IS~陽に魅入られた者~   作:ミツバチ

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イギリスの代表候補生はお嬢様

「ふぁ~」

 

軽く伸びをしながら目を覚ます。

 

どうやら、今は二時間目の後の休み時間らしい。

 

俺が寝ている間に授業は終わったようだ。

 

そして教室の雰囲気からして、一夏がまた何かやらかしたらしい。

 

そういや、頭痛いな……なんで?

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

「へ?」

 

一夏が誰かにいきなり話しかけられて素っ頓狂な声を上げた。自毛のロールがかった金髪に、白人特有のブルーの瞳。

 

たしか、自己紹介の時にイギリス代表候補生を自慢げ語ってた奴だ。名前はええっとセシリア・オルコットだっけ?やばい……果てしなく面白そう!

 

「聞いてます?お返事は?」

 

「あ、ああ。聞いてるけど……どういう用件だ?」

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

「……………」

 

これは……あれだな、ISが扱えること=己の力は絶対とか勘違いしてる奴だな……

 

はっきり言って、俺はこういう奴は苦手だし嫌いだ。

 

粗暴な力はただの暴力でしかない。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

 

お前にとっちゃ、千冬姉さんが担任だったことの方が百倍ショックだろう。

 

だがな一夏。それは火に油だ。

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリス代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

このいかにも男を見下したような口調が、今の世情を顕著に表してんな。ヤダヤダ……

 

「あ、質問いいか?」

 

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、何?」

 

一夏、それは文字通りの意味だろ。

 

「あ、あ、あ……」

 

「『あ』?」

 

「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

 

血管マーク三つ頂きました……

 

「おう。知らん」

 

アハハ。誇らしげに言うなよ一夏。それものすごく恥ずかしい事だからね?

 

「……………」

 

どうやら怒りが一周して冷静になったらしい。セシリアがこめかみを人差し指で押さえながらブツブツ言いだした。

 

「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」

 

テレビがあっても一夏は見ないぞ?

 

あと、ブツブツ言ってる姿が近所のおばさんみたいなんだけど。

 

「で、代表候補生って?」

 

セシリアがまだブツブツ言っているので代わりに俺が説明する。

 

「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートのことだよ。単語から想像したらわかるだろ。」

 

「そう言われればそうだ」

 

「そう!エリートなのですわ!」

 

なんか知らないけどセシリア復活。

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくするだけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

「そうか。それはラッキーだ」

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

うん、一夏くん?君はなんでそう挑発的な発言をするのかな?かな?

 

「大体、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。唯一男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね」

 

「俺に何か期待されても困るんだが」

 

「ふん。まあでも?わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

全国民に問いたい。何もかも上から目線で相手のことを一切考えない行為を、果たして優しさと呼ぶのだろうか。

 

「ISのことでわからないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

なんか唯一をいやに強調された──────あれ?確か……

 

「入試って、あれか?ISを動かして戦うってやつ?」

 

「それ以外に入試などありませんわ」

 

「あれ?俺も倒したぞ、教官」

 

「俺も倒した」

 

「は……?」

 

ISを展開して待機してたら、いきなり突撃してきたんですくい投げの要領で天井に叩きつけただけだけど。

 

「わ、わたくしだけだと聞きましたが?」

 

『女子ではってオチじゃないのか?』

 

ピシッ。あ、何かいやな音だ。氷にヒビが走ったような、そういう音が聞こえた。

 

「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」

 

「いや、知らないけど」

 

どうでもいいけど。

 

「あなた達!あなた達も教官を倒したって言うの!?」

 

「うん、まあ。たぶん」

 

「当たり前だな」

 

「たぶん!?たぶんってどういう意味かしら!?それにあなた!当たり前って教官はそこまで弱くはありませんわよ!?」

 

「それって俺が弱いの前提で話してない?」

 

「えーと、落ち着けよ。な?」

 

「こ、これが落ち着いていられ──────」

 

キーンコーンカーンコーン

 

話に割って入ったのは三時間目開始のチャイムだった。今の俺達には福音に聞こえる。

 

「っ……!またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

はぁ……逃げないけど来ないでくれ。頼むから。

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