『良き滾る闘争よ―――!』
「作戦はただ一つ!」
「ぶち殺せ……!」
言葉と共に一斉に全てが動き出した。連携を意識しながら細かい動きを追いかける余裕がないのは事実だ。その認識通り、【巨躯】の笑い声が響く中で、その巨大な複腕が一斉に叩き付けられるように振り下ろされてきた。逃げ場がないように叩き付けて来る一撃は足場の上で戦っている限りは逃げ場がないのは事実だった。だがその程度で諦めるほどの雑魚をここに集めたつもりはない。
近接職は全員、一斉に踏み込んだ。
テクニック職や後衛職はさっそくフィールドから飛び降りた。
自身も前へと一気に飛び込み、スサノショウハを抜いた。張り付くようにツキミサザンカで【巨躯】の表面をなぞる様に刃を振るう。飛び上がりながら放った一撃はその巨体に刃を沈め、そして確かにその体を切り裂く事に成功した。だがそこで行動を止めず、更に素早く二連撃ツキミサザンカを連結させ、一気に宙に浮かび上がり、そのまま体を蹴って振り下ろされる腕の反対側へと跳躍した。空中で逆様になりながら振り下ろされた腕の先を見る。
振り下ろされた二本の腕は足場を叩き付け、そのまま足場を真っ二つに砕いていた。だがその周囲にはいくつもの破壊された足場の残骸が浮かんでおり、それを足場に後衛職は一時退避していた。それだけではなく、後方からアークス本部からの支援なのか、新たに足場が高速で射出され、此方へと向かっていた。足場の破壊に関しては悩む必要はなさそうだ、そう思いながら逆様にサクラエンドを放ち、ゲッカザクロで自分を打ち払おうとした腕を急降下斬撃を食らわせながら回避する。
刃を納刀しつつ、言葉を吐く。
「思ったよりも通る―――」
「それだけ質量が増えすぎたという事だろう」
新しく飛来してきた足場の上に着地しながら、その言葉に頷く。今のダークファルス【巨躯】は巨大だ。ナベリウスの地表を喰らって、更に小惑星の類を吸収して己の体積にしている。だがそれが急造である分、ダーカー因子やダークフォトンによる浸食が完全ではないのかもしれない。その為、創世器でもない武器でも削れる―――或いはワルフラーンがすぐそばにあるのが原因かもしれない。ともあれ、今はボーナスタイムだ。
「邪魔な腕からぶっ壊すきゅい」
「リー!」
「リーリーうるせぇんだよぶっ殺すぞ!」
口うるさくしているが、それでも飛来してくるタリスがゾンディールとザンバースを多重に展開する。即座に足場内であればどこでもザンバースが発動できるように展開しつつ、【巨躯】の攻撃に合わせてショックの準備をしていた。それを横目、体をやや前傾にして一気に踏み込んだ。真っ直ぐ、正面からストレートを放ってくる【巨躯】の腕をアサギリレンダンのキャンセルステップで紙一重で回避しつつ、素早くサクラエンドを伸びきった腕を横から斬撃を通す。スサノショウハの刃がざっくりと腕の中に沈み込むのを見て、腕が薙ぎ払おうとする動きを見て、ツキミザサンカの跳躍で上へと逃げながら、下へと向き直す。そのまま素早く納刀し、フォトンを刃に込める。ハトウリンドウによる斬撃を波のように放つ。真下へと放たれた斬撃が振るわれる二本の腕を貫通するが切断には至らない。
そう思った瞬間、ターゲットマーカーが二本の腕に出現した。それと同時にオーバーエンド、シンフォニックドライブ、そしてアサルトバスターが狙い穿ったように腕へと突き刺さり、着地の前に此方も素早く居合の要領でハトウリンドウを放った。フォトンアーツを一瞬で大量に受けた二本の腕が耐え切れず、そのまま内側から爆散する様に砕けた。
「―――倒せなくはないな」
「おう」
『いいぞいいぞ―――』
アークスの声に反応する様に【巨躯】の嬉しそうな声が響く。変態め、とののしる事はおそらく誰にもできない。ここにいるアークス達の変態性も割と高性能な上に、本気で戦っても倒しきれなさそうな、そんな強大な敵が目の前にいるのだから。アークスなんて生き物、それも最上位の領域に突っ込んだのは全員キチガイの様なものだ。レベル75なんて毎日戦って、戦って、
戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って、自分よりも強い奴を探して戦って、それで漸く到達できるゴールの一つだ。馬鹿気たような回数を戦い続け、馬鹿気たような数を倒して、そして気の遠くなるような苦労を重ねて、そしてアホみたいな金額を装備に溶かす。
そうやって最上位の、最上級のアークスは生まれて来る。だからここにいる連中は全員
これが、楽しくない訳がない。顔を見なくても解る。誰もがこの状況で笑っているであろう事を。
「くるぞ―――」
【巨躯】が残された右腕、解放されている二本を一気に拳として振るってくる。素早くその着弾点を各々がデータリンクも行わず、気配と経験から算出し、最低限の回避だけを行い、ギリギリで回避した所を素早く武器とフォトンアーツによる全力の攻撃に入る。攻撃が振り下ろされた直後には既にウィークバレットによる弱体化付与が完了しており、そこに狙いすます様に、グレンテッセンとスライドエンドで斬撃を交差させる。腕を一本、その根元から切り裂き、切り離された腕が再利用出来ない様に追撃が切り離された腕へと刻まれる。エルダーリベリオン、エンドアトラクト、オーバーエンド、高威力のフォトンアーツが一瞬で呼吸を合わせて叩き込まれ、フォトンが断続的に注ぎ込まれ、
浄化される。また一本、【巨躯】の腕が塵となって砕け散る。
「あと一本……!」
「一気に絞めるきゅーい。しかしこいつ、光と雷以外の属性が極端に極まってて通らないきゅい」
腕を引こうとする【巨躯】の動きに合わせてゾンディールが起爆された。腕を引こうとして動きに【巨躯】の腕が引っかかり、ショックフィールドに感電する。まるで本体の意思とは関係なく、腕のみが力尽きたように感電しながら足場の上へと倒れ、足場に罅を刻みながら動きを停止する。即座に生み出されたウィークバレットによる弱点に、一秒もかからずアークス達の高威力フォトンアーツが群がる。作業染みた速度で一瞬で腕を解体し、ショックが切れる前に攻撃に使用していた腕を全て破壊する事に成功した。そこで足場が耐え切れずに粉々に砕け、一瞬で全員が動き、姿を散らばせる。
「早く黒光りマッチョの【巨躯】ちゃん組み敷きたい……ハァハァ」
「あの腰をカクカクさせてるアークマだけサイコパスの領域に片足を踏み込んでない?」
「アレを片足で済ませるのか……」
フルで表現したら規制されかねないからな、と言葉を誰かが放つとあぁ、という声が響いてきた。とんでもない逸材が野良に存在していたぜ、なんて事を話している間に、足場の残骸から離れた【巨躯】が笑い声を零しながら、ゆっくりとその姿を一回り小さくした―――その代わりに【巨躯】の姿が変化した。背中には爬虫類の様な翼が二本の腕と共に出現した。更に砕かれたはずの腕を四本再生し、更に一対の腕を出現させた。その上、腹を守る様に組んでいた腕を解除し、それを大きく広げた。
その姿を眺めながらリリーパとラッピーによって追加されるシフタとデバンドを受ける。
「二、四、六、八……全部で十本か。さっきの二倍以上で来るかぁー」
「安心しろ―――ダーカーは箱じゃない。つまり下等種族だ。勝てる」
「本当にここにいる連中はブレんな。まぁ、その分安心できるからいいのだ」
五対、総十本の腕を大きく広げた【巨躯】の姿は材料に吸収した素材を利用しているせいか、その姿は縮小していた。だがそれはつまり、浸食の進んでいる部位を晒すという行為でもあり、【巨躯】が強化されているという状況に対する証拠であった。事実として宇宙に笑い声を響かせる【巨躯】が頭上でダークフォトンと氷を融合させた隕石を生み出していた。直撃―――しなくとも、その周囲にいればその冷気によってバラバラにされるだろうなぁ、というのは見てわかった。じゃあ話は簡単だ。
回避しながら切り込め。
『応えよ深淵、万象破砕のその力を―――』
赤白い隕石が投擲された。その動作で全員が着地点を即座に察知し、察知した瞬間にはクラスに関係なく、最大速度で一気に宇宙空間を跳躍して行く。破壊された足場を蹴って一気に前へ、【巨躯】の残骸や破壊された足場の残骸は多い。それを足場に蹴って、体を更に加速させながら隕石を回避し、一気に体を飛ばしてゆく。
「ヒャッホォ―――!!」
「ワッフー!」
「アオォォォ―――!」
「別に吠えなきゃいけないルールってのはないんだぞ……?」
誰かがそう言った瞬間、一様に無言になって跳躍を繰り返す。お前ら本当にノリがいいな、なんて事を思いながら隕石の三発目を飛び越えて回避する。それを見た【巨躯】が三対の腕で隕石を三つ一瞬で精製し、逃げ場を潰す様に三角形にそれを展開し、放ってきた。その姿を目視した瞬間、一瞬で前へと飛び出す姿があった。
「六芒を名乗るのであれば、このぐらいやって見せないとその名が泣くわ!」
飛びだしたヒューイがフォトンの熱量を上昇させた破拳ワルフラーンを振るった。宇宙空間に空間を揺るがす様な震動を発生させ、熱量をそれと共に叩き込んだ。それに反応する様に隕石がゆがみ、消え去る様に蒸発して砕けた。そうやって完全に障害が抜けきったところで、新たな足場が後方から凄まじい速度で登場し、そのまま【巨躯】の腹に突進、突撃して動きを停止する。
その足場に即座に飛び移り、近接戦を続行する。
『我が眷属よ、ここへ―――全力で潰すのみ……!』
「全力じゃなくていいからね!」
「首を絞めたい」
「アッアッアッァツ」
「こいつらの発言どうにかならないの……?」
なってたらこうはならない。そんな事を考えながら素早く前進する。直後、頭上から雨の様に大量のファルス・アームが降り注いでくる。それに合わせる様に【巨躯】が両側から足場の上の逃げ場をなくすように四本の腕を展開し、両側から絞めようと腕を振るう。更にそれに合わせ、最上段の腕からはレーザーが発射され、後衛を狙う様に一直線に放たれていた。先ほどまでの戦いが穏やかに思えるレベルで一気に攻撃が苛烈化した。クソ、と思いながらも楽しいと思えてしまう自分が嫌になりそうだ。だが反応は早い。
ショックだけは通じる。
解析された耐性のおかげで頭上でゾンディールが起爆させられ、ファルス・アームの動きが制限された。合わせる様に振るわれた挟み込みによる攻撃を跳躍して回避し、ファルス・アームを斬り殺しながら素早く切り裂き、自分はそのまま上へと向かって―――邪魔なレーザーを放つ腕へと向かって跳躍する。
「―――ケートス・プロイ!」
叫ぶのと同時にテルクゥがフォトンブラストを発動させ、光と共に形態を変更させる。宇宙空間を泳ぐ魚となってフォトンの波動を降り注ぎながら急速に空間のフォトン密度と濃度を上昇させ、フォトンの超回復状態へと突入させる。スサノショウハをケートス・プロイの背に乗って抜いて、両手握りで構える。青いフォトンの刃が刀身を覆う様に形成され、そのリーチが数段延長される。溢れるフォトンを刀身と体に滾らせながら、ケートス・プロイをレーザーを放つ腕へと、迎撃行動をかいくぐらせながら接近し、
「カザンナデシコ―――零式」
刃を振り下ろした。腕の掌に設置されていたコアを貫通し、そのままその腕を真っ二つに首まで切り裂き、刃を横へと抜いて真っ二つの状態から掌を半分に切り取った。そのまま動きを止めずに攻撃の反動で体を後ろへと押し出し、素早く居合でハトウリンドウによる斬撃派を繰り出す。追撃によって放たれたそれが残った掌のもう方半分を斬り飛ばし、レーザー腕を片方破壊する事に成功する―――残された手首から先が連動する様に砕け散った。
空中で宙返りを取りながら素早くケートス・プロイが足場となって着地させてくれる。そのまま下の足場まで姿を運んで、そこでフォトンブラストが解除される。だがケートス・プロイが解除されるのと同時に今度は別の誰かがフォトンブラスト、ケートス・プロイを終了直後に発動させ、ケートス・プロイによるフォトン活性効果を更に延長させる。
―――ここが勝負所、誰もがそう認識しているという事だろう。
一発でも喰らえば即死する状況下、ミスは許されない。故に最初から最後までパーフェクトゲームを維持し続けなければいけない。それを理解し、行動に移し、そしてそれを理解するからこそ【巨躯】も笑い声と共にさらに攻撃を強化する。無くなったレーザー腕の分の攻撃密度を補強する様に小規模の隕石を生成し、それをファルス・アームと共に降り注がせて来る。
『愚鈍、浅薄、脆弱、無為、弁えよ』
さらに余った腕による連続での衝撃波による攻撃が追加される。足場の上はほとんど地獄として表現するには相応しすぎる光景が繰り広げられていた。しかし、足場から逃れようとすれば狙い撃ちにされ、即座に殺されるというのも事実だった。
故にこの狭い戦場で、僅かに存在する空間を縫いぬけならがら【巨躯】の攻撃手段を破壊する必要があった。
「破拳ワルフラーン、今こそ応えろ……!」
突き出されてくる腕をヒューイがスウェイで横へと回避し、その両腕を燃え上がらせながらバックハンドスマッシュを放った。それによって腕を衝撃が貫通し、大穴を開けてから即座に粉砕し、宇宙の彼方へと手首から先を吹き飛ばした。それによって僅かな隙間が発生した。今まで攻撃の手を緩めていたラッピーとリリーパ、そしてレンジャーが素早くその隙間に割り込んでくる。ザンバース、メギバース、そして起爆ゾンディールが結界の様に発生し、その隙間を狙いすましたかのように隕石が落ちて来る。
「おとといきやがれ―――!」
それにグレンテッセンをキャンセルした高速移動で割り込みながら、スサノショウハの鞘で殴りつけた。ジャストガードを発動させ、隕石が砕け散る前にカタナによるカウンターを発動させ、隕石を真っ二つに切り裂き、それを空いた空間の横へと分けてぶつける。冷気が体に侵入してくる感覚を即座にかけられたアンティで振り払いつつも、今の感触で理解する。
「
一体何が影響しているのかは解らないが、ナベリウスの遺跡で喰らった時程の恐怖が今の攻撃にはなかった。或いは体積が増えたための結果かと思っていたが、そうじゃない。
だから前に飛び出す。
迎撃する様な衝撃波をカタナによるジャストガードを発動させて乗り切る―――死んでいない。つまり、無敵という概念が通るレベルにまでこのダークファルスが弱体化しているという証拠だった。なぜ? と問う余裕は今の自分には存在していなかった。ただ重要なのは、これで
「―――延長分いくよー! ケートス・プロイ!」
「誰も攻撃型フォトンブラスト持ってこない件」
「フォトン補充の方がほら、便利だし……」
リミットブレイクを発動させる。長時間の戦闘とブレイバー以外のクラスでフォトンアーツを連続で使い続けている影響か、普段よりもごっそりと体力を奪われたような感覚がある。だが火事場に入った今、凄まじいレベルでのフォトンと能力の強化が入った事だけは理解できた。それを支援する様にシフタとデバンドが延長され、ザンバースが全体に広がる。専業テクターのいる安心感はやはりすごいなぁ、と思いつつ振り下ろされたハンマーの様な腕をカタナのジャストガードで受ける。そのままカウンターからサクラエンドへと連携し、グレンテッセンで透過しながらその反対側へ―――コアの前へと到達する。
「気合いと根性と殺戮の零式……!」
カザンナデシコ零式を素早くコアに叩き込んだ。並のダーカーならこれだけで跡形すら残さず消し飛ぶだけの火力が存在している一撃だったが、斬撃を叩き込まれた【巨躯】のコアは攻撃を受けた瞬間から完全再生を果たしていた。だがその為にダークフォトン、そして【巨躯】のその巨大な本体の体を利用したのは見えた。つまりコアへの攻撃がその体積を削る、最大の方法だった。
「ミー」
気の抜けるような声と共に、コアにウィークバレットが突き刺さった。腕が砕け散るような音が響き、重量感のある金属の体がシンフォニックドライブをコアへと叩き込んでいた。戦場は依然混沌としているが、だがそれに負ける程柔なアークスではない。
状況は本体や腕の妨害を突破しつつ、コアへと到達しつつあった。
殺す―――そう思った直後、コアに光が募った。
『―――耐えてみせよ、破滅の一撃』
「コアレェェザァァァ―――!!」
叫び声を放つのと同時に、全力で跳躍した。他の皆がどうしたのかはわからない。だがギリギリで退避するのと同時に、コアから極大のレーザーが足場全体を薙ぎ払う様に放たれた。一瞬で足場を飲み込んで極太のレーザーは足場を氷結させ、それをそんまま砕けさせた。コアへとあっけなく近づけさせたのはトラップだった、と気づきながら仲間のバイタルを素早くチェックする―――さすがキチガイエリート共、一人として欠けてはいない。数人、ダメージを受け始めているが、致命傷には届いていないし、テクターとフォースが回復と治療を行っている為、即座に完全回復するだろう。
新たな足場が此方へと向かって射出されるのを確認しながら、ゲッカザクロによる急降下斬撃をその体表を切り裂きながら行う。僅かにだが沈んだ刃はそのまま【巨躯】の体に罅を生み出す。コアに刃を沈ませ、蹴りながら刃を抜いて納刀し、コアが再生されて行くが僅かに残る【巨躯】の罅を見る。
「奴も限界が近い―――この戦いを終わらせるぞッ!」
ヒューイの言葉に闘志が宿る。新たに到達した足場が【巨躯】の胴体に衝突し、その上に着地しながら素早くサクラエンドをコアへと叩き込む。その動きにハートレスインパクトで一気に接近したヒューイが混じり、拳が振るわれた。流石ダーカーを殺す為の兵器、創世器、その一撃は一撃でコアに穴をぶち抜いた。それを【巨躯】は再生し始める。
だがここまでくれば、完全にアークス達のターンになる。
未だにフォトンブラストを発動させていない仲間が一斉にフォトンブラストを発動させた。ダークフォトンによって、ダーカー因子によって完全に支配されていた領域にフォトンの風が吹き始める。急激なフォトン濃度の上昇による影響なのか、【巨躯】の動きが鈍る。その隙を逃すほど甘いアークスは存在せず、
一瞬で腕が三本破壊され、コアへのルートが開通される。
「今こそトナカイ神の力を見せる時……!」
「お前喋れたの!?」
トナカイスーツが決着直前にリリーパとラッピーに喧嘩を売り始めるのを耳にしながら、戦闘がラストスパートへと向けて一気に加速される。ヒューイの拳がコアを何度も何度も貫通し、それを修復する為に【巨躯】の超再生が開始される。だがそれを阻むように散開したアークス達が腕を破壊し、再生されようとするそれを根元に攻撃して邪魔する。
フォトンブラストによって高まったフォトンを肉体に溢れさせながら、全力の攻撃を【巨躯】へと、そのコアへと叩き込み、
ハトウリンドウが貫通する様に、コアを抜けた。
―――その傷跡は再生しなかった。
そのダメージを受けるのと共に、【巨躯】の動きが完全に停止した。着地し、後ろへとバックステップを取りながら警戒を続ける中、徐々に【巨躯】の姿が揺れるのが見え始める。最初は惑星規模の大きさがあった【巨躯】の姿も、もはやそこまでの大きさは存在せず、激戦の中で削りに削られていた。その威容を眺めていると、宇宙にその声が響いた。
『―――真に良き滾る闘争であった―――』
その言葉と共に【巨躯】の体が崩れ始めた。
ダーカー因子によって染まっていたその肉体はぼろぼろと崩れ始め、崩れた所からフォトンによって浄化されながら消え去って行く。ゆっくりと、後ろへお倒れて行くに【巨躯】の姿が消失して行く。その姿を誰もが無言のまま眺め続ける。徐々に、徐々に崩れて行く【巨躯】の姿の中から、人より一回り大きくしたような、そんな怪物の姿が出現したが、そのまま時空の歪みへと消え去り、それ以外の全ては最初から存在しなかったように、完全に崩れて消え去った。
【巨躯】の姿が消失してから数分間、誰も動かず、誰もしゃべる事無く、その場で立ち尽くしていた。
やがて、通信が入ってきた。
『―――ダーカー反応の消滅を確認。我々の勝利だ。帰ってきたら宴だ、ヒーロー共』
ヒルダの声が終わるのと同時に、大量の通信が発生し、ホロウィンドウが出現する。爆発する様な歓声と共に感謝の言葉と笑い声が響く。それを耳にして、それで漸く、
「あぁ……勝ったのか、俺ら」
「ニャウが宇宙の星になった時はどうなるかと思ったわ」
「すまない、【巨躯】ちゃんを捕まえられなかったんだが……俺のこのリビドーをどうすればいいんだ」
「トナカイ最高ォォォ―――!!」
「所詮は下等種族、勝てる道理なんてなかった」
「マスコット争いにトナカイが参戦か……雑魚め……りー……」
「いやぁ、強かったですねー! 三回ぐらい床舐めちゃいました」
好き勝手発言している全体を眺めてヒューイが腕を組みながら頷く。
「うむ―――色々言いたい事はあるがこの混沌を見ているとどうでもよくなるな!」
「ほんそれ」
戦いの後で物凄いグダグダし始めてしまったが、
―――これにてダークファルス【
という訳でニャウは星になった。
アークスシップは砕け! フィールドは滅び! ダークファルスは撃退された!
だけどキチガイとサイコパスは滅びなかった……!