ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス 作:オリゴデンドロサイト
かつて4人の偉大な魔女と魔法使いによって創設された、世界有数の魔法学校、ホグワーツ。
その魔法学校の校長こそ、20世紀で最も偉大な魔法使いとされる、アルバス・ダンブルドアであった。
ダンブルドア視点
わしは校長室の椅子に座りながら日刊予言新聞を読んでいた。
『生き残った男の子 ハリー・ポッター 今年ホグワーツ入学』
この内容の記事は、ここ連日ずっと取り上げられているものだ。
初めの頃は彼がどんなに偉大なことをなしたかというものだったが、今では彼がどんな子供に成長したのだだろうか?彼はどの寮に入るんだろうか?といった、もはや事実を書いた記事というより興味本位の娯楽記事となり果てている。
「いよいよハリーが入学する時がきたようじゃのう」
そう感慨深く感じながら、校長机の前にいるセブルスに話しかけるも、
「ふん。どうせあの忌々しい父親に似た子供に違いないと、吾輩は思いますがね」
そんな気のない返事が返ってきただけだった。
しかし言葉とは裏腹に、どこか微かな期待を捨てきれないでいる様子なのは気のせいじゃろうか。
「これ、セブルス。君はまだハリーに会ったことがないんじゃ。まだ見ぬうちから決めつけるでないぞ?それは君の目を曇らせてしまうじゃろう」
そう諭すのじゃが、未だそう思わずにはいられないといった様子のセブルスにかぶりを振り、ワシは話題を変える。
「セブルス。クィレルの様子はどうじゃ?」
今度はセブルスもハッキリと頷いて応える。
「ええ、やはり校長がおっしゃっているように、奴は何か隠しています」
「わしの目が曇っていないのであれば、おそらく彼は闇に魅入られておる。ハリーの入学だけではない。今年
セブルスはそれに了解の意を示す。
「ところで校長、その申請書はどうするのですかな?」
わしは手に持っていた新聞を横にやり、机の上に置いてある申請書に目を落とす。
「それなのじゃが、この申請書に本当にサインしてよいものか……。相手が相手じゃからのう」
申請書はルシウス・マルフォイからのものじゃった。
内容は、今年入学する娘には重い
病気の内容については一切触れず、しかもなんの魔法がかかっているかも書かれていてない。
そして相手はルシウス・マルフォイ。それが普通の魔法具だとは、ワシにはどうしても思えなかった。
普段なら絶対に許可などしないのじゃが、ルシウスはホグワーツの理事全員をまるめこんで、この不備しかない書類にサインさせておった。
理事全員の決定がなされているなら、わしはこの書類にサインするしかない。たとえサインしなかったとしても、この書類は通ってしまうじゃろう。
であるのにこの書類がわしの元に来ているのは、その魔法の手袋について、後で文句を言ってくるなということなのじゃろう。
「娘の病気を抑えるためと言われてはのう。それに本当に危険なものなのかも分らぬ。まあ、危険なものを持ち込んで、何かあれば真っ先に疑われるのはその娘になってしまうのじゃから、そこまで危険なものではないと思うがのう」
そう言いながらしぶしぶ申請書にサインをし、この書類を届けにきたフクロウにそのまま渡す。
フクロウが書類をもって飛んでゆくのを眺めながら、セブルスに尋ねてみる。
「セブルスはこの娘に会ったことはあるのかのう?」
「いえ、吾輩も直接会ったことはありません。ただ、ルシウスに会った時、たいそうその娘のことを自慢しておりましたが……」
その時のことを思い出したのか、げんなりした様子でセブルスが答える。
なんでも娘は美人だとか、娘は素晴らしい魔法の才能を持っているだとか、そんな話を延々とされたのだという。
「ほっほっほ。それだけ娘が可愛くてしょうがないのじゃろう。愛じゃよ、愛。その様子なら大丈夫じゃろうかのう。そんなに可愛い娘に危険なものは持たせぬと思うしのう」
そう安心しながらも、念のため、彼女が入った寮の寮監にはこのことに注意するよう伝えておくかの。
マルフォイの家の娘なら、おそらくスリザリンになるじゃろうが。
「話がこれで終わりであれば、吾輩はそろそろ部屋に戻らせてもらいます」
そう踵を返し、セブルスは部屋を出ていく。
セブルスが出て行ったドアをなんとはなしに眺めながら、物思いにふける。
今年ハリーが入学することで、トムとの戦いが再び始まる。そんな予感がする。トムはおそらく滅んでおらぬ。どこかでじっと復活の機会を待っておるだけじゃろう。
あやつをそんな状態にした予言の男の子を、自尊心の強い奴が放っておくとは思えん。
石のこともある。奴はこの石を復活のために必ず欲するじゃろう。
その尖兵がクィレルなのではないかと、わしは思っておる。
そう考えながら、ふとあることを思い出す
『選ばれた子が生まれる七月の末、闇の帝王はついに僕を完成させる。気をつけよ、帝王の敵よ。そして気をつけよ帝王よ。その子が司るのは破滅なり。その子は決してどちらの味方にもなりえない。この先どちらかに破滅をもたらすことだろう』
結局、この予言について何も分かっておらぬ。セブルスにそれとなく、闇の帝王の完成させた僕について聞いてみても心当たりはないという。
これから先、気を抜けんのう。
これからの戦いを思案しながら再び、ハリーの記事に目を落とすのだった。
そろそろ本当に忙しくなってきました。2週間程更新ペースは下がります。