安藤物語   作:てんぞー

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Velvet Breeze - 2

 ―――踏み込みのステップ。

 

 ステップから抜刀。サイドドロール、振り抜き、グレンテッセン。カンランキキョウ、ステップ。アサギリレンダン、キャンセル、シュンカシュンラン、ステップ、グレンテッセン、キャンセル、グレンテッセン、キャンセル、テッセン、キャンセル、テッセン、キャンセル、キャンセル、キャンセル、キャンセル、

 

「―――誰も! この! 安藤に! 追いつけないのだぁ! フゥーハハハァー!」

 

「すごっ……残像残しながら反復横跳びしてる」

 

「絵面がアホみたいなのにそれで敵が消えて行く辺りほんと生物かどうか疑うな」

 

 グレンテッセンはゲーム時代だとPAスロットに全て入れて押しっぱなしにする事でクソ煩い反復横跳びを開始する。それはグレンテッセンというPAが二段階の動きで構成されるPAだからだ。一段階目が移動と通り抜けによる威力の低い突進であり、そこから繋がる二段目の攻撃で第斬撃を放つ―――この二段目がメインのダメージソースであり、一段目と二段目の間はPAのキャンセルチャンスである。つまりPA入力ボタンを押しっぱなしにする事でグレンテッセンの高速移動部分のみでPAを終了、新たにグレンテッセンを繰り出す。終わる時は振り返っているので元の方向へと向かって移動しながら振り返る。

 

 ボタンを押しっぱなしにする事でクソ煩い反復横跳びが成立するのだ。

 

「ヴェェェェェェェェェ」

 

「クソ煩いんだけど」

 

「だけど見てみいや。通り過ぎて行く間に敵が真っ二つに切れて行くで」

 

 ちなみにだが最近、この世界のPAは完全にゲーム通りやらなくてもいいという事や、ある程度カスタマイズできるという事を理解して、軽くだが持っているPAはカスタマイズさせて貰っている。とは言うものの、自分が知っている元の形から大きく変えるような事はしない。使い、慣れ親しんだ型から動きを大きく変えると逆にフレームや無敵時間の管理で狂うからだ。グレンテッセンの突進をちょっと疾走居合にしている、その程度の調整だ。

 

 だって体でぶつかるの痛いし。

 

「うっし、試運転は悪くないな」

 

 足を止めてスサノショウハを鞘の中へと戻しつつ、それと入れ替える様にファーレンフレインを抜く。待機状態ではまるでアタッシュケースの様な形状をしているファーレンフレインを左手でハンドル部分を握り、そのまま、振り返ってエコーとカブラカンを見た。

 

「うっし、大分満足した。砂浜の上でも滑る事なく戦えるし、問題ないや。ここから先はエコーが無双していいよ」

 

「いや、嬢ちゃんにはどうあがいても無理やからね姉ちゃんが戦い続けてもええんやで」

 

「うん……じゃないわよ! 私だって戦えるわよ!」

 

 がー! とエコーがカブラカンに言い返しながら背中からソードを抜き、それを掲げる。正直、見ていて心配でしかない。カブラカンと視線を合わせ、軽く肩を揺らしてから前へと進むエコーを追いかける。その先でウォパルに出現する原生生物―――海王種とエンカウントし、正面から戦い始める。

 

「あーあーあーあー……」

 

「あ、やっぱ戦い方があかんのか?」

 

「いや、なんというか、うーん」

 

 エコーが海王種の中心へと進むとウォークライで一気にヘイトを集め、そこから敵を集める様にしながらソードで薙ぎ払い、戦い始める。ぶっちゃけた話、戦い方そのものは悪くはないのだ。ハンターとしての基本的な立ち回りが出来ている。だがその根本的な動きはエコーのものではないのだ。どこか、見た事のある動きをなぞる様に繰り出しているのだ。そのせいでエコーの動きがどこかチグハグに見える。

 

「アレ、今行方不明になってる奴の戦い方の真似でなぁ」

 

「あぁ、そらあかんわ」

 

 ゼノ―――【巨躯】復活以来、その姿は目撃していない。世間的にはMIA扱いされており、それはほぼ、死亡と同じ扱いだ。だからエコーも、心の中ではどこかでゼノは死んでいるのだと思っているのだろう。だけど同時に、エコーはその事実で闇に飲まれなかった。自分がどれだけゼノを頼りにしていたのか、というのを自覚し……それでハンターに転向した、というところだろう。自分がゼノの分も頑張らなくてはならない、という意識があるのだろう。

 

 まぁ、ぶっちゃけゼノが死んだとは到底思っていないのだが自分は。

 

 マターボード使えばクーナみたいに助けられるだろうし、この安藤があれだけ身近な人物を助けない理由がないよな? というのが主な理由である。時空の流れ的な場合によっちゃあ、素で未来の安藤によって助けられたゼノがどっかで生きている可能性だってある。

 

 ……そう思ったほうが、色々と優しい。

 

「ま、自分には合わないって気づいたらやり方を正すだろ」

 

「それ、ワイに付き合えって暗に言ってへんか?」

 

 テヘ、と可愛らしく舌を出して頭を叩いてみるが、カブラカンにはウケが悪かった。そうか、だってお前種族違うもんな……。そんな事を考えている内に、前線の方から悲鳴が聞こえる。いつの間にかエコーがオルグブランと呼ばれる怪獣の様な姿をした、中型の原生生物に追いかけられていた。

 

 しかも二匹同時に。

 

 お前、今目を離していたの数分もなかったぞ、という軽い驚愕と呆れをエコーに抱いた。

 

「あの、ちょっ、やっぱり一人は辛いかなぁー! 助けて欲しいかなぁ、って! あ、やっぱり助けてくれないかな!?」

 

「どうしたんすかエコー先輩。先輩のかっこいい所を見せてくださいよ」

 

「煽ってないで助けて―――!」

 

「見てて飽きへん嬢ちゃんやなぁー」

 

 ほんとそれな。そう答えながらファーレンフレインを展開する。広げられる事で弓へと変形したファーレンに弦は存在しない―――目に見える形では。紫のフォトンウィングの間に目に見えない力場が存在し、それが弦となっている。爪弾きでチェイスアローを素早く三連射しつつ格納空間からファーレンフレイス用の矢を取り出し、それを番えた。迷う事無くフォトンを込めながら放たれたラストネメシスが穿たれ、エコーを追いかけていたオルグブランの顔面に命中し、そのまま頭を吹き飛ばしてフォトンによってその肉体を残す事無く分解し、消滅させた。

 

「チェイスは余計だったな」

 

 オルグブランが足を止めながら此方を見て、再び確かめる様に此方を見てから迷う事無く海の方へと向かってダイブし、逃げようとする。だが逃亡しようとするオルグブランからはダーカー因子を感じる。既に軽くだがダーカーによって浸食を受けている個体らしい―――逃がす訳にはいかない。番える矢にフォトンを流し込み、それを分裂させるように五本の矢へと増やす。それを同時に追尾させるように放つ、マスターシュートのPAを打つ。バラバラの軌道で放たれるフォトンの矢が海へと跳びこんだオルグブランを追尾し、その首や頭へと狙いすます様に突き刺さり、そのままフォトンによる浄化を行う。今度のオルグブランは体が消えず、気絶した状態のまま、海へとぷかー、っと浮かび上がった。深刻なレベルでの浸食を受けていなかったようだ。

 

「……良し、ここらはこんなもんだろ」

 

 レーダーを確かめれば原生生物の反応はあっても、ダーカーの反応はもうこの付近にはなかった。まぁ、区画としては一番ダーカーの浸食が弱いエリアだし、簡単に掃除できるのは当然と言えば当然かもしれない。ファーレンフレインを箱型へと戻しながらうーし、と背負う。エコー、大丈夫かー? と軽く手を振るが、エコーの反応は薄く、ソードを大地へと突き刺してそれに寄りかかっていた。

 

「はぁ……あたしって才能ないのかなぁ」

 

「どこをどう見たら才能があるって思うんだよ。アークス舐めすぎじゃね」

 

 言葉の暴力にエコーががくり、と膝を付く。当然ながらエコーに才能なんてものはない。そんなもの見りゃあ解る。本当に才能があるってのは六芒均衡のヒューイとか、後はクーナとか、そういう連中を示す言葉だ。はっきり言って自分にも才能はない。自分がここまで恐ろしく強いのは才能というよりは……どこか、完成された絵へ自分が近づいている、そういう強制力をどこかに感じるからだ。お世辞にも天才だとは言えない。自分は強いだけだ。それだけ。

 

「だけど才能がある、ないでアークスをやるのは別の話だろ? 才能あるなしの話でアークスやってんなら六芒以外はアークスやってないだろ」

 

「……うん、そうだね。そうだよ! 私だってゼノがいなくたってちゃんとやれるって事を証明するんだから! ……ってちょっと待って! 私今後輩に思いっきり諭されてる! ねぇ、これちょっとおかしくない!?」

 

 エコーがポンコツだからおかしくないんだよなぁ……素質は悪くはないのだ、素質は。ただやる気とセンスの問題だ。そしてセンスとは生まれつきの物の様に思えるが、それは違う。バトルセンスとは戦いの中で磨かれ、知覚して行くものだ。自分の場合はそれが何故か完全に磨き上げられた理想の状態に到達している。エコーのそれは一切磨かれておらず放置されている。そういう問題なのだ。だから後はエコーも方向性を与えてちゃんとやる気を出してくれれば……という話だ。

 

「ま、ここらへんからダーカーの気配は消えたし、俺はもうちょい強いのがいる所潜ってくるわ」

 

「あぁ、うん。お疲れさん。私はもうちょっとこいつに付き合うわ」

 

「やめてくれーな……やめてくれーな……」

 

「なんで声がガチなのよー!」

 

 吠えるエコーと憂鬱そうなカブラカンの姿を見て苦笑し、ゼノがいなくても大丈夫そうだな、と思いながら背を向け、テレポーターを投げて一旦マイシップへと帰還し、そこからウォオパルの危険度の高いエリアへと転送設定を変更する。その時もマターボードを取り出し、マターボードが反応するエリアに設定するのを忘れない。それが終わった所で再びテレポーターに飛び込み、ウォパルに転送する。

 

 転送した先のウォパルの空は黒く染まっていた―――夜になっている。

 

 なんだったか……ウォパルはなんかの実験の影響で昼夜の変化が物凄い速度で行われる、と公式の設定で書いてあった気がする。このウォパルもそうなのか? そんな実験をしそうなのは自分が思い浮かぶ限りでは虚数機関の連中しか思いつかないが。

 

「こっちはあっちこっちダーカーの反応が酷いな」

 

 エコーがいたら確実に邪魔になってたな。そう思いながらファーレンフレインを展開しながら歩き出す。正面、奥のエリアへと続く大岩が道を邪魔している。ラストネメシスで一気に吹き飛ばそうかと思ったその瞬間、

 

 ―――背後から気配を感じた。

 

 素早く横へとステップを取って回避すれば、閃光が放たれ、正面の大岩を粉砕していた。振り返りながら叫ぶ。

 

「おい! 何しやがるんだ危ないだろ! フォトンの力でFFしないからって怖いもんは怖いんだぞ!!」

 

「……」

 

 振り返りながら見たのは一人のアークスの姿だった。それは自分も知っているアークスで、気が弱く、アークスには向いていないと自分でも良く解っているアークス……テオドールだった。どこか、虚ろな表情を浮かべていたテオドールは此方の声で正気に戻ると、あっ、と小さな声を零した。

 

「アキナ……さん……? えっと、すいません、本当にごめんなさい……」

 

「あ、いや、俺も良くテクニックの中で光り輝く俺! とかやって遊んでるからいいんだけどさ……なんつーか、大丈夫かお前? まるで幽霊みたいな顔をしてるぞ」

 

 テオドールにそう告げると、青年は自分の顔に触れ、自嘲するような呟きを漏らした。実の所、テオドールとはそこまで交流のあるアークスという訳ではない。だけどこうやって顔面蒼白の所を見てしまうと、色々と不安になってしまう。テオドールはそう言われて顔を触れると息を吐く。

 

「そう、ですね。これじゃあウルクに心配させちゃいますね……あぁ、でも彼女はもういないんだった……そうだ、そうだ! ダーカーに襲われて彼女はもういないんだ! ダーカー……!」

 

 沈んでいた姿から一転、ダーカーへの憎しみがフォトンを通して伝わってくる。そんなテオドールの姿に近づき、その背中を思いっきり叩く。バシン、と夜空に音を響かせながらテオドールの帽子がズレ、テオドールが驚く様に声を漏らした。

 

「ヘイ、テオドールボーイ! 折角同じエリア出会ったんだからちょい一緒にここら回ろうぜぇ。俺も新型の武器を実地で試したいからなぁ、付き合せられる生贄が欲しかったんだよぉ!」

 

「今完全に生贄って……」

 

「この安藤と共にクエストに挑める事を誉とするんだな! 行くぞテオドールマン! 出撃だ!」

 

「あ、ちょ、待ってください! 引っ張らないでくださいよー」

 

 このまま、テオドールを放置しておくんは危険だと直感的なナニカが呟いていた。とはいえ、自分に出来る事はほとんど何もなさそうだった―――故に気晴らしにテオドールを引きずりながら、ダーカーの殲滅作業に誘った。

 

 だが、そこで見れたのはダーカーに凄まじい憎悪を向けるテオドールの姿ばかりだった。




 故人を思って前に進もうとするエコーと、全く進めていないテオドール。EP2最初のストクエはそういう意味のタイトルだったりする。

 それはそれとして、テッセン弄った事があるのなら誰だってテッセン反復横跳びで遊んだと思うの。ロックせずに適当に押しているだけで突撃し続けるアレ、地味に楽しい。
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