唐突に、ダンス披露会が始まった。
竜巻の被害を逃れた紫アネモネの花畑の前に、内番姿の短刀達が緊張気味に並んでいる。観客席として、5つの椅子が並べられ、中央に主が嬉しそうな表情で座っていた。
長谷部たちも内番姿で、スタンバイしている。
「始めるぞー!」
短刀達の後ろから、大倶利伽羅が声を上げた。短刀達が「はーい!」と手を上げた。
「神のまにまに」のイントロが流れた。
可愛い短刀達のダンスに、主はもう涙をためて両手を口に当て見ていた。
それを見た大倶利伽羅が、横の長谷部に言った。
「主って、案外涙もろいんだな。」
長谷部が、うなずいて笑った。
……
その後「未来景イノセンス」が続き、第1部隊が最後のサビをコーラスすると、主は両手で顔を覆った。
「ちゃんと見てくれよ!」
大倶利伽羅が、歌の合間に主に向かって叫んだ。主が両手を顔から離し、うんうんとうなずいきながら涙を払っている。
「未来景イノセンス」が終わると、短刀達と石切丸が離れた。
獅子王、長谷部、大倶利伽羅、光忠が残り、何か準備運動を始めだした。
「?」
主がハンカチで目をぬぐいながら、不思議そうな表情をしている。
「きょうもハレバレ」の曲が流れた。
「!!」
主が「あー!」と叫んで、独り拍手をしている。4人が踊り出した。
この曲は結構長く、踊りも激しい。…機動力が低い石切丸にはついていけなかったため、4人というわけだ。
最後に向かうにつれ全員が疲れを見せ始めるが、お互い声を出し合って踊り切った。
長谷部と、光忠が踊り終えてから座り込んでしまった。
主が、笑いながら拍手した。
第1部隊のメンツが、主の傍へ戻ってきた。主の横に長谷部と光忠が座り、その両端に獅子王と大倶利伽羅が座った。
「主、ちょっと待ってな。準備があるんだ」
大倶利伽羅が、主に言った。主が「うん!」とうなずいた。そして、ちらっと時計を見たのを見て、長谷部が心配そうな表情で主を見た。主が「まだ大丈夫」と長谷部に微笑み、長谷部の手を握って自分の膝に乗せた。長谷部が顔を赤らめた。主はそれを見ておかしそうに笑うと、光忠に向いて、光忠の手も握り、自分の膝に乗せた。光忠が微笑んだ。
「今、すっごく幸せ!」
主がそう言い、前で並び始めた短刀達を見た。大倶利伽羅が「俺もだ」と言った。反対側にいる獅子王もうなずいている。長谷部と光忠が、それぞれ主の手を握りしめた。
「準備OKか?」
大倶利伽羅がそう言うと、短刀達が「はーい!」と返事をした。大倶利伽羅が、手に持ったリモコンのスイッチを押した。
鳴り出した音楽は「千本桜」だった。
前に並んでいる短刀達が、それぞれ手に持った扇子を翻しながら、優雅に踊り出した。
主が、長谷部と光忠の手を握ったまま振って、喜びを表した。
「これ、やって欲しかった!!」
そう子供のように無邪気な声を上げた。長谷部と光忠が顔を見合わせて笑った。
曲が中盤に差し掛かった時、短刀達が扇子を持った手を上げ、円を作りゆっくり回りだした。何かを囲んで、隠しているように見える。
「?」
主が目をしかめて、身を乗り出した。
短刀達が扇子を下げ、後ろを向きながら座ると、円の中にいた巫女姿の石切丸が立ち上がった。
「きゃあああっ!綺麗っ!!!」
主が思わず2人の手を離してそう叫び、口に両手を当てた。
化粧はしていないが、石切丸が美しい巫女姿で優雅に踊っている。
獅子王が、思わず拍手をした。長谷部たちも驚いた表情をしている。皆、初めて知ったようだ。
「乱(みだれ)の傑作か。そういや練習中も藤四郎兄弟達が、大広間で何か必死に縫ってたな。」
光忠が、主の向こうにいる長谷部に言った。長谷部が微笑んでうなずいた。主が驚いて光忠に向いた。
「えっ!?あの衣装、手縫いなの!?すごい!」
そう言って、石切丸と一緒に踊っている乱を見ながら拍手をした。
音楽が終わると同時に、石切丸達がポーズを決めると、主を始め、座っていた全員が立ち上がって拍手をした。
「石切丸君、綺麗よー!!」
主がそう叫ぶと、石切丸が投げキッスをした。全員が大笑いした。
……
「最後の曲です。」
大倶利伽羅が花畑の前に独り立って、膝を立てて座っている短刀達と、主を挟んで椅子に座っている第1部隊の仲間達に向かって言った。
「この曲は、2代目達がいなくなった時によく俺が口ずさんでいた歌で…」
大倶利伽羅は、一番前の中央に座っている乱に向いて言った。
「辛いことを思い出させるけど、ごめんな。」
乱は、目に涙を溜めて首を振った。隣に座っている薬研藤四郎が、乱の頭を撫でた。
「でも、主が俺に教えてくれたんだ。あいつら死んでないって。きっと現世に飛び出して生きてるって。」
乱が、目を拭いながらうなずいた。
「その気持ちも込めて歌います。そして、今日は緊急で来てくれた主への思いも込めて…」
大倶利伽羅が主に向いてそう言うと、主はもう口に手を当てて涙をこらえるような表情をした。
両端にいる長谷部と光忠が、主の背に手を乗せた。
大倶利伽羅は、唐突に歌いだした。
「それがあなたの幸せとしても」というタイトルのこの歌は、自分から離れていく相手に対して、引き止めたくても引き止められない自分を責め、相手の幸せを願いながらも、行ってほしくないという葛藤に悩む歌である。
大倶利伽羅の優しい、澄んだ声に皆聞き入っていた。
エンディングで、乱が嗚咽を漏らして泣き出した。
歌い終えた大倶利伽羅が、その乱の前にしゃがみ、頭を撫でた。
主も、両手で顔を覆って泣いている。その肩に、長谷部と光忠がそっと手を乗せた。
……
挿入曲
「神のまにまに」by れるりり様
「未来景イノセンス」 by koyori様
「今日もハレバレ」by ふわりP様
「千本桜」by 黒うさ様
「それがあなたの幸せとしても」by Heavenz様