ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス   作:オリゴデンドロサイト

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銀色の鳥……主人公挿絵あり

 

 ダフネ視点

 

「た、ただいま~。ダリアは、」

 

「ダフネ!」

 

やはりと言うべきか、私が談話室に帰った時には既にダリアはルシウス氏と別れた後だった。談話室に恐る恐る入ると、部屋の中をウロウロしているダリアの姿が見える。

しかし私を見つけた時、彼女の開口一番に発した声音は決して愛する父親と会っていた満足感に満たされたものではなく、どこか緊張感すら感じさせられるものだった。

 

「ダフネ、どこに行っていたのですか!? どこにもいないから心配していたんですよ!?」

 

……どうやらドラコは私の居場所や、私が何をしていたかを伝えてはくれなかったらしい。

怪我の有無を確認するように私の体を触るダリアを宥めすかしながら、私はドラコの方に少し非難するような視線を送る。しかし、ソファーで紅茶を注いでいたドラコは私の視線に応えることなく、ただ視線でダリアの方を指し示すだけだった。自分の事情は自分で話せとでも言いたいのだろう。判断は任せるなんて言っておきながら、結局は私に他の選択肢を与える気などなさそうだ。

私はため息を一つ吐くことで覚悟を決めると、まだ私の体のあちこちを触っているダリアに話しかけた。

 

「ダリア、私はどこも怪我なんてしていないよ。それとどこにいたかってことだけど……私はさっきまで校庭の方にいたんだ。……ヒッポグリフの処刑を止めるために」

 

「……え?」

 

途端にダリアの動きが止まる。

ダリアのことだ。あの時のこちらをジッと見つめる様子から、茂みの中の私達三人組とヒッポグリフの存在は感じ取れていたに違いない。しかし、そのうちの一人が私だとまでは断定出来ていなかったようだった。私の言葉が余程意外だったのだろう。驚いたような無表情を浮かべるばかりで、中々次の言葉を発しようとはしない。

私はそんなダリアの様子に苦笑すると、彼女をソファーに誘いながら続けた。

 

「ごめんね、ダリア。ダリアは処刑を止めないと言っていたけど……それは全て私のためだったんだよね? 勿論怪我をしたドラコのためでもあったのだろうけど……ドラコが処刑を止めると言った時、それでも処刑すると言っていたのは、全ては私のためだったんだよね? 私がグレンジャーに恐怖感を持っているから、彼女の要望に応えるわけにはいかないと思ったんだよね? でもね……もういいの。もういいんだよ、ダリア。もう私のためだけに、グレンジャーに対して無関心になる必要はないんだよ」

 

「ダフネ……何を言っているのですか?」

 

思いがけない事態に困惑するダリアに、私は独白するように話し続ける。

 

「確かに私はグレンジャーのことが怖くて仕方がなかった。彼女に貴女を取られるのではないかと、私は心配で仕方がなかった。そしてそんな貴女に対する独占欲のような感情を、貴女に知られていたことが……恥ずかしかった。貴女に嫌われるかもと思うだけで、貴女と一緒にいることさえ怖くなった」

 

「そ、そんなこと! 私が貴女を嫌いになることなんか、」

 

「そうだよ! そんなことないなんて、当たり前のことだったんだよ! 私だって、それを疑ったわけではなかった! でも私は……私自身を信じることが出来なかったの! ダリアに私を信じてと言ったのに、私が私を信じてはいなかった! 初めての感情に戸惑うばかりで、自分自身さえ最後には見失っていたの! だから処刑が近づくにつれて、私はどんどん自分を見失っていた。グレンジャーのことで貴女に無理を強いているのではないか、貴女のやりたいことを私なんかが制限しているのではないかって……ずっとそんなことばかり考えていたの。でも、ドラコに言われて初めて気づいた。本当に処刑を止めたいと思っているのはダリアではなくて……」

 

「……ダフネ、大丈夫ですか?」

 

多分ダリアからしたら、私の言葉は支離滅裂で何を伝えたいのかすら分からないものなのだろう。突然意味不明な行動を暴露したかと思えば、更に意味不明な独白をするのだから当然。先程から私を心配そうな無表情で見つめるばかりだ。実際私だって自分が何を言いたいのかよく分かっていない。友達に自分のことを伝えるなんて、私にとっては初めての行動なのだから。

でも、そんな中でも一つだけ分ることがある。

それは……私が処刑を止めたというのに、ダリアは驚きこそすれ、私に怒りを覚える様子はないということだ。ダリアの中に、やはりもうヒッポグリフに対する怒りはそれ程残っていなかったのだ。いや、正確にはあの案山子の首を切り落とすことで、自分自身の中の怒りと折り合いをつけたのかもしれない。でもそうであったとしても、グレンジャーに頼まれた段階で、ヒッポグリフへの怒りはその程度のものとなっていたのは間違いなかった。

私はそんな事実に以前のような恐れを感じることなく、逆に喜びすら感じながら考える。

 

私の行動は、やはり間違ったものではなかった。怒りや憧れではなく、私への義務感で動いていたダリアを止める。それは私とダリアが今後も対等な友達であるために必要なことだった。……私とグレンジャーが、再びダリアの仲間になるために絶対に必要なことだったのだ。

 

「大丈夫だよ。ごめんね、訳が分からないよね。でも……これだけは聞いて。ダリア、私達には今まで友達と呼べる存在なんていなかった。だから私達にとって、お互いは初めてできた友達。これからもずっと、私達は一緒にいるんだと信じて疑わなかった。でも、それだけじゃだめなの。私達は、もっとお互いのことを話し合うべきなんだと思う。光の部分も、それこそ闇の部分も。勿論隠し事をするなというわけではないの。誰にだって親友にも話せないようなことはある。でもね……今回は別。私達はお互いを守ろうとするあまり、結局お互いを傷つけあうばかりだった。だから……これからはもっと話し合おう? 私達はもう親友なんだから。……手始めにグレンジャーについて話し合おうか? ダリアはあの子のどんな所に興味を持ったの?」

 

「……何故そこでグレンジャーのことなのですか? 私はグレンジャーに対して何とも、」

 

「いいからいいから」

  

私達は夜通し語り合う。ドラコは途中ソファーで眠りこけていたけど、私達はここ最近のギクシャクした関係を埋めるかのように語り合った。

何かが変わったわけではない。ダリアが今回の行動の理由を理解することはなかったし、最後までグレンジャーのことを認めることもなかった。そして私も私で特に踏み込めた話が出来たわけではない。結局いつものじゃれ合いに毛が生えたようなものだ。

 

でも、それでいいと思った。

ゆっくりでもいい、時折後退したっていい。

だって私は……グレンジャーのお願いを聞くことで、初めて自分自身をダリアの友達だと認めることが出来たのだから。

 

 

 

 

これが私の一夜限りの冒険の終わり。

微睡みのような友情から、ようやく自分自身と向き合うことを決めた始まりの一日。

そして……

 

『あぁ、ルーピン。昨日は随分とはしゃいでいたようだな。()()()()()()()()()、さぞ満月の晩は楽しかったことだろう』

 

スネイプ先生が朝食の席でルーピン先生の秘密を暴露することで……ダリアの慕っていた数少ない先生がいなくなってしまう数時間前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーピン視点

 

「それじゃぁ……さようならだ、ハリー。たった一年とはいえ、君の先生になれて嬉しかったよ。またいつかきっと会える。それまでは……元気にしているんだよ」

 

私は部屋に訪ねてきたハリーを残し、一人城の外を目指し歩き始める。

背中にハリーの悲しみの籠った視線が突き刺さるが、私は決して歩みを止めはしない。

……私はもう、この学校の教師ではなくなったのだから。

今朝シリウスが逃亡したことで怒り心頭のセブルスが、私の体の秘密を遂にダリア以外の生徒にも暴露してしまったから……。

今頃シリウス再逃亡の知らせなどそっちのけで、生徒達は自分の親にこのセンセーショナルなニュースを伝えていることだろう。後少しでもここに居座れば、大量の抗議文が私の下に届くのは想像に難くなかった。

勿論彼が暴露しなかったとしても、私は自ら今日の内に辞表届は出したことだろう。

どう言い訳しても、私は昨日『脱狼薬』を飲み忘れた。そして未遂とはいえ、ハリー達を襲いかけてしまった。その事実がある以上、私にはもう教師を続ける資格などありはしない。ここはとても居心地がいい仕事場ではあったが、私にもうここに居残る権利などありはしないのだ。

 

しかし……そんなどうしようもない状況であっても、私の心の中は不思議と穏やかなものだった。セブルスへの怒りは勿論のこと、自身への自責の念で一杯になることはない。寧ろ晴れやかな気持ちであるような気さえする。

今まで心の奥にたまっていた淀みの様な感情が綺麗さっぱりなくなっていた。

 

昨日の夜、『暴れ柳』下のトンネルを潜り抜けた先、あの青春の思い出が詰まった『叫びの屋敷』で、私はシリウスの真実を知った。裏切ったと思っていたシリウスが、その実友を裏切ったわけではなかった。私がこの14年近くの間持っていた劣等感が、実は間違いだったのだと知った。……私達のあの輝いた日々は、決して嘘ではなかったのだ。

教師でなくなったとしても、この久方ぶりに感じた幸福感を打ち消すことは出来なかった。

現金な話だ。あれだけ悩んでいたというのに、たった一夜友と語り合うだけで悩みが消えてしまうのだから。

 

私は大広間前の階段を降りながら考える。

これでもうここで思い残すことは()()()()ない。

最後の試験内容はもうマクゴナガル先生に伝えており、この試験さえ終われば私の一年間での授業は完遂することが出来る。そして個人的に行っていた授業、『守護霊の呪文』における授業も、生徒の一人であるハリーが昨日守護霊を出せたことは本人から確認済みだ。彼の幸福は……失った両親を含めた親しい人間に囲まれること。その幸福感に集中することが出来た彼は遂に守護霊を完成させ、一匹どころか大勢の吸魂鬼を撃退した。もう私が彼に教えられることは何もない。彼はこれからも研鑽を続け、両親に恥じない立派な魔法使いに成長することだろう。

そう、私にはもう、ここでやり残したことなどほとんどない。

後私が唯一心残りとすることがあるとすれば、

 

「……先生。行ってしまわれるのですね」

 

「……あぁ、ダリア。君も見送りに来てくれたのかい? ……君は私が狼人間であることを最初から知っていた。なら他の生徒の様に恨み言ということはないだろう? ……すまない、軽口が過ぎたね。君のことだ。止めに来てくれたのかい?」

 

「……いいえ。聞いたところでは、先生は昨日薬を飲み忘れてしまったのですよね? なら、私に貴方を止めることは出来ません。……それにたとえ止められたとしても、先生自身も辞職を取りやめなどしないでしょう?」

 

「そうだね……。あぁ、その通りだ……」

 

ダリア・マルフォイのこと以外にありはしなかった。

思い返せば彼女は最初から不思議な存在だった。ダンブルドアの話を聞くまで、私の中での彼女はただ少しばかり無表情が過ぎる子でしかなかった。それが去年のホグワーツで起こった事件のことを聞いたことで変わり、私は彼女に最大限の警戒を持つようになった。

どこか実際に見た彼女とのギャップを感じながら……。

それがどうだろう。彼女に私が狼人間だということが露見し、いざ彼女と接する機会が増えてくると……私はいつの間にか、彼女に対しての警戒感を維持することが難しくなってすらいたのだ。挙句の果てに私はダンブルドアに、

 

『ダンブルドア……貴方が仰るのです。ダリアは確かに、去年『秘密の部屋』に関わる何かを実行したのかもしれません。ですが……私は思うのです。彼女は……本当に闇の魔法使いなのでしょうか? 私は彼女と授業で接していて、どうしても彼女を悪だと思うことが出来ないのです。彼女の言葉を信じるのならば、彼女が『守護霊の呪文』を習得したいと思った理由は家族のため。私の前での彼女は、ただ家族のことを大切に思う心優しい少女でしかない。それに彼女は私のことを周囲に……今の今まで漏らした様子はない。そんな彼女が、本当に悪い人間だと断言できるのでしょうか?』

 

ヒッポグリフの処刑日直前、そんなことまで意見するようになっていた。

本当に不思議な少女だ。私が今まで出会ってきた人間の中で、断トツとも言える程不可思議な少女。一見無表情で何を考えているか分からないどころか、ともすれば他人を見下しているようにさえ見えるというのに……角度を変えれば色んな表情や一面が見える様な気がしてくる。こうして城を追い出される段になってしまえば、寧ろ何故あんなにも恐ろしいと思っていたのかすら分からなくなる。

私はそんな未だに理解しきれているとは言えない少女に、少しだけ後ろめたい気持ちを感じながら続けた。

 

「……すまない。君との取引は、君に『守護霊の呪文』を習得させることだったというのに、それはどうも完遂することが出来なさそうだ」

 

「いいえ。仕方がないことです。悪いのは先生ではありません。あれ程親身になって授業をしてくださったというのに、それでも習得出来なかった私が悪いのです」

 

ダリアの返事に私は僅かに苦笑を浮かべる。

やはり不思議な少女だ。

私の唯一の心残り。ハリーとは違い、ダリアには最後まで『守護霊の呪文』を習得させられなかったというのに、彼女はやはりどこまでも私を責めることはなかった。ホグワーツ最後の時間だというのに、益々彼女のことは分からなくなるばかりだ。

そんなダリアは私の笑みに僅かに首を傾げた後、仕草同様訝しそうな声音で続けた。

 

「……何かいいことでもあったのですか?」

 

「ん? 何故そう思ったんだい?」

 

「いえ、ここを追い出されるというのに、あまり悩んでおられる様子ではないので。最近あったことといえばスネイプ先生が遂にやらかしたことと……殺人鬼の逃亡くらいしか思いつきませんが……何か他にありましたか?」

 

仕草はともかく、彼女の表情自体はいつも通りの無表情だ。表情だけなら、私からは彼女の心情を推し量ることは出来ない。だが彼女の方からしたら、私の心情は表情から明らかなのだろう。私が何故晴れやかな表情をしているのか不思議がっている。

本来警戒すべき相手だったとはいえ、ここまで一緒に学んできた仲なのだから、それなりに真実を言うことは私もやぶさかではない。

しかしまさか彼女の質問に、

 

『実はシリウスは私の学生時代からの友達でね。彼が再び逃亡したのが嬉しいんだよ』

 

などと馬鹿正直に応えるわけにはいかない。

私は少しだけお茶を濁した回答をすることにした。

 

「……実はつい最近、昔の友人と連絡をとる機会があってね。彼とは昔喧嘩をして以来、随分連絡をとっていなかったのだけど……それがようやく仲直りすることが出来たんだ。私は彼が裏切ったものだと思っていたのだけど、それが違うとようやく分かったんだ。だからここを追い出されることになっても、もう私は孤独ではない。そう、私は思えるようになったんだよ」

 

具体的な内容を一切含んでいない、どこか掴みどころのない話。事情を知らないダリアからしたら意味の分からない話だろう。

だがそんな私の話にも彼女は決して嫌な態度をとることなく、

 

「……そうですか。いえ、友達が誰かなど知りませんし、先生の事情もよく分かりませんが、先生がご納得しているのならよかったです。少なくともまた孤独の生活には戻ることはなさそうです。本当に……安心しました」

 

今までとは違う、どこか優しさすら感じさせる無表情で応えたのだった。

今まで見たことのないダリアの表情に、私は一瞬思考が停止する。そんな私をよそに、いつもの無表情に戻りながらダリアは質問を続けた。

 

「ですがいくら友達との仲が戻ったとしても、職を失うことに変わりはありません。ここを出てからはどうするのですか? そのお友達の所でお仕事を?」

 

「い、いや、それが仕事自体が決まっているわけではないんだ。友人も人を雇える程余裕のある生活は送っていなくてね。気分は晴れやかだけど、幸先自体はあまりよくない。どこかにいい仕事があればいいのだけどね。これからゆっくり考えるさ」

 

「そうですか……。成程、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

後半は小声だったため何を言っていたのか分からないが、ダリアは私のしどろもどろとした答えを聞いたきり、何かを考え込むように黙り込んでしまう。私も私で、そんな彼女に何と会話し続ければいいのか分からなかった。

そしてそうこうしている内に……時間が来てしまう。

沈黙に耐え兼ね時計を確認すると、まだ汽車の出発まではいくばくかあるものの、もうそろそろ移動しておいた方がいい時間になっていたのだ。

私は咳払い一つすると、今度こそ最後のお別れをダリアに告げる。

 

「では、ダリア。お別れの時間だ。ハリーとも先程会ったのだが、君にも最後に会えて嬉しかったよ。それと改めて、君を最後まで指導することが出来ず悪かったね。もし次があるとすれば……その時にまだ君の守護霊が完成していないようであれば、及ばずながらまた見させてもらうね」

 

「……はい、先生もお元気で。その時はまたよろしくお願いします。……先生も、その時には守護霊を再び出せるようになっていることを祈っています」

 

最後の最後に痛い所を突かれてしまった。確かに次と言われても、不完全な守護霊しか出せない私では説得力がないだろう。

私はダリアの返事に肩をすくめると、最後の授業と言わんばかりに杖を振り、

 

『エクスペクト・パトローナム。守護霊よ来たれ』

 

二人の友人を失った日からずっと完全な形を取らない守護霊を出そうとした。

……だが私の杖から出てきたのは、

 

「な、なんてことだ! いつのまに!」

 

不完全な靄なのではなかったのだ。

 

 

 

 

私の杖の先には……完全な形をした、銀色の狼が佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダリア視点

 

誰もいない大広間前のロビー。それこそ私とルーピン先生しかいない空間に、私の声が木霊する。

 

「完成していますね……。おめでとうございます。いつの間に完成させていたのか知りませんが、何か思い当たる節はありませんか?」

 

本来であればここに先生との別れを惜しみに来たわけだが……私はそんなことも忘れ、どこか藁にもすがるような気持で先生に尋ねた。

情けない話だが、今年もいよいよ終わりに近づき、それどころか肝心の吸魂鬼がホグワーツから離れる段になっても、私は未だに『守護霊の呪文』を習得してはいない。あれだけお兄様やダフネを守ると誓ったというのにだ。いくら吸魂鬼がいなくなったとしても、大切な人を守ることが出来ない可能性など許容出来るはずもない。

だから私はこれが最後の希望だと思いながら、ルーピン先生に縋るような気持で尋ねる。これからも、私がお兄様達を守り抜けるように。

しかしそんな私の思いに応えたのは、

 

「……何故だ? つい先日まで、確かに私は守護霊を出せなくなっていたはず。それが何故、今になって出せるように……。この城を追放される段になって何故……。私の中で変わったこと、そんなことは……」

 

しばらくしてからのことだった。

先生は自分で守護霊を出したというのに、どこか困惑したように独り言を繰り返す。

そして、

 

「……あぁ、そういうことか。そういうことだったのか。成程、ようやく合点がいった。結局、ダリアへのアドバイスはそのまま私に当てはまることだったのか。まったく、私は最後まで……」

 

一通り何か呟いた後、ようやく私に向かって最後のアドバイスを始めたのだった。

 

「ダリア……。ようやく分かったよ。私が何故守護霊を出せなくなったのか。そして何故、君が守護霊を出せていないのかを。……私は以前君に、君の幸福な記憶がまだ十分ではないから守護霊が出せないのだと言ったね。あの時君は否定したし、私も君がそう言うのならそうなのだろうと思ったが……。やはり私の言ったことは間違ってはいなかったんだ。いや、少なくともあの言葉は、私には当てはまっていたことなんだ。私は……私達は、幸福な記憶に集中しきれてなどいなかった」

 

「いえ、そんなことは、」

 

「いや、最後まで聞いてくれ。私の幸福な記憶は、学生時代に私を受け入れてくれた友達と共にあった時間。あの時の私は、彼らが受け入れてくれるなら、こんな私でも生きていてもいいんだ、こんな私でも立派な人間であれるんだと思えていた。……こんな私だからこそ、彼らと仲良くなれたのだと思った。それがどうだ。友に裏切られたと思った時、私は守護霊を出せなくなった。幸福だと思っていた時間が、実はただの嘘だと思うようになってしまったんだよ。……私は自分自身に価値を見出すことが出来なくなったんだ。……だが、それが再び出せるようになった。先程も言ったね? シリウ……友人とようやく仲直りすることが出来たんだと。彼と仲直りした瞬間、私は再び守護霊を出せるようになった。ここまで言えば分るだろう? 私は君に偉そうなことを言っておきながら、実は自分こそが幸福に集中してはいなかったんだよ。……幸福な記憶を、どこか自分のせいで台無しにしてしまったのだと思っていたんだ。……私は、自分自身を汚い存在だと思ってしまっていたんだ」

 

「……」

 

沈黙する私をよそに、先生は真摯な視線を私に向けながら続ける。

 

「勿論君も私と同じだと断言することは出来ない。私がそうだったというだけで、君もそうだと断言するのは間違いだ。だが『闇の魔術に対する防衛術』を一年間教えてきた私に、それ以外の理由が思いつかないことも事実だ。……ダリア、これが最後の授業だ。どうかもう一度だけ考えて欲しい。間違っていたらそれはそれでいい。だがもう一度だけ……。君は本当に、幸福な記憶に集中しきれているかい? どこかそれが嘘だと。自分こそがその幸福を汚している存在だと思ってはいないかい?」

 

「……」

 

先生の言葉に、やはり私はすぐに返事をすることが出来なかった。

言葉を切り真摯な表情でこちらを見つめる先生の前で、私は言葉もなく立ち尽くす。

何故なら……先生の言葉に、私は思い当たる節しかなかったから。

 

『幸福な記憶を、どこか自分のせいで台無しにしてしまった』

 

思い返せば、先生の言う通りだった。

私の思い浮かべる幸福な記憶。それはマルフォイ家やダフネと共にあること。そして……こんな怪物である私を、彼らが受け入れているということ。

私の幸福な記憶の中には……常にそれを穢す私という存在があり続けていた。

 

『君は本当に、幸福な記憶に集中しきれているかい? どこかでそれが嘘だと。自分こそがその幸福を汚している存在だと思ってはいないかい?』

 

分かれば簡単な話だ。

いくら素晴らしい人間に囲まれていることを幸福に思っていても、そんな彼らを穢してしまっていると思っていてはその幸福感に浸りきれるはずがない。

自身が怪物であることが当たり前のことだと思い、ずっとそんな簡単なことに気付いていなかったが……先生に指摘されることでようやく気付くことが出来た。

何故今まで不完全な守護霊しか出せなかったかを。

そして……

 

「……成程。言われてみれば、私は幸福な記憶に集中しきれてはいなかった。私の記憶には、常に私という穢れた存在がいた。確かに先生の言う通りです。ですが……ならばどうすればいいのですか?」

 

「ダリア?」

 

これからも、決して私は守護霊を完成させることは出来ないだろうという事実を。

 

「……私は私のことが大嫌いです。それは多分これからも同じ。私はどう頑張っても……私にしかなれないのだから。マルフォイ家やダフネは、こんな私でも愛してくれている。でも、私という汚らわしい存在が変わるわけではない。こんな私が、一体どうやって自分を認めろというのですか?」

 

私が絞り出すように話し終えると、再びロビーには気まずい沈黙が満たされる。

気を利かせてくれた先生が再び口を開いても、

 

「……私が言っておいてなんだが、君がそんなことを言うなんて正直驚いたよ。君がそんな風に自分のことを考えているなんて、私は想像もしていなかった。君はこの学校で……いや、この学校が始まって以来一番優秀な生徒だと多くの先生が言っている。家柄だって……まぁ、()()()()()()()()恵まれたものと言えるだろう。それなのに何故、君は自分のことをそこまで嫌いなんだい?」

 

「……()()()が知る必要のないことです」

 

そんな失礼極まりない返事しか出来なかった。

こんなつもりはなかった。今年一番お世話になった先生がここを去るのだ。たとえ先生が私に警戒心を持っていたとしても、せめて最後くらいは笑顔で送り出して差し上げたかった。

でも、私自身に向ける感情のせいで守護霊を習得できないと言われて、私は自分自身を抑えることが出来なかったのだ。

 

こんなことになるのなら、先生の見送りになんか来るのではなかった。こんなことなら、先生の答えなんて聞きたくなかった。

 

沈黙の中、私は遂にはそんな身勝手なことすら考え始める。

そう、

 

「ダリア……。私は君の事情を知らないし、君が私に……いや、ダンブルドアに自分の事情を知られたくないと思っていることも理解しているつもりだ。だが、そうだな……少しだけ私の話を聞いてほしい」

 

先生が優しい声音で再び話し始めるまでは。

老害がポッターに向け、決して私には向けることのない……どこか見守るような優しい視線を送るまでは。

 

「先程も言ったが、私は自分自身に価値を見出すことが出来なくなったから守護霊を出せなくなった。だが、昔は出せていたんだ。この狼人間である私がだ。君も知っている通り、私達狼人間は世間から怪物だと思われている。当然だ。満月の時期になると親しい人間ですら襲ってしまうのだからね。皆が恐れるのは当然のことだ。特に『脱狼薬』がなかった当時なら尚更だ。でも……本当に小さい頃狼人間になった私には、そんな風に達観した考えを持つことが出来なかった。周りの人間どころか、親にさえ内心疎まれていた私はよくこう思っていたよ。自分は人間の形をしているだけの怪物だ。そんな怪物の私はいつか誰かを襲ってしまうことで、このつまらない人生を終えるんだろうなってね」

 

どこかで聞いたことのあるような話だ。

そう思っている私に、先生は静かな口調で続ける。

 

「だが、ダンブルドアの御厚意でこの学校に入り、そこで……ある人達と知り合うことで、私の考えは変わった。彼らは私とは同級生だった。彼らは何かと派手な人間達でね。その才能をいつも下らないことに発揮してばかりの奴等だったよ。丁度グリフィンドールのウィーズリー兄弟みたいにね。そしてそんな彼らが……ある日僕に近づいてきた。こういっては何だが、僕も学生の頃は優秀な生徒だったからね。彼らの悪戯のために、私の才能が必要だと思ったのだろう。私は最初、彼らと仲良くするつもりなんてなかった。愉快な奴らだとは思っていたよ。でも、私には誰とも仲良くなるわけにはいかない事情があった。満月の時期には、私はとある場所に隔離されることになるからね。私が狼人間であることが露見すれば、彼等から避けられるどころか、この学校にさえいられなくなる。だから私は決して彼らと仲良くなるわけにはいかないと思ったんだ」

 

それはやはりどこまでも……私と同じで。

 

「でも、ある日私の秘密が遂にバレた。原因は……私が結局、彼らを邪険にし続けることが出来なかったからだ。私がいくら拒絶しても、それでも私と仲良くしたいという彼らに、私は悪感情を持つことが出来なかった。彼らを拒絶することが出来なかった」

 

どうしようもなく、共感を感じざるを得ない話だった。

 

「愚かな話だろう? 結局私の中途半端な態度が自分自身を苦しめることになったんだから。あの時の私はとても後悔したよ。何故彼らを拒絶しなかったんだろうかってね。私がきちんと拒絶していれば、私も……彼らも傷つくことはなかったのにってね。だが……」

 

「……だが?」

 

「彼らは私の秘密を知っても、それでも私に近づくことを止めなかった。それどころかアニ……ちょっとした違法行為を犯してでも、満月で怪物になり果てた私の下にやってきたんだ。彼らには私が狼人間であることなんて関係なかったんだ。彼らはこう言っていたよ。私はただ毛深いだけだってね。私の秘密を周りに言いふらすなんてことをせず、私をそれでも友達だって言ってくれた。それからは輝かしい日々だったよ。満月になっても、彼らと一緒に過ごす本当に輝かしい時間。私はいつの間にか……狼人間でよかったとすら思えるようになった。狼人間でなければ私達は知り合うことも、あれ程仲良くなることもなかっただろうからね。私達三人は、それ程素晴らしい友達関係だったんだ。そうだな……君で言うと、君とダフネと同じくらい仲が良かったように思う。本当にいい友達だったよ」

 

そう言い切った先生は、最後にやはり優しい瞳をしながら話を締めくくった。

 

「私の事情が完全に君のものと一致しているとは思わない。寧ろ君からすれば、私が何を話しだしたのかすら分からないかもしれない。だがもしかしたら……君には少しだけ私のことを理解出来ている、そう私には思えて仕方がないんだ。根拠なんて全くないのだけどね。でも、もし私のこの直感が正しいのなら……少しだけ考えて欲しい。君は自分のことが嫌いだと言ったが、本当にそれは悪いことばかりだったのかい? それがなければなかったことや、それがなければ出会えなかった人達がいはしないかい? もし少しだけでも心当たりがあるのなら、この場だけでもいい。自分を少しだけ……少しだけでも許してあげたらどうだい? そうすれば、君はきっと守護霊を出すことが出来るようになることだろう。……きっと少しずつ、自分のことを好きになることが出来るだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーピン視点

 

長々と語ってしまったが、何故自分がここまで踏み込んだ話をしてしまったのか、正直自分自身でもよく分からなかった。

ただ授業を完遂できなかったということだけの後悔のはずが、何故こんな自らの身の上話になってしまったのだろう。

だがそんなことを冷静に考えている思考の中で、それでもダリアなら私の話に共感してくれるのではと思う自分がいたのも確かだった。私とは似ても似つかない境遇にいるはずのダリアに、何故か私はどうしようもなく共感を感じていたのだ。

そしてその思いは、

 

「……それがなければなかったことや、それがなければ出会えなかった人達」

 

あながち間違いではなさそうだった。

ダリアは何かを考え込むように、目をつぶり私の言葉を繰り返す。彼女の様子から、私の言葉に何か感じ入る部分があったことは間違いなかった。

私はそんな彼女を見守りながら、じっと彼女の中に何かしらの答えが生まれるのを待つ。

 

私がこの学校にいられるあと僅かな間に、彼女が少しでも救われるように……。

 

私は……いや、私どころか、この世で何一つ知らないものがないはずのダンブルドアでさえ、ダリアのことを何も知らない。彼女について知っていることと言えば、彼女がドラコ・マルフォイの双子の妹であるという、そんな誰でも知りえているような事実しか知らない。そんなもの何も知らないのと同じことだ。

それなのに、私は彼女を苦しめていた。彼女が去年の事件に関わってたとしても、確たる証拠がない以上彼女を疑うことは……()()()()()あまり褒められたことではない。

だから私は出来ることなら少しでも贖罪をしたい……そう無意識に思ってしまったのだ。それに一年間だけの教師とはいえ、授業を完遂せずにここを去るのはあまりにも寝覚めが悪い。

そして、

 

「……先生と私では抱える事情が全く違う。先生と違い、私の事情は改善することすら叶わない。でも、それでも……。あぁ、先生の言う通りですね。もし私がそうでなければ……私は決してお兄様やダフネ達とは……。皮肉なものです。本当に世界は理不尽で……残酷。でもそれだけではない。先生はそう言いたいのですね。ならば……」

 

そんな私の思いは無駄になることはなかった。

少しの間ダリアは目を閉じていたかと思うと、ふと目を再び見開き、

 

『エクスペクト・パトローナム。守護霊よ来たれ』

 

その呪文を唱えたのだった。

しかも杖から出た銀色の靄は、今までの不確かな形ではなく、

 

「これは……『()()()()()』のようだね」

 

未だに完全とは言えなくとも、確かに何の生き物か分かる程度の形にはなっていた。

 

「……今までただの鳥の形でしかなかったのに、こんなことで少しでも前に進むなんて……。しかし……」

 

私は自分ですら驚いている様子のダリアに、思わず拍手を送りそうになりながら応えた。

 

「おめでとう、ダリア。まだ完成した守護霊とは言い難いが……これでやっと前進することが出来た。しかし君の守護霊がまさかオーグリーとはね」

 

目の前に羽ばたく銀色の守護霊はおそらくハリーが出したものほど完全なものではなく、吸魂鬼もそれ程大勢の数を撃退できるものではない。形も未だに霞の域からは脱していない。

しかしこのおぼろげな形からでも、私達は何の動物かくらいは判別することが出来た。この特徴的なシルエットを、私達が見間違うはずなどない。

 

ほっそりとした悲し気な目つき、そして小型のハゲワシのようなシルエット。アイルランドの()()()として知られる『オーグリー』で間違いなかった。

 

オーグリーの形を僅かに保った守護霊は、その動物と同じく儚い軌道で飛び、やがて虚空に消えてゆく。

私は今度こそ拍手をすることでダリアの進歩を祝福しようとした。しかし、ダリアはどうやらこの成果を手放しに喜ぶ気持ちにはなれなかったらしい。いつもの無表情とは裏腹に、どこか不満そうな声音を隠そうともせず続けた。

 

「……本当に、私にお似合いの守護霊でしたね。オーグリーはその鳴き声から死を予兆すると言われる鳥。私には実にピッタリです」

 

ダリアの反応に思わず苦笑が漏れてしまう。表情はやはりいつもの冷たい無表情にしか見えないが、どうやら今日の彼女は少しばかりナイーブな思考をしているらしい。いつもであればオーグリーのもう一つの話に気付くだろうに、ただ世間一般に知られている負の一面しか見ていない。これではいつぞやの授業で、自身が守護霊を出せなくなったと告白した私とあべこべだ。

私は何故苦笑されてるのか分からない様子のダリアに話しかける。

 

「それはどうかな。確かにオーグリーは世間一般では死を予兆すると言われているね。私は聞いたことないが、何だか胸が張り裂けそうになるような哀しい鳴き声なんだってね。しかしそれは世間一般での話でしかない。優秀な君のことだ。たとえ『魔法生物飼育学』を受講していなくとも、本当ならオーグリーのことは知っているのだろう? ……本当は、別に彼らの鳴き声は死の予兆でも何でもないってことを」

 

「……」

 

「気付いたかい? いや、思い出したかい? そう、オーグリーの鳴き声は本来、ただ雨が近づいていることを知らせてくれるものでしかない。ただそれを人間が勘違いしていただけだ。一時期天気予報にオーグリーを飼うことが流行りもしたが……それもすぐ廃れてしまった。彼らはまた死を予言する不吉な鳥に逆戻りだ。悲しいことにね……。だから君はそんなに自分のことを嫌う必要などない。他ならぬ君が生み出した君自身の形だ。()()()()()()()なだけで、君も自分の形を誤認する必要なんてないさ。実に君らしい……本当に綺麗な守護霊だと私は思うよ」

 

本心からの言葉だった。

ダリアのオーグリーを見た瞬間、私は今まで感じていた違和感のような何かにようやく気付けたような気がした。

 

あぁ、そうか……彼女はただ勘違いされやすい、ただ表情がないだけの女の子でしかなかったのだ、と。

 

銀色の鳥の形をした彼女の内心を見て、私はようやくその考えに行きつけたような気がしたのだ。

ダンブルドアの守護霊と同じ不死鳥でありながら、彼のものとは違い、どこまでも誤解や偏見に満ちたその鳥を見て……。このホグワーツ最後の瞬間に……。そう、

 

「あ! す、すまない、ダリア! もう本当に行かなくては! 走って間に合うだろうか……。と、とにかく、君が最後に守護霊を習得出来て良かったよ! これで心残りなくここを去れる。ではね、ダリア! 機会があればまた会おう!」

 

本当に最後の最後の瞬間に。

思い出したように時計を見た瞬間、私はもう本当に時間がないことに気が付き走り出す。

 

何故か、

 

『先生……私はずっと先生を信じていたのに! 私は誰にも言わなかった! マルフォイさんは先生のことを知っていても周りに言わなかった! ()()()()()()()()先生なら大丈夫だと信じているのなら、私だって先生を疑う必要はないって、ずっとそう思っていたのに……! でも、先生はずっとマルフォイさんを()()()()()()()()! 先生はずっとシリウス・ブラックとグルだったのね! 狼人間なんか信じるべきではなかった!』

 

昨夜シリウスを助けた際、未だに彼のことを誤解していたハーマイオニーの発した言葉を思い出しながら。

彼女の言葉の中に、グリフィンドール生でありながらダリアを信じているという言葉があったことに……何故かほんの少しの安堵感を覚えながら。

だから急ぐだけでなく、そんな取り留めのない考えに支配されていた私は、

 

「……先生、ありがとうございました。先生の未来に祝福を。どうかこれから、少しでも先生が心穏やかに過ごせますように。……たった一年でも、先生との出会いは何物にも代えがたいものでした」

 

背後で小さく呟かれた言葉と……彼女が見せていた、無表情ではない本当の笑顔に気付くことはなかった。

 

 

 

 

こうして、私の一年という短いようで長かった教師生活は終わりを迎えたのだった。

 






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イラストレーター、ジンドウ様に描いていただいた作品

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