ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス 作:オリゴデンドロサイト
ハーマイオニー視点
ダンブルドアの追放。……正確には逃亡。
『秘密の部屋』の時程ではなかったけれど、このニュースはホグワーツ中に大きな衝撃を与えた。勿論多くの人がダンブルドアのことを信じなくなっている現状、あの時のように学校全体が恐怖に包まれるようなことはない。どちらかと言えばゴシップ的な印象を抱いている人の方が大多数と言える。
でも真実を知っている人には分かる。ダンブルドアがいなくなったことにより誰が最も得をするか。それはあの性悪なアンブリッジであり……そして何より、彼を恐れる『例のあの人』なのだ。『例のあの人』は今頃上機嫌なことだろう。何せ今世紀最高の魔法使いを……自身を最も脅かす敵を容易くお尋ね者にすることが出来たのだから。完全な排除とはいかなくても、ある程度ダンブルドアの行動を制限することが出来る。
『アルバス・ダンブルドア追放! 今世紀最高と謳われた魔法使いの凋落!』
朝刊の一面記事に我が物顔でそんな言葉が並ぶ。
ダンブルドアが学生を魔法省転覆のために先導しようとしていた。そしてその悪事が露見し、その場にいた魔法省職員を卑劣な手段で攻撃し、逮捕寸前のところで逃亡した。内容はそんな魔法省に都合のいい言葉の垂れ流しでしかない。
勿論こんな出鱈目な記事を載せれば、逆に魔法省に疑いを持つ人間は増えることだろう。死喰い人の大量脱獄の時以上に、大勢とは言えないけど記事に眉をひそめている生徒はいる。
……でもどれ程多くの人が魔法省に疑いを持とうとも、
「ハ、ハリー。それにグレンジャー。これから、ど、どうするんだい。ダンブルドアが追放なんて、魔法省は何を考えてるんだ!? 僕はこんな時こそ君の授業が必要と考えるけど……
もう彼等のこと受け入れる集会自体が存在しない。前回とは前提条件そのものが違っている。
今度こそ、私達は完全に敗北しているのだ。
記事を読んで慌てた様子で話しかけてきたアニーに、私は胡乱気な視線を送る。ここは大広間。それも皆が集まる朝食の時間。誰が見ているかも分からない空間。事実視界の端に、こちらをジッと見つめている人物が映っている。
「……アニー、昨日の今日よ。今はこちらに来ては駄目よ。
私の言葉に危険を感じ取ったのだろう。慌てた様子でアニーがハッフルパフの席に戻っていく。その姿を見送る私の視界の端には、相変わらず蠅を狙うガマガエルのような表情を浮かべるあの女。今までもあんな視線を受けたことはあるけど、今日のものは別格だった。余程昨日私達を
あの女に勝ったのは……
現実を見ようともしない私は……負けたのだ。
それをハリーとロンも理解しているのか、二人も何とも言えない表情を浮かべている。
他のメンバーとは違い、二人も今までの集会を
私は二人の顔を見つめながら考える。
当然答えなんてない。……もう私に彼女が助言をくれることはないのだから。
『へぇ、これが貴方達が望んだ……『必要の部屋』ですか。成程、防衛術を練習するには理想的な広さですね。……まぁ、これでこの集会も最後になるわけですがね』
昨日、床にひれ伏す私達の頭上に響いた無機質な声音を思い出す。
その声は私やダフネといる時とは全くの別物の、どこまでも冷たいものでしかなった。それこそ本当に私達のことを転がる石ころくらいにしか思っていないような声音。『必要の部屋』前の廊下。あの時、魔法で地面に押し付けられている私達の他に、本来であれば彼女の味方であるはずの高等尋問官親衛隊メンバーの姿もあった。それこそ彼女の兄であるドラコの姿も含めて。
でも、彼女以外の誰一人として声を上げようとしない。いえ、上げることが出来なかった。
声の主である……ダリアの声音があまりに冷たく、あまりに冷酷な響きだったから。
私は当に部屋から逃げ出そうとした直後の格好のまま地面に倒れ伏していても、何とか頭だけ上げて彼女の顔を見上げた。そこにあったのは声音通り、ただただ私達のことを冷たく見下ろす瞳。やはりそれはどこまでも私の知っているものとは別物でしかなかった。
しかも、
『さて、それでは始めますか……と、言いたいところですが、余計な観客が多すぎますね。親衛隊の皆さん。お兄様以外は全員談話室に戻ってください』
『な!? 何を言い出すの、ダリア! さては手柄を独り占めするつもりね! そりゃ貴女が一番捕まえたのは事実だけど、私達にも少しぐらい、』
『何を勘違いしているのですか、パンジー? ……せっかくこれだけ
そんなことを言い始めたのだ。何とか声を上げたパーキンソンも青ざめた表情で黙り込んでいた。決して冗談を言っている雰囲気ではなかったのだ。全員の脳裏に浮かんだのは、去年ダリアがムーディー先生を拷問した時の姿。あの時と同じ光景が今度は自分達に起こるのではと、皆に想像させるには十分な雰囲気だった。
『それとも、皆さんも見たいのですか? それは残念です。私としては目撃者は少なければ少ない程、』
『だ、大丈夫! や、やっぱり私達は談話室に戻っているわね!』
ダリアの言葉で親衛隊は逃げるようにして寮に戻っていく。残されたのは未だに床に這いつくばる私達とドラコだけ。
その様子を……私もただ黙って見つめ続けることしか出来なかった。
そして声を上げることも出来ない私達に、彼女は決定的な行動を取り始めたのだ。
『さて、邪魔者は全員消えましたね。それでは始めましょうか』
『ま、待ってくれ! ぼ、僕に何かすればパパが黙って、』
『貴方に用はありません。それではさようなら、良い夢を。
唯一声を絞り出せたザカリアスから始まり、次々とDAメンバーの意識を刈り取っていく。本来人に、それこそ同じホグワーツ生に決して使ってはならない類の呪文で。
『オブリビエイト、忘れよ』
二年生の時、あのペテン師が私達にかけようとした呪文。魔法を目撃したマグルに使うことがあるらしいけれど、決して日常生活に縁のある呪文ではない。寧ろ非日常的な呪文であり、ともすれば闇の魔術と言っても差し支えないものだろう。
それが何の躊躇いもなく、まるで何でもないことのように使われていることが信じられなかった。
そして次々と記憶を消され、最後に残されたのは、
「ダリア……」
「……これで必要な処理は済みましたね」
私を含めて数名のみだった。私にロン、そしてネビルにルーナ。何とか視線だけで見渡したところ、意識が残っているのはこの四人だけ。ハリーは疾うの昔にアンブリッジにどこかへ連れていかれていた。後の生徒は皆顔を地面に伏せてしまっている。呪文の影響で一時的に眠っているのだろう。しかも、
「ダリア・マルフォイ! この……悪党! お前は自分が何をしたのか分かってるのか!? お前が使ってる呪文は、」
『ステューピファイ』
遂に事態に頭が追い付き、大声で騒ぎ始めたロンも失神呪文で眠らされる。これで本当に残っているのは私と、何故かネビルとルーナだけになっていた。
私はただ信じられないという気持ちでダリアを見つめることしか出来ない。ダリアが私の前で、それこそ闇の魔術を使ったことは今までにもあった。あの時のことを決して忘れたわけではない。忘れられるはずがない。でも今回のことは、今までのそれとは別の性質なものである気がしたのだ。
もっと決定的で、本当の意味で
……結局、その後ダリアは私達と言葉を交わすことはなかった。
『……グレンジャーはともかく、こいつ等はいいのか? もしお前に躊躇う理由があるなら、僕が代わりに、』
『いいえ、お兄様。これで構いません。これらの記憶を消せば、ダフネがこの会に
ダリアとドラコは唖然とする私を尻目にそんな会話をした後、ルーナとネビルの目を数秒覗き込み……そのまま何も言わずに去ってしまった。
残されたのはやはり唖然とするだけの私達三人だけ。あの時、私達の誰もが状況を真に理解することも、流れに抗うことも出来ずにいた。
だから本当の意味で自分達に起こったことを……ダリアが何をしたのかを理解できたのはいくらか時間が経ってからのことだ。
それこそアンブリッジに連れていかれたはずのハリーが帰ってきた時。ハリーからダリアのしていた話を聞いた時にやっと、
『私の得ている情報では、今回のものは正真正銘最初のものでしかないです。彼等もそう証言していましたよ?』
私は理解したのだ。
何故ダリアがあんな呪文を使ったのか。ハリーが無事に帰ってくることが出来たのか。……私達が今もこうして退学にならずに済んでいるか。本来であれば勝者であるはずのアンブリッジが、あんなにも悔しそうな表情を浮かべているかを。
もはや誰が裏切り者だったのかなんてどうでも良かった。ダフネでないことに間違いはないけど、調べようにもメンバーの誰一人として顔に裏切るものである証が浮かんでいない。本来であれば顔全体に決して消えないニキビが浮き上がるはずなのだ。見れば一瞬で分かる。でもそんな姿のメンバーは誰一人としていなかった。誰かが裏切ったのは間違いないけど、その誰かが全く分からない。探そうにも誰もかれもが記憶を無くしている。探すには一人ずつ話す必要があるだろう。
でも、かと言ってその誰かを探す気にもならないし、もはやどうだっていい。
……だってそれが誰であろうとも、ダリアが戻ってくることは決してない。私はようやく自分の中にある甘い考えを捨て去った。いえ、捨てざるを得なかったのだ。
『これからもダフネをよろしくお願いします。たとえ私が敵になったとしても……』
あぁ、浴場でのダリアの言葉を、私は今ようやく本当の意味で受け取ってしまった。
ダリアは今回も私達のことを守ってくれた。それは間違いない。でも彼女はもう手段を選んでいる余裕などなくなっている。足手まといである私なんかのことを考えてはいられないのだ。彼女が守りたいものはダフネと家族。それ以外のものに配慮している余裕なんてない。それこそ『忘却呪文』なんて非情な手段を使ったとしても。
あれこそが彼女なりの最大限の譲歩。私とネビルやルーナ、そしてロン。あの場にいなかったハリー以外の人間は、全員今まで集会で学んだことすら忘れ去っている。当初の闇の勢力から生き残るすべも、決して十全とは言えないものに成り果てていることだろう。
でも、そうだとしても、忘れていなければ、今度は学校から去らなければならなかったかもしれない。この世界で唯一安全な学校から。それならばまだ忘れてしまっていた方がマシなのかもしれない。真剣に練習していた人間ならば、記憶がなくても体はある程度覚えているだろうから。そのための授業をハリーはしていたのだから。
本当に……自分自身が嫌になる。本来であればこれは私が負うべき責務のはずだったのだ。
自分のかけた呪いに慢心し、メンバー1人1人を見ようともしていなかった。メンバーが増えることを喜ぶばかりで、その真の意味を理解してなどいなかった。
そんな私の慢心の結果、結局ダリアに全てを背負わせてしまった。
何がダリアのやったことを信じられない、だ。私は結局信じたくなかっただけなのだ。あの別れの言葉を聞いても信じようとしなかった私が、目の前に現実を突きつけられてようやく信じざるを得なくなっただけなのだ。
ダリアと私は……本当にもう交わってはいけない関係になってしまったという、単純で絶対的な現実を。
これから私はどうすればいいのだろうか。
ダンブルドア軍団は消滅した。これから再結成することも、おそらくもう不可能だろう。私達最大の希望であるダンブルドアもいない。
こんな絶望的な状況の中で、私は一体どうすればいいのだろう。ある意味でダンブルドア軍団を結成する以前の状況に逆戻りしてしまった。
でもあの時とは一点全く違うところがある。
それは……もうダリアには頼れないということだ。何故ならもう、彼女は私と全く関係のない人間であらねばならないのだから。
そうでなければ、また私はダリアに辛い選択をさせてしまうことになるから……。
私には見えていたのだ。ダリアが去る瞬間、確かに冷たい無表情ではあったけど……どこか
私にはそんな彼女の僅かな表情が見えていたのだ。
たとえ瞳が……あの血の様な赤色であっても。
ハリー視点
僕のこれまでやってきたことは何だったのだろう。
僕の思考はこの一言に尽きた。
アンブリッジから解放され、何とか退学だけは避けられた。でもそれだけだ。僕の今までの行動は完全に意味のないものになってしまった。
何故なら『ダンブルドア軍団』はもうなくなり、それどころか……メンバーのほとんどが集会のことを覚えてすらいないのだから。
「ハリー……次の集会のことだけど、どうするつもりなんだい?
「……シェーマス。悪いけど、今は次のことなんて考えられないんだ。また何か決まったら必ず教える。だから……」
「あぁ……頼むよ。まだ君から
グリフィンドール談話室で項垂れる僕に話しかけてきたシェーマス。彼も集会のことを覚えていなかった。確かに彼がDAに参加したのは途中からだ。でも彼が参加したのが1回だけだったということはない。何度も参加していた。それが今では……最後の集会のことしか覚えていない。
彼は忘れさせられたのだ。彼だけではない。ハーマイオニーの話では、DAのことを覚えているのは僕を含めて5人だけ。ハーマイオニーにロン、そしてネビルにルーナ。それ以外の生徒は誰一人として覚えていない。シェーマス以外のグリフィンドール生。それこそロンの妹であるジニーや、あのフレッドとジョージですらも。
……ダリア・マルフォイに忘れさせられたから。あいつに忘却呪文をかけられたから。
あいつが僕達の今までの努力を一瞬で無意味なものにしたのだ。
アンブリッジから解放され、やっとの思いで寮に帰った僕を迎え入れたのは……ハーマイオニーとロン、そしてネビルを除けば、もはや何一つDAのことを覚えてもいないメンバーだった。
衝動的にテーブルを叩きそうになるのを何とか我慢する。
いつだってそうだ。あいつはいつだって僕等の邪魔をする。あの何を考えているか分からない無表情で、いつだって僕等の
あいつは僕等と同じホグワーツ生でありながら……もう既に『死喰い人』の一員として相応しく行動しているのだ。
『ダリア・マルフォイ……そうお前は名前を付けたのだったな、アレに。俺様は3年前にアレの成長ぶりを聞いておるぞ。実によく育っていると。当に俺様の望んだ、お前達死喰い人を統べるに相応しい存在だ』
僕が去年墓場で聞いた通りに。
あいつのことを考えるだけで大声を上げたい衝動に駆られそうだった。
……でも、それが分かっていても、内心怒り心頭でも僕は今回ばかりは何も言うことが出来なかった。
言えば一時的に気が晴れるかもしれないけど、後でより惨めな気持ちになってしまうだろうから。
何故ならあいつの行動で僕達が助けられたことも間違いないのだから。
皆の記憶を消す。これでアンブリッジが僕等を追及する術がなくなったのも事実なのだ。
『私の得ている情報では、今回のものは正真正銘最初のものでしかないです。彼等もそう証言していましたよ? 私としてはもう少し待ってから一網打尽にしたかったのですが……実に残念な話です』
ダリア・マルフォイの言葉が頭の中で響く。僕は内心の怒りを無理やり抑え込み、長い溜息を吐き出しながら考える。
あいつは悪。ヴォルデモートに従う僕等の敵。それは間違いない。今回の行動だって、理由こそ分からないけど僕等のことを思ってのものではない。秘密の部屋の時と同じだ。あいつはいつだって陰で何かしらの行動をしていて、それが決して良いことであった事実はない。
でも今回のことだけで言えば、あいつの行動でDAメンバーの退学だけは避けることが出来た。あいつの悪事で、僕等も恩恵を受けてしまっているのだ。事実ダンブルドアを追放したというのに、アンブリッジが少しも勝ち誇った顔をしていない。朝食の席でも僕等のことを睨みつけるばかりだ。とても勝った人間の態度ではない。
僕等は結果的にダリア・マルフォイに救われた。僕等は本来なら退学させられてもおかしくない立場……完全に敗けた立場であってもだ。これで今あいつに対して文句を言えば、自分のことがより情けなくなってしまう。ロンもそれが分かっているからこそ、今は表情を歪めても何も言おうとはしない。
勿論文句は言えなくても、あいつに対する警戒感はより強くなっている。ロンも同じだろう。
今僕がすべきことは、失ったものを悲しみ続けることでも、ここにいないダリア・マルフォイに怒り続けることでもない。次こそあいつに出し抜かれないように考え続けることなのだ。
そもそも何故あいつはあんなことをしたのだろうか。僕等を追放できれば、それこそヴォルデモートはより一層喜んだに違いない。なのにそのチャンスを自ら逃した。まさか僕等のためなんてことは絶対にないはずだ。ならどうしてだ? どうして僕等を逃がすようなことをやったんだ?
正直考えても全く見当がつかない。ダリア・マルフォイのことなんか考えても仕方がないけど、ホグワーツ内にいる敵が理解不能な行動をとっているのは不気味でしかない。どんなに嫌でも、僕は考え続けるしかないのだ。
……尤も、考えても一向に答えなんて出ないと思われたこの疑問は、意外にも直ぐに氷解することとなるのだが。
それは記憶が消されたことで、急に余所余所しくなってしまったチョウ・チャンと話している時だった。僕は彼女にありのままの事実を話した。でも返ってきたのは彼女の悲痛な叫びだけだった。
「ごめんなさい……。わ、私も貴方のことは好きだけど……でも、ごめんなさい。わ、私何も覚えていないの! 貴方が言うことが私には全く分からないの! パブに集まった時はともかく、今回集会が初めてだったとしか思えない! 貴方と話したことも、私は覚えてもいない!」
取り乱した様子のチョウに、僕は他のメンバー以上の喪失感を味わう。僕は以前から彼女のことが好きだった。そしてクリスマスから彼女と付き合えることになったというのに……彼女は肝心な記憶を、それこそDA以外の記憶も全て奪われていたのだ。
あのクリスマスでのキスも、DAでの日々も全て。彼女にとって、僕はただの後輩に戻ってしまった。
僕は未だ彼女が好きだ。そして嬉しいことに、彼女も僕のことを好きでいてくれている。しかし……おそらくもう元の関係に戻ることは出来ないだろう。そのどうしようもない事実を僕は理解してしまったのだ。
ただでさえチョウは以前から情緒が不安定だった。それが今回のことで完全に崩れてしまった。……もう僕にはどうすることも出来ない。そう僕は心のどこかで理解してしまったのだ。
そしてそれは僕だけではなく彼女も同様だろう。でも彼女の場合、どうやら僕とは更に違った事情があるようだった。彼女は叫んだ後続けたのだ。
「それに……私はもうダリア・マルフォイに目をつけられてしまってる。昨日、突然
この時ばかりは僕も我慢の限界だった。何故チョウなんだ。他のメンバーに対してはこんなことはしていないはずだ。ダリア・マルフォイが的確に僕の弱みに付け込んでいるとしか思えなかった。
「チョウ……くそ! ダリア・マルフォイ! どこまで僕のことを馬鹿にすれば気が済むんだ! 何が友人を大切にすべき、だ! あいつだって、ダフネ・グリーングラスをDAのスパイにしていたのに!」
流石に自分のガールフレンドを狙い撃ちにされては我慢できない。今まで何とか抑えていてものが溢れ出す。
……でも次の瞬間、
「……ダフネ・グリーングラス?
「決まってるだろう!? DAの裏切り者はあいつだ! やっぱりあいつはダリア・マルフォイのスパイだったんだ! 君も覚えているだろう! あいつは最初にも、それこそ最後の集会にもいた! 君だって覚えているはずだ!」
「……え? どういうことなの? 私……彼女がいたことなんて
そんな訳の分からない言葉に黙らざるを得なかった。
ダリア・マルフォイの奪った記憶は……何もDAのことだけではなかったのだ。
この言葉の意味を最初に理解したのは僕ではなかった。この時の僕は、この行き違いを単にダリア・マルフォイの理解不能な行動の一つとしか考えていなかった。
それを教えてくれたのは……やはり僕等の中で最も賢いハーマイオニーに他ならなかった。
彼女の話を聞いた時、僕は最初否定したけれど。でも後から冷静に考えた時、確かに彼女の言葉に間違いはなかった。感情的には否定したいものであったし、ロンだって大声で拒絶していた。でも心の中で納得もしていたのだ。
あぁ、だからどこか違和感を感じ続けていたのか、と。
ダフネ・グリーングラスは……スパイにしては、DAに真剣に取り組んでいたな、と。