安藤物語   作:てんぞー

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Vivid But Grey - 9

 クォーツ・ドラゴン―――コ・レラが吠えてバックステップを取った事を戦闘開始の合図として理解した。それに対して一番早く反応したのはゼノであり、素早くエコーを守れるように後ろへと下がり、ソードを構えていた。それに対して自分が取った行動はその真逆であり、前へと踏みながら刃を後ろへと向ける様にルインシャルムを大地から抜き、前へと向かってギルティブレイク、ソードが保有する最速突進PAでの接近を選ぶ。コ・レラが突撃しようとしたその動きに合わせてギルティブレイクの二連撃の一撃目がその顔面、結晶で覆われた角に叩き付けられる。だが返ってくる感触は固く、鈍い。ダメージの通りが悪い。コ・レラの動きが止まらない。此方のギルティブレイクを無視してそのまま光を翼から放出したコ・レラが瞬間的に加速してくる。

 

「よい―――しょっと!」

 

 ギルティブレイクのモーションを二撃目に入る前にキャンセルし、イグナイトパリングを発動させる。風を纏いながらソードを素早く縦に、フォトンで形成されている剣の腹を見せる様に素早く戻し、正面からの衝突を剣の腹で受けた―――瞬間、フォトンが一瞬だけ、肉体を脅威から完全に守りきり、それを刃へと変換した。放たれた衝撃をそのまま利用し、コ・レラの頭の上、翼の間を抜ける様にイグナイトパリングの乱舞がその背中を削り、背後へと抜けて行く。振り返りながら武器をパルチザンへと切り替える。

 

 パルチザンを片手でぐるぐると回転させながら、背後へと抜けたコ・レラを見る。その視線は既にエコーを捉えている。一番最初に実力のない者から落とそうとしている―――正しい判断だ。だがそれはゼノがいなければ、の場合だ。あの男はエコーを守る事に慣れきっている。だからエコーの守り、そしてヤバイ時のガードは全部彼に丸投げし、

 

 前半の動作を全て投げ出してトリックレイヴで空で一段跳躍しながらパルチザンを回転、コ・レラの背中に突き立てる。逃れようとコ・レラが体を振るいながら光の槍を翼から放ってくる。背中を蹴りながら武器をオールクラスのツインマシンガンへと変更、サイドロールで瞬間的に光の槍を紙一重で回避しつつ、武器をソードへと戻して着地する。

 

 瞬間、コ・レラの角が此方へと向けられていた。

 

「安藤バスタァ……!」

 

「そんなPAねぇからぁ!」

 

 笑いながら武器を変更、パルチザンへと切り替えながら超高速の突進突きであるアサルトバスターでステップよりも早く瞬間的に加速、コ・レラの口から放たれたビームを回避しながらその首の横へと張り付き、寸分の迷いもなく横への強力な薙ぎ払いであるスライドエンドを放つ。大斬撃がパルチザンギアを吸い上げながら放たれる。コ・レラの首周りの結晶がやや砕けるが、致命傷には程遠い。尻尾の薙ぎ払いが来るのが見え、僅かに跳躍してからトリックレイヴ、即座に捻り落としへと移行し、コ・レラの頭にパルチザンを突き刺す様に着地する。しかし、硬い。パルチザンが全く突き刺さらない。

 

「整髪料はなに使ってる? ちょっと髪型整えすぎて硬くなってるよ」

 

『え、ウソ?』

 

「嘘だよ! というかお前龍族だから整髪料使わないだろ!!」

 

 パルチザンからソードへ、サクリファイスバイトをコ・レラの背中に突き刺す。コ・レラから体力を、そしてフォトンを奪って体内のフォトンを活性化させる。瞬間的に自身の肉体を強化しながら、素早く突進し、一気に空へと飛翔したコ・レラを回避する。そのまま床を転がる。

 

「エコー! ナ・メギとか打てない?」

 

「なにそれ」

 

「……」

 

「いや、ほんとすまん」

 

 ハンターが二人もいればバンバンナ・メギドを叩き込むチャンスなのだが、どうやらエコーはその存在すら知らなかったらしい。まぁ、エコーらしいと言えばエコーらしいのだが、流石にちょっと勉強不足ではないか、と思う。その怠慢は何時か不幸を招くのではないか、そう思う。

 

 そんな事を考えている間にフィールドへと向かってコ・レラが加速してくる。その射線を見切って横へと回避すれば、素早くフィールドに足を引っ掛けて、ドリフトする様に方向を捻じ曲げ、Uターンする様な形で切っ先を此方へと向けて、突進してきた。素早くイグナイトパリングで弾き、一瞬だけフォトンの力によって無敵になりながら反撃の斬撃を放つ。だがそれを素早く潜り抜けたコ・レラが再び空へと浮かび上がり、大きく旋回を始める。フィールドの周りを流星の様な残像を残す様な速度で飛行し、バレルロールを披露しながらその背中から光の槍を何重に生み出し、その姿の周りに浮かべる。

 

「マジかぁー……イグパだけじゃ守り切れそうにねぇわこれ」

 

「エコー、お前悪いけどちょっと下がってろ」

 

「う、うん……ごめん……」

 

 流石に足手まといを悟ったのか、エコーが戦線から離脱する様に戦場の端っこへと移動する。流石にそこまで下がったエコーを攻撃する事はコ・レラにもないだろう。少なくとも龍族は戦士だ。そういう卑怯な事を行わないのは確信できる。

 

 コ・レラの周囲に三十を超える光の槍が完成され、旋回を終え、此方へと向かって突進してくる、それを眺めながら、ゼノが前に出る。

 

「うっし、()()の方は俺で削いでみるわ」

 

「んじゃ合わせるぜぃ」

 

「うっし―――マッシブハンター待機ぃ……!」

 

 ハンタークラスが保有する最高峰の防御スキル、それにゼノが火を入れた。そしてそれに合わせる様に最高速に乗ったコ・レラの突進、そして光の槍が一気に正面、逃げ場なく襲い掛かってくる。それに対してゼノの対応は前に出る事だった。光の槍へと突撃する様にイグナイトパリングを発動させ、その斬撃と自分の体で光の槍を受け止める。一瞬で共有情報ログにオートメイトの発動が確認された。

 

 そして、

 

 コ・レラの突撃に正面から、イグナイトパリングの斬撃でぶつかった。

 

 アイアンウィルが発動した、オートメイトが発動した、アイアンウィルが再び発動し、オートメイトが即座に体力を補填し、即座にアイアンウィルが発動する。アイアンウィルとオートメイト、ネバーギブアップの処理が連続してループする様に発生し、それでもゼノはその肉体一つでコ・レラの突撃を喰らい、それに対して生き抜いた。その顔には笑みが浮かんでおり、

 

「師、曰く―――アイアンウィルは気合いと根性がありゃあ発動率100%……!」

 

キチガイの理論だな(リミットブレイク)ぁ!」

 

 ファイター一のキチガイスキルと呼ばれるリミットブレイクを発動させる。瞬間的に体力を大量に奪われる感覚を受けながらも、それも全身がありえない程に活性化するのを感じる。正面、ゼノによって勢いを殺がれたコ・レラがまだ慣性によって前へと突き進んでくるのが見える。それに合わせ、たっぷりとチャージされたライジングエッジによる昇竜撃をコ・レラの顔面に叩き込んだ。

 

 その角の結晶が砕け散るのと同時に上半身が浮かび上がる。フォトンを吸い込むように呼吸しながらソードを片手で握り、そのまま横へと振り回す様に連続で回転を―――ノヴァストライクを発動させる。大きく仰け反ったコ・レラの体がそのまま浮かび上がり、垂直に、天へと視線を向ける様に浮かび上がった。

 

 ライドスラッシャーで一気に接近し、腹に攻撃を叩き込んでからサクリファイスバイトで力を吸い取りながら空中で固定し、ライジングエッジで殴り上げてからツイスターフォールで回転撃をその頭へと叩き込み、そのまま大地へと叩き戻す。着地した所でギルティブレイクを顔面へと打ち込み、素早くスタンコンサイドで顔面を殴り、動きを停止させる。そこから動きを止める事なくライジングエッジ、最後に一回空中へと打ち上げてから、

 

「ソードだと空コン辛いッ! って事でコーンーボー、Finish!」

 

 巨大なフォトン刃を纏ったルインシャルムを横へと薙ぎ払う様に振るい、それで位置を調整してから必殺の振り下ろしを正面、コ・レラへと叩き込む。それを受けて両翼の結晶が砕け散り、両脇の結晶もフォトンの圧力に耐え切れない様に砕け散り、巨体を吹き飛ばしながら遺跡の大地へと姿を叩きつけた。その姿を追いかける様にルインシャルムを大きく回転させ、そして足元の大地に突き刺した。

 

「ゼノー、生きてるー?」

 

「死んでる。すっげぇ死んでる」

 

「ならば良し!」

 

「良しじゃなぁ―――い!! 見てる方がハラハラするわよ! 特にゼノ! 特にゼノ! 後ゼノ!」

 

「おま、ちょ、エコー!」

 

 痴話喧嘩を始めた二人を無視し、ルインシャルムを待機形態に変形させて背中にセットする。それに合わせてコ・レラの方に大丈夫かと確認するが、軽く目を回してるようで、時間さえあれば平気そうだった。結構強く叩き込んだ手前、割と殺していないか不安だったが、他の龍族同様、フォトンではどうやら死なない便利な体らしい。なんともまぁ、うらやましい構造をしているものだと思う。それはそれとして、ゼノが居なかったら最後のラッシュは危なかった気がする―――ここは少々反省点かもしれない。

 

 もっと、もっと強くならなくてはならない。

 

『貴女の力を見せてもらった』

 

「ん、満足いただけたみたいだな」

 

 戦いが終わったのを見計らったロ・カミツの声が響く。その姿は見えない。

 

『コのレラも、大義であった。ゆるゆると休むが良い』

 

 ロ・カミツの言葉にコ・レラは体を起き上がらせると、静かに声へと向かって頭を下げ、そして此方へと視線を向けてきた。

 

『アークス。其方達にも感謝を。久々に、心震える戦いだった』

 

 楽しそうな声でコ・レラはそう言うと、まだ完全には体力が戻ってないのだろうに、少しよろよろとした様子で光のバーナーを吹かせ、そのまま空へと飛翔して去って行った。すぐさま流星となってその姿が消えた所で、ロ・カミツの声が戻ってくる。

 

『我々は忘れない。我々は応える。故に盟約には盟約を。恩義には恩義を。貴女には託したいものがある』

 

 ゼノとエコーの喧騒が止まり、フィールドの中央へと視線を向ける。光が収束し、そこには先ほどまでは存在していなかった白い結晶が出現した。美しい、芸術品とも捉えられそうなその結晶はまるで此方を待ち望むかのように光を発していた。

 

『何時かしら、それはそこにあった。眠る様にただ静かに―――だが最近になり、それは目覚めた。何が原因かは私には解らない。ただ、何かを求めているようだった。そして私は貴女を見て、理解した。それはずっと貴女を待っていたのだ、と』

 

 マターボードを確認する必要もない。右腕を真っ直ぐ前へ、結晶へと向かって伸ばす。それに反応する様に結晶は光り輝き、一瞬の閃光の内にその姿を完全に変化させた。それはナベリウス凍土で拾ったロッド部分に似ている金属を纏っていた。それはリリーパで拾った外装部分に似た白い輝きを持っていた。それはコアを中心に、守る様に白い金属に覆われていた。

 

 これがおそらく最後のパーツ―――刀匠ジグに熱意を叩き込ませる最後のパーツ。

 

『それではアキナ、またいつかどこかで、また会おう。その時を、我々は楽しみに待っている―――』

 

 ロ・カミツはその言葉を最後に、その気配を完全に消失させた。数秒間、最後のパーツを手の中に握って眺め、観察を終えた所でシップの倉庫へとさっさと転送してしまう。なにやら【仮面】もこのパーツを探しているようだし、早めに安全な場所へと退避させておくのが賢いのだろう。ともあれ、これで三つのパーツはすべて揃った。後はこれもジグへと届ければ……きっと、彼なら完成させてくれるだろう。

 

 ついでに再びファーレンシリーズも作成を始めてほしい。アレ、クッソ便利なのだ。手抜きをするには。

 

 いや、それ以外にもこの世界におけるハイレベルのシリーズをセットで揃えられるという利点もあるのだが。

 

 ともあれ、

 

「ふぅー……疲れた。普通のクォーツ・ドラゴンとは勝手が違うから若干焦ったな……結晶シャワーが来なかっただけマシなんだろうけどな」

 

「アレはなぁ、不用意に近づくとカウンターで喰らう時があるから若干怖いんだよなぁ、クォーツ・ドラゴン」

 

 今回はそれを避ける為に連続で攻撃を仕掛ける時はまず頭を殴っていた。基本的にスタンを狙って行けば安全に殴り続けられるし、ゲームと違ってスタン耐性なんてものは存在しないのだから、しっかりと脳味噌を揺さぶってやれば大体の生物はスタンしてくれる―――脳味噌が存在していればの場合だが。

 

 ちなみに角のある生物は割とここら辺狙いやすい。特に角を折るとそれが響きやすいので更に気絶させやすかったりする。ここら辺、仕様よりも()()()的な部分が強い。一流のアークスになる為には実戦だけではない、知識もしっかりと磨かなきゃいけないことが発覚し、実は最近こっそり勉強も始めている。

 

「―――ま、今回はここまでにして切り上げるかぁ! 打ち上げやろうぜ、打ち上げ!」

 

「お、いいなぁ。やっぱ強敵と戦って生還した後は派手に飲みたいよなぁ」

 

「そう言って組んだ時はほぼ毎回打ち上げやってない君ら……?」

 

 エコーの言葉に笑いつつ、これで漸くパーツが全て揃ったのだ―――漸く状況が動きだす。そんな予感があった。




 基本的に衣装に関する言及がなければ前の病者から格好は継続なので未だにヘッドフォンヒロマフアイエフブランドな。割とあの服装好きです。それはそれとして、ぷそにーを一旦ベータで止めて、再び遊び出すきっかけとなったのが乙ドラガンナー空中パンチラ散歩動画だったので乙ドラはなんか懐かしいなぁ、と。

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