ダブルセイバーへと武器を切り替える。走りながらPAを発動させ、まっすぐ前へと突っ込んで行きながら体を横へロールする様に、回転しながら突っ込んで行く。そうやってダーカーの背後へと抜けた所で連鎖させる様にPAを発動させ、ダブルセイバーを掲げ、回転させる。それに反応する様に小さな竜巻が発生、すぐ近くにいたダーカーを吸引、そして一纏めにする。そうやって集まったダーカーを追撃する為に武器を飛翔剣へ切り替え、上へと入り上げてから腕を広げ、滑空しながら全て纏めてフォトンブレードで揉みくちゃに切り裂く。
モーションの終わりに入る頃に後ろへと滑る様にエスケープしながらフォトンブレードを射出、それを連続で突き刺しながら落下するダーカーを狙い撃ちに、確実にトドメをさしながら着地する。そこで飛翔剣を戻し、武器を再びダブルセイバーへと戻す。
「空コンたのしー」
「効率クソ悪いっぴぃ」
「楽しいからいいんだよ!」
エーテル通信で接続していないウェストには解らないだろう。ジェットブーツで二段ジャンプをしたり、PAを実際に自分の体で行って素早く動き回るあの感覚―――触覚は薄く、そして弱い。痛みは存在しないし、食べ物にほとんど味はない状態だ。ゲームなのだから当たり前だ。だけど、それでも体を動かして感じる風の感触はリアルで、自分の体を超人の様に動かせるのは何よりも楽しいのだ。それがウェストにはおそらく、一生解らないだろう。
……まぁ、全裸になれなかったり、この美女ボディを隅々まで確かめることが出来なかったり、やや残念な部分はある。
だがそれを勘定に入れてもこのフルダイブ状況は凄まじく、そして凄い―――文句なんかある訳がない。
迫力のないテクニック職なんてゴミだ、ゴミ。強いけど。
「まぁ、でも、空コン楽しいけどエネミーを拘束し続けるから長く遊んでいると文句言われるんだよなぁ、効率落ちるし。ボスとかも浮き上がらせることが出来ればいいんだけどなぁ……」
「基本的にボスってのはでかくてスパアマ持ちだから無理っぴぃ」
それだけが残念な所だ。そう思いながら雑魚のダーカーを殲滅し、最初のマップの終わりへと到着する。市街地のマルチエリアへの入口は地下通路風の入口によって繋がっている。ウェストがそこに踏み込もうとする黒い入口に近づいたところで姿が消える―――此方とは違ってフルダイブではないので、アバターが次のエリアへとロードされる為に消える。だが自分は生身で動かしている為、同じたぶんアバターの様な存在なのだろうが、もうちょい歩かなくてはならない。おそらくはエリア2へと到着したであろうウェストを追いかける為にも、自分もライトの壊れた地下通路へと走って入り込む。
破壊された車を避けて、僅かな光が外から差し込む地下通路、そこへと降りて行く。
―――瞬間、一瞬だけ世界がモノクロに、砂嵐によって視界が乱れた。歩き、進もうとした足が少しだけ止まり、自分の意志で足を止めた。そのまま軽く頬を掻き、
「……ラグったのか?」
『え、大丈夫っぴぃ?』
「たぶん」
まぁ、エーテル通信は未知の技術の塊でもあるのだ、そりゃあ場合によってはラグが発生する事もあるだろう。まぁ、それで動かなくなったら有線に切り替えるから通常のネットゲームに戻ってしまうのだが。しかし緊急中にラグで動きがキツくなるのは困る。そんな事を考えながら再び前へと向かって歩みを進める。マップの構築上、ここは本来映し出されない、何もない暗闇の空間で、向こう側には出口と光が見える―――その先にエリア2が存在する。
だがそこへと向かって進もうとするとまるでラグったかのように世界が進行と停止を繰り返し、砂嵐と共に一瞬でモノクロに世界が切り替わる。妙な不気味さを感じながら、臍の下あたりに嫌な感触を感じる。本当に大丈夫なのか? そう思い始めた所で少しだけ不安になり、走り始める。
―――一瞬、世界が全てモノクロ、そして完全な砂嵐に染まる。
だがそれが終わって地下通路を抜ければ、そこには先ほどと同じ、ボロボロになった市街地の姿が見える。遠くでは戦闘機が飛行し、チェインガンを発射しながらダーカーの迎撃を行っているのが見える。爆音と悲鳴、そして戦闘の音が辺りから聞こえる―――どうやらちゃんと、エリア2へと到着できたらしい。
「うっし、お待たせなんとかラグを抜けたっぽいわ」
言葉を口にする。ウェストの姿を探そうとして、解りやすいラッピースーツ姿が見つからない事に首を傾げる。先へと進んでしまったのだろうか。そう思ってっ右手でログウィンドウを呼び出し、確認する。
そこには見事にパーティーが解散された表示されていた。
「切断されているじゃないですかやだー」
どうやらラグが酷かった影響か、ゲームの方から切断されてしまったらしい。タイトル画面に戻り、ゲームからはじかれるまでの間、少しだけ自由がラグの影響か、あるらしい。偶にラグが酷いと切断された状態でゲーム内が一切進行せず、そのままテクスチャーをぶち抜いたり通信せずに動き回ったりすることがあるが、今、どうやらそういう状態へと突入しているらしい。全く酷いラグだ、と嘆くしかなかった。
早くタイトルに戻らないと緊急クエストが終わってしまう。そう思ってもここら辺はどうにもならない―――エーテル通信という未だに良く解ら相技術を使っているし、なんか変になっているのかもしれない。
先ほどから
「しゃーね、ちょい歩くか」
立ち尽くしていても暇だ。ちょいと歩いて早く戻ってこれる様に祈りながら時間を潰そう。そう思って出た所から前へと向かって歩き始める。そうやって視界に入るのは完全に破壊された市街地の様子だった。ビルは砕かれ、道路はところどころで炎上し、車は建築物に突っ込んだ状態、で人口の空は青かった。市街地緊急任務、それはダーカーに攻め込まれたアークスシップのダーカーを殲滅する、という任務だ。当然ながらアークスは単体で完結しない。
ほかにも多くの一般人が市街地には住んでいるし、船団を動かす為の技術者等も多い。アークスはただ単純に戦うのではなく、そういう市民を守るヒーロー的存在でもある、らしい。ここら辺は
つまり説明書もマニュアルも読まない自分の様なタイプの人間には一生解らない。
「しっかし暇だなー。歩くだけでも割と楽しいんだけどさ」
武器を振るって動くことが出来ないというのは暇なのではあるが、こんな破壊された市街地、現実では見る事が出来ないだろう。ゲームとして遊ぶとただのグラフィックの塊だが、こうやって実際にフルダイブすると全てがリアルなのだ。見た目者が、感じるものが、そう、今、
「―――っ!? えっ? マテ、感じる……?」
近くの炎へと視線を向け、そして其方へと向かって手を伸ばす―――掌に感じるのは熱だった。熱い、そして痛い。素早く手を引きもどしながらもそれを感じることが出来た。そしてそれは今まで、PSO2にフルダイブで遊んでいても感じる事の出来な方、触覚の一部だった。現実と変わりのない感覚の取得に、心はいきなり興奮で湧きあがった。これは凄い、そうとしか言葉が見つからなかった。
「……! ……! やべぇよ、マジでエーテル通信やべぇ……!」
切断されたりラグったりしたのはこれが原因だったのだろうか? だとしたら許せるとしか言う他あるまい。ゲームの世界が更にリアルに感じられるようになったのだ―――そりゃあなんか痛いのはちょっと怖いのだが、今まで無痛モードで遊んできた分、割とアクションの怖い部分とかには慣れてきた自信が自分にはあった。今更、ちょっと痛覚や感覚が増えた所で、止まる事はないだろうと思う。
―――どうせ、これはゲームなのだから。
前へと向かって歩き出す。今のこの状態は良く解らない―――だが自由に動けるなら楽しまなくてはゲームらしくはない。悪いなウェスト、この通信一人用なんだ。心の中でそんなくだらない事を呟きながら炎と瓦礫に染まる市街地を歩き、進んで行く。
歩くたびに靴の裏に道路を踏む感触、砕けて砂利となった道路の感触が感じられる。ポップスコアという露出の多い服装を着ているせいか、肌に前よりも熱を感じる。肌を撫でる風の感触は前よりも強く、そして肌をチリチリと焦がす炎の暑さも僅かにだが感じる。フォトンによって守られているアークスはたとえどんな環境であろうとも、ほとんど自由に動き回ることが出来る。その為、直接炎の中に突っ込みでもしない限り、相当な暑さを感じる事はない。それでも、こうやってリアルの様に物事を感じ取れるのは、
まさに奇跡だった。
ドンドンゲームがリアルに近づいて行く事に軽い感動を覚えつつ、これが世界規模になればきっともっと楽しいんだろう、そんな事を考えていると正面、大きな交差点、そこを横切る様に走る姿が見える。装備もなく、私服姿のNPCが逃げる様に必死な姿で走っている。その後ろから追いかけて来るのはダガン、最弱のダーカーの姿だ。その姿を見て、迷う事無く武器をクラフトによって最大限まで強化された、全クラス適応のジェットブーツへと切り替え、チャージもせずにそのまま蹴りを繰り出す様にテクニックを放った。
ラ・フォイエ、通称ラフォと呼ばれる狙った場所に爆発を発生させる火属性のテクニックが発生する。それによって逃げていた市民とダガンを分ける様に爆炎が舞い上がり、ダガンを吹き飛ばす。その隙に武器を素早くジェットブーツからナックルへと変える。地上で使える高速接近、突撃型のPAが存在する為、素早くステップで踏み込みながらPAを発動させ、フォトンで体を強化しながら一気に前へと突き進む。そのまま市民に襲い掛かろうとしていたダガンを一体殴り倒し、武器をダブルセイバーへと切り替え、敵を吸引する効果のPAで頭上へと一気に集め、そこからヒャッカリョウランを抜き、ヘブンリーカイト―――上空へと切り上げた。
追撃せずにバックステップ、市民を背後に回す様にしながら飛翔剣を構え、正面へと視線を向けた。出現しているのはダガンばかり―――敵ではない。雑魚や小型のエネミーに対する殲滅力の高いダブルセイバーへと再び切り替え、
吸引、纏め、そして火力の高い武器に切り替えて殲滅。
十秒もあればそれで十五ほど存在していたダガンの殲滅も終わる。
「あ、ありがとうございます!」
振り返る事無く片手をひらひらと振る。ダーカーが消えた影響か、キュイン、という転送音と共に市民が転送されて消える。と、そこまで動いた所で気づく。
「あれ……ゲーム動いてる?」
切断されているのならゲームが動かない筈だ。咄嗟の事でいつも通り目の前のダーカーを殲滅してしまったが、ちょっとおかしくないだろうか? パーティー解除、そしてどうやらネットワークからも切断されている様にも思える。
そこまで考えた所で、めんどくさくなってくる。
「まぁ、いっか。それよりも楽しいからスタート画面に戻されるまで自由にやろ」
ヒャッカリョウランを背に戻しつつ、周りへと視線を向ける。そこには人の気配も、ダーカーの気配もない。ただ遠くでは銃声と人の声が聞こえる―――まぁ、人のいる方向へと向かって進めば適当にイベントか、それともラグで弾かれるだろう、なんて楽観し、歩き出す。
―――再び砂嵐とモノクロに世界が染まり、視界の先に白衣を着た女の姿が見えた。
女の姿は道路を進み、そして曲がり、そこで砂嵐とモノクロの世界は消えた。女が消えた方向へと視線を向け、胸を持ち上げる様に腕を組んで支え、そして首を傾げる―――どうしようかなぁ、とか考えたけど腕に触れている胸の感触が柔らかい。これはちょっと感動モノかもしれないなぁ、と一瞬で考えようとしたことを忘却し、
「っしゃあ! なんかイベントトリガーかなんかだろ。とりあえず追いかけるか―――そして終わったらデバッグだデバッグ! そう、新たに触覚という感覚が増えたから不備がないようにデバッグせざるを得ないのだ……! ふへへへ」
我ながら馬鹿な事をやっているなぁ、という自覚はあったが、今が楽しいのだからしょうがない。
今は課題も宿題も全部忘れて、ただただこの新しい世界に没頭したかった。
新世代武器以外は悪いがドロらないでくれないかな!! ドゥドゥ達への怨嗟は募るばかり……。それにしても安藤とシオンの関係っていったい何だったんだろうな。あとなんであんなに時間をぴょんぴょんしたんじゃ~。
てんぞーの人も割とお手軽火力のFoTeを使ってるけどFiとかでコンボ決める方が好きなのよね。ただやっぱさらされるのは怖いからどうあがいてもノクス鍛えてFoTeに(