怒り。
心が死んでいた俺には分からなかった感情。
喜怒哀楽全てが抜け落ちていた俺には分からない感情だった。
だが今は分かる。
頭に血が上る様な感覚。
今まで起きなかった事。
感情など必要ないと思っていた。感情は感覚を鈍らせる。だから俺は感情そのものを
だが、今はこの怒りが心地良い。
俺にも誰かを思う事が出来ると分かったから…
だから感情に任せよう。
嗚呼。これが怒りか…
嗚呼。これが怒りだ。
「巫山戯るな。」
俺は無表情でベートを殴り飛ばした。
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僕は二人と再会した。
シルさんに呼ばれて豊穣の女主人に来ていた。
僕を助けてくれた英雄はクロウと呼ばれたいた。
盗み聞きしていた時に聞こえた。
そして彼は余り人と絡むのが苦手の様だった。
そして、出来るだけ彼の事を聞こうと聞き耳を立ててたのがいけなかった…
「雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ。」
この言葉が僕の心に止めを刺した。
確かに僕は弱い。だけど、事実だからこそ獣人の男の言葉は僕の心を正確に抉り抜く。
僕は椅子を蹴り飛ばしてこの場から逃げようとした…
だけど、その行動は鈍い打撃音と凍り付く様なナニかに阻止された。
打撃音は殴り飛ばされた獣人の男から。凍り付く様なナニかは拳を握るクロウさんから放たれていた。
「巫山戯るな。」
クロウさんは低く、そして良く通る声でそう言った。
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「ッ!!!何しやがる!!!」
威圧ならばレベル2辺りは恐怖を抱くだろう。
だが、俺はレベル5。それにベートの状態から恐怖所か嘲笑を誘う。
こいつは弱者を貶める行為をしただけではなく、それをあざ笑った。
それも駆け出しの初心者だろう少年をだ。
そして雑魚とも言った。
罪悪感すら持たずに…
「流石低能は違うな。酒に酔ったからとは言え他人を馬鹿にし、それを酒の肴にするとは。貴様も言っただろう。駆け出しだと。初心者でミノタウロスすら倒せない等と嘲り笑うとはな。笑われるのは貴様の方ではないか?」
「雑魚を雑魚と言って何が悪い!!!」
ベートの言葉に俺は更に嘲笑を深めた。
「ほう?ならば貴様は最初から強かったのか?一番最初は苦戦していたとロキから聞いたぞ?それで雑魚と彼を雑魚と罵るのか?はっ。笑わせる。自意識過剰も良い所だ。」
こいつらとは長い付き合いだ。ロキとも良く酒を飲んでいる。その時にロキが子供の成長を語る父親の様に話してくれたことがある。
「最初から強者などと言う輩は居ない。貴様もダンジョンで経験を積んで居るから強者と言う立場に居られるんだ。良いか。貴様は可能性を馬鹿にしているんだ。あの少年が貴様よりも強くなったらどうするつもりだ?」
ベートがギリッ!と歯を噛み締めた。
「そう言うことだ。だから貴様は何時まで経っても俺に勝てない。自らを強者と称し、過去よりも向上心が低い。そんな間抜けに俺も負けるつもりはない。」
「ッ!!?表出ろ!!!ぶっ飛ばしてやる!!!」
「良いだろう。」
ロキに目を向け、了承を得た。
俺とベートは豊穣の女主人を出て道で対峙する。
賭けが始まるが俺は余り有名ではない為ベートの方が賭けが多い様子だった。
俺はブラッディ・ゴスペルをセーフティをかけてロキに投げ渡す。
特殊合金を使用している為重量で落としそうになるロキ。
「見せてみろ。お前の力を。」
俺は自然体のまま立つ。
「ぶっ殺す!!!」
ベートは高速で蹴りをかましてくる。目標は俺の顔。
だが、アンチマテリアルライフルの弾丸の速さを知る俺は顔を横に動かすだけで回避する。
ベートの足が鎌の様に俺の頭を狙い横薙ぎに振られる。それを俺はしゃがむ事で回避をする。
ベートが攻撃し、それを俺がいなし、防ぎ、回避する。
それを何回も繰り返し、少しベートの息が上がってきた時。
「貴様の攻撃は何の工夫もない。ただの暴力でしかない。」
俺は反撃を仕掛けた。
右ストレートのパンチを避け、スタートダッシュの応用し、ベートの懐に入り込む。
「期待した俺が馬鹿だったか…」
ベートの心臓の辺りに掌打を打ち込んだ。
よろけるベートの右手を掴み、一本背負いで地面に叩き付ける。
「がはっ」と言う苦しそうな声が聞こえるがお構い無しに鳩尾を蹴り抜く。
「酔いは覚めたか?後で山ほど説教がある。楽しみに待っていろ。」
苦しそうに体を埋めるベートを一瞥し、ロキの方へ向かう。
その時にダンジョンで出会った少年を見つけた。
今までの行動を見られていたと思うと恥ずかしい。
だが、俺は彼に向ってグットサインを送る事にした。
あいつは強くなる。俺の勘が、そう告げていた。