戦闘の始まりは此方の動きが先だった。
ハトウリンドウからのアサギリレンダンで斬撃を放ちながら高速移動で一気に【巨躯】の戦闘形態へと向かって接近した。当然の様に正面から斬撃を浴びせられる【巨躯】は攻撃を受けても揺らぎすらしない。斬撃による高速移動の中で、緩い動きでターゲットを取る様な事をせずに、移動に入った姿を狙ったテレフォンパンチが【巨躯】から飛んでくる。それはどこかで見たことのある、そして経験のした事のある死だった。拳が振りぬかれる瞬間には既に【巨躯】の背面へと抜けているが、拳は遠慮なく振りぬかれ、
地面が吹き飛んだ。
忘れてはならない。
ダークファルスとは
当然、その直線状にあるものが全て吹き飛ぶ。消し飛ぶ。粉砕される。当然と言えば当然だ。それが生物として別次元であるという事の証明なのだから。
だから【巨躯】の拳はその正面にある大地を吹き飛ばし、粉々にした。正面に居れば致死のダメージは免れないという事を証明するように。だから当然の様に俺は回避するし、
そしてマリアも、当然回避していた。
正面に繰り出される破壊を横へと跳躍して回避しながらパルチザンを振るい首に一撃。急所と顔面に斬撃を受けながらも動じないダークファルスの姿は不気味の一言に尽きる。だが元々相手が質量で怪物的であるのは理解している。理解していて戦いを挑んだのだ。
だから攻撃を続行する。
ダークファルスの拳が振るわれる。連続で遠慮なく四方へと放たれる拳は放たれるたびに土砂を消し飛ばしながら空間を殴りつけ、その先端が音の壁を破って障害物を吹き飛ばす。一瞬でも体の動きを止めればその瞬間には全身を持っていかれる。その感覚は既に既知だった。故にやる事は簡単。
常に動き続けて【巨躯】の攻撃を受けないように立ち回りながら斬撃を叩き込み続ける。
故に移動は全てアサギリレンダンの瞬間加速をキャンセルする事を利用し、瞬間加速からステップの無敵、スライドしながら高度を上げて落としてジグザグに上下と左右に移動を繰り返しながらハトウリンドウによる連続斬撃波を何度も叩き込んで【巨躯】の体に波状の斬撃を浴びせ続ける。
10、20、30と一瞬で叩き込む斬撃を増やしてゆくのは素早く抜刀して納刀する。ブレイバースタイルの抜刀術に体が完全に追いついている、戦闘中でありながら成長して適応している。ダークファルスという星を殺しを相手に真正面から戦っている状況に適応するように肉体と精神と技術が、
加速、加速、そして更に加速。
「フハハハ、良いぞ」
加速しつつ斬撃を繰り出し、マリアと位置を交代するように交差するように斬撃に斬撃を重ねて回避する。常に流動し、射線を重ねないように挟み込んで動きながら【巨躯】の全身に、そしてその露出しているコアを重点的に狙う様に斬撃を重ねて行く。だがその全てを【巨躯】は全身で受け止めていながら一切怯まない。既に並のダーカーであれば消滅、ダークラグネなどの巨大なダーカーであっても細切れになっているだけの火力は叩き込んでいる。
既に死んでいる筈なのだ、ダーカーが相手だったら。
だがこいつは沈まない。まずまずテンションのボルテージを上げて行く様に、此方が斬撃に斬撃を重ねれば重ねる程燃え上がる様に【巨躯】は赤いオーラを纏い、拳を加速させて行く。既にここにあった戦闘の残骸は全部消し飛んでいる。新しく剥き出しになった大地、そして元は遺跡だったもの。その新しい残骸を足場に着地し、その瞬間を狙う様に振るわれてきた拳を残像だけ残して回避しながらすれ違いざまにサクラエンドを叩き込む。交差させるX字の斬撃を首に叩き込み、切れ込みを生み出し、しかし傷口は圧倒的なダークファルスの質量に飲まれて塞がって行く。
「キリがねぇこいつ……!」
「これでも40年前と比べればまだマシさ!」
マリアと同時に、【巨躯】を挟み込む様に着地する。パルチザンが火を噴き、マリアの手の中で壊れる。
「チ……流石に普通の武器じゃ持たないか。しっかしアンタもどうやら本調子って訳じゃないみたいだねぇ? これなら場合によっちゃここで殺れるかもしれないか……そうすれば今アークスを取り巻く状況も多少はマシになるだろう?」
マリアの挑発に【巨躯】が不敵な笑みを浮かべる。いや、実際に表情を動かしているかどうかは戦闘形態では全く解らないのだが、誘っているようにも、求めているようにも見える。だが【巨躯】もマリアも、まだまだ本気じゃないのは見て取れる。まだまだギアは上がる、上げれる。なら俺も当然の様にそのステージに立たないとここでは話にならない。
マリアが、手を天に掲げた。
「ならここで勝負所と行くか! 潰えろ、閻斧ラビュリス!」
マリアの手に収まる様に空から武器が落ちてきた。凄まじいまでのエネルギーと破壊力を秘めた美しいそれは一つの斧だった。ただし斧というにはバラバラすぎる。柄と刀身が繋がっていない。その代わりに中央にコアらしき光が存在し、それが不規則に煌めく美しいパズルの様な斧の刃を纏めていた。ダークファルスにも通じる、殺傷兵器―――創世器、それがマリアの手の中に納まった。
故に俺もそれを真似る。
安藤だし、出来るだろ! のノリで。
「リターンマッチの時間だ! 来い、クラリッサ」
スサノショウハを持たぬ手を振るい、その中に転移するようにクラリッサの姿が戻ってきた。そう言えばワンパンで吹っ飛ばされた時クラリッサを失くしたのはこの時間軸だったが、そうか。未来の俺が回収しているから一時的に紛失していたのだ。
というかこの瞬間まで大体クラリッサの事忘れてたわ。
納得しながら振るい、カタナとロッドの二刀流スタイル―――は、無理なのでクラリッサへと武器を持ち換えて【巨躯】へと照準を合わせる。
「アンタそれは―――いや、だからシャオが寄こしたって訳か。行けるね?」
「当然」
こっちは最初からぼっこぼこにするつもりでここにきているんだ―――遠慮なんてない。準備が整った瞬間には飛び出す。クラリッサとスサノショウハを素早く切り替えながら移動と攻撃を行う。アサギリレンダンでの斬撃接近からイル・ゾンデでの雷撃移動、素早く接近からの距離を取り、【巨躯】の攻撃を誘いながらラ・グランツを放つ。
それを【巨躯】が避けた。僅かに体をずらしながら拳を振り上げる姿はどことなくゲッテムハルトの姿に似ている―――いや、このダークファルスは依り代となっているゲッテムハルトの方から戦闘技術を吸収して今、運用を開始したのだ。ラ・グランツというテクニックはビーム上の光を一定時間滞空させるように置くテクニック。その特性上、相手の動きを予測して置かないと意味がない。つまり回避されるようでは意味のないテクニックでもあるのだが、
「おや、アタシを忘れるとは良い度胸じゃないか」
横からぶち込んでくるラビュリスのスイングが【巨躯】の姿に叩き込まれ、無理矢理ラ・グランツの光の中へと叩き込まれる。貫通する閃光の中に明確に【巨躯】の肉体が焼かれ始める。それは創世器なしで戦っている時とは違い、明確にダメージがその肉体に発生しているという事を証明する事でもある。だが吹き飛ばされてもなお【巨躯】の勢いは止まらず、
真っすぐ正面、光を突き抜けながら拳を叩き込みに来る。
だからスサノショウハを抜いた。
「―――な?」
【巨躯】が眼前、繰り出した拳の破壊が
そしてカウンター。
ジャストガードからのカウンター斬撃が【巨躯】の顔面を貫通し、背面へと抜ける。そこからクラリッサへと切り替えながらイル・グランツによる散弾光弾を叩き込みながら素早くアサギリレンダンで離脱する。
カタナからロッド、ロッドからカタナ、素早くスイッチさせるように切り替えながら戦うテクニックは実際のPSO2でも存在する小技だ。実際、アサギリレンダンの方が移動速度として早いと言われるクラスは全クラスカタナを装備してアサギリレンダンを連打して移動する事が多い。
今やっているのはその発展型だ。
リアルな戦闘に応用した、戦闘機動。アサギリレンダンによる加速と離脱を繰り返しながらクラリッサに切り替え、イル・グランツという光の散弾をばらまきながら収束させてあてるテクニックを乱射する事だ。このテクニックの良い事はホーミング機能がある為にやや狙いが雑でも狙った場所へと向かって誘導されることだ。
そしてそうやって連続で動きを作れば、【巨躯】が即座に復帰し、マリアがラビュリスで追撃に入る。
「はは! クラリッサを握るだけはあるじゃないか!」
「お褒めに預かり光栄!」
「良いぞ、我が闘争心をそのまま満たすが良い……!」
横から放たれるラビュリスの衝撃に【巨躯】の体が砕かれる。だがそれを気にすることなく【巨躯】が踏み込みながら音速を越える拳を向けてくる。スサノショウハでJガを行えばシステマチックにそれが無効化され、殺人的な衝撃波だけが体をバラバラにしに来る。それそのものはラビュリスが重力操作で一瞬で圧殺し、Jガからのカウンターで無敵の状態を維持しながらイル・ゾンデで感電させつつイル・グランツを体に叩き込み、距離を開けながらラ・グランツを設置する事で牽制と次の手へと繋げる。
【巨躯】が動く。拳が握られる。背中から羽の様にオーラが放たれる。拳が虚空を殴る様にオーラの波動が放たれる。マリア諸共薙ぎ払う一撃はラビュリスが抑え込む。狙いづらい瞬間はグランツ、定点テクニック。指定した場所へと絶対に突き刺さるテクニックは視界から外れても絶対に届くきわめて便利なテクニックだ。
これが通常のグランツであれば威力はさほど期待できないが、このグランツはテクニックカスタマイズで極限まで強化されている。
ならばその威力は最高クラスのテクニックに届く。素早くチャージして放ち、アサギリレンダンで【巨躯】の周りを攪乱するように移動しながら常に場所を変え、ターゲットをずらしながら戦闘を続ける。一瞬でも足を止めながら戦えば【巨躯】の連続攻撃が来る。今まではテレフォンパンチの連続だったが、既に両拳で連続で暴れまわる様に放っている。
少しでもラビュリスが重力操作による衝撃波の押し殺しを解除すれば、それこそ戦う事が出来なくなるレベルで。
だから【巨躯】の狙いを完全に定めさせない為にテクニックを連打しながら動き、回避する。
「フ―――オオオオオオ―――!」
吠えながら飛び上がった【巨躯】が空中でスラスターの様にオーラを吹かし、地上へと向かって急降下してくる。即座にラ・グランツを着地点に向けて放ちながらカタナへと切り替えて蹴りを正面から受け止め―――体がそのまま重量で押しつぶされそうになる。
「世話が焼けるねぇ……!」
【巨躯】の重量が軽くなった。ラビュリスによる援護が来た。だがそれは同時に衝撃を殺せないという事でもあり、無理矢理サ・フォイエの炎を纏った高速移動を使って爆炎と共に衝撃を突き抜けながら回避を行う。その瞬間を逃さぬよう、
【巨躯】がシミターの様な剣を抜いた。
凄まじい力を纏ったそれはオーラの剣を具現化し―――アークスにはオーバーエンドと認識されるPAに酷似した動きで薙ぎ払ってきた。
Jガ、カウンター、イル・グランツ、ラ・グランツ。ステップ。
オーバーエンド、ナックル、衝撃波、急降下脚。
Jガ。
「貴様―――」
スサノショウハ、クラリッサ、スサノショウハと息を切らせながらも切り替えてテクニックとPAを交互に放って【巨躯】を攪乱し、此方へとヘイトが向かった瞬間にマリアがラビュリスを振り落とし重力波と共に【巨躯】の体を砕く。
【巨躯】が加速する。明確にステップを踏みこみ、破壊する為の拳を振るい、大地に足を叩きつけて破壊の柱を生み出すと自分を中心に螺旋を描く様に放つ。自分の身を守りながら周辺を破壊し、攻撃する為の手段は攻防ともに隙がなく、接近の起点を潰すように放たれる。ラビュリスでさえ潰しきれないほどの力が放たれるも、その軌道さえ見えてしまえば簡単だ。
合間をアサギリレンダンで抜けながらクラリッサでラ・グランツを放ち、光の柱を置いたらイル・グランツによる火力を叩き込む。移動速度の遅いテクニックではあるが、ゼロ距離から放てば全く問題はない。顔面に片手で握ったクラリッサの光弾をぶち込みながら離脱する。後を追う様に振るわれる連撃は確実に此方を捉える様に飛んでくる。確実にそのヘイトは俺に対して集中している。
だけど、まぁ、
シャオが引き出してくれた力のおかげか。
それこそ最初は無敵とかそういうのを一切無視して貫通して放たれたダークファルスの寸止めパンチ、それを超える勢いと殺意で繰り出される連撃、周辺の地形を粉砕しながら生存を一切許さない闘争。その全てを繰り出されても、元々備えていたスキル、能力、対ダーカー用にアークスが磨き上げたシステム。
無効化される筈のそれが今、ここでは完全に機能していた。
なら話は一気に簡単になる。タイミングを間違えず、戦術を維持し、欲張らず、しかし攻撃チャンスでは確実に効きの良いクラリッサでのテクニックを叩き込み続ける。【巨躯】の攻撃は全てが解りやすく、合わせやすい。踏み込みと始点のタイミングでスサノショウハを構えればジャストガードを簡単にとらえる。それで攻撃を無効化すればカウンターが入り、クラリッサに切り替え、
再び零距離からイル・グランツを叩き込む。
「ぐおっ、貴様、アークス……!」
「オラオラ、どうした【巨躯】ちゃん。随分とお行儀が良いじゃねぇか」
テクニックを受けてついに後ろへと押し出される【巨躯】の姿が膝をつく。瞬間、複合テクニック、バーランツィオンを起動する。光と氷の剣を生み出すと足を止めた【巨躯】へと連撃を叩き込む為に一気に加速して腕を振り上げる。同時上から押しつぶすようにマリアが飛び上がりながらラビュリスを振り上げる。
必殺の一撃、地上と空から同時に放たれるそれを膝をついた【巨躯】は回避しようと大地を踏みしめ、亀裂を生んで土砂を巻き上げる。だが打ち付ける土砂をその瞬間は必要経費と割り切って無視し、体力を削られながら【巨躯】へたどり着く。
―――必殺が、【巨躯】に叩き込まれる。
なお今も昔も安藤たちは無敵になって殴って殴られそうなら無敵で回避してとか言うのを繰り返している。無敵が通る時点でダークファルスは玩具になってしまったのだ……悲しいなぁ。
皆はもう原初の闇をクリアして安藤の生身宇宙遊泳&大気圏生身突入経験したかな!