ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス 作:オリゴデンドロサイト
クラッブ家。かの純血ブラック家につながる、純血の中の純血。
そんな家の一人息子が、彼、ビンセント・クラッブだった。
彼の体は六歳にして既に肥満気味な大きな体であり、低い鼻と鍋底カットの髪型が特徴の男の子だった。見た目は頭が悪そうだが、実際本当に頭が悪い。
そんな彼は今、マルフォイ家で行われるお茶会に参加していた。
お茶会といっても、皆でテーブルを囲んで紅茶を飲む会……というわけではない。
実際は立食パーティー形式で、そこに純血貴族たちが自分の六歳前後になった子供を紹介することで、上のものとのつながりや、将来の純血同士のコミュニティーの土台をつくらせるために行う。
ビンセント・クラッブはこのお茶会に参加する際、父親にあることを厳命されていた。
『マルフォイ家の双子と、お茶会の席で絶対に
勿論友人といっても、マルフォイ家の方がクラッブ家よりも上に位置しているため、実際のところは、
『気に入ってもらって、取り巻きにしてもらえ』
という意味でしかなかった。
ビンセント・クラッブ視点
マルフォイ家のお茶会というだけあって、出されている料理はうまいものだらけだ。
家格がほぼ同等で、昔から付き合いのあるグレゴリー・ゴイルと料理をむさぼるように食べる。
「ゴイル。お前もマルフォイ家の双子と仲良くしろと言われてるのか?」
「ああ、さっきちちうえに言われた」
料理に伸ばす手をまったく止めず、二人で話し合う。
「しかし、肝心のその双子がまだ来ていないぞ」
「まだ準備してるんじゃないか?」
確かにまだ始まりの時刻ではない。
ホストということでルシウス氏はもう会場で多くの純血貴族達と話しているようだが、まだ肝心の双子が来ていない。
双子は男と女と聞いている。
父上にとってマルフォイ家は格上の存在で、従わなければならない上司だが……同時に目の上のたんこぶでもある。
父上がマルフォイ家の話をする際、その言葉の端々から不満が漏れ出していた。
そんな言葉の中で、双子の男の子の方の話はでていた。なんでも父親に似て軟弱そうだのどうとか。
ただ、もう一人の女の子の方の話は聞かなかった。なんでも、いつ訪ねてもなぜか顔を見たものが誰もいないのだという。
そのため色々な噂が純血貴族の間では飛び交っていた。勿論マルフォイ家の耳の届かないところでは、だが。
実は醜い顔をしているのでは?
実は顔におおきな傷があるのでは?
極めつけは、実は存在しないのでは?
そんな根拠のない噂が噂を呼び、純血貴族の中ではちょっとした話題になっていた。
さて、本当のところはどうなんだろうな
そう思いながら、僕はゴイルと共にやはり一心不乱に料理に手を伸ばし続けていた。
しばらくすると、会場のドアが開き、そこから女性と二人の子供が会場に入ってきた。
女性はナルシッサ・マルフォイ。ルシウスさんの妻で、すらっとしていて色白の美人だ。
その右隣りには、父親に似た青白く、顎が尖っている顔をした僕等に比べればかなりひょろりとした男の子がいた。今回彼の取り巻きにしてもらわなければならないのだが、正直あまり気乗りがしない。父上が漏らしていたとおりだ。なんで俺があんなひょろっちい奴に従わなくちゃならないのだ。
そう思って、今度は女性の左隣を見やる。
そしてその瞬間……世界が止まったように感じた。
声が出なかった。隣にいるゴイルも同じような様子で、料理に手を伸ばした姿勢で止まっている。
いや、ゴイルだけではない。会場にいる全員が、その左隣にいる女の子を見て声をあげられずにいた。
その子の流れるような髪は白銀で、その肌はおしろいを塗ったかのように真っ白だった。
そしてその薄い金色の瞳を持つ顔立ちは、すでに美人と形容していいようなものだった。あの顔立ちならさぞかし将来大輪の華を咲かせるだろうと思わずにはいられなかった。
だが、会場の人間を黙らせたのは、その美貌ではない。
それは、彼女の醸し出すオーラだった。
彼女はその釣り気味の眼であたりを見回す。六歳にして、初めてのお茶会にして、全く物怖じせず、その表情をピクリとも動かさない。
無表情。
彼女はこの会場中から見つめられる状況においても、その表情を一切変えていないのだ。
それが彼女の醸し出す冷たいオーラに拍車をかける。
この場には大勢の元死喰い人もいた。彼らは彼女の雰囲気に懐かしいものを感じていた。まるでかつての主のような……。
僕は理解する。この子には逆らってはいけないと。父上の命令のとおり、マルフォイ家の取り巻きとして扱ってもらわなくてはならないが、本当にマルフォイ家の人間の中で、一番取り巻きにならねばならないのは彼女なのだと。
この日、今まであったダリアの噂は一新されるのであった。
ダリア視点
お母様に連れられて、お兄様とお茶会会場に入ると、今までそれなりにざわざわしていたのに、なぜか急に静かになった。貴方達……失礼ではないでしょうか。
正直私は純血というわけではないので、純血のコミュニティーを作れと言われても困ってしまうのだが、私とお兄様は一応双子ということになっている。だから純血貴族としてふるまう必要がある。
そして、ここであらかじめお父様たちが選んでいる
お父様が純血貴族の地位で決めた子供たちだ。むこうもおそらく父親から取り巻きになるよう言われてきているだろうから、おそらく本当にお友達になれるかどうかわからない。
それに……
ふと目を伏せる。
私の体には秘密がある。決してばれてはいけない秘密が。
吸血鬼、闇の帝王の血。どれをとってもマルフォイ家の醜聞になってしまう。
そんな秘密を抱えた私が、本当の友達を作ることなどできるのだろうか……。
そこまで考え、かぶりを振る。
どうでもいいことだ。私に友達など必要ない。
私にはマルフォイ家さえあればいい。
そう、私はそれだけで十分に幸せなのだから。
そう、かすかに残る憧れに目を背け、私は目的の二人を探すため、あたりを見回すのであった。
中身はちょっと考えすぎる系の、闇魔法大好き女子。基本自分の家族さえ幸せならいいので、わりかし他の人間はどうでもいいと思っちゃう、冷たいところがある。ただ、今後友達といえる人間は何人かできる予定。
はた目から見ていると、完全無表情なので、なんかすっごい美幼女に威圧されてる!!となる。