IS~陽に魅入られた者~   作:ミツバチ

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ヤポ〜ン!ミツバチの片割れことミッツーです!

「消えろアホ。」

いきなり辛辣!?何何?何なのさ?

「ホントに何なのか分からないのか?」

は?いやいやいや、はっきり言ってくれないと分かりませんヨ?

「ならば、言ってやろう……」

ゴクリ…

「お前が今の今まで夏休みの宿題をせずに遊びまくり、今になってやってないことに気付き、相方に泣きの電話入れて、今まで小説の更新を妨げていたからだよ!!」

ナ、ナンダッテ〜!(ザ・棒読み)

「昨日、徹夜で眠い頭を働かせて、お前の寝ている横で相方が俺のプロフィールを更新してくれてたよ!!」

スマナカッタナ〜アイカタヨ!(同じく棒読み)

「フルバァァァアアアアアアアストッ!!!!」

げふっ!!

「馬鹿な主は消えましたので、新章『金と銀の転校生』編、スタート!」

そのセリフ、ぼ、僕の…

ドガッン!!

チーン☆


ボーイ・ミーツ・ボーイ

6月頭の休日

 

いま祇鳴は一夏と一緒に久々にIS学園の外───というか、五反田の家に遊びに来ていた。

 

「で、どうなのよ?」

 

「なにがだよ?」

 

格ゲー対戦中にいきなりな会話振りだな。って、いきなり奥義使うな!

 

「とぼけやがって、女の園の話だよ。いい思いしてんだろ?」

 

「いや〜…あれ、意外に精神的に厳しいよ?」

 

男に飢えた獣、みたいな感じで。

 

「まさか!!あんなことやこんなことを!?」

 

『ねーよ』

 

何回説明すれば納得するんだ、こいつは。

 

ちなみにこの五反田弾は俺達の中学からの友達なんだが、入学式当日に知り合って以降やたらと馬があって三年間鈴と揃って同じクラスだった。

 

あの頃は、一夏がよく弾と一緒にいた為、鈴の怒り度指数が常時高かったので見ていてハラハラしっぱなしだった。ホント、目だけで人一人殺せるんではなかろうかってぐらい怖かったよ、視線が。

ちなみに、いま俺達は『IS/VS』をやりながら弾の妄言に付き合っていた。

 

…ねーよとか言ってるけど、俺はのほほんさんと、一夏は箒と同居している状態なのだが、言えば色々危ない。

 

そして、ニヤニヤと気持ち悪い表情をしている弾にトドメをさしたところで、いきなり扉が勢いよく開けられた。というか蹴り開けられた。

 

「お兄!さっきからお昼出来たよって言ってんじゃん!さっさと食べに───」

 

どかんとドアを蹴り開けて入ってきたのは弾の妹、五反田蘭。歳は一個下で今は中三。有名私立女子校に通っている優等生。うん、兄とは違うのだよ兄とは。

 

「あ、久しぶり。邪魔してる」

 

「ハロハロー」

 

「一夏さん!?祇鳴さんも」

 

俺おまけ?まあ、いいけど。

 

「い、いやっ、あのっ、き、来てたんですか……?全寮制の学園に通っているって聞いてましたけど……」

 

「ああ、うん。今日はちょっと外出。家の様子見に来たついでに寄ってみた」

 

「そ、そうですか……」

 

もう、俺と弾が完全に蚊帳の外だった。母さん、何故だろう涙が出てくるよ?

 

「おい蘭、ノックぐらいしろよ。恥知らずな女だと思われ───」

 

ギンッ!蘭の視線一閃。

 

弾がダメージを受けたマ○オのように縮んでいく。相変わらず分かりやすい戦力図で何よりだ。

 

「なんで言わないのよ……」

 

「い、いや、言ってなかったか?そうか、そりゃ悪かった。ハハハ……」

 

「…………」

 

「す、すみませんでした!!!」

 

最後に死に体にナイフを突き立てるが如くの視線を再度弾に送りつけ、蘭は自分の部屋に戻っていった。

 

「苦労してんのな…」

 

「分かってくれるか?友よ……」

 

「馬鹿一夏…」

 

「え、俺?」

 

むしろお前以外に誰がいる。

 

「まあ、いいや。とりあえず飯食ってから街にでも出るか」

 

「おう、そうだな。昼飯ゴチになる。サンキュ」

 

「なあに気にするな。どうせ売れ残った定食だろう」

 

「ああ…あのメチャクチャ甘いカボチャ煮定食ね…」

 

別に嫌いじゃないけどさ…食わせて貰えるだけありがたいけど。ただし、あれは甘すぎる。お陰で女性が誰一人として頼んだことが無いというのは、ここだけ話だ。

 

「じゃ。ま、行こうぜ」

 

弾の部屋を出て一階へ。一度裏口から出て、正面の食堂入り口にと戻る。

 

多少面倒だが、「この造りのお陰で私生活に商売が入ってこないんだよ」と前に弾が言っていた。そういうものなんだろう。家というのは暮らしている人の満足度が高ければそれでいいんだし。

 

「うげ」

 

「ん?」

 

「は?」

 

「………………」

 

露骨に嫌そうな声を出す弾を後ろから覗く。そして、すぐに納得した。

 

覗いた先には、昼食が用意されたテーブルについている先客がいた。

 

「なに?何か問題でもあるの?あるならお兄ひとり外で食べてもいいよ」

 

「聞いたかお二人さん。今の優しさに溢れた言葉。泣けてきちまうぜ」

 

先客はもちろん蘭である。祇鳴は涙を拭う弾にハンカチを差し出しながら、相変わらずの展開に苦笑する。

 

「別に四人で食べればいいだろ。それより他のお客さんもいるし、さっさと座ろうぜ」

 

「そうよバカ兄。さっさと座れ。祇鳴さんもどうぞ」

 

「へいへい……」

 

「お邪魔します」

 

一夏の一言でテーブルへと着き始める。その時にさり気なく一夏を蘭の隣へと誘導しておいた。うら若き乙女の恋路は応援するのが俺の信条である。蘭の近くに弾を誘導するのも忘れなかったが。テーブルに着く時に蘭からアイコンタクトで「ありがとう」と伝えてきたので、同じく目線で応えておいた。頑張りなよ、蘭。

 

「ん?そういや蘭さあ」

 

「は、はひっ?」

 

テーブルに着くと、一夏が何かに気づいたらしい。

 

「着替えたの?どこか出かける予定?」

 

「あっ、いえ、これは、その…」

 

俺は入ってくる時に気づいてはいたが、さっきまでのラフラフな姿から一変。

 

髪は綺麗なキューティクルを放つロングに服装は半袖のワンピース、裾から伸びる足にはフリルのついた黒いニーソックスと、見違える程綺麗になっていた。どうやら一夏に魅せる為に着替えたらしい。

 

「分かった、デートだろ!」

 

ダンッ!

 

「違いますっ!」

 

テーブル叩いて即時否定。毎回毎回呆れる程、見事に地雷を踏み抜きました…

 

「蘭も苦労してるな…」

 

「はい…」

 

「ん?」

 

『はぁ……』

 

こいつの鈍さは一生治りそうにない。

 

「食わねえんなら下げるぞガキども」

 

「く、食います食います」

 

ぬっと厨房から現れたのは八十を過ぎてなおも健在、五反田食堂の大将にして一家の頂点、五反田厳その人だった。

 

肩まで袖を捲り上げた調理服に、筋肉隆々の両腕。そこから繰り出される拳骨は千冬姉さんに勝るとも劣らない威力である。見ていてかなり痛そうだったし。一夏も弾も、俺の注意も聞かないで遊びまくるからああなるんだよ。拳骨が平手に変わった日にゃ、二人とも3mは

軽く吹っ飛んでたから、その威力がよく分かる。あれでも手加減していたのだから、末恐ろしい……

 

ま、要するに大人しく昼飯を戴けという事だ。

 

『いただきます』

 

「おう。食え」

 

厳さんは満足げに頷いて次の料理を始める。二重の意味で五反田食堂鉄板メニュー『業火野菜炒め』の注文が入ったらしく、タタタタタッと軽く鋭い包丁の音が響く。ジュウジュウと野菜を炒める音をバックに、俺たちは食事の合間合間に雑談を始める。食べ物を噛みながら喋ると中華鍋が飛んでくるので、その辺りのマナーは徹底しているのだ。

 

「でよう一夏。鈴と、えーと、誰だっけ?ファースト幼馴染?と再開したんだって?」

 

「ああ、箒な」

 

「ホウキ……?誰ですか?」

 

「俺と一夏のファースト幼馴染の名前だよ」

 

「ちなみにセカンドは鈴な」

 

「ああ、あの……」

 

鈴の名前が出ると、蘭の表情が僅かに硬くなった。恋する乙女同士、語らずともお互いに何か感じているらしい。というか蘭も鈴も箒も分かりやすすぎるけれどね。素直にならなければ、唐変木の一夏が分かるはずなどないのだが、どうやら事はそういうことではないらしい。乙女心は複雑だ。

 

「そうそう、その箒と同じ部屋だったんだよ。まあ今は───」

 

(あっ!おい馬鹿──────)

 

と、思った時にはすでに遅かった。

 

がたたっ!

 

「お、同じ部屋!?」

 

取り乱した蘭が突拍子もなく立ち上がる。

 

そらそうですよね〜……謂わば同棲な訳だからね。ていうか、何故こいつはそんな事をいきなり暴露しやがったんだ。もう少し女の子の気持ちも考えようぜ?あ、無理か……

 

「ど、どうした?落ち着け」

 

お前の所為だよ、お前の。

 

「そうだぞ落ち着け」

 

ギンッ!再び視線一閃。弾は小さくなる。マ○オっていうかヘタレ具合からしてルイー○だな、こりゃ。

 

ちなみに厳さんは蘭には甘いのでいくら騒ごうがスルーする。一夏たちが騒いだら高速のおたまが飛んでくる。年季が入ったおたまは凹んでもいいぐらいの回数は一夏や弾の頭に直撃しているが、今でも綺麗で現役活動中である。いったい何で出来てんだあのおたま……

 

「い、一夏、さん?同じ部屋っていうのは、つまり、寝食を共に……?」

 

「まあ、そうなるかな。ああ、でもそれ先月までの話で、今は別々の部屋になっている。当たり前だけど」

 

ちなみに今は俺がルームメイトです。先月にその場凌ぎだった部屋割りが見直され、男子は一カ所に集められた。ま、俺たちのことだが。部屋替えの時にのほほんさんに泣き付かれたが、千冬姉さんの有難いご指導により引き上げていかれました。泣き付いた時よりも帰っていく時の方が泣きが激しかったのは内緒である。まだ、《世界最強》を敵に回したくはない。

 

「い、一ヶ月以上同せ───同居していたんですか!?」

 

「ん、そうなるな」

 

くらっ……という音が聞こえた気がした。お〜い、大丈夫か〜?そして横で汗をダラダラ流している弾が物凄く気持ち悪いです。お〜い大丈夫か〜?人として〜

 

「……。決めました」

 

はい、何をでしょう。

 

「私、来年IS学園を受験します」

 

がたたっ!

 

「お、お前、何言って───」

 

ピュッ──────ガン!!

 

ナイスコントロール。見事におたまは弾の顔面を直撃。床では申し訳なさそうに椅子が倒れた反動で揺れていた。

 

「え?受験するって……なんで?蘭の学校ってエスカレーター式で大学まで出れて、しかも超ネームバリューのあるところだろ?」

 

その価値のある名前を失念してやがるのはどこのどいつだ。

 

「でもうちは推薦ないし、実技による適性試験がダメだとどうにもならないよ?」

 

「そ、そうだ!実技があるんだよ!な、だから諦めて普通に───」

 

「その点は大丈夫です。」

 

祇鳴の言葉に弾の顔が一瞬輝く。

 

と蘭はふっふっと笑みを浮かべて、ポケットから一枚の紙を取り出して俺に手渡してきた。

 

「祇鳴さん、これを見てください」

 

「なんだこれ?どれどれ……げえっ!?」

 

手渡された紙を覗き込んだ弾が絶句した。祇鳴も内心驚いていた。

 

「IS簡易適正試験、判定……A」

 

「問題は既に解決済みです」

 

蘭はふっと笑いながら返すと一夏の方を向いた。

 

「で、ですので、一夏さんには先輩として是非ご指導を……」

 

「ああ、いいぜ。受かったらな」

 

蘭のお願いを一夏はあっさり承諾。それに蘭が目を輝かせると弾が割り込んだ。

 

「お、おい蘭!お前何勝手に学校変えること決めてんだよ!なあ母さん!」

 

弾はそう言って母親に同意を求める。

 

「あら、いいじゃない別に。一夏君、祇鳴君、蘭のことよろしくね」

 

「あ、はい」

「ええ……」

 

しかし、その年齢不詳の母親こと五反田蓮はあっさりそう返して一夏と祇鳴に向けて言い、あまりの軽さに二人ともこくんと頷いてしまった。

 

「はい、じゃねえよ!ああもう、親父はいねぇし!いいのか、じーちゃん!」

 

「蘭が自分で決めたんだ。どうこう言う筋合いじゃねぇわな」

 

「いやだって───」

 

「なんだ弾、お前文句があるのか?」

 

「……ないです」

 

弾の説得に厳さんは耳も貸さずにそう言い、続けようとする弾を一睨みで黙らせた。

 

てか、ホント弱いなお前……

 

「おいおい弾、お前身内だろうと言う時はビシッと言わねえと駄目だろ?」

 

そこに一夏が呆れたように笑いながら言う。ならばここはひとつお灸を据えてやろう。

 

「そうか、えらいな一夏。じゃあ今度千冬姉さんに一つ、掃除や洗濯をちゃんとするようビシッと言ってやってくれないか?」

 

「誠に申し訳ありません!前言撤回させてください!!」

 

こいつはこいつで弱いなあ。

 

「では、そういうことなので。ごちそうさまでした」

 

蘭は礼儀正しく挨拶をし、食器を片付けに厨房へと入っていく。

 

「おい、一夏」

 

その隙をみて、弾が一夏に小声で話しかけた。

 

「お前、すぐに彼女を作れ。すぐに!」

 

「はあ!?」

 

「はあ!?じゃねぇ!すぐ作れ!今年、いや、今月中に!」

 

うわぁ…明らかにゴリ押しのその場凌ぎが敢行されてるよ…

焦り過ぎだ、落ち着け弾。もしそうなっても弟が一人増えるだけだ。

 

弾の言葉に一夏は訳が分からんというような顔と声で返し、それに弾は必死に食い下がった後俺の方を向く。

 

「祇鳴からもなんとか言ってくれ!」

 

「俺は恋愛とは個人の問題であって、他人は必要以上に介入すべきでないという考え方なんだ。馬に蹴られるのもごめんだしな」

 

「チクショウ!ここに味方はいないのか!?」

 

祇鳴は弾の願いをあっさり一蹴、弾は一人そう声を上げた。

 

「お兄」

 

そこに運悪く蘭が戻ってきた。そして、戻ってきた蘭から尋常じゃないオーラを感じ取って祇鳴は思わず身構えそうになり、すんでのところで留まった。同じオーラを感じているのか弾は冷や汗をだらだらと流し、逆に一夏はオーラを感じてないのか平然としている。唐変木の面目躍如である。

 

「お兄、聞いてんの?」

 

「お、おおおおおう。な、なななななんだ?」

 

尋常じゃないオーラを纏った蘭の言葉に弾は震えながら聞き返す。

 

[ヨ ケ イ ナ コ ト ヲ ス ル ナ]

 

彼女の目はそう語っており、弾は無言で細かくコクコクと頷いた。

 

「で、では私はこれで」

 

はっと我に返った蘭は、そそくさとその場を立ち去っていく。

 

「……………」

 

弾は固まっている。凍ったのだろうか。まあ今日は暖かいし放っておいても溶けるだろう。

 

「ご馳走様でした。それで一夏、悪いけど先に寮に戻ってくれる?」

 

「ん?どこか行くのか?」

 

「うん。ちょっと野暮用がね」

 

「そうか」

 

(それに少し気になってたし…)

 

祇鳴は食べ終わった食器を厨房に持っていった後、厳さんに「失礼しました」と言い残して五反田食堂を出て行った。

 

────────────

 

「確か、この辺り……まだあるかな?……」

 

街の中、祇鳴はそこをきょろきょろと見回しながら歩き回っていた。そしてようやく一軒の店を見つけるとそこの引き戸を開ける。

 

「らっしゃ――」

 

「……久しぶり」

 

そこにいた男性は客である祇鳴に声をかけるが、相手がよく知る相手であることに気づくと声を失い、祇鳴も静かにそう返すとカウンター席に座る。

 

「とりあえずラーメンで」

 

「お、おう……」

 

祇鳴の注文に男性はこくんと頷いてラーメンを作り始める。

 

「ここしばらく来なかったけど、あんま変わらないな……」

 

「お陰様でな……」

 

「……」

 

「……」

 

祇鳴と男性はそう話すがすぐに互いに無言になる。男性は淡々とラーメンを作っていき今はラーメンの具を切っていた。

 

「鈴から聞いた。離婚したんだってね」

 

「!」

 

突如祇鳴から飛んだ言葉。それを聞いた男性───鈴の父は驚いたように祇鳴の方を向き、包丁がネギをざくりと切る音が響いた。

 

「知らなかったっけ?鈴、今は中国のIS代表候補生でIS学園に通ってるよ」

 

「……そうか。お前さんも今はIS学園の生徒だったな」

 

祇鳴の情報に鈴の父はそう呟き、完成したラーメンを差し出す。

 

「いただきます」

 

祇鳴は両手を合わせて挨拶をし、割り箸を割ってラーメンを食べ始める。そして鈴の父がふぅと息を吐いた。

 

「何がいけなかったんだろうなぁ……いつの間にか軋轢がたまっていたというかなんというか……鈴にも辛い思いをさせただろうな」

 

「ああ。一夏が他の女と仲良くなってるせいで私の居場所がないってダレてたし……だけど、今はもう元気だ。心配はいらないよ」

 

鈴の父の言葉に祇鳴はラーメンを食べながら返し、それに鈴の父はどこか安心した様子を見せた後、軽く息を吐く。

 

「家族って、難しいものだよな……」

 

「ああ……そうかもね」

 

鈴の父のため息交じりの言葉に、祇鳴はそう返してスープを一口啜る。うん、美味しい…

 

「美味いよ。俺がここでバイトしてた時を思い出す」

 

「ありがとよ」

 

祇鳴の褒め言葉に鈴の父は静かに返す。

 

俺は一時期、家計を少しでも助ける為に一夏と共にここでアルバイトをしていた。あの頃はまだ鈴の母親とも仲が良く、アルバイトに行くと一緒に厨房に立つ姿をよく見掛けた。だが今は、お客はよく入っていて繁盛はしているが当時のような活気はなかった。

 

祇鳴はラーメンを食べ終えると立ち上がった。

 

「650円だったよな?値上がりしてなきゃ」

 

「ああ」

 

鈴の父は静かに頷き、祇鳴は財布から650円丁度出すと彼に手渡す。

 

「じゃ、またその内来るよ」

 

「……言っとくが───」

 

「分かってる。あんたがまだ店を続けてる事は内緒にしとくよ……でも、鈴がこの店を見つけるかもしれない事までは保障できない。」

 

「……ありがとよ」

 

鈴の父の言葉を遮って祇鳴は返し、鈴の父は静かにお礼を言う。そして祇鳴は店の戸をガラリと開けた後立ち止まり、振り返って言った。

 

「忘れるなよ。あんたは鈴の父親だ。その事実は一生変わらない……あんたが離婚した理由も分からないのに鈴に会えとか復縁しろとかは言わないけど、せめて鈴とおばさんと……家族の絆は一生忘れないでくれ」

 

「……ああ」

 

祇鳴のどこか懇願するような言葉に鈴の父は静かに頷き、それに祇鳴は満足そうに微笑む。

 

「じゃ、ご馳走様」

 

そう言い残すと祇鳴は店を出て行った。

 

────────────

 

その後、一夏たちがいるであろうゲームセンターの周りを避けて街を散策。途中で、本屋に寄ってお菓子作りの本を三冊程買ってから学園へと戻った。

 

寮の自室に戻ると一夏はベッドに寝転んでぶらぶらと手を振っており、祇鳴は冷蔵庫───部屋に備え付けているものではなく、持参というか入学前に買った鍵付きの小型冷蔵庫───から冷えたコーラを取り出し、一気に煽る。炭酸で少しむせた……

 

「あ〜、手がだるい……」

 

「どうしたんだ?」

 

「あー。あれから弾とゲーセンにいってエアホッケーやったんだよ……で、今回で俺の十連勝が十六連勝にまで伸びた」

 

「あいつエアホッケー弱いもんな」

 

それを聞いた祇鳴は苦笑を漏らす。それから一夏は何か考える様子を見せた後起き上がった。

 

「じゃ、俺夕飯食っくるわ」

 

そう言ってドアの方に行き、ドアノブに手をかけようとした。と、突然コンコンとドアがノックされた。

 

「一夏、いる?」

 

「おう」

 

聞こえてきた声に答えながらドアを開ける一夏。それにそこにいた少女───鈴はぎょっとした顔を見せた。

 

「い、いきなり開けないでよ! びっくりするでしょうが」

 

「ドアのとこにいたからしょうがねえだろ?ところで、なんか用か?俺今から飯食いに行こうかと思ってたんだけど」

 

「そうだと思って誘いに来たのよ。祇鳴は?」

 

「あぁ、俺は昔からある美味しいラーメン食ってきたし、コーラ飲んでから行くから二人で食べてきなよ。」

 

鈴が誘ってきたが、それに俺は開けたばかりのコーラの缶を一本見せながら返す。

 

鈴は二人きりの方が良さそうだし、今日の俺は少しばかり鈴に優しくしてやるつもりだった。このくらいのことは親父さんも許してくれるだろう。

 

「あ、そう。んじゃ行こっか、一夏」

 

「ああ。んじゃ」

 

鈴の言葉に一夏は頷き、二人は部屋を出て行く。それを見送ってから、祇鳴はコーラの缶をゴミ箱に捨て、本屋のビニール袋から買ってきたばかりのお菓子作りの本を引っ張り出した。コーラは飲み終わっていたが、さすがにすぐに食堂に向かうと不自然な為、やむなく時間を潰すことにした。

 

「……結局あの無人機はなんだったんだろうな」

 

自分以外誰もいない部屋に零れる声。前回のクラス対抗戦で、突如学園空中に現れた無人機。あれについては、千冬姉さんにコアを差し出して事の顛末を伝えるとすぐに緘口令が敷かれ、直接戦闘に関わった祇鳴は誓約書を書かされた(それ以前に勝手に戦ったことに対してかなりのお叱りを受けたが)。

 

(いきなりあんなところに飛び込ませようとする理由はすぐに思いつく限りで二つある。一つは無人機の実戦における性能テスト、だがすぐ緘口令が敷かれたからいいものの情報漏洩を考えるとリスクの方が高いように感じる。そしてもう一つは……)

 

祇鳴はそこまで考えると一旦考えを切り、表情を少し研ぎ澄ませる。

 

(ISを操縦できる男性、すなわち俺か一夏の誘拐あるいは暗殺。特に俺達の誘拐に成功すれば俺達を実験台に男性でも動かせるISの開発に成功するかもしれない……だがそんなものを世に出したらその国は俺達を誘拐したということが明らかになるも同然、まず間違いなく世界的に抹殺される。こっちもリスクが高いか?……あ)

 

祇鳴はそう考察を張り巡らせた後もう一つの可能性に気づく。が、すぐにないないというように首を横に振って本を閉じて立ち上がる。

 

「この可能性はありそうだが、そんなバカバカしいこと考えるだけ損だな。ま、とにかく今は今月の学年別個人トーナメントとやらでも考えるようにするか。さ、飯にしよ」

 

そして自分に言い聞かせるようにそう言って部屋を出て行き、食堂に向かう。とその途中で見覚えのある後姿に気づた。

 

「よお、箒」

 

「ああ、祇鳴か」

 

声をかけた相手───箒は祇鳴を見つけ立ち止まる。それに早足で追いつき祇鳴は話を続ける。

 

「これから飯なんだけど、箒も一緒にどう?ご飯は大勢で食べた方が美味いしさ」

 

「それは構わないが……ところで一夏は?」

 

ああ…やっぱりそっちが気になるのね……

 

「ああ、あいつなら鈴と一緒だ。一夏と一緒のがいいなら止めないが?」

 

「……いや、構わない」

 

俺の応えに箒はどこかむっとした様子で返す。相変わらず素直じゃないなぁ…

 

そして二人は食堂にやってきて注文を行い、食事を持って適当に空いている席に座る。

 

「……ん?」

 

と、祇鳴は周りが変にきゃーきゃー騒いでいるのに気づく。食事の時はあまり騒がしいのは好きではない為、訝しげに眉をひそめた。

 

「なんか騒がしいな、一夏がどうのこうの……なあ箒?」

 

「な、なんだっ!?わ、私は何も知らんっ!?」

 

少しばかりカマをかけてみたら、明らかになんかあった返答が返ってきた。

 

祇鳴のあからさまに訝し気な視線に、箒はビクッとしたように小さく肩が跳ね上がった後、猛烈なスピードで反論してきた。

 

「……あのさ、俺まだ何も言ってないんだけど……まさか箒?」

 

「くっ!わ、私は無関係だっ!万が一何かあったとしても、貴様に話す義理は無いっ!!」

 

墓穴を掘ったのにも関わらずこの強気。さすが、男子相手に真正面から立ち向かうそのメンタルは余程強いとみえる。

 

だが、先月までならいざ知らず一夏と同室になった今となっては放ってはおけない話題なので、不本意ではあるが今回は少し強引に聞き出すことにする。

 

「生憎、その取ってつけたようなめっちゃキョドリ気味の発言を聞いてはいそうですかと信じられるほど俺は純粋じゃないんでね。それに同室である一夏が騒ぎの中心なら、俺は確実に巻き込まれる側になるんで。悪いけど……さっさと吐け」

 

「……わ、わかった」

 

祇鳴の指摘+真正面からの殺気の篭った言葉に、箒は少し怯えながら諦めたように頷いた。

 

─────────

 

「……と、いう訳だ」

 

それから箒はぽそぽそ今の女子中の会話の噂の真相と思われる事を暴露。

 

「つまり箒が学年別個人トーナメントに優勝したら一夏に付き合ってもらうっていう個人的な約束がどこかから漏れて、学年別個人トーナメントに優勝した者は一夏と付き合えるっていう噂になってしまったってわけね…」

 

「あ、ああ……」

 

箒が顔を赤らめながら目を逸らした。改めて確認されると恥ずかしかったらしい。

 

でもよくもまあ、あの箒がここまで大胆な行動に出るとはね……やはり口ではああ言ってても恋する乙女ということか。

 

でも、その発言だと一緒に何処かへ出掛けようとう捉え方も出来るわけだけど、大丈夫?あの朴念仁の一夏の場合、無くも無いどころかそちらの可能性の方が多いよ?口には出さないけど。

 

「まあ、素直じゃなかった箒がそこまで言えるようになったのは大きな進歩かな?」

 

「ば、馬鹿者!!今はからかっている場合ではない!」

 

「まあ、正攻法としてはその約束を現実にする。つまり箒がトーナメントに優勝する事だけど……箒が使用するのは戦法から考えて打鉄。それで他の生徒に加え、一夏や代表候補生であるセシリアや鈴をおさえて優勝ってのは客観的に分析すると正直言ってあんま現実味がないな……」

 

「な、何故そう言い切れる!!」

 

「戦闘技術と経験の違いから、だよ」

 

「くっ!」

 

正論なので箒は黙るしかない。口では強がっていても、その辺はしっかり認識しているようだ。

 

「それに、運良くセシリアと鈴が潰しあってくれれば早いけど、そう上手くいくとは思えないし……」

 

祇鳴は冷静に分析し、それを聞いていた箒はぐっと口を紡いで黙っている。

 

「あとは……いっそ抜け駆けになるかもしれないけど、一夏に真正面から付き合ってくれって頼んでみたら?」

 

「む、無理だ!!この条件をつけるだけでも大変だったのだぞ!!」

 

祇鳴の提案に箒は顔を真っ赤にして顔を横にぶんぶんと振る。圧倒的に恋する乙女の顔だった。

 

(へえ…こいつ、本気で一夏に惚れてるんだな…)

 

「はあ…分かった」

 

「な、何が分かったのだ?」

 

突然の発言に困惑する箒。

 

(基本的に他人の恋愛には必要以上に介入しない主義なんだけど…)

 

そして、次の発言にさらに驚く。

 

「まあ、箒がここまで度胸見せたんだ。トーナメントまで俺が鍛えてやる。」

 

「は?い、いきなり何を言っている!?」

 

「だから箒がトーナメントで優勝出来るように、俺が修行をつけてやるって言ってるの」

 

何の前触れもなく差し出された提案。それはトーナメントまで祇鳴が箒を鍛えて、優勝させようということだった。

 

「き、貴様にそんなことをされる謂れはない!それに私には修行など───」

 

「それじゃ一夏は諦めるの?」

 

「──────ッ!!」

 

まだ、グダグダと言い続ける箒に、最後の言葉を投げ掛けた。

 

一夏を諦めるのか。一夏が誰かと付き合うのを黙って見ているのか。

 

───一夏への気持ちはその程度のものか、と。

 

その言葉に目を見開いて、驚愕の表情を浮かべた。当たり前だ、あれだけ思い続けていたのだ、共にいた日も、離れた後も、再開した後も……それがこんな事ぐらいで止まる訳が無い。それに今回は自ら掴んだチャンスだ。箒の事だ、絶対に自分自身の力で成し遂げようとするだろう。そう思っての言葉だった。

 

こんな事言いながら実は内心ヒヤヒヤしています。いつもなら絶対に言わない言葉なので、これであってたのか不安で仕方ない。これで箒が潰れたら俺の所為だよな…とか、いきなり張り手が飛んできたら…とか、とにかくいろいろな思考が渦巻いて飛び回っています。ああ…早くしてよ箒!───この間1.8秒の思考である。

 

以外にノミ並の心臓です。

 

そして、当の箒は何かを考えるように一瞬目を伏せ。

 

「お願いする……私が優勝できるよう鍛錬をつけてくれ」

 

「うん、よろしく」

 

祇鳴にぺこりと頭を下げた後、真剣な表情でそう続け、それに祇鳴は静かに笑いながら返す。

 

それから二人は食事を終えると食器を片付け、それぞれの部屋に戻っていった。

 

ただし祇鳴だけは、食堂の入り口から此方を睨む金髪ロールを巻く為に、一時間のロードワークをする事になったが……

 

セシリアさん、目が本気過ぎて怖かったです(帰寮した男子生徒T・Kさんの証言より)

 

────────────

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

 

「あのー、織斑くんや翔河くんのISスーツってどこの型なの?見たことないけど?」

 

月曜日の朝、席に座って談笑していた一夏と祇鳴にISスーツのカタログを見てどれを申し込むかと話し合っていた女性陣の一人が突然話しかける。

 

「あ、え〜と…」

 

「確か、イングリッド社のストレートアームモデルを元にどこかのラボが作ったって聞いたかな。男用のISスーツは今まで存在しなかったから特注品なはずだよ」

 

女子の問いに一夏が思い出そうとすると代わりに祇鳴が答えた。女子達はへーと呟いて頷く。そして祇鳴は両手を頭の後ろにやりながら続けた。

 

「それと、なんか選ぶ時にデザインがどうのこうの言ってるけど、ISは一応一国を揺るがすようなもんなんだって事は覚えておきなよ?ま、年頃の女の子にお洒落を度外視しろとは言わないけれどね。これは心構えの問題だよ」

 

「は〜い」

 

祇鳴の軽い口調での注意に女子たちは頷いて集まりの方に戻っていく。

 

「そういえば、ISスーツってなんのために着用するんだっけ?着なくっても動くけど、動かしやすくするために、えーっと……」

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動作を行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

一夏がISスーツの説明を思い出そうとしているところにすらすらと説明をしながらこのクラスの副担任である山田真耶が姿を現す。

 

「山ちゃん詳しいー!」

 

「一応先生ですから……って、や、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへん……って、や、山ぴー?」

 

山田先生の説明を聞いた女子生徒達が彼女を思い思いのあだ名で呼ぶ。

 

というか、ホント舐められてますね、山田先生…

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃんいいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「ま、まーやんって……」

 

「あれ? マヤマヤの方がよかった? マヤマヤ」

 

「それもちょっと……」

 

「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれは止めて下さい!」

 

山田先生はヤマヤというあだ名にだけは明確な拒絶の意思を示す。そのあだ名で前に何かあったのだろうか。

 

「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。分かりましたか?分かりましたね?」

 

『はーい』

 

山田先生の言葉に女子達は返事を返すが、声だけの返事というのは容易に分かり、とほほと呟いた。

 

「ははは。まあ、山田先生の人徳の賜物ってことなんじゃないんですか?なんなら俺も、まーやんとかのあだ名で呼んでみましょうか?」

 

「はうっ!?……コ、コホンコホン。いいですか翔河くん!ちゃんと先生とつけたり目上の相手に敬語を使うというのは大事なことなんですよ!」

 

ずーんと暗いオーラを背負い心なしか涙目の山田先生に対し、祇鳴もからかうように言う。すると彼女は、一瞬顔を赤くして声を漏らした後、咳払いをして注意をした。

 

「はいはい、まーやん先生」

 

「もー!」

 

だが祇鳴はそんなことは気にもとめず、またからかうように続ける。

 

お陰で山田先生の怒ったように両腕をぶんぶんと上下するという、何とも可愛らしい仕草を拝見することが出来た。この先生の場合、年相応の美しさの前に可愛さが先に出てくるのだ。本当に成人ですか山田先生?

 

そんな生徒と先生というより、餓鬼と子供のやり取りをしていたら、突如スパァンという音が教室内に響く。

 

「教師には敬意を持って接しろ」

 

「っつ~……」

 

千冬姉さん登場である。朝っぱらから先生によるありがた〜い出席簿アタックを受けた祇鳴は頭を押さえて机に突っ伏し、千冬姉さんはそれを一瞥する事もなく教壇に立った。

 

おいコラ、俺の頭はモグラ叩きのモグラじゃないんだよ?そんなことしてたら、今の世の中じゃ生徒への暴力とかで保護者から苦情がきますよ?

 

……そういえば目の前のアレが保護者でした。俺に逃げ道は無いと悟った瞬間である。

 

「諸君、おはよう」

 

『お、おはようございます!』

 

千冬姉さんの挨拶と同時に、ざわざわとなっていた教室が一瞬で静かになり挨拶を返す。

 

軍隊かお前らは。敬礼も行えば、なお良し。

 

「今日からは本格的な実践訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

(いや、構うでしょ!?一応同い年の男がいるんですけど、ここに若干二名!!)

 

心中で即ツッコミ。何ちゅうことを言ってのけるんでしょうね、この教師兼保護者様は。そして、そっと横目で一夏を見た。

 

「…………」

 

無言だった。

 

そうでした、この教師の弟がこれでした。気にした己がバカバカしい……

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

そんな間に千冬姉さんは副担任にバトンタッチ。ちょうど眼鏡を拭いていた山田先生はわたわたと眼鏡をかけ直して教壇に立った。相変わらず一つ一つの動作が年齢とかけ離れている。お〜い、しっかりしろ〜納税者〜。

 

「え、ええとですね。今日はなんと転校生を紹介します。しかも二名です!」

 

「「!?」」

 

『えええぇぇぇぇっ!?』

 

山田先生の言葉に一夏と祇鳴が目を丸くし、ほぼ同時に女子勢からも驚きの声が上がる。

 

(なんで俺たちのクラスなんだ?普通、人数が合うよう分散させるんじゃないの?)

 

そんな至極真っ当なことを考えていたら、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

「……」

 

クラスに入ってきた二人の転校生を見た瞬間、教室内のざわめきがぴたりと治まる。まあそれもそうだろう。

 

(……男?)

 

その内の一人が───男だったのだから。

 




さて、始まりました!《後書き座談会》のコーナー!!
今日のゲストは篠ノ之箒さんで〜す!!

パフパフパフ♪ドンドン!ヒィロロロロ〜♪

「煩いぞ」

早速、辛辣なお言葉!だがそこがいい!!

「……気持ち悪い」

まあまあ、ここからはちゃんとやりますから安心してください。
さて、一夏の本妻との声も名高い箒さんですが───

「な、何だと!?わ、私がい、いい、一夏の嫁だと!?」

ええ、クラブでの人気投票でも一位でしたし。

「そ、そうか。わ、私が一夏の……ふふ」

あの〜箒さん?幸福感に浸っているところ恐縮ですが先に進めますよ?

「ん?あ、ああ、構わない」

(あ〜……幸福感のところは否定しないのね…)それではズバリ聞いていきましょう!
箒さん!一夏のどこが好きなんですか!!

「い、いや私は別に好きという訳では……」

では嫌いなんですか?

「そんなはずはない!!」

箒さん箒さん、そんなにキツく叩いたら───

バリッ!!!

手が痛く───って、ええっ!!!??
机が砕けたぁぁぁああああああああ!!!!??

「あ、いや…す、すまん、熱くなり過ぎた……」

え〜と…とりあえず今ので箒さんが一夏さんのことが好きだという事実は分かりましたので、続けるとしましょうか…
(ガラス製だったんだけど、この机…)

さて、では改めて尋ねましょう!
ズバリ、一夏さんの好きなところは!?

「し、仕方ない…答えてやる。」

では、どうぞ!

「誰にでも人に優しいところだ。」

ほう、確かに他の作品でも主人公が女の子にチヤホヤされる条件の一つですね。

「一夏はそんなふしだらなことは考えん!!」

ブンッ!!

わ、わかりました、わかりましたから!

こんな狭い場所で木刀なんて振ったら───

ドガンッッ!!!

壁を貫くのは止めて下さいませんかねぇぇぇええええええええ!!!??

「おっとと、危ないなぁ…」

あっ、バカ!いま出てきたら……!?

「───え?い、いいい一夏!?何でそんなところに───!?」

ほら!見つかっちゃった!!

「いやな、主からここに隠れてたら面白いもんが見れるぞって言われてさ」

「ほう……………」

コソコソ……

「おい………」

ビクッ!は、はい。なんでしょう…?

「どういう事だこれは?」

い、いや〜私はただ箒さんの手助けをしてあげようかな〜と思いまして……

「要するに?」

そうなれば面白いかな〜と。

「死ねえええぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!」

ドガッッッッッッン!!!

げぶしっ!!!?

「え、え〜とともかく、これからもこの小説をよろしく!サイナラ!!」

(に、二度もセリフを奪われた……ガクッ………)

次回、『金の貴公子と銀の剣』お楽しみに♪
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