リリカルなのはWorldend   作:yukuyuku

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とりあえず作っていた二話もほぼ同時公開。
ってなのは活躍してないじゃないですか(いやだー

まあ原作的にも本編的にも全くの導入部分なんで我慢してください・・・。
フェイトが出てきたらなのはも本気出すだろう。


第二話 それは出会いの日(前編)

第二話 それは出会いの日(前編)

 

『オキテ・・・オキテクダサイ!!』

 

意識の遥か深層に眠っていたはずの私は上から届く鳴りやまない騒がしい音、否、親しい聞き覚えのある声によって呼び戻された。

酷く重い双眸の瞼を開けると、そこには私が生きていたころ・・・・・・のパートナーがいた。

 

「・・・ここは天国? もし地獄でもあそこよりは住み心地がよさそう。」

 

「―――いい加減、お寝坊さんもいいところですよっ、双葉!」

 

「もしかして貴女は天使さんなの? すごく知り合いに似てると言うか、随分ちっこいな。」

 

「もうっ、天使はわたしじゃなくて貴女の方なのですっ! あと、ちっこいは余計ですっ!」

ビシッッ!と私に向けて指をさし、つっこむ。・・・ここにハリセンがあれば。

 

「分かってるって、アリス。でも、ノリ突っ込みは漫才の基本って教えたでしょ?」

ときっぱり返す。戦闘のない非番の時にもかかわらずに彼女を散々呼び出して訓練しては教官に「パームの電力を余計なことに使うなっ!」とどやされていた。

パーム、それは私の手元にあるスマートフォンのような多機能携帯端末のこと。といってもMANAの永劫粒子によって構成されているから"箱"の大きさは自在に変化するし、超高性能なOSが組み込まれていて一般的なスマフォとは全く比べ物にもならない代物。液晶画面に通信や情報リンク、人工天使として稼働するために必要なエネルギーを変換、充電するシステムを持つ。これが無ければただの人に等しい。

 

「いいえ、全っ然っ、分かってないですっ! もう、あれから大変だったんですよー・・・」

アリスの苦労話が続く。

要旨を掻い摘むと、どうやら零の命令で私の別次元への転送がアリスによって実行され、辿りついた先で私の休眠状態(スリープモード)が解除されなかったがために墜落しそうになり、どうにか着地したものの、なぜか現地人の集団による捜索を受けて、ばれない様にこの場所まで運んで連れてきたという。

運んで、というのはアリスが私をサポートするAIのようなもので管理権限を使って遠隔操作しながら、と言う意味。

 

(全部私のせい?)・・・でもそれは認めない。

 

「・・・それが、天使連携型コミュニケート知性体ヴァージョン2(アリスの正式名称)としての使命ね。」

という発言は「私は歴とした双葉の支援者(レスキュア)であり、断じてパシリとか奴隷、あるいは使い魔みたいに考えないでください!」と真っ向から否定された。

くどくどとその後も説教を垂れ続けられたので、素直にごめんね、と謝ってあげると何とか怒りの矛を収めてくれた。

そして改めてアリスと向かい合うといつの間にか視界が濡れて滲み、歪んで見えた。

 

あれ、どうして涙が出るんだろう。

暫く振りに彼女とじゃれ合った気がして、もう会えないと思っていたのに。私はこれで最後と覚悟を決めていたのに、何故。

 

『せめて―――お別れくらいしたかったな、アリス』

 

「泣いているのですか? 双葉。・・・・・私も泣きたいです。」

アリスは私のすぐそばまで近寄ってくる。小さな表情にハッキリと分かるくらいの大粒の涙を浮かべていた。

彼女にも感情がある。そして器用にもホログラムで再現することまで可能だった。

暫く互いに嗚咽が止まらなかった。

なんとか立ち直り、「やめなさい。アリスには元気な方が似合ってるし。」

と諭し、彼女も頷く。

こういったところはまだまだ私より年下なところがある。指摘すると「確かに私の製造年月(Serial Number)は双葉の生年月日(Birthday)より後ですけど、AIとしての容姿ホログラムは頼れるお姉さんをイメージしてモデリングした、と零お兄さんも言ってましたです!」と怒るが。

何たる内実との背理。どう見ても思考プログラムは零の趣味先行の妹キャラなのに・・・。

結果として生まれたアリスのイレギュラーな性格には開発者といえど色々と苦労したんだろうな。私も初めてのアリスとの出会いは振り回されて疲れた記憶がある。

ただそれが日々のシビアな戦いでの程よい刺激となって効いていたのだろうと感謝してすらいる。

 

「・・・・・さてと。」

起き上がって、ぱしぱしっと両手で身体の土埃を払い落す。身に着けたボディースーツが本来の白さを取り戻した。煤けた黒髪は後で入浴と手入れが必要だな、と思いながら。

 

「感動の再会も果たしたことだし、湿っぽい話もここまで! ちょっとこの世界の状況を詳しく知りたいな。」

 

了解(ラジャー)ですっ!」

勢いよく答えるアリスに満足した私だったが、次の言葉に衝撃を受けざるを得なかった。

 

「どうやらここの世界は私たちの居た世界と同じ地球みたいです! とは言っても座標は異なるので、平行世界(パラレルワールド)の可能性が高いのです。そして恐らく同時性分岐型というより近似性相対型と分析するです。」

 

「んーと、要するに私たちがいるのは『経歴と容姿における他人の空似的な世界』ってこと?」

エヴェレットの多世界解釈とかの話で二つの状態の世界が重なり合っていて、"猫が死んでいる"と"死んでいない"という状態を相対的世界状態と言い、この宇宙には・・・とか難解な説明があったと思う。

 

平行世界にはアリス(曰く前世界で導き出された一つの多世界解釈論)の言う同時性分岐型と近似性相対型が存在するという。前者は発生した起源が同一(同時性)であり、あるイベントの結果で分岐し、派生した世界。

後者は起源は全くの別だが、要素を単純化するとその多くの特徴が重なり合って見られる世界。

似た要素を持つ、分岐する世界は二つとは限らず、多次元にそのような世界は無限に存在する、と言われる、ということらしい。

まあ要するに、ここは別起源から成立した地球であり、私たちの地球と環境や人類が住む、といった大まかなところまでは同じなだけで、歴史を調べれば多くの差異部分が存在だろうということ。

ただそれにしても前世界とかなり似ていることは否めない。

私も戦闘技術だけでなくそういった科学やら予備知識も詰め込み教育されたものの、結局チンプンカンプンだった。

だが、私たちにとってはそこは大きな問題ではない。

 

「分かりやすく言うと、そうです! 細かい部分は理解できなくてもいいので、重要なところだけ。・・・この世界に捕食者(Great Eater)がいる可能性は捨てきれないです。彼らも次元間を移動する能力を持つのと、この世界にも負のエネルギーを生み出す戦争や惨劇が存在すること、捕食者の次元からはこちらの地球も観測できることには変わりないと思われるからです。」

 

捕食者(Great Eater)―――ッ!」

憎むべき対象の単語が出たことに思わず、反射的に叫んでしまう。あいつらはウイルスのように増殖し、世界を滅ぼす絶対悪。私たちの宿敵。

分かりやすく言えば、捕食者は次元へも移動する術があり、この世界にも餌が存在し、あいつらに既に目を付けられている危険性が高い、ということだった。

 

「それから気になる情報があるです。ここは双葉の出身地の「日本」と同じ国家と推定されるのですが、測定によるとMANAの濃度が非常に高いです。」

 

「それってどういうこと?」

私は首をかしげた。MANAとは「すべてのすべての源(Material & Natural All)」のことで、自然界のあらゆる生命が抱く生きたいと言う意思、正のエネルギーの総称だ。死と絶望から生まれる負のエネルギーを喰らって活動する捕食者にとって天敵であり、触れただけで対消滅させてしまう。

だからこそ私の武装はMANAで構成されている。本来、普通の世界には非常に純度の低いレベルでしか分布しておらず、それを利用するだけでは十分なエネルギー量とはならない。

起源の次元だけが無限に存在する多次元から漏れ出た純度の高いMANAで形成されている。

したがって私自身の心臓部に埋め込まれた次元間永久駆動装置(Dimension Drive)『Dドライブ』によって起源の次元から無限量を供給し続けているのである。

ちなみにパームはそれを更に電気エネルギーとして変換し、アリスはそれを得て活動しているわけだが。

 

「地下にも空にもあちこちに満ち溢れているです! ここまで濃いMANAの分布は前世界でも観測したことが無いです。よって詳細の調査が求められます。」

 

「ふもとを見てください。海鳴市という都市が見えるです。」

眼下には明かりが煌々と灯っている市街地。捕食者が来るまでは当たり前の風景だった。

海鳴と言うだけあってか、臨海都市のようだ。ここまでほのかに潮風が香る。

 

「その海鳴市周辺にこれまた異常なレベルでのMANA、というか、それはもう、あり得ない数値の反応が複数地点以上に確認されたです! これは最優先調査事項として記録しているです。この世界の電子ネットワークにアクセスし、検索した結果、関連性が認められる項目が10件以上該当しました。閲覧しますか?」

その問いに「最上位の項目限定で」と肯定する。

 

するとパームの液晶画面に電子版海鳴新聞の記事サイトのページが抜き出されて表示される。

 

『私立聖祥大学付属小学校天文クラブ、海鳴市上空にて数分間に渡って流星群を撮影に成功』

という記事内容で国立天文台からの鑑定コメント付きで添付されていた動画映像は流星群を映していた。

 

ただの流星群なら問題ない。天文台も「このような短期間かつ集中的に発生する流星群は非常に稀だ。これをアマチュアの人が撮影できたことは、運がよかった。」としているようだ。

だが私自身は別の違和感を感じた。大気圏に突入した隕石は摩擦により燃焼する。映像のそれは流星としての光跡と違うという点に気づいたからだ。

 

「実はこれは双葉がこの世界に転送された日と同日なのです。先ほどの情報も踏まえ、これは警戒を怠るべきではないですよ。」

 

「んー、了解」

整理すると、私とほぼ同時期に海鳴市に出現した流星群の正体を掴むこと、次いでこの世界にMANAが満ち溢れている原因について探ること、これが行動目標ということ。

・・・いや確かに優先事項だけども。最優先事項は、

 

ぐぅぅ――――――

 

「・・・ねえ、お腹が寂しい。」

深刻な食糧不足だった。

 

「それは大変です。でも双葉、一文無しですよ?」

だがフル充電のアリスは暢気なもの。

仕方が無い、この世界に来てまで盗みは働きたくないので、ここは正攻法で行こう。

 

「アリス、私から供給されている電気はタダではないのよ?」

 

「それは本気(マジ)で言ってるんです?」

いや支援者にサボタージュされるとこっちも困るので、やらない。

だけども資金が無ければ何事も始まらないのはどの世界でも同じ。ましてやこの世界は前世界と同じ地球。

残念ながらお金は転送してきていないらしい。そこで換金できそうなものは・・・、と考える。

パームは論外、服といえばこのボディースーツのみ。そもそも転送してきたのは身一つなのに持ちモノなんて限られていた。

 

「そ、そうだ。パームにはクレジットカード機能が! あれほど無駄だと思っていたものが役立つ瞬間が来たわけね!」

そういえば私は姉妹たち(A.N.G.E.L.S)の中でも最優良の信用を持った顧客だったっけ。

零兄さんがこの機能を付けたことを初めて知ったときには、「少しでも戦闘OSの容量を節約しなければいけないって開発技術者も言ってたのに、主任の零がなんで戦闘中に要らないこんな機能を・・・。」と文句を言い、

それを「要らないと考えていたことが、後になってあってよかったと思い知ることは多々あることだよ。双葉。まあこれは本音半分で、もう半分には兵器として軍から要求されるものを開発するだけの面白みのない物は科学者として作りたくないっていう我儘な拘りがあるんだけどね。」と笑って流していた。

後々に分かったことだが、そのほか組み込まれていた諸々のお遊び機能に関して全てOSのスペックに負担がないような技術的解決がなされていたという。

お陰で戦いの日々で少ない休みしか与えられなかったけど、その代わり多い給料で貴重な癒しを得ようとショッピングに出掛けていたことを思い出し、なんだ、楽しいこともあったな・・・と今さらながら感じ入る。

だが、現実はそんな思い出に長くは浸らせてくれなかった。

 

「いや、流石に前世界の金融機関でないと使えないと思いますけど、その信用(クレジット)

とアリスにジト目で返された。ガクッと項垂れる私。

嗚呼、なんということなの。この世界のスリーダイヤは私を信用してくれないのか!

そして、零! 肝心な時にはやっぱり使えなかったよ、この機能。

「あはは、ごめんごめん」と彼の弁解する声が聞こえたような気がした。

 

「でも段々双葉が空きっ腹で壊れていくのは見ていられないので、考えがあるです。とりあえず街の方に降りるんです。

そして遭遇した住人に片っ端からこういうです。『家族を災害(世界滅亡)で亡くし、路頭に迷ってしまいました。私の身体を一晩だけ好きにしていいので、ご飯を"一杯"食べさせてください。お願いします・・・。(迫真)』 これできっと同じ日本人(・・・・・・)なら双葉を憐れんで恵んでくれるはずです! って零兄さんが言ってました。」

 

いやそれは別な犯罪っぽさを感じるんだけど。そして零・・・。

さっきから兄でありながら彼に対する評価点が駄々下がりな気がしてならない。

「話す内容はともかく、まあいたいけな少女の頼みごとを断る人もいないはず、というのは一理ある。」

 

「そうです! 虎穴に入らずば虎児を得ず! さっそくレッツゴーです!」

こうして意気揚々に鼻歌を歌いながら先行するアリスに続いて下山を開始したのであった。

 

その後、住人には一人にも出会わなかったものの、自動販売機の下を弄るという古典的手法で小銭を手に入れた私は、山で身体が冷え切っていたので暖かいコーンクリームスープを飲みながら街中を歩いていた。

 

深夜の街はとても静まり返っていた。しかしその中に私は妙な気配を嗅ぎ取る。

「アリス、索敵モードアクティブ、レベルBでお願い。」

 

「はい! 了解しましたです。―――捕捉(ロックオン)、半径500m以内、北北東方向に未確認(アンノウン)の敵性反応有り。―――捕食者(Great eater)ですっ、双葉!」

最も恐れ、期待していなかった答えが返ってくる。それもこんなに早々に。

 

(ったく、ホント、私ってついてない。)

でも任務は果たさなければならない。それが私の唯一の存在理由(レゾンデートル)

 

電柱のてっ辺に立ち、俯瞰しながら視線を動かす。公道の向こう、200m先の交差点付近に黒い影を発見した。

 

「――――捕食者(Great Eater)の活動を確認。Dドライブ、戦闘稼働へ。"A―GEOS"(Anti great eater operating system)起動(ON)!」

掌の中に収まったパームは白光を放ち、その二重構造の上層部分のディスプレイに文字が浮かび上がる。

『Anti great eater operating system wake-up Dimension drive awake』

親指でスライドさせると下層からキーボードが表れる。

「システムチェック、―――スキップ。エナジーチェック、ドライブチェック―――共にスキップ。システム起動速度を最優先に。固定武装からメタトロンを除外。全武装の凍結を解除。戦闘(アムース)モード、展開。"対捕食者決戦翅団"(A.N.G.E.L.S)所属第2号機(The second wing) 黒曜双葉、システム起動完了を確認。―――ターゲット再捕捉(ロックオン)、捕食者タイプP(ポーン)と認定。緊急出撃(スクランブル)します!」

 

MANAを無限供給するDドライブが加熱する。

その永劫粒子によって構成された頭上に輝く天使の円環と、背から生やした光の双翼。

円環は高速回転し、突撃槍型の手持ち武装セフィロトにエネルギーを充填していく。そして双翼を少しだけばかせ、数十mの高度まで上昇する。そして一気に飛ばし、突進した。

生成された斥力場は暴風となって爆発的な推進力を生みだし、ターゲットとの距離を詰めていく―――

 

なのはside

『誰か―――――僕の声を聞いて―――。力を貸して―――魔法の力を―――。』

その声の元を手繰り、林の藪を抜けて飛び出した先には小道にフェレットが横たわっていた。小さい華奢な身体は土と血で汚れている。

他の動物に襲われたのかも、と咄嗟に判断し、丁寧に持ち上げた。しかし抵抗する様子も見せない。

相当の重傷のようだった。

 

「はっ、・・・なのはってば! どうしたのよ、そんなに慌てて! ねえ、聞いてるの!?」

 

「なのはちゃん・・・急に走っていくから、びっくりしちゃった。」

追いすがるように後からやってきたのはアリサちゃんとすずかちゃんだった。そして息を吐いた後、アリサは問い質すように、すずかは困惑気味の顔でこちらを窺っている。

 

「この子の声が聞こえたから」

と思わず口にしてしまった。アリサとすずかは一瞬「えっ?」怪訝そうにしたが、私の腕に抱えているフェレットを見て

「あっ、怪我してる。」

「私たち・・・・に助けを呼んだのかしら。賢いのねぇ」

 

ぐったりしているフェレットにどうしようか、と頭を捻らせていると「私の知り合いに動物病院の先生を知ってるから、紹介してあげる。」

とアリサ。彼女のそういう知り合いというのは誰よりも多い。

「でももう夜だよ?」

「大丈夫。そこは午後10時までは診療やってるから。」

そう言って、携帯を取り出すとどこかに連絡していた。

 

病院の先生は開口一番に「あらあら貴女がアリサちゃんのお友達? 大変だったわね。」と優しく迎え入れ、フェレットを診療してくれた。

 

「ごくろうさま。フェレットの応急治療も済みました。でも暫くは休ませておく必要があるからこちらで預かります。」

 

「「「宜しくお願いします!」」」

私はひと段落し、安堵をこぼした。

そしてこの時は結局、あの声はなんだったのか、という疑問はすっかり忘れてしまっていた。

 

・・・帰宅が遅くなってしまい、家族総出で怒られたが、事情を話すと逆に誉めてくれたので何だか嬉しい気分に浸りながらぐっすりと眠ることができると思っていた。

昨日の夢に出た声、あの場所、それも見ることはなかった。

だが、『・・・助けて』と私を呼ぶ声が聞こえた。

 

真夜中、着の身着のまま駆けつけた先の動物病院は窓ガラスが粉々に割られ、誰かに荒らされた様子だった。

明かりも衝いていない。先生は大丈夫なんだろうか。

 

ガシャンッ――――――

別のところでガラスが割れる音が聞こえた。白い動物が何かに追われているかのように逃げ回っている。

「きゃあ!」

それが唐突にこちらの方に飛び込んで私にぶつかった。あのフェレットだった。

・・・続いて塀の向こうから黒い何かが飛び出してきたのだ。

 

「か、怪物なの・・・?」

あまりの展開の速さに思考が追いついてこなかった。

少し精神的に大人になっていても、やはり小学生。何の心の準備もなく、非日常の世界からの襲撃者に対応できないのは仕方ないこと。

しかし相手はそんなことお構いなく狙ってくる。悠長な時間はなかった。

フェレットを守るように抱き、翻して走った。逃げなきゃ、と思ったのだ。何回も路地を曲がり、橋を越え、・・・しかし、襲撃者はしつこく追ってきた。足が疲れ、なんとか自宅近くの交差点のところまでやってくるのが精一杯。

 

「はぁ、はぁ、・・・私がなんとかしなきゃ。」

毅然と対峙できるだけの気力を保ちながら、相手をキッっと睨んだ。

何故だか緩慢な動きに変化してきている。好都合だ。

 

「貴女は・・・」

フェレットが私の見て声を漏らす。口で喋ったところを見たのは初めてだ。これまでは直接頭の中に響く感じだったから。

 

「ど、どうしたの?」

 

「この期に及んでご迷惑かもしれません。でも一つだけ聞いてほしいことがあるんです。」

切実な訴えに彼が喋るフェレットだろうが何だろうかなんて関係なかった。

『もう誰も傷つくのを見たくない。 痛い思いをさせたくない。』・・・私が守る、そう自分で決めたの。だから―――

 

「私にできることなら。」

 

「・・・貴女からは非常に大きな魔力を感じられます。この宝石に、レイジングハートと契約すれば」

遂にしびれを切らしたのか怪物は動きを活発にし始めた。

 

もう時間が無い。僕の後に続いて唱えて、と

 

「「我、使命を受けし者なり」」

 

「「契約のもと、その力を解き放て」」

 

「「風は空に、星は天に―――」」

 

「「そして、不屈の心は」」

 

「「この胸に! この手に魔法を! レイジングハート、セット、アップ!!」」

 

「stand by ready set up」

その呪文に反応し、レイジングハートの電子音が呼応するとともになのはの魔力光である桜色の光の柱が空に昇り、辺りは昼下がりかのような明るさに包まれる。

私の身体はその暖かい光の空間に居た。裸であることに気づいた時には、「にゃああああ」と叫び声をあげてしまった。

 

「・・・と、とにかく戦闘服バリアジャケットをイメージして!」

戦闘服バリアジャケット? あの怪物から身を守るための私の服―――

 

包んでいた光はやがて消え、現れたのは、白い、正義の、それは私の通っている小学校の制服とそっくりだった。

手には杖が握られている。カーブした先には紅玉、レイジングハートのコアが嵌めこまれていた。

 

魔法少女、高町なのはの誕生である。

 

(って、えええええっ!) 内心では驚いていたが、「まず相手を弱らせるんだ!」というフェレットの掛け声に即座にやるべきことを理解する。

ゲームだけど、アリサが言っていたこと。『モンスターにはまず攻撃して弱らせればいいのよ!』

 

相手に杖を向けると既に赤黒い触手の鉤爪が延びて迫ってきていた。危ない、そう思った瞬間。

「protection」

レイジングハートの先から魔法陣のようなシールドが展開し、攻撃を受け止める。

だが諦めていないのか何度も何度も触手をぶつけてくる。こっちも反撃しなきゃ・・・。

 

方法はあまり分からないが、兎に角、力を込めて杖を押し出すようにする。忠実に魔力が放出され、その勢いによろめいた怪物はドガンッ―――と塀にぶつかって倒れる。

土煙が晴れ、改めて見えた怪物は小さくなっていた。・・・ちゃんと効いてるよ! 

 

「気を付けてください! まだ終わりじゃない!」

損傷した部分を自己修復しているようだった。

―――どうすれば倒せるの?

 

『魔法の力でアイツの核となっているジュエルシードを封印すればいいんです。」

と言った。

 

「封印すべきは忌まわしき器。

 ジュエルシード!」

フェレットが宣言する。

 

それに私が続く応える。

「ジュエルシードを封印。」

 

「sealing mode set up ―――stand by ready.」

 

「リリカルマジカル。 ジュエルシード、シリアル21。封印!」

 

「sealing. receipt number XXI.」

レイジングハートが魔力の糸を絡みつけ、繭のように覆い、怪物の動きを封じていく。

摘出されたジュエルシードを取り込み、封印は完了。

ぶちっという音ともに怪物は消え去り―――、消え去らなかった。それどころか残っていたたった数片の細胞が元の形を復元し、内側から噛み砕いて容易く封印魔法を破り、抜け出したのだ。

 

「―――えっ? そ、そんなっ」

呆気なく打つ手を失った私たちに、怪物はニヤリと剥け、再び狂気が向けられる。

 

「master!!」

 

双葉side

変身してから、ものの数秒で交戦地点に到達した。今は上空500m付近からの偵察行動を取っている。

しかし地上の様子がおかしい。

先ほど出撃と同時に観測した謎の光源は消え去っていたが、

 

その原因を知らせる警告音が響いた。

「大変なのです! 非戦闘員の現地人と思われる少女がターゲットと接触したみたいなのです! しかも何故かその地点でMANA数値が目まぐるしく変動しているんです。 もう、混乱しっぱなしで、電脳が焼き切れるから勘弁してほしいですっ!」

MANA数値の変動、それが何か意味のあるしるしなのか私にもわからない。戦闘において不確定情報をもとにする行動は過ちと混乱を生むノイジーな要素でしかない。だが、非戦闘員の存在は見逃せない情報。

これは想定していたが、最悪の事態。普段霊せな私でも、なんてことだ、と焦燥に駆られるくらいに。早くしないと喰われるか汚染されてしまう。

周囲は市街地。ここで戦闘すれば被害は免れないが、緊急避難的なものだ。

私が属している対捕食者決戦翅団の軍規にも民間地域での戦闘を許される事項が存在する。

―――それは非戦闘員を保護する時だ。

 

「アリス、余計な情報はこの際、全部遮断(シャットアウト)。迷いの原因にもなるから。―――それで、戦闘モードをこのまま維持。メイン武装はセフィロト、近接(アサルト)フォーム。ターゲット目視後は最大戦闘稼働で殲滅する!」

 

「了解。双葉、気をつけるです!」

私も頷く。支援者の彼女に全幅の信頼を寄せている。私はただ任務に集中すればいい。

既に思考はオールクリア。

先ほどまでの迷いなんてものは綺麗さっぱり振り払われた。

 

第二戦闘速度(マッハ2)で降下、行きます。」

私の伸長の丈ほどもある突撃槍形態のセフィロトを携え、双翼を窄めてミサイルの如く地上めがけて急降下する。

 

(絶対に、この手で確実に仕留める!)

 

「ターゲット目視! 斬神(テスタメント)!!」

力が抜けてその場に崩れている少女を背にし、セフィロトを構え、迫りくる触手をなぎ払い、消し飛ばす。

 

『グアァァァァ――――――!』

苦悶にのたうつ捕食者は、ぎょろりと眼を私のいる上に向けると、触手を幾つも束ねて腕のように変化させ、先ほどとは比べ物にならない速度で放った。

 

少女と傍に縮こまっている小動物を抱え上げて、一旦急速離脱し、それを回避する。少女の身を少し離れた安全な場所に移動する。

彼女が手元に大事そうに抱えている杖から「thanks」と聞こえたような気がした。

 

思考を切り替え、再び飛翔。

『貴様、何者ダ。 その力、この次元の者ではないな? おっと、先ほどの下等生物も一匹が別次元の存在だったようだが。」

 

「なっ・・・」

あの少女、いや彼女が連れていた小動物の方のこと・・・?

 

「・・・・だがあの下等生物の使う魔法とやらの危険度は低い。それに比べ、貴様は、異端。この世界にあってはならない存在と認識。よって異物は排除する。喰らう、喰らう、喰らう、寄こせ、血ィィィィィィィィィ――――――!』

捕食者は甲高い声で叫喚する。その反応は明らかに知能なき先兵たるタイプPの一種、戦場の血を啜るブラッドフリークの特徴を有していた。

 

「黙れッ、捕食者―――、セフィロトっ! 形態変更、連撃(ブラスト)フォーム―――精密狙撃型(スナイピングシフト)八双(アーク)を掃射!!」

翼の周囲に形成された無数の光点から粒子の光刃(ダガー)を射出。それは、ターゲット目がけて、鋭角に軌道変更し、全方位から集束して殺到する。

 

赤黒い捕食者を貫き、肉片へと変える。そして驚異的な再生能力にも衰えが見え始める。

MANAの浄火で負のエネルギーが悉く消滅されてきているからだ。だが完全に消え去らなければならない。

間髪いれず、追い撃つように急降下し、雷撃態勢を整える。

 

連撃(ブラスト)フォーム―――戦略爆撃型(ボマーシフト)雷撃(イクスプロード)!!|

直下に形成された光弾の群れが一斉に放たれ、捕食者の残骸を容赦なく蹂躙した。

 

「アリス、着弾を報告。」

 

「判定、全弾命中。残存敵性反応無し(オールクリア)。―――任務完了(ミッションコンプリート)! よくやりましたです!」

アリスは喜んで飛び出し、私に抱きついてきた。

 

「ありがと」

市街地に与えた損害は奇跡的に軽微。場所が交差点という要素もあったからだろう。

民家は窓ガラスが割れるとかその程度。―――崩れた塀やら倒れた信号機、電柱、穴ぼこだらけの路面、破断し、噴水している水道管を除けば、まあとっても上出来だった。

 

「そこの方、待ってください!」

立ち去ろうと翼を広げ、飛翔しかけた私を呼びとめる声があった。

ふと目を向けると、その先には助けた少女と小動物の姿。

 

「えーと、何・・・?」

ぎくっと振り返った私は内心動揺を抑えつつ、華麗に「何かしら、貴方に名乗るほどの者ではないわ(キャラづくり)」と突き放し、颯爽に居なくなる算段だったが、

 

「ちょっとお礼を言いたいだけなの。」

善意によるお願いによって機先を制され、退路を断たれた。

本来、情報漏洩対策のために非戦闘員との無暗な接触は軍規違反。

とはいえ助けた相手を、しかもいたいけな少女を夜道にこのまま放置しておくのはとても良心に訴えかけるものがある。

 

―――これは一つの運命との交差。まだこの物語の始まりにすぎない。




MANAは魔法とどう違うのか、という疑問があろうかと思いますが、原作ではと同じものと解釈されていて、本作でもそれを利用しています。
といってもWEVの魔法となのはの世界の魔法と違うわけですが、MANAは生きたいと言う願いから発現する現象なので独自解釈的にそれほど誤ってはいないと思います。
これで質量兵器問題は解決です。
それでも非殺傷設定とかなのはならではの問題が早出てきますが、MANAを非殺傷にすることも意思さえあれば不可能ではないです。
双葉にリンカーコアは存在しませんが、Dドライブが似た役割をもつと考えてください。
心臓部に埋め込まれて大丈夫なの、という問いも想定し、原作ではDドライブは現実物質とあまり干渉しない魔術的な施術で埋め込まれているので支障はないです、ということになっています、と私は種明かしをします。

そのほか、妙な設定や記述は伏線の可能性もありますし、単なるミスの可能性もあります。
まあ、今のところご了承を。

一万文字もノリで書くなんてアホだーとか言わんといてくださいw

これを機会に、なのはのアニメとか見直してみるかもしれません。
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