夢を見ていました。
生まれる前の、自分が出会った神様の夢。
不定形の眠っているような冒涜的な神様、その悲鳴とも雑音とも取れる質問に僕はドラえもんと言ったのです。
そして僕は異世界に転生した。
「おい、起きないか」
「うぅ、う~ん」
「やれやれ、どうして君はいつも自分で起きられないんだ」
何か大事な夢を見ていた気がするのに、無理矢理起こされてしまって思い出せない。
声のする方を見れば、学園都市でも解析できなかった謎のロボットであるドラえもんがいた。
ドラえもん、いつの間にか家族になっていた自称ロボット。ロボットの癖してご飯もトイレも行く、涙も流すし怒って真っ赤になったりもする。普通に温泉にも入るし、テレビを見て不平不満や笑顔を見せる。
「お前のようなロボットがいるか」
「君は起きて早々何を言い出すんだ」
やれやれと言った感じで呆れるドラえもん。
はぁ、まぁ起きたのだし朝ごはんを食べて学校に行くとするか。
「ドラえもん、ご飯出して」
「君は僕のことをSiriみたいに扱うな……グルメテーブルかけ!」
「わーい、やったぁ!さすがドラえもん愛してるよ!じゃあ、フレンチトースト」
今は昔、子供の頃だった。
俺は生まれて間もなくしてドラえもんを作ったらしい。
当時、科学という言葉すら知らない生後半年足らずのことだったそうだ。
大人達が言うには気付いたらいた、そして俺の家族だと親戚一同に言ったらしい。
あらゆる手を使って大人達はドラえもんに対抗したが、ドラえもんは不思議なポケットから見たこともない道具を出して撃退したそうだ。
そして、君達は阿頼耶くんの成長に悪いと言ってなんやかんやで俺を奪って今まで暮らしていたらしい。
そう、ドラえもんとは俺を親から引き離して一人で育てた謎の存在なのだ。
んな訳あるかい、赤子がどうやってロボットを作るのか。
というか、原理はなんなんだ。今食べているフレンチトーストがどうやって出来ているのかまるで意味が分からんぞ。
それと、そんなことが出来るなら俺は馬鹿なはずがない。補習の常連ってのがそもそもおかしい。
「それで阿頼耶くん、学校の方は大丈夫なのかい」
「どこでもドアがあるじゃないか」
「人間、楽を覚えたらダメになる。遅刻してでも学校に行くんだ」
「えー、ドラえもん」
「僕は梃子でも動かないぞ!」
やれやれ、と思いながら学校に行く。
学校、そこでは人体の不思議を体験しながらの授業である。
「はーいそこ、それ以上喋りやがったらコロンブスの卵ですよ」
「なぁ、コロンブスの卵って何だ」
「さぁ、頭勝ち割るぞってことじゃないか」
恐ろしい先生である。
見た目は子供にしか見えないのに怖いこというなぁ。
「先生、上条君が女子テニス部のヒラヒラに夢中です」
訂正、泣きそうになってる先生は怖くなくなった。
友達と喋りながら帰宅、昨日は何故か電化製品が全滅したがドラえもんのお陰でうちは被害皆無だったぜ。
エレベータから降りると、掃除ロボットが上条の家の前にたくさんいた。
おいおい、お隣さんよ。ちゃんとごみ掃除しててくれよ。
「なんじゃこりゃ……」
「阿頼耶、お前その子に何した……」
近づいてみればゴミでなく血まみれの女の子、そしてエレベータからタイミング悪く出てきた上条と眼が合う。
ガチャっとドアが開いて、ドラえもんが出てきたと思ったら俺を見た瞬間ドアを閉めた。
「待て待て誤解だ!テメェ、ドラえもん俺を見捨てやがったな」
「お前がやってないなら、早く病院に連れて行かなくちゃな」
上条、信じてくれるのか良い奴だな。
それに比べてドラえもん、お前って奴はなんて薄情なんだ。
まぁ、その分働いて貰えば良いんだけどな。
「俺にいい考えがある」
「その子を病院に連れてもらっては困るな」
「誰だ!」
ドラえもんに治させようと、女の子に触れようとしたとき声が聞こえた。
いつの間にか赤く髪を染めた夏なのに暑そうな格好の中二病がいた。
おいおい、大人の癖して中二病とか手に負えないレベルだな。
「お前、お前がこの子にこんなことしたってのかよ!」
「えっ、いきなり何言ってるの?えっ、マジで」
「時間がないからね、多少手荒な真似をしてしまったのは反省しているよ」
やべぇ、認めやがったぞ。
ってことは、通り魔ってことですか。
上条、なんでお前はそんな奴にそんな喧嘩腰なんだよスゲーな。
そんなことより、逃げるべきだろ。
「ドラえもん、助けてくれ!開けてくれよドラえもん」
「しょうがないなぁ、阿頼耶くんは……」
「遅いよ、もう既に事情を聞いてるんだから早く出て来いよ」
「何だ君は、話は聞かせてもらったって出てきただけじゃないか」
わぁわぁ、とドラえもんと殴りあっていると上条達に動きがあった。
なんと、手から炎を出してきて襲いかかった中二病に上条が殴りかかったのだ。
「なんだよアレ」
「馬鹿だな君は、アレは発火能力者だよ」
「なんだ、発火能力者か」
「そんなことより、治療を優先しよう。復元光線!」
ドラえもんが秘密道具を取り出した、復元光線……ドラえもんのことだから復元する光線が出るとかそんなだろう。
なんて安直なネーミングセンスだ。
「貴様ら、その子に何してる」
「余所見してるんじゃねぇ!」
「ドラえもん、なんか怒ってるから早く治療してくれ」
「フフフ、もう完了してるんだよ」
わぁい、凄いやドラえもん。
お前って何でも出来るな、後は上条が良い感じに戦ってるんでその間に警備員を呼ぶしかない。
アンチスキルに全部任せる、当たり前だよな。
「焼き尽くせ、イノケンティウス!」
「何なんだよソイツは!ドラえもん何とかしろ、報酬は弾むぞ!」
「そこまで言うなら……呪いのカメラ!えいっ」
ドラえもんがカメラを取り出し中二病に向かってシャッターを切る。
すると、そっくりなフィギュアが出てきた。
なんだこれは、これだけか。
「どうやって使うんだよドラえもん、もういるだけで熱いんだけどアレ」
「これは人形に行なったことが写した人に反映される道具なんだ」
「何だって、最高じゃないか!本体を攻撃するって訳だな、よし」
試しにと腕を思い切り折ってみる。
すると、同じ箇所がいきなり曲がって折れた。
「ぐあぁぁぁぁぁ!?」
「フハハ、見ろよ。やったぞ、僕達の勝ち確定だ!」
「そんなにおかしいことかな」
「……そうだな。人が傷付いて喜ぶなんて、俺が間違ってたよ」
「阿頼耶くん、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど心は真っ直ぐに育っていたなんて!」
「あぁ、俺のこと馬鹿だと思ってたのか。馬鹿だけど、本当のこと言われるとムカつくんだよ!」
「な、何をするんだぁー!殴らなくてもいいじゃないか」
腕を押さえて苦しんでる中二病の少年と炎の巨人と戦っている上条の横で俺達は喧嘩していた。
そして、その虚しさにすぐさま気付いた上条を助ける為に動くことにした。
「おい、そこの赤いの!お前は呪われてる、この巨人を消してどっかに行け」
「まさか、これほど高度な藁人形の類感魔術を一瞬で掛けられるなんてしくじったよ」
「何言ってんだお前、さては馬鹿だろ?」
「今回は引いてやる、だが覚えてい、ウギャァァァァ!?」
とりあえず反抗的だったので、もう一本無事であるほうの腕も折ってやった。
いや、仕返しするって言う奴を無傷で逃がすとかありえないだろ。
「おい、やりすぎだろ」
「馬鹿野郎!あの子は死に掛けたんだ、犯罪者を逃がすのか!これは市民の義務だ、捕まえて警備員に突き出してやるんだ。だから、俺が何をしても正しいんだ」
「いや、そのりくつはおかしい」
ドラえもんのまさかの裏切り、上条と言い争っている間に赤いのはいなくなっていた。
いったい、あの赤い中二病の男は一体何者だったんだ……
その答えは、この倒れている少女が知っているのだろう。
部屋に移動して、少女を無理矢理起こす。
俺、上条みたいにフェミニストじゃないから。
フェミニストって何だ?
「う~ん、ここは……えっと、貴方は誰か気になるかも?」
「俺の名は木原阿頼耶、変な名前の多い木原一族で一番の無能!」
「僕、ドラえもん。好きなものはドラ焼き」
「俺は上条って、何ですかこのノリ、俺もやらないといけない感じなの?」
「えっと、私はインデックスって言うんだよ」
俺達は上条の部屋で自己紹介するのだった。