ソードアート・オンライン ~閉じ込められたモルモット   作:音読制

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1-1 開幕

どこまでも、青い空と、草が生い茂っている世界。私はその中を無邪気に走り回り、剣を振るってモンスターを倒す。

 

『凄いね。一瞬で倒すなんて』

 

おじさんに褒められて、私は笑う。おじさんも笑う。

 

『実は、これからしばらく、君はこの世界に来れないんだ。今日はそれを言いにきたんだ』

 

『え…なんでですか?』

 

『実は今、というよりずっと前から作っているゲームがあってね、本格的にそれを作るんだ。必要なデータもたまったしね』

 

おじさんは左手を振って、グラフみたいなのをだした。正直、私にはわからないが、研究結果とかなのだろう。

 

『へえ、そうなんですか。つまり、私がそのゲームの協力者になるっていうことですか?』

 

『ああ。君は世界初のVRMMO《ソードアート・オンライン》の協力者だ』

 

『それって凄いことなんですか?』

 

『ああ。何たって世界初だからね』

 

『わあい、ありがとう、おじさん!』

 

『礼を言うのはこちらの方だ。ありがとう、華怜君、一か月もしたらベータテストが始まるから、よかったら来てくれ』

 

『はい、必ず行きます!』

 

あの時の私はそう言った。無邪気に、純粋に。

 

 

 

 

そして、私は共犯者になった。

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

「…ふう」

 

私はため息をついて、頭のナーブギアを外した。視界にはつまらない、真っ白い天井が映る。

 

「華怜ちゃん、お帰り。どうだった?」

 

「うん。私が次に行くのは一か月後だって」

 

「そう、それまで我慢してね」

 

看護師のおばさんがそう言って立ち去る。また退屈な日々が始まった。でも、後一か月の我慢だ。

 

 

 

私は、生まれつき病気でずっと病院暮らしだ。なんでも原因不明の病らしく、足がろくに動かず、ベットでずっと寝たきり。こんな生活はいやだった。そんな時に茅場さんがやって来て、私にこう告げた。

 

『私の実験に付き合ってくれないか?』

 

どうやらその実験というのは、仮想世界で自分のアバターを動かす、というものだった。この実験は、私にとってとてもいいものだった。

私は、茅場さんが作った仮想世界で、生まれて初めて歩けた。走った。笑った。いろんなことを学んだ。最近では、剣を使ってモンスターを倒した。

実験の時は凄く楽しくて、毎日延長させてもらっていた。この現実世界に戻りたくなかったから。

 

「でも一か月かあ」

 

その期間の長さに私はため息をつく。私にとって長すぎる。でもこれを耐えれば、またあの日々に戻れる。

 

頑張って生きよう。

 

私は、ベットに飾ってあるアネモネの花を見て呟いた。

 

 

*****

 

 

 

 

 

二か月後、チュートリアルを経て、正式にSAOのサービスが開始された。私は勿論すぐに遊び始めた。が、それも僅かのこと。少し経った頃私は始まりの街に強制転移された。

 

そして、茅場さんによるデスゲーム開始宣言がなされた。

 

『諸君、静粛に。私がこのゲームのゲームマスターである茅場晶彦だ。君達はログアウトボタンがメニューから消えていることに気付いているだろう』

 

気づいてなかった。初めて知った。

 

『これは決して不具合ではない。このゲーム本来の仕様だ』

 

(ちょっと待て、それってつまり私達を閉じ込めようって言うの?)

 

『君達が自発的にログアウトするのは不可能だ。外部の人間が無理矢理外そうとした場合、ナーブギアから特殊な電磁波が流れ、君達の脳を焼く。HPがゼロになった場合も同じだ』

 

『ネットワークからの切断は二時間だけ許可する。ただし、時間を一秒でも超えれば君達は死ぬ』

 

『君たちが現実世界に戻るには、このアインクラッドを第100層までクリアしなければならない』

 

この言葉により一層広場の騒ぎが大きくなる。

 

-ふざけるな!ベータテストじゃろくに上がれなかったて聞いたぞ

 

その声が華怜-この世界では、アネモネの耳に聞こえた。

 

(確かにベータテストでは一か月で10層も行ってない。だけど、死ねないぶん、攻略スピードも落ちてしまうはず)

 

『最後に、ささやかなプレゼントをアイテムストレージに入れておいた。それでは諸君、健闘を祈る』

 

それだけ言い残して、茅場のアバターはきえた。

 

 

アネモネは、アイテムの手鏡を選択した。すると、全身が光に包まれて、気がつくと現実世界と同じ姿になってしまっていた。あの忌まわしい、自由を奪われた私。

足を見ると、ちゃんとあって、立ってる。その事実に私は、少しほっとする。しかし、その分、私が茅場に協力してしまったという罪悪感が芽生えてきた。

 

---私さえいなければ、私が実験に失敗していれば、この実験をやりたいって言わなければ、この悲劇は起きなかったかも知れない。

 

私は、その責任として何をしなければいけないか。答えは簡単で、できるだけ早くSAOをクリアすることだ。それしか私には出来ない。いや、それをしなければならない。気づけば、ベータテストの時にボスのいる迷宮区に足を急がせていた。

 

 

 

 

 

---どうなってるの?

 

 

明らかにおかしい。走るスピードが異常なほど速い。あっという間にトールバーナについてしまった。何かあるんじゃないか?

ステータスを見ると、足の部分に何か書いてある。

 

《俊敏Ⅲ》

 

つまり、私の足に、足が早くなるバフがついているということだ。しかも制限時間なし、永続するやつだ。これをやった犯人は一人しかいない。茅場だ。

 

---どうして私にこんなことをするんだ。私に対するお情けのつもりか?私だけ助かってほしいという願望か?私は、ただただ茅場の掌で転がされている気がして、悔しかった。

 

 

 

そして、私は迷宮区を目指して、また走り出す。茅場に貰ってしまった、この忌まわしい力で。




アネモネの花言葉…「はかない恋」「恋の苦しみ」「見捨てられた」「見放された」
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