side〜ミラジェーン〜
ファントムが攻め込んできた。エルザもやられ、無数の兵が攻め混んできている。ギルドメンバーは、その兵に突撃していく。あちこちで、魔法が飛び交っている。その、流れ弾が私の近くにあった箱をバラバラに破壊する
私は、一つの決断を下した。下さずにはもういられなかった。私は、もう…何もせずに後悔なんてしたくない
「ルーシィ!こっちに来て!」
私は、前線にいたルーシィの腕を掴み、後方につれていく
「隠れ家があるの!戦いが終るまでそこにいましょ!」
「あたしもみんなと戦わなきゃ!あたしの所為でこんな事になってるの!」
ルーシィは、腕を振り払う。みんな、ルーシィに戦ってほしいなんて思っていない。この戦いには、みんな一人一人誇りを持っている
誰かのために戦っている。傷ついている人のため、マスターのため、壊されたギルドのため、そして、ルーシィを守るために、戦っている人もいる
そんな人たちのために、ルーシィを安全なところに送らなければいけない。ルーシィを完璧に守りきる。それが私の義務であり、みんなの願いだ
「…少し、眠っていてね」
眠らせる魔法を使い、ルーシィを無理やり眠らせる。倒れるルーシィを抱きかかえる
これで、いいんだ…これが、いいんだ
「リーダス!ルーシィを隠れ家へ!」
リーダスに、ルーシィを頼み私は、ルーシィに変身する。これで、ルーシィが隠れ家に行く間まで、時間が稼ぐ。最悪、私がルーシィの代わりに捕まる。
ルーシィがギルドに帰ってくるまでに全てが終わらせる
また、みんなが笑顔でいられるギルドに
十五分経ち、また、魔力が砲台に集まっていく。もう、ダメだと、誰かが伏せろと叫ぶ。伏せてどうにかなるものではない。誰しもが諦めた、その時砲台が崩れていく。ナツが魔導収束砲“ジュピター”の核を壊すことに成功したんだ
この事実が、みんなの士気を高めていく。これなら勝てると、全員がそう思った。ナツのおかげで、時間を気にしないでに戦える。心の余裕が生まれたみんなは、ジョゼの兵たちを次々に倒していく。兵も一体一体は、さほど強くない。仲間たちでフォローしあって倒していく
だが、現実は非情だった
突如ファントムのギルドが立ち上がり、巨人のような形に変形していく。突然の変化に、誰も動くことができず、呆然と見ていた
変形が終わり歩き出し、ギルドごと私たちを踏み潰さんかのように向かってきた。歩くたびに、湖の底が見え、地面が割れる。いたるところから出てくる蒸気は威圧感を、その巨大な体は圧迫感を私たちに与えて来る
まだ、それだけならまだ良かったのかもしれない
その巨大なロボットは、途中で立ち止まり空中に魔法陣を書き始めた
「この、魔法陣は煉獄破砕…!?禁忌魔法の一つじゃない…」
煉獄破砕は、暗黒の波動で飲み込んだものを全て消滅させてしまう。強力すぎるゆえ禁忌とされてきた。こんな、魔法まで使ってくるなんて思ってもいなかった
魔法の強さは、魔法陣の大きさに少なからず左右される。ほとんどの魔法は、魔法陣が大きければ大きいほど強くなると言われている
巨大ロボットの書いているサイズは、カルディア大聖堂まで、消し飛ばすレベルの強さを出せる大きさだった。ほぼ街の半分がなくなってしまう威力だと言われている。それは目測だけであり、言われているだけで私だって、この魔法を使うところを見たことがあるわけじゃない、正確な威力なんて誰にもわからない。最悪、八幡たちがいる病院まで消し飛ばす威力を持っている可能性もあるし、町半分を消し飛ばす威力すらもないかもしれない。
それに加え外部にいる、私たちができる事は微々たるもので、内部に入らなければ止めようがない。このロボットに近づくということは、常に兵が出てくる場所に行かなければならない。それは、周りの兵に囲まれて殺されるかもしれないということなのだ。この魔法を止めることは、外部にいる私たちにはできない
だが、内部にいるナツならまだなんとかできるかもしれない
「ミラ…あの魔法が発動するまでどれくらいかかる?」
カナと窓越しに会話する。カナの質問は、あたしにも予測がつかない
ただ、普通の人が煉獄破砕を使う時に使う時間は、だいたい十数分と言われている。それは、普通の人が普通の大きさの魔法陣を使った時の所要時間だ。巨大ロボットは、あの大きさの魔法陣をかなりの速さで書いてた
「十分…ってとこかしら…。なんとか、動力源を壊せないかな」
それは、誰しもが考えていることだ。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。内部には、ファントムの幹部にジョゼもいる
「中にいる連中も同じ事を考えてるはずだよ」
「ナツ以外にもいるの?」
「うん…グレイとエルフマン」
「エルフマン!?何で!?」
「何でってこともないでしょう…あいつだって」
「無理よ!エルフマンは、戦えないの!カナだって知っているでしょ!」
カナが喋っているのに私は、それを遮って大きな声で喋る。それほどに、気が動転していた。向こうの幹部クラスには、今のエルフマンじゃ歯が立たない
「ねぇ…ミラ…あんな事があってあんたもエルフマンも深くキズついたけどさ。あいつは、あいつで前へ進もうと努力してるんだよ」
エルフマンは、前に進もうとしている。そんなことくらい、知っている。前に進めない私がその事を理解しようとしていなかっただけだ
ただ、エルフマンはファントムの幹部に勝てるかどうかで言えば、負けるだろう。最悪命まで取られるかもしれない
そんなこと、絶対にさせない。そのためにも私は、前に進まなくちゃいけない。もう、何も手放さないために…
私は、窓から外に飛び出る。そして、最前線まで、走っていく。今の私は、ルーシィと同じ姿、同じ声だ。私が、盾になれば魔法陣を書くのをやめるかもしれない。兵が、消えるかもしれない。ギルドを襲うのをやめて、帰ってくれるかもしれない。そんな、希望的観測で私の頭は埋まっていた
「あなたたちの狙いは、私でしょ!今すぐギルドの攻撃をやめて!」
『消えろ。ニセモノめ』
その声は、とても冷たかった。それは、甘い考えだということを思い知らされ、淡い希望すらも打ち砕かれる
『はじめから、わかっていたんですよ。そこにルーシィがいない事は』
ジョゼは、まだ喋っているが私の耳には届かない。
何もできない。そんな自分が情けなかった
side〜比企谷〜
「どうなってんだ…」
目的地に向かっていた最中、湖の上に見えていた建物が立ち上がった。この光景を見ていても、理解もできなかった
さらに加えて俺の行く先、立ち上がった建物がある場所の目の前がギルドだということが、俺を混乱させる
だいぶ考えた末に、わかったことはこの先がギルドで、あの巨大なロボットなるものに襲われているのもギルドという事だった。いや、ただ、俺は無意識にギルドが襲われていることを排除していた
妖精の尻尾のマスターマカロフは、聖十大魔導の一人だ
マスターほどの魔導士なら、さっきの砲撃があったあたりであの建物を崩壊させることなんてたやすいはずだ。あんなものに、好き勝手やらすような人じゃない
それにマスターにとっては、あそこは家で他のギルドメンバーは、家族みたいなものなはずなのに、マスターは何をやっているんだ
少しマスターに対して怒りを覚えるが、すぐに冷静になった。俺がマスターを責めるのは、違うだろう。俺だって、何もできていない
そうして、俺は状況の確認と整理を終わらせる。なら、俺はどうするべきなのか。少なくとも、逃げるべきではない。それなら今すぐ、行って戦うべきなのだろう。
俺は、あの場所を守りたい思っているわけではない。仕事をするためだけ、お金を稼ぐためだけのものだと思っている。しかし、恩がある。ギルドではなくて、ギルドメンバーにだ。妖精の尻尾だけが、俺をギルドメンバーとして迎えてくれた。優しくされた、だがその優しさすらも疑ってしまっていた。いつか、裏切られるんじゃないか、そんなことを考えていたらもう四年近く経ってしまっていた。馬鹿みたいな話だ。いや、多分今でもそう思っている。今だからこそ、そう思っている
ただここ四年は、少なくとも不幸ではなかった気がする
「…やる…しかないか」
比企谷八幡は、やっと心の覚悟を決めた。もう、体は動き出しているというのに。気づいた時には、もう走っていた。全力疾走で
ギルドまで後1分
side〜ミラジェーン〜
最前線で、一人佇んでいる私は敵の格好の的だった。数十もの兵が私に殺意を持って向かってきた。
それを、他のギルドメンバーやカナが駆けつけてくれて、私をかばい、兵を倒していく。みんなを助けようとしていたのに、助けられている。それが、さらに私を情けなくさせる
私の、上に影ができる。見上げると、巨大ロボットの魔法陣を書いている方とは、別の手が私を掴もうとしていた
「きゃっ」
気づいた時にはもう遅い。なすすべもなく、捕まれ持ち上げられた
体が圧迫されて、ミシミシと骨が軋む音がする。そして、徐々に体にかかる圧力が増していく。
「かはっ」
肺に入っていた空気が漏れる。息をすることすら困難な状況だ。これは、人に頼ってばかりいた、誰も助けることができない私への罰なのかもしれない
最後に、八幡の顔見たかったなぁ…
病院から…八幡から…逃げ出さなきゃよかった
後悔先に立たず。なにもかもが、もう遅かったのかもしれない