔術師のための戦争といってもいいほどで、過去の英霊を呼び出して最後まで残った組が勝利となるものだが、彼女は忘れていたが聖杯戦争は基本西洋の英霊しか登録されていなかったことに。
気づいた時の彼女はそれはもう正に絶望の底にいる様な顔をしていたが時間も大量に消費してしまっていてもうランダムに召喚するしかないと父の工房の奥の部屋を活用しようとしていた。
そして呼び出されたのがたまたま部屋に置かれたままになっていた本に入れてあった日記の切れ端の持ち主であるケルだったのだ。しかしこれはたまたまなどではなかった。必然の結果だった。
彼女は神崎家の当主になった時にこの家が生まれた意味と本来の歴史、それを初めて知った。
彼女の家はまさにケルという男のために生まれたと言ってもいいほどの家であった。本来の歴史は7世紀程から始まり、彼らもやはり根源への到達を目指したがその時に彼の日記を手に入れて彼とともにいるというシエルに僅かな希望を見出し、彼女を呼び出そうとして失敗し続けた彼らは、彼を呼び出したら彼女も来るのだろうと算段をつけて今まで彼のことを調べていた。
しかし時代の流れからそれらの記録が失われていった。他の魔術師との闘いや紛失などで徐々に失われていき、気づけば本来の目的の筈であるシエルはケルの仲間であるという認識だけになりケル自体が目的にすり替わっていたのだった。
だからこそ彼女はケルを呼び出そうとして成功し、悲願を果たしたと考えた。だから先の事なんて考えてないし、彼女自身平穏な生活を望んでいるので根源に到達しようだなんて考えてはいないので今更聖杯だなんてものは求めてはいないが、呼び出した手前相手の願いもかなえようとせずにひたすらに守ってもらうのは気が引けていたので呼び出した英霊の願いのために戦おうと思ってはいたのだが・・・
時は莉奈がケルを召喚し、話をするために家のリビングに移動し、お互いがお互いの話をし終わったころ。
「それでマスターの願いは何だ。これを聞かないと俺も戦いに身を入れられないからな。」
唐突にイレギュラーケルから放たれた予想はしていた質問に元々用意してあった答えを語る。
「私は別に何かが欲しいっていう訳ではなくて、こんなものが来ちゃったから参加しなければなくなっただけであって特に聖杯に願う願いは無いわ。」
ウンザリしながら自分の手の甲に刻まれた令呪を見せて言ってくる姿は本当にウンザリしているというのが伝わってくるものだった。それは初対面のケルにも同じだったようで
「わかった。その言葉を信じようか。それと僕の願いについては気にしなくていい。」
その言葉に拒絶の君は関わるなという意味に聞こえた莉奈はむっとした表情に無意識になっていた。
それに気づくと慌てたように
「いや、何というかマスターと同じように聖杯に願うものがないというか、そもそも特例的なものであるから本当になくて・・・」
「そうだったわね、分かった。イレギュラーはイレギュラーだからイレギュラーなんだもんね」
「そんなにイレギュラーって言われると段々何言ってるのかわからなくなってくるな・・・ともかく、マスターにも願いがないなら別に参加しなくてもいいんだが・・やはり、この戦争の仕組み上戦わないことはまず在り得ないといってもいい。だから覚悟してくれ。そして俺を上手く使ってくれ。いや俺・た・ち・を上手く使ってくれマスター」
莉奈に手を伸ばすケル。そしてそれに応じるようにケルに手を伸ばす莉奈。
お互いがしっかりと握りあって握手した。
ここに『神崎莉奈』とクラス・イレギュラー『ケル』との神崎陣営が始動したのだった。
「ところでマスター、敵の情報はあるのか?」
「?敵って誰がいるの?」
「・・・・・・・・・・・本当に参加したくなかったんだな・・・」
始まろうとする前の準備を始めたのだった。
第〇次聖杯戦争まであと・・・
いかがだったでしょうか?物理的にも小説内でも途轍もなく時間が進んでいますが、ぜひ次回も読んでいただけたら幸いです。
ということで何か月ぶりか解らないくらいですがww
新版でした!