side〜比企谷〜
走るダンテ等を追い、俺も走る。丘を下り、森の中に入る。
何かがおかしい、村を消すなら村に直行するはずだ。だが、ダンテ等は村と別の方向に走っている。何が目的なんだ
夜の森の中は、いろいろ見えにくい。さらに、俺の魔法の効果もあり存在が気づかれることは、まずないだろう。銃を取り出してトリガーに指をかける。その動作を走りながら行い、奴等を追い越す。
そして犬耳の男と太眉の男を狙って二発撃つ。話を聞きたいのと、戦力の低下をさせるため両者とも致命傷にならないところを狙った。二人落として、ダンテの足止めさえできれば、あの女一人ならルーシィくらいでも倒せるだろう。あわよくば、全員倒せたらいいのだが
期待なんてするもんじゃなかった。俺の期待どうりになんて、なるはずがなかった
ドカンと爆発が起きる。弾に爆風が当たり、弾の勢いがなくなり、地面に虚しく落ちる。ダンテが止めたのだった。他の人は、少し周りを警戒する
「先に行け」
ダンテがそう言った。他三名は、戸惑いながらも先に行った。俺としては、先にあの三人を倒しておきたいが、ダンテが許してはくれないだろう
「そこにいんだろ?なあ八幡」
「はあ、なんで俺がいるのがわかるんだよ」
「お前は、いつもそうだった」
手で石を持ち、俺に向かって投げつける。それを、横に飛び避ける。俺のいた場所に着弾して、爆発する
「左足の借りかえしてやるよ」
ダンテが、姿を変えていく。怪物へと変わる。まるで、人間をやめたかのように、急激に姿形が変わる
「お前のそれ、何回目だ?」
俺は、木の陰から何発か撃つが効いている様子はない
「さぁなっ!」
ダンテは、右手を固く握り締め殴りかかってくる。後ろにあった木を盾にし、攻撃を避ける
ダンテの左足の氷の義足は、ダンテの重さに耐え切れず壊れた。だが、なくなっていても昨日と同じくらいの強さだった
「限界解除」
「また、それかっ!もうなっちまえよ、俺と同じ悪魔によぉ!」
攻撃に使っていなかった左手で、俺を掴みかかる。“悪魔”その言葉に、一瞬の間俺だけの時間が止まっだ。その為、掴みかかる手を避けることができなかった。右手を掴まれ、爆発する
「ぐああぁぁっ」
俺の悲鳴が、夜の森に響く。掴みあげられ、地面に叩きつけられる
「痛いか?」
ダンテが、倒れている俺を見下して聞いてくる。右手にはほとんど感覚が残っていない
「ああ、痛いね」
少し、油断していたダンテの残っている右足を掴む。左足がなくなっているのもあり、バランスが取れなくなり、ダンテが倒れる
「腐魔の腐乱掌」
掴んでいたところから、腐っていくだんだんと、このまま掴んでいればあるいは…
「バカが」
掴んでいた手が爆発した。左腕の肘から指先にかけて、消失していた
「もう、両手なくなったなぁ」
「だが、お前はもう立てない」
「なにいってんだよ?俺は悪魔だ」
みるみるうちに、ダンテの足が回復していく否、生えていく。なくなっていたはずの左足が生え、腐っていた右足が正常に戻っていく
「お前もなれよ、人間なんかやめてよぉ。怪物に」
「そっかもう、それしか手がないか」
本当は、使いたくなかった。人間でありたかった。俺は、手を使えなくて立ち上がるのにも一苦労する。全身の血の流れが速くなっていく、熱くなるのを感じる。体が、変わっていくツノが生え、体色が肌色から黒っぽくなっていく、そんな体の変化より全身に力がみなぎっていく。魔力が上がっているのも感じる
「さすが、セイラ様の悪魔因子を取り込んだだけはあ……」
自分でも、どのくらいの速さで動いているかわからない。いつの間にか、ダンテを通り過ぎ後ろにいた。なくなっていた左手が治っていて、右腕の感覚も戻っている。そして、右手にはダンテの左腕が握られていた。右手が爆発するが、何のダメージもなかった
「え?」
ダンテが、自分のなくなった右腕を見て絶望した。人間と戦っても面白くないと思っていた。悪魔化した比企谷の力を見誤っていた
「こんなのってありなのかよぉ」
ダンテが、泣きそうなそして絶望した顔で俺に顔を向ける。俺の意思とは関係なく、いつの間にか体が動き、ダンテの顔を握りつぶしていた。ダンテの体は、何の抵抗もなく、地面に崩れ落ちる。突然、首もとの妖精の尻尾の紋章が淡く光る。そして、強制的に悪魔化が解除されていく。体を自分の意思で動かせるようになる。紋章が光りをなくす頃には、もういつも通りになっていた。自分の体を再確認する。違和感があった。限界解除をしたのに、何の疲れも痛みも傷もない
そこで1つの仮説が思い浮かぶそれは、限界解除の代償は悪魔化すればない。いや違う本当の代償は、悪魔化をすることなのかもしれない
「…村に行くか」
歩き始めるが、すぐに足を止めた
「その前に…」
ダンテの亡骸の前に立ち、その隣に穴を掘り、その中に入れ、埋める
「こんな、粗末なもんですまん」
手を合わせ、埋葬する。そして、重い腰を上げ、村に向かって歩き出した。悪魔化したのは、初めてじゃないとはいえ、自分からしようと思ったのは初めてだった。人間でありたかった、人間であるという幻想を見ていたかった。もう戻れない。
side〜ルーシィ〜
門が開き、やってきた奴の姿が見える。鍵に手を置き、戦闘体勢に入っていたが、やってきたのは、丸い氷に手と足と顔だけが出ているナツとそれに担がれている手負いのグレイだった
「ダメ!来ちゃダメェーッ!」
「あ?」
「止まって!ストーップ!」
あたしの声が届いたのか、ナツは落とし穴の眼の前で止まる。安心した。自分の作った罠に味方が引っかかるなんて、バカみたいな話だ
「何だ?これ」
ナツが、落とし穴に足を踏む
「えばっ」
ズボッと、ナツが落とし穴に落ちた。そんな話があっていいのか。何よ、あたしの考えた作戦失敗しちゃったじゃない
「オイオイ、こんな時にオチャメした奴ァ誰だコラァ」
「ルーシィに決まってるじゃないかー」
「やっぱりか!」
「違うのよーっ!違わないけど違うのよ!」
自分でもない何言っているのか、悲しさのあまりわからなくなる
「ん?氷が割れてる!あれ!?火でもダメだったのに!」
「さ、作戦通りだわ」
穴を見ると、氷が割れて喜んでいるナツと、傷ついてボロボロのグレイがいた
「グレイの手当てするから、登ってきて!」
ナツがグレイを背負い、穴から登ってくる。包帯などを持ってきてグレイを、手当てをする
「そりゃそうと、あいつ等まだ来てねぇのか?」
「たぶん比企谷が足止めしてるのじゃないかしら」
「なに!?比企谷が!?どこだ!?」
「知らないわよ」
ナツがあたしの肩を揺すって聞いてくる
「な、何だアレは!?」
一人の村人が、空を指差して他の村人たち、そしてあたしたちに言うそこには、ある影があった
「ネズミが飛んでる!!何だあのバケツは!?」
「空って、落とし穴を作ったの意味ないじゃないのー!」
ネズミが尻尾を高速に回して、空を飛んでいる。その背中には三つの影があり、比企谷はもう一人の足止めをしているのか、もしくはもうやられたのか、どちらかしかない
バケツが揺れ、中に入っていた液体が少しこぼれる。それはあたしの真上に落ちてくる
「ゼリー?」
「ルーシィ!!」
そのゼリー状の液体が、あたしに落ちてくる前に、ナツがあたしに飛びかかってくる。
「きゃああっ」
その液体は、草にあたり地面に広がり溶かしその場に小さな穴ができた
「何だこのアブネェ臭いは」
村人たちは、騒ぎ、混乱し、少しでも遠くに逃げようとする。だが、もう間に合わない。ネズミがバケツの中に入っていた液体を、村に向かってばらまいた
「こんなの、どうやって防げばいいのよ!?」
「みんな、村の真ん中に集まれっ!!」
ナツが、そう指示する。あたしは、ナツの言葉を信じ村人たちを誘導して、村の真ん中に集める。だが村長は、息子の墓から離れなかった
「村長!」
ナツが、液体を爆散させて真ん中だけに当たらないようにする
「バルゴ!」
他の場所に液体が当たり、溶かしていく。真ん中以外の場所の土地がなくなる。もちろん取り残された村長の場所にも当たる
あたしの近くに穴が開く、そこから村長を連れたバルゴが現れた
「この、村長お仕置きですね」
「よくやったわ!」
表ではバルゴを褒め、自分の心の中では自分を褒める。人に褒めて欲しいと言われれば褒めて欲しい。だけど、あたしに褒めてくれる人なんていないんじゃないだろうか
三人が、地上に降り立つ。あたしたちは、村人の前に立ち、相手を見据える。
村人たちは巻き込まれることを恐れ、逃げ出す。
戦いがいま始まろうとしていた