「はぁーい! という訳で点呼しまぁ―――っす! いーちぃ!」
「二ー」
「三……ってこれやる必要あるの?」
「ない」
「じゃあさっきまでのテンションはなんなのよ―――!」
そうやって叫ぶ、エコーの姿がある。ここは遺跡エリア―――ナベリウスの中でも一番奥に存在し、それなりに実力のあるアークスではないと侵入する事が許されないエリアだ。間違いなくエコーはそれだけの実力がないが、ゼノの事を考えればセットで許可が出たのだろうとは思う。ともあれ、ここには自分、ゼノ、そしてエコーの三人が揃っている。目的はエコーの特訓……というよりは教習だ。フォースとして相も変わらずお粗末すぎるエコーをどうにかしようという試みだ。実際、一人のアークスとして見ても支援しか行えないフォースとか産廃を超える生物だ。しかもそれでシフタとデバンドしかやらないとかちょっと控えめに言っても終わってる。
「と、いう訳でアークスとして完全に終わってるエコーをどうにかしよう、という事で講師として呼ばれたアキナさんである。ゼっさんに頼まれなきゃ教えるなんてクッソめんどくさい事絶対にやらないんだから感謝した方がいいよ。ホントマジで」
その言葉にエコーが少し、拗ねる様に言葉を吐く。
「でも私、別に強くなりたくなんて……」
すかさず、ゼノが言葉を挟み込む。
「いいや、エコー。お前は強くならなきゃいけない。俺は決して万能って訳じゃないし、何時までもお前を守っていられるって訳でもない。それにアークスになったからにはダーカーを倒す
ゼノがいったん言葉を区切り、
「強くなくてもいい、俺と一緒にいて俺の支援をしてりゃあそれでダーカーはどうにかなる……ってお前、流石にそれは”アークスになって美味しい蜜を吸おう”って考えている連中と全く変わらないんだぜ? 今までは自主的な行動に任せようと考えて来たけど、流石にアークスシップにまで襲撃があったしな。これ以上は待ってられねぇ。ってなわけでそろそろ真面目にアークスとしての義務を果たせ」
じゃなければ、とゼノが言葉を置く。
「―――アークスを止めろ」
「やればいいんでしょやれば! そこまで言われたら私だって引けないわよ!」
拳を握って掲げるエコーから視線をゼノへと向ける。その視線を受けてゼノは軽く肩を揺らしている。ゼノもどうやら長くは続かない、一過性の物だと思っているみたいだ。エコーのアークスとしてのモチベーションも基本的にはゼノと一緒という所がベースの為、あまり身に付かないだろうなぁ、とは思っている。とはいえ、流石に一部のテクニックしか知らないとか言うのは許せないレベルの話だ。
機会があるので、みっちり詰め込ませていただこう。
「つーわけで、フォースも! テクターも! ハンターも! レンジャーも! ファイターも! ガンナーもできちゃう超万能アークスのアキナお兄さんが頭が憐れなエコーちゃんにラッピーでも解るレベルのフォース初級講座を行ってやろう!」
「今のは喧嘩を売ってるってのは良く解った」
エコーに笑顔を返しながらセイメイキカミを抜き、タリスを上へ投擲、即座にイル・メギドをチャージしてそれを放った。それがこの先、草むらの中に潜んでいる存在を自動的にサーチしながら握りつぶす姿から視線を外し、エコーへと視線を向ける。
「はい、という事で今のテクニックが、フォースが殲滅チートとか言われている原因。真面目にこれを最初に開発した人は天才とか言われている超愛され系テクニック、イル・メギドちゃんだ!」
「え、ずっとこのテンションなの……?」
エコーの横の座標空間をロックし、ギリギリ彼女に当たらない様にラ・フォイエを放つ。爆発の音と衝撃がエコーを僅かに揺らす。
「講義を続けるけどいいね……?」
「は、はい」
うし、と言葉を置く。若干引いてるゼノの事は無視する。
「―――イル・メギドを見りゃあ解るが、テクニックはそれぞれ大きく特徴が違う。便利なのがあればクッソ使いづらいのもある。だからテクニックは全部記憶する必要はない。効率の良いもの、威力の高いもの、そして使いやすいものを覚えておくのが基本だ。イル・メギド―――通称イルメギだけど、これはその最たる一つだ。これを対多の殲滅戦で使わないフォースは出来損ない以前に寄生扱いとか、そういうレベルで重要なテクニックな」
「だってよエコー」
「うっさいわね!」
反省の態度がなってないのでイル・フォイエを横に叩き込んでエコーを黙らせる。
「という訳で初心者向けフォース講座ァ! クソザコフォースへと送る使いやすい攻撃テクニックゥ! オススメナンバーワンは間違いなくイルメギィ! 適当にぶっぱするだけで相手を巻き込める! 勝手にサーチする! コスパ優秀! クソみたいにぶっ壊れた性能で火力を求めない限りはもうお前でいいんじゃねぇの? ってレベルでクソ優秀! 出現したその瞬間から8割のテクニックを過去の存在にして恨まれまくった負の遺産だぁ!」
なお当然の如く運営に弱体化修正を喰らったが、オラクルにそんなものはない。
「次にお馴染みラ・フォイエ! 空間座標を指定して法撃できるだけじゃなくて対象ロックで打つ事も出来る! 相手が明らかに時空の壁をぶち破るような頭のおかしい速度じゃなければほぼ確実に当たる上に威力も非常に安定している! 優秀! とりあえずラフォ連打すればダメージは稼げるから頭が悪くても大丈夫! ただし属性を確認せずに連打する奴は一回床を舐めてろ!」
ゾンディールからのラ・フォイエは割と使いやすい、解りやすいコンボだ。特にタリスの場合はやりやすい。
「そして最後はイル・グランツだッ! オラ、はよ死ねぇ!」
素早く武器をロッドへと切り替え、その先端を真っ直ぐ、此方へと向かってくるダーカーへと向け、そして素早くチャージされたテクニックを放った。イル・グランツ、それは複数にばらける光の弾丸が相手を追尾しながら連弾するというテクニックである。威力はそこそこ、だが、
「こいつは凄い。まず光属性だ。ダーカー、僕ダーカー。光属性大っ嫌い、滅べ。という事でまず光属性である時点でイル・グランツの勝利は約束されてしまった。だがそれ以上に混乱の付与率が体感だけど高い。というか見れば解るけど連続でぶつかって行くから弾幕を張るのにも使える上に追尾性能が高く、相手を混乱へと導くことが出来ればそれだけで大きく戦力を削れる事になる。凍結とかもそうだけど一部の状態異常はほんと優秀だ。意識して使うよりもこのテクの追加効果で出たらラッキーだ、って考えて打つといい。マジでいい。期待は裏切られるものだからな……ドゥドゥ……」
「相変わらずドゥドゥを憎んでるのな」
むしろ恨んでいないアークスはいないんじゃないだろうか。まぁ、状態異常に関しては防衛戦とかだと積極的に狙いたかったり、そう言う状況もない事はない。とはいえ、やはり期待するものではないというのが個人的な意見だ。
「クソザコ初心者フォースのエコーちゃんに教えてやろう。この三つのテクニックを使うのは割と普通を超えて当たり前なんだ。得意不得意とかの領域があるなら、訓練してそれを乗り越えようとするもんなんだよ……普通はな……だから……うん、ぶっちゃけ覚えようとするどころか名前すら知らんかったって状況はその……非常にリアクションに困るといいますか、なんといいますか……」
「なんでそこで急にマジ顔のガチトーンなのよォ!!」
エコーが想像を超えてクソザコだったという事実がある、それだけなのだ。割と真面目に現役アークスからしてエコーの状態は酷すぎるの言葉に尽きるのだ。シフタとデバンドをバラまいて、後は相手の属性を確認せずにゾンデのみをぶっ放す。そりゃあもうフォース失格と言われてもしょうがないレベルの話だ。ぶっちゃけた話、コ・レラの攻撃を完全に受けきったゼノと全くと言っていいほど釣り合っていない。エコーはそれに気付いているのだろうか。
いや、多分気づいてはいないのだろう。間違いなく気づいていないだろう。
これは、エコーとゼノの恋は絶望的なんじゃ―――。
そんなわけでフォース講座初級編を軽く実践してみせる。と言ってもやってみせるのはイル・メギドによる蹂躙ばかりなのだが。だがそれでもエコーは大きく口を開けて、イル・メギドが魅せる暴力に驚いていた。イル・メギド一撃で蹂躙できるレベル帯であれば、本当にそれだけでエネミーを排除できるのだから、一時期最強のテクニックと呼ばれたのは決して伊達ではないのだ。ゼノが壁をする必要なんてなく、テクニックによる補助も必要なく、最高の火力による暴力、それで全てを解決しながら遺跡エリアの奥へ、
ゼッシュレイダのいるエリアへと突入する。ドロップ品目的で通いなれているだけに、実家の様な安心感を見慣れた広場に感じつつ、奥にいるゼッシュレイダへとロッドの先端を突きつけながらエコーへのレクチャーを開始する。まだまだゼッシュレイダの索敵範囲外なので、此方へと襲い掛かってくるような姿は見せない。
「んじゃ、今日はフォースによる対ボス戦闘方法を続けてレクチャーしよう!」
「テンション高いな」
テンション高くしないと誰かに教えるとか恥ずかしくて出来ないのだ。ともあれ、
「―――とりあえず、テク職ってのは属性を武器にして戦うもんだから、まず事前に戦う、殴りつける前に相手の弱点属性を把握するのが大事だ。たとえばゼッシュレイダ、亀っぽい姿から予想出来る様に弱点はダーカーとしての光属性、そして亀っぽさの雷属性だ。つまりグランツ系統とゾンデ系統の相性がバッチリなわけだ。この時点でゼッシュに使うテクニックは2属性に絞り込める」
そして、
「今度は攻撃方法を選別する。ゼッシュレイダを見て相手はどういうタイプのダーカーだ? まず大型であるのは確実だけど―――それ以上に良く動き回る上に広範囲を薙ぎ払う手段を持っている。コアは普段は隠されている胸の中に一つ、そして大体露出している額にもう一つだ。ビジフォンのライブラリを閲覧すればゼッシュレイダの攻撃パターンを大体閲覧することが出来るから、狙って討伐する時は事前に調査しておくことをお勧めする」
「ごめん、内容が前半と違って割かし真面目で戸惑いを隠せない」
「殴り飛ばすぞ」
半ギレながら答えるとエコーがごめんごめん、と謝ってくる。溜息を吐きながら話を続ける。
「ゼッシュレイダのコアは高い位置にあるから基本的にゾンデ系統とは相性が悪い。ゾンデそのままだったら額のコアを狙う事も出来るけど……ぶっちゃけ、そこまで威力は高くない。こうなってくると追尾性能があるイル・メギド、もしくは上空にタリスを投げてそこからラ・グランツで狙撃するって手段もある。ちなみに後者は割と難易度高いからあまりお勧めしない」
チラリ、と振り返る。ゼッシュレイダが此方へと視線を向けていた。
軽く手を振ってみたら振り返しながら吠えられた。
「ちなみに今回は飛ばしたけど個人的にはイル・バータも割と楽しいテクニックだと思う。同じ相手に対して連続で使用する事によって威力が段階的に上昇して行くテクニック……楽しくない……? こう……これはイルバではない……真・イルバだ……! みたいな感じで」
「いや、そうじゃなくてこっちにゼッシュレイダ向かってる―――!!」
解ってる解ってる、と軽く手をひらひら振りながら振り返る。甲羅の中に閉じこもったゼッシュレイダがブースターを吹かせながらこちらへと向かって真っ直ぐ突っ込んできた。それを確認しながら真っ直ぐ、ゼッシュレイダの存在を正面に捉え、ロッドを炎属性の物に切り替えながら蹴り上げた。左手に炎を、右手に闇を凝縮させ、
それを胸元で融合させた。このゼッシュレイダの個体はそこまでレベルが高くはない。つまり、
「―――ちなみにフォース上級になればこんな事も出来る……!」
そのまま、正面から迫ってくるゼッシュレイダにフォメルギオンを叩き込む。炎と融合した闇の波動が渦巻きながら一直線に正面へと向かって突き進み、そのままゼッシュレイダの体を貫通、そのままそれを縦に振るえば、フォメルギオンの発動が終了するのと同時に縦に両断されたゼッシュレイダの姿が自分たちの両脇を抜けて背後へと、霧散して消えて行く。
「……すごっ」
「と、まぁ、こんな風に複合属性テクも使えるんだよなぁ。という訳で本日の講義終了! 宿題は次回までに一つでもいいから新しいテクニックの習得って事で」
落ちてきたロッドをキャッチしながらポーズを決めれば、やりすぎだとゼノからは評価を貰った。
解せない、一体何が悪かったのだろうか―――。
フォメルギオンがなんかバニシングバスターみたいで個人的に気に入っている感。ザンディオンは光の翼を。もっと複合テク増えないかなぁ、とは思うけど難しいんだろうなぁ、と。
結局、ストミにおけるエコーの存在の必要性がいまだに解らない謎。