今日も元気に、そしてこの突然やって来た真夏日の様な高温と、容赦ない直射日光に見事にダレているミツバチです。
何この思い出したかのような猛暑……梅雨はどうした梅雨は。
肌弱いから10分外にいるだけで、炎症により保健室に直行になりかねないこの季節は、正直言って学校への登校が命懸けだったりします。
とまあ、慣れない世間話はここまでにして、期末試験終了してやっと更新出来ることに喜びを覚えつつ、また更新していこうと思います。←ただの現実逃避です
それでは「クラス対抗戦」編、スタート!!←ヤケクソ
五月。
何故か数週間前から鈴の機嫌が最悪だ。それどころか日増しに悪くなっている。
まあ、どうせ一夏絡みだろう。早く謝っとけよ、一夏。
「一夏、来週からいよいよクラス対抗戦が始まるぞ。アリーナは試合用の設定に調整されるから、実質特訓は今日で最後だな」
放課後、かすかに空がオレンジ色に染まり始めるのを眺めながら、今日もまた一夏の特訓のため第三アリーナへと向かっている。
メンツはいつもの通り、俺、一夏、箒、セシリアである。
「IS操縦もようやく様になってきたな」
「まあ、わたくしが訓練に付き合っているんですもの。このくらいは出来て当然、出来ない方が不自然というものですわ」
「ふん。中距離射撃型の戦闘法(メソッド)が役に立つものか。第一、一夏のISには射撃装備がない」
言葉を中断されたせいか、やや刺のある言葉で箒が告げる。そして、実際その通りだった。一夏のIS・白式の装備は《雪片弐型》のみ。
普通、ISというのは機体ごとに専用装備を持っている。しかし、その『初期装備(プリセット)』だけでは不十分なので、『後付装備(イコライザ)』というものがある。セシリアのISでは初期装備は《ブルー・ティアーズ》。後付装備は《スターライトmkⅢ》と《インターセプター》だ。
そして、ISというのはこの後付装備のために『拡張領域(バススロット)』がもうけられている。装備できる量は各機のスペックによるが、一般的のISは最低でも二つは後付けできるようになっている。
そして、一般的ではないISが『二機』ある。一機は一夏の白式だ。拡張領域ゼロ。しかも初期装備は書き換えられないので、近接ブレードの《雪片弐型》一本だけなのが一夏のISのスペック。と言っても『零落白夜』に拡張領域を全部持っていかれてるだけなんだけどな。
そしてもう一機の一般的ではないISは俺の光月だ。初期装備もあり後付装備もある。ただ一つ違うのは、後付装備の数。数にして320個。いくらスペックで差が出るといってもこれは異常な数字である。ま、俺がそう作ったんだけど。その辺ことはまた今度話すことにする。
「それじゃ今日の模擬戦で瞬間加速を完全にものにしてよ、一夏」
千冬姉さんに言われて一夏に瞬間加速を教えていた。これの出し所を間違わければ代表候補生とも渡り合えるはずだ。
「なんとかしてみる」
そう言って一夏は第三アリーナのAピットのドアセンサーに触れる。指紋・静脈認証によって開放許可が下りると、ドアはバシャッと音を立てて開いた。
「待ってたわよ、一夏!」
ピットに鈴がいた。まぁ解ってたんだけどな。にしても俺達がBピットに行ってたらどうするつもりだったんだ。
「貴様、どうやってここに!」
「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ!」
箒とセシリアは顔をしかめて、一夏と鈴の間に入る。俺は一夏の後ろで逃げ出す準備万端だ。それに対して鈴は「はんっ」と挑発的な笑いとともに、自信満々に言い切る。
「あたしは関係者よ。一夏関係者。だから問題なしね」
間違ってはいないが、今それを言うのはあまりよくない。なんせ幼馴染第一号が過剰反応するんだからな。
「ほほう、どういう関係かじっくり聞きたいものだな……」
「二人ともちょっとは落ち着いてよ」
案の定箒が過剰反応する。ぴくぴくと引きつった口元が非常に恐ろしい。
「…………チッ」
鈴のヤツ、今明らかに箒とセシリアの胸を見て舌打ちしやがった。鈴のその巨乳に対する憎悪はなに?
「とにかく、今はあたしが主役なの脇役どもはすっ込んでてよ!」
「脇役……!」
「ですってぇ!?」
「あーもー、二人とも本当に落ち着いてよ」
鈴、頼むから挑発的なこと言わないでくれ。収拾するこっちの身にもなってくれ。
「……で、一夏。反省した?」
こんだけ挑発して無視かよ。
「へ?なにが?」
「だ、か、らっ!あたしを怒らせて申し訳なかったなーとか、仲直りしたいなーとか、あるでしょうが!」
「いや、そう言われても……鈴が避けてたんじゃねえか」
お前の相変わらずっぷりにはほとほと驚かされるわ、この唐変木。
「は?じゃあ何?女の子が放っておいてって言ったら何もせずに放っておくわけ?」
「そりゃ普通そっとしとくだろ。それが何か変か?」
「変かって……ああ、もうっ!」
焦れたように声を荒げて、頭をかく鈴。気持ちは解らなくもないけどさ。しかし鈴、これが一夏なんだよ。
「謝りなさいよ!」
それはあまりにも一方的な要求だな。端から聞いてても理不尽だ。主語なし、脈絡なし、説明なし。ほら理不尽。
「なんでだよ!約束覚えてただろうが!」
「あっきれた。まだそんな寝言いってんの!?約束の意味が違うのよ、意味が!」
「………一夏、今沖縄料理のミミガーとかくだらないこと考えたでしょ?」
そしたら、一夏が若干『ばれた』って感じの顔になった。マジで馬鹿かコイツは。
「あったまきた。どうあっても謝らないっていう訳ね!?」
「だから、説明してくれりゃ謝るっつーの!」
「せ、説明したくないからこうして来てるんでしょうが!」
「ストップ、ストップ、スト~~~ップ!!感情的になりすぎ!」
俺は二人の間に割って入って止める。
「それじゃこうしよう。来週のクラス対抗戦、そこで勝った方が負けた方に何でも一つ言うことを聞かせるってことで」
こうでもしないと収拾がつかない。
「解ったわ。それでいいわ!」
「おう、いいぜ。俺が勝ったら説明してもらうからな!」
「せ、説明は、その……」
鈴の顔がボッと赤くなる。そりゃそうだよな。説明するってことは殆ど告白するようなもんだからな。
え?なんで内容知ってるかって?だって約束した時、俺はそこにいたからです。ストーカーとかじゃないよ?
「なんだ?やめるならやめてもいいぞ?」
一夏、馬鹿!それは火に油を注ぐようなもんだ!
「誰がやめるか!!あんたこそ謝る練習しておきなさいよ!!」
「なんでだよ、馬鹿!」
「馬鹿とは何よ馬鹿とは!この朴念仁!間抜け!アホ!馬鹿はアンタよ!」
「うるさい、ひ───」
「一夏!!!」
俺は一喝する。それ以上を言わせるわけにはいかない。一夏は今言おうとしたことにハッと気付いて黙る。
「とにかく、話は対抗戦でつける!話は終わり!」
「ああ、解った」
「一夏!覚悟しておきなさいよ!」
鈴はピットを出て行った。
「……一夏、収拾つけるの大変なんだから勘弁してよ」
「……悪い」
「あと、さっき言おうとしたのは鈴にNGワード。言ってたら余計大変なことになってたよ」
「……悪かった」
そのあと、一夏と対抗戦前の最後の訓練をした。
─────────
そして日は瞬く間に過ぎ、クラス対抗戦の日を迎える。
「初戦から鈴とか…」
先日の事を引きずってるな…。なら、初めからやるなよと言いたい。
「鈴の機体───甲龍(シェンロン)近接格闘型だ。セシリアのブルー・ティアーズとは勝手が違う。油断は禁物だよ、何かあるから注意しな。」
というか、知ってたりするんだけど、束さん経由で。だけど教えたら良い経験にならないので、ここは知らぬ存ぜぬを決め込むとしよう。
あくまで一夏の経験の為だよ?決して一夏に対する鈴のお願いがどんなのか気になったからじゃないんだからね!勘違いしないでよね!うん、これはない…
男のツンデレって気持ち悪いだけでした。想像した自分の姿に軽く吐き気がしましたヨ?
「あれで殴られたらスゲェ痛そうだな…」
「話を聞けよ…」
こいつはこいつでダメだコレ。ホントに勝てるか不安になってきた…
「それでは両者、規定の位置まで移動してください」
そして俺の心配など露知らず、一夏はピットから飛翔していく。
「さて、此処から観戦するか…」
観客席は全席満員。立見している生徒がいるほど埋め尽くされていた。
そんな事もありピットからの観戦をすることにしていた。
ようやく一夏対鈴の勝負が始まる。
────────────
「一応言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる」
鈴の言っていることは本当だ。
俺の白虎などの高威力武装はシールドエネルギーを突き破り、操縦者に直接ダメージを与える。そして、それは殺さない程度にいたぶることは可能だということだ。
「それでは両者、試合を開始してください」
ブザーがビーッと鳴り響く。
二人が動いた───
ガギィンッ!!
瞬時に展開した《雪片弐型》が物理的な衝撃で弾き返される。鈴からの初撃を何とか防いだ。
「俺とセシリアに習った〈三次元躍動旋回:クロス・グリッド・ターン〉をどうにかこなしてるか」
しかし、鈴の猛攻が始まる。
鈴が手にした異形の青龍刀───と呼ぶにはあまりにかけ離れた形状───を縦横斜めと鈴の手によって自在に角度を変えながら斬り込んでいく。しかも、高速回転させている分、一夏も刀でさばくのに苦労しているようだ。
今のところは何とかさばいてはしているが───
「消耗戦だな」
セオリーとしては、ここは距離をとるべきだ。
一夏も同じ考えに至ったのか、鈴から距離をとるべく離れようとする。
「甘い!」
「うぁぁ!」
鈴の機体から何かが放たれた。あれが甲龍の主力武装である『衝撃砲』───〈龍砲:りゅうほう〉だ。
衝撃砲とは、空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して打ち出すというもの。それ故に砲身も砲弾も目に見えない為、避けるのは容易ではない上に、どうやら鈴の衝撃砲は射角が無制限らしく、真上真下どころか真後ろまで展開して撃っている。そして何よりも操縦者である鈴の能力がかなり高い。さすがは中国の代表候補生だ。
そうしている内に、また衝撃砲が放たれ一夏は地面にたたき付けられる。
箒達も何が起きたかわかってない気がするし行って説明してやるか。
そうして一夏たちから目を離し、体をドアへと向けた瞬間───
(……ん?)
一瞬、アリーナの上空で何かが光った気がした。
(鳥……か?)
もちろん、そんなものでは無いことは自分がよく分かっていた。あの光り方は何回も見た。
《モンド・グロッソ》───
21の国と地域が参加するISの世界大会。
つまり───
(ISか!誰だ!?いや、それよりも───)
いまアリーナの上空で見えたということは、明らかに狙いはクラス対抗戦だ。各クラス対抗という事を知っていれば、確実にクラスに在籍する各国の代表候補生が出てくることも予想出来たはずだ。各国が代表候補生をこの学園に送り込んでいることは周知の事実なのだから。
(ならば目的は代表候補生の抹殺か、ISの機体・データの奪取か。それとも───)
クラス対抗戦。もちろん観戦者もいる。いずれも世界最高の兵器を操れる、IS操縦者の少女たちが。もし、その全員が『不慮の事故』で死んだとしたら?死なずとも再起不能の傷を負ったとすれば?
「ちっ!!!」
最悪の可能性に戦慄する。だが今から避難させていては、いつ襲ってくるか分からない以上間に合わない可能性の方が高い。だからといってこのままでは大きな被害が出る。
「……………よし。」
思考は一瞬。俺はピットから外へと足を向けた。その足はアリーナとは真逆の方向へと向けられていた。