IS~陽に魅入られた者~   作:ミツバチ

14 / 23
遅くなってすみませんでした。

中間テストのため、試験勉強でしばらく更新できませんでした。結果は聞かないでください、悲しくなるから…

とまあ、どよ〜んとした気分はそこら辺のドブにでも投げ捨てまして、今日からまたちょくちょく書いていこうと思います。(まあ、一ヶ月後には期末試験だけど…)

それでは、引き続きご贔屓のほどよろしくお願いします。


クラス代表就任

翌日、朝のSHR。

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

山田先生は嬉々として喋っている。そしてクラスの女子も大いに盛り上がっている。暗い顔をしているのは一夏だけだった。

 

「先生、質問です」

 

一夏が挙手。うん、質問は手を挙げて。基本だな。

 

「はい、織斑くん」

 

「俺は昨日の試合は負けたんですけど、それに祇鳴ともまだ試合してないんですが、なんで俺がクラス代表になってるんでしょうか?」

 

「それは───」

 

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

 

山田先生の言葉を遮るようにがたんと立ち上がるセシリア。

 

「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、聞いた話ではあなたはまだ二回しかISを起動していないそうですわね」

 

誰から聞いたんだろ。知ってるのは俺と箒と千冬姉さんと山田先生くらいのはずだけど。

 

「わずか二回でわたくしに負けるのは、考えてみれば当たり前のこと。でしたらまだまだ強くなると思い、一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」

 

一夏にしてみれば、有難迷惑でしかないんだろうけど。

 

「てか、祇鳴は!?セシリアには勝っただろ!」

 

「俺は機体の故障。だから、辞退。わかった?」

 

「いや、全く!」

 

断言されたんだけど…しかも、真顔で。やめなよ一夏、ムカつくから。

 

「座れ、大馬鹿者」

 

すたすたと歩いてきて、一夏の頭をばしんと叩いた千冬姉さんが低い声で告げる。昨日以来、一夏の名称は大馬鹿者にランクアップしたらしい。ご愁傷様。

 

「クラス代表は織斑一夏。異存は無いな」

 

はーいと(一夏を除く)クラス全員一丸となって返事をした。うんうん、団結は良いことだよ。

 

「それから、翔河祇鳴をクラス代表補佐に任命する」

 

『はーい!』

 

前言撤回。やっぱり団結なんてろくなもんじゃない。心からそう思った。

 

─────────

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、翔河。試しに飛んでみせろ」

 

 

四月も中旬、桜が散って入学生気分が抜け、日常に慣れてきた体が見える今日この頃。俺たちは、遅咲きの桜も散り切った淋しい桜並木を端に見据えながら、今日もこうして千冬姉さんの授業を『真面目に』受けていた。『真面目に』ね。大事なことなので二回言った。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

 

その声を受けて、翼型のスラスター『朱雀』と刃を見立てた手脚部を展開する。完全展開まで0.62秒。

 

「ふむ、まあ今はこの程度が限界か」

 

全く、その通りだった。もしもの場合にこの速さでは確実にやられる。前世の俺からしてみれば余りにも遅過ぎた。これなら生身の方が速いかもしれない。

 

(やっぱり慣れない内は0.5〜1.0秒が限界かな…)

 

心の中で少し悪態をつきながら、他二名に目を向ける。

 

セシリアは既に『ブルー・ティアーズ』を展開し終え、地面から十数センチ程浮遊していた。さすが、イギリスの代表候補生。三百時間の稼働時間は伊達ではないらしい。

 

そして、俺の視線に気付いたらしいセシリアは、軽く微笑んでから千冬姉さんの方に顔を戻した。えっと、何なんだろうか。

 

考えても仕方がないので、一夏の方を見る。

 

「集中しろ」

 

未だ展開出来ない一夏に千冬姉さんの叱咤が飛ぶ。展開の指示から二分、今まで何してたのさ…

 

千冬姉さんの叱咤に慌てた一夏は、右手を突き出したポーズで左手でガントレット───一夏のIS、『白式』の待機状態だ───を掴み展開させる。どうやら、あれが一番安定するらしい。展開時間0.7秒。瞬きした後には『白式』を装備した状態で、同じように一夏が浮かんでいた。

 

「よし、飛べ」

 

返事をしたセシリアは急上昇する。俺も朱雀の出力を上げて上昇する。俺とセシリアは上昇を一旦止め、下にいる一夏を見る。出力が安定しないのか上昇速度は遅い。一夏が上がって来るのを見たら、また上昇と飛行を続ける。

 

「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ」

 

早速、一夏がオープン・チャネルで千冬姉さんから怒られていた。俺は出力を落として一夏と並走する。

 

「大丈夫、一夏?」

 

「『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』って言われてもなぁ…」

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

気付くとセシリアが、俺とは反対側で一夏の隣を飛んでいた。

 

「セシリアの言う通りだよ。無理に教科書通りにする必要は無い」

 

「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ」

 

「説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

一夏にも解るように説明したら、一時間以上かかるだろうよ?

 

「わかった。説明はしてくれなくていい」

 

「そう、残念ですわ。」

 

「ああ、本当に残念だ」

 

これで、一日中一夏の強化特訓と題したストレス発散が出来なくなってしまった。ああ、本当に残念で仕方ない。

 

「なあ祇鳴、お前いま変なこと考えてただろ」

 

こいつ、なんでいらん処で鋭いんだ?その鋭さをもっと他のことに活かしてくれ。箒とか箒とか箒とか。

 

「織斑、オルコット、翔河、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

「…了解です。ではお二人とも、お先に」

 

いつも通り、馬鹿な妄想劇を繰り広げていたら、千冬姉さんから指示が来た。

 

すぐさま、セシリアは地上に向かう。ぐんぐん小さくなっていく姿。そして、なんなく完全停止した。

 

「うまいもんだなぁ」

 

「さすが代表候補生だね。───てか、感心してる場合じゃないだろ。一夏もやるんだよ、あれを。それじゃ俺も先に行くから」

 

俺もすぐに地上に向けて急降下。そして地表が近くなってきて、朱雀の出力を一旦下げて体を起こしてから地上に向けて出力を上げての逆噴射、目標十センチで完全停止に成功した。

 

「ねぇ、箒」

 

「なんだ?」

 

 うん、やっぱりセシリアが一緒にいる時声に若干棘があるな。素直なのか素直じゃないのか、イマイチよく分からない幼馴染である。

 

「昨日の訓練で一夏に何を教えた?」

 

「基本動作と基本飛行。あとは上昇、降下だ」

 

まあ、大体そんなとこだろう。だが、聞きたいのは他のことだ。

 

「それじゃ、完全停止と切り替えのタイミングは?」

 

「………」

 

だろうと思ったよ!ぶっちゃけ教え忘れたか、時間なかったかだろうけど、これヤバくないか?

 

「祇鳴さん、どうかしましたの?」

 

俺と箒の気まずい雰囲気を察知して、セシリアがよって来た。

 

「いや一夏さ、多分、完全停止と切り替えのタイミング、知らない…」

 

「え…………?」

 

衝撃の事実に固まるセシリア。俺の背中を冷たい汗がつたう。

 

「織斑、あとはお前だけだ。さっさと降りて来い」

 

一夏は千冬さんに急かされて勢いよく急降下してきた。

 

『いち───』

 

千冬姉さんの声に、三人同時に我に帰り、慌てて呼び掛けるも時既に遅し。

 

 

ギュンッ─────────ズドォォンッ!!!

 

 

『…………』

 

一夏が地上にノーブレーキで勢いよく激突。グラウンドに巨大な穴が空きましたとさ。これを専門用語で墜落という。そして周りでは、クラスメイト一同がくすくす笑いを展開。

 

実に面白そうだ、俺も混ぜて?

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

 

「……すみません」

 

一夏は姿勢制御をして上昇、地面から離れた。ISのシールドバリアーのおかげで白式には汚れ一つない。

 

「情けないぞ、一夏」

 

腕を組み、目尻をつり上げている箒。いや、原因の半分は君だからね、箒。

 

「おい、馬鹿者。邪魔だ。端っこでやっていろ」

 

箒の頭をぐいいっと押しのけて、千冬さんが一夏の前に立つ。

 

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在に出来るようになっただろう」

 

「は、はあ」

 

「返事は『はい』だ」

 

「は、はいっ」

 

「よし。でははじめろ」

 

言われて、一夏は横を向き、右手を突き出して意識を集中する。すると右手のひらから光が放出されて形として成立する。光が収まった頃には、一夏の右手には《雪片弐型》が握られていた。とりあえず必ず出せるようにはなったらしい。丸一週間かかったけど。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

褒めもしないどころか、けなすか。千冬姉さんらしいけど。

 

「セシリア、武装を展開しろ」

 

「はい」

 

左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出す。一夏のように光の奔流を放出することはなく、一瞬爆発的に光っただけだ。それだけで、その手には狙撃銃《スターライトmkⅢ》が握られていた。

 

しかも既にマガジン装填済みで、セシリアが視線を送るだけでセーフティーが外れる。一秒とかからずに射撃可能まで持っていっている。さすが代表候補生。

 

「さすがだな、代表候補生。───ただし、そのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開出来るようにしろ」

 

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要な───」

 

「直せ。いいな」

 

「──────、……はい」

 

反論の余地は大いにあるような顔をしていたセシリアだったが、そこは千冬姉さん、一睨みで話が終わる。いい兵士が生まれそうだ。噂じゃほんとに、ドイツで兵士の育成をやってたみたいだけど。

 

「次、翔河。武装を展開しろ」

 

「はい」

 

左手を前に伸ばし、虚空を掴む動作をする。それだけで俺の手には完全展開された『白虎』が握られていた。───ここまでで0.2秒

 

そしてそのまま、白虎を腰に付け安定させる。射撃準備完了。計0.3秒、まあまあと言ったところか。

 

「ふむ、それでいい。時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

憐れ、その後一夏は一人で自ら開けた穴を修復していた。俺?もちろん、さっさと部屋に戻ったよ。

 

───────────────

 

「ふぅん、ここがそうなんだ……」

 

夜。IS学園の正面ゲート前に、小柄な体に不釣り合いなボストンバッグを持った少女が立っていた。肩にかかるかかからないかくらいの髪は、左右それぞれを高い位置で結んであり、金色の留め金がよく似合う艶やかな黒色をしていた。

 

「えーと、受付ってどこにあるんだっけ」

 

上着のポケットから一切れの紙を取り出す。くしゃくしゃになったそれは、少女の大雑把な性格と活発さを非常によく表していた。

 

「本校舎一階総合事務受付……って、だからそれどこにあんのよ」

 

文句を言っても、紙は返事はしない。少女は多少のイライラと一緒に紙を上着のポケットにねじ込む。また中でぐしゃっという音が聞こえたが、もちろん気にしない。

 

「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

ぶつくさ言いながらも、その足はとにかく動いている。思考よりも行動。そういう少女なのだ。良くいえば『実践主義』、悪くいえば『よく考えない』である。

 

(誰かいないかな。生徒とか、先生とか、案内出来そうな人)

 

学園内の敷地を解らないなりに歩きながら、きょろきょろと人影を探す。とはいえ時刻は八時過ぎ、どの校舎も灯りが落ちているし、当然生徒は寮にいる時間だった。

 

(あーもー、面倒くさいなー。空飛んで探そうかな……)

 

一瞬、「それは名案!」と思った少女だったが、あの『アナタの街の電話帳』三冊分に匹敵する学園内重要規約書を思い出して、やめる。

 

まだ転入の手続きが終わっていないのに学園内でISを起動させたら、事である。最悪、外交問題にも発展する。それだけは本当にやめてくれ、と何回も懇願していた政府高官の情けない顔を思い出して、少女は気分はちょっと晴れた。

 

(ふっふーん。まあねー、私は重要人物だもんねー。自重しないとねー)

 

正直に言って、自分の倍以上も歳のある大人がへこへこ頭を下げるのは、ちょっと気分がいい。

 

昔から『歳をとっているだけで偉そうにしている大人』が嫌いな少女にとって、今の世の中は非常に居心地が良かった。

 

男の腕力は児戯、女のISこそ正義。それもまた気分がいい。少女はかつて、『男っていうだけで偉そうにしている子供』が大嫌いな子供だった。

 

───でもアイツは違ったなぁ。

 

とある男子のことを思い出す。その男子のことは、少女にとって日本に帰ってくる最大の理由になっている思い出だ。

 

───元気かな、アイツ。

 

まあ、元気なんだろうけど、元気のない姿を見たことがない。そういうやつだったから。

 

「だから……でだな……」

 

ふと、声が聞こえる。視線をやると、女子がIS訓練施設から出てくるようだった。どこの国でもIS関係の施設は似たような姿をしているから、すぐにそうだと解る。

 

───ちょうどいいや。場所聞こっと。

 

声をかけようとして、少女は小走りにアリーナ・ゲートへと向かう。

 

「だから、そのイメージが解らないんだよ」

 

不意を突かれて、少女の体はびくんと震えてその足が止まる。

 

男の声───それも、知っている声にすごくよく似ている。いや、おそらく同一人物。

 

予期しなかった再会に、少女の鼓動が急ピッチでペースを上げる。

 

───あたしって解るかな。解るよね。一年ちょっと会わなかっただけだし。

 

そう自分に言い聞かせつつ、けれど自分だと解らなかったらどうしようという不安に思考が乱れる。

 

───大丈夫。大丈夫!それに解らなかったら、あたしが美人になったからだし!

 

超ポジティブ思考にスイッチを入れて、少女は再び歩みを再会する。

 

「いち───」

 

ああっ、声裏返っちゃったよ。なんかあたしがすっごい意識してるみたいじゃん。恥ずかしいなぁ。

 

「一夏、何回言えばイメージが掴めるんだ」

 

「お前の説明が独特過ぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』って」

 

「……くいって感じだ」

 

「だからそれが解らないって言ってるんだ」

 

すたすたと足早に歩く女子を男子が追いかける様に歩いていく。すると、またアリーナ・ゲートから一組みの男女が出てきた。

 

「なんで急降下の完全停止の説明が『くいって感じ』になるのかなぁ……」

 

「教官には向いてませんわね」

 

「あれでイメージを掴めたら逆にすごいよ。もし掴めたら一週間昼食奢ってやってもいいね」

 

「篠ノ之さんの説明は擬音ですものね……」

 

男女は呆れたような表情で歩いていく。

 

――誰?あの女の子。なんで親しそうなの?っていうかなんで名前で呼んでんの?それに後に出てきた金髪も親しそうだった。それになんで<祇鳴:あいつ>までいるのよ。

 

さっきまでの胸の高鳴りは嘘のように消え、ひどく冷たい感情と苛立ちが雪崩れ込んでくる。

 

それからすぐ、総合事務受付は見付かった。アリーナの後ろにあるのが、本校舎だったからだ。灯りがついていたので、そこだと解った。

 

「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、<凰鈴音:ファン・リンイン>さん」

 

愛想のいい事務員の言葉もどこか遠くにあって意識に届かない。少女――鈴は見るからに不機嫌ですとばかりに唇を尖らせながら訊いた。

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

 

「ああ、噂の子?一組よ。凰さんは二組だから、お隣ね。そうそう、あの子一組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんなだけはあるわね」

 

噂好きは女性の性。その体現のような事務員の姿を冷ややかに見ながら、鈴は質問を続ける。

 

「二組のクラス代表って、もう決まってますか?」

 

「決まってるわよ」

 

「名前は?」

 

「え?ええと……聞いてどうするの?」

 

鈴の態度に少しおかしなところを感じたのか、事務員は少し戸惑ったように聞き返す。

 

「お願いをしようかと思って、代表、あたしに譲ってって───」

 

にっこりとした笑顔には、ばっちり血管マークがついていた。

 

───────────────

 

「とりあえず、装備の調整でもしようかな……」

 

ポケットから小型のディスプレイを取り出し操作。すると画面五台、キーボード二つ、外付けハード八台のパソコンが現れる。それにデバイスから出したケーブルを接続してデータを流す。

 

ちなみに少し元気がないのは、今の今まで『織斑一夏クラス代表就任パーティー』をやっていたから。夜の10時まで騒ぎ続けた俺たちは、パーティーを開催していた寮の食堂にやってきた千冬姉さんの軽く殺気の籠ったご教授の一言により強制解散となった。

 

「はぁ…………」

 

いやぁ……軽く女子のエネルギーを侮ってたね。

 

『あ~ん、みーくんがデータ弄ってるのに全然見えなーい。見~せ~て~、見~せ~て~!』

 

いきなりモニターが点いて、声が聞こえる。

 

…………ホント、何してんのこの人。

 

「見せません。これは現時点、というか自分以外には危なくて見せれません!!いくら束さんでも、完全に完成するまで見せません!」

 

モニターからは見えない位置でしているから、束さんにはまるっきり見えない。

 

『なんでみーくんのパソコンにハッキング出来ないの? 繋いであるなら束さん覗けるのに……』

 

「実際これで独立してますからね、インターネット用にはプライベートのヤツを使ってるますし。今の現代、そこまでインターネット信用できませんから」

 

『流石に天才の束さんでも繋がってないと無理だねー……でも溜め息付いてたけど、どうしたの?』

 

「ああ、あれは──────」

 

と、言いかけて気付く。あれ?あの時は電源落ちてたよな?

 

『モニターの電源が落ちてるからって、スピーカーも落ちてるとは限らないのだよ!』

 

……自分のプライベートはどこ行った?

 

『それはもちろん、束さんの所だよ?』

 

心の中にもプライベートが居ない……プライベート、ギャラ払うから仕事しろ……

 

己のプライベートがないことを知り、そしてここ数ヶ月ほどプライベートが無いことを思い出し愕然。よって意気消沈。故に現実逃避(真っ直ぐ画面に向き直り、ディスプレイを操作。以後、ひたすら調整)

 

『近頃みーくんが冷たい……』

 

……なんか本気でいじけだした。こういう姿見せられると、本気ではないと知っててもついつい気になってしまう。弱いなぁ、俺……

 

「はいはい、構ってあげるから泣かない泣かない」

 

『ん~~、みーくん大好きっ! 出来ることなら画面飛び出して抱き締めたい!』

 

「シャラップ!」

 

『いきなり英語!?』

 

「ドンタッチミー」

 

『ひどい!近頃みーくん成分が足りない気がしてるのに、唯一のコミュニケーションを無くそうとするなんて~』

 

みーくん成分って、その呼び名で嘘つきのカッコイー奴の嫁さんが摂取してる奴じゃん。自分からはそんな物は出ない。

 

『みーくんみーくん、構って~』

 

「え? 鎌って?」

 

『オーケー、話し合いをしよう。だからモニターに向けているその大鎌を仕舞おうか?』

 

その言葉を受けて、展開した大鎌を戻す。本当は鎌じゃなくて剣だけど。ちなみにこの大鎌は、光月の<後付装備:イコライザ>の一つ『ハルパー』だ。その名の通り『神から授かった、魔物を切り裂く黄金の剣』を元に作られた装備である。魔を切り裂くみたいな特殊スキルは存在しないので悪しからず。

 

「だったら少しの間黙ってて下さい。ちょっと面白い事試しますから」

 

集中モード、一心不乱に画面とにらめっこで、プログラムを打ち続ける。二分程打ち続けた後、ISを起動する。

 

ただ、その姿はまるで違っていた。剣を想わせる鋭いフォームは丸みを帯び、全体的に大きくなっている。背中には天輪のような金色の輪が浮いている。そして何よりの違いは『色』。ベースだった濃色と白色が入れ替わり、肩から手の甲に掛けて赤色のラインが入っている。機体の印象が一気に明るくなった。

 

『へぇ〜……束さんはそんな機能付けた覚えないんだけどなぁ?てことはみーくんのオリジナル?』

 

「まあ、そうなりますね。これは光月の遠距離戦闘特化型のフォルムです。ちなみに、束さんが作った方は近接での戦闘を前提としてプログラム組み直しました。』

 

太陽と月。よって光月。これが光月の由来だったりする。

 

『ね、ね、ね!!データ見して!取らせて!分解させて!』

 

「嫌です」

 

とんでもない事を宣う束さんにピシャリと言い放ち、俺はパソコンの電源を切ってそのままベットに直行。そのまま睡魔に身を委ねた。もちろん、スピーカーの回路を抜くことを忘れずに。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。