異色な二人の男たち
<祇鳴side>
「全員揃ってますね~。それじゃあ
俺の目の前には黒板の前でにっこりと微笑む一人の女性。
身長はやや低めで、生徒たちと比べてもほとんど変わらない。
更におそらくサイズがあってないであろうだぼだぼの服は、ただでさえ小さい本人の身体をより小さく見せてしまっている。
かけている黒縁のメガネも、やはりやや大きいらしく若干ずれている。あれじゃ、ホントにメガネの役割を果たしているのか疑問だ。
なんというか、中学入りたての子供に無理やり大人の服を着せたら、ちょうどこんな感じになるんじゃないだろうか。
そんな不自然極まりない目の前の女性は、このクラスの副担任こと
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
『………………………………』
うわぁ………見事なまでの無反応………
皆緊張しているのか、教室中どこからも返事どころか身動きすら起きない。
「じゃ、じゃあ自己紹介からお願いします。えっと、出席番号順で」
うろたえる副担任を見て、これでよく教師が務まってんな……とは思ったが、そんなことよりも隣の席に座る親友の方が気がかりだった。
だってさっきから、身動きどころか口一つ動かしている様子がないし。
まあ、人間は鼻でも息ができるため死にはしないだろうが、緊張しすぎじゃないだろうか。
とは言いつつも、俺もさすがにこの状況では軽く緊張しているが。
だってさ、入学早々俺と親友以外全員女子の部屋に詰め込まれたら、男なら誰だって緊張するでしょ。
俺も親友─────
(やれやれ……初日から精神力使いそうだ……)
半ば諦めかけている俺を攻める者はいまい。
<祇鳴side end>
<一夏side>
今日は高校の入学式。新しい世界の幕開け、その初日。
初の学校、初のクラスメイト、初の友達。実に喜ばしい……とはならなかった。
さっきから前で副担任の女性(山田 真耶って言ってた)が何やらオロオロしていて、かわいそうな感じではあるのだが、残念なことに今の俺にはそんな余裕はない。
何故か。
簡単だ。俺以外のクラスメイトが全員女子だからだ。
いや、もう一人俺以外に男がいた。
隣に座っている親友でもあり、このクラス二人目の男子、
こいつはなんでか知らないが、何故か同じ学校に来て、そして何故か俺と同じクラスにいる。
ま、見知った顔が一人いるだけでも心強いのだが、はっきり言おう。
この人数比で異端が一人増えようが、全く無意味だ。
だってさっきから、クラスメイトほぼ全員からの視線を感じる。自意識過剰ではなく。
だいたい、席も悪い。なんで真ん中&最前列なんだよ。めちゃくちゃ目立つし否が応でも注目を浴びるじゃないか。
せめて祇鳴と席を分けて欲しかった。そうすれば視線が分散されて、ここまで視線を浴びなくても済んだのに。今の視線の数(29)を2で割ってみてください、ほら半分♪
と、まぁ……こんな馬鹿なことを考えてしまうほど、今の俺はまいっている。
緊張に耐え切れず、俺はちらりと窓側の方に目をやる。
「………………」
何かしらの救いを求めての視線だったんだが、薄情なことに幼馴染の
俺……もしかして嫌われてる?
「―――君!織斑君!」
「は、はい!」
山田先生に呼ばれ、とっさに返事をするが、声が裏返ってしまった。案の定、周りからくすくすと笑い声がする。
「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴ、ゴメンね、ゴメンね!で、でもね、あのね、自己紹介、「あ」から始まって今「お」の織斑くんなんだよね。だからね、ご、ゴメンね?自己紹介をしてくれるかな?だ、ダメかな?」
気がつくと山田先生がぺこぺこと頭を下げていた。
本当にこの人、年上なんだろうか。同い年と言われても受け入れてしまいそうだ。
「いや、あの、そんなに謝らなくても………っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いてください」
「ほ、本当?本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ。絶対ですよ!」
いや、そんなに詰め寄られたら………ほらまた、すごい注目浴びてるじゃないですか。
しかしまあ、すると言った以上、男子たるもの引くわけにもいかない。
そして、立ち上がった瞬間、俺はさっきの己の発言を後悔した。
<一夏side end>