ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス 作:オリゴデンドロサイト
ハーマイオニー視点
今日は初めての『変身術』の授業がある。
変身術は一年生で習う教科の中で一番難しいものと聞いている。
それに担当の先生は、グリフィンドールの寮監であるマクゴナガル先生だ。寮監に失望されないためにも失敗するわけにはいかない。
でも大丈夫。入学式のあと、上級生のパーシーに最初にやる授業内容も聞いていたので、その予習はしっかりしている。
これで失敗するわけがない。
そう自分に言い聞かせながら、私は変身術の教室に入り席に着く。
授業の開始時間が近づき、ホグワーツにかかった様々な魔法のせいで授業に遅れそうになりそうになりながらも、何とかたどり着くことができた生徒たちで周りの席が埋まってゆく。
そうして授業開始の時間になり、辺りを見回してみると……ほとんどの生徒がもう席についているというのに、まだ二つだけ席が空いていることに気が付いた。
おそらくハリー・ポッターとロナルド・ウィーズリーだろう。
私にとってグリフィンドールの男の子たちは、あまりにも子供っぽかった。
とりわけ、今来ていない二人はその中でも特に子供っぽかった。
これでグリフィンドールから点数が引かれたらどうするのよ!
と思っていると、教室の横の扉からマクゴナガル先生が入ってきた。
「まずは出席をとります」
マクゴナガル先生は非常に厳格な先生だ。自分の寮生だからと言って見逃しはしないだろう。そして、
「ポッターとウィーズリーがまだのようですね」
やはりばれてしまった。
「授業に遅れるなど、本来なら減点するところですが……まだホグワーツ一週間目です。施設になれていないのでしょう。今回は見逃しましょう」
そういう先生にほっとしつつ、後でしっかり注意してやろうと思う。
「さて、今から皆さんが学ぶのは、最も難しい教科の一つである『変身術』です。これは大変難しいと同時に、大変危険な魔法です。ですから、いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出ていってもらいますし、二度とクラスには入れません」
そう警告したのち、先生は生徒たちの前で机を豚に変え、また元の姿に戻してみせた。
いずれこんなことも出来るようになるという意味なのだろう。
私はまだあまり見たことのない魔法という存在を感じられて、とても感激していた。
しっかり勉強していれば、あんなことも出来るようになるんだ!!
「変身術はこんなこともできます。ですが、あなたたちはまず基礎からしっかり学ばねばなりません。今日はまず、マッチ棒を針に変えるところから始めましょう」
そう言って黒板に書かれている魔法の理論を書くように指示される。
皆しばらくの間、羊皮紙に理論を書き写すことに必死になっていた。
そんな中、
「遅刻ですよ、ポッター、ウィーズリー」
やっと来たの、あの二人!
流石に走っていたのか肩で息をしているけど、もしグリフィンドールが減点されていたらどうするつもりなのだろうか!
「ご、ごめんなさい。み、道に迷ってしまって……」
「今回は許しましょう。ですが、次はありませんよ。皆前の黒板を板書しています。あなたたちも早く取り掛かりなさい」
最初の宣言通り、今回は見逃してもらったらしい。
安心しつつもやはり、
やっぱり後で言っておかなくちゃ!
と思い、二人をにらむと、二人とも肩をすくめながら席についていた。
全員の板書が終わり、いよいよ実践にうつる。一人ずつにマッチ棒が配られ、先ほど板書した魔法を実践していく。
予習したとはいえ、流石に一番難しい教科。皆なかなか針に変えることができない。もう諦めかけている生徒までいた。
かくいう私もマッチ棒が銀色になりはするのだが、針とは言えず、ただの銀色のマッチ棒になっているだけだ。
「初めてなのですから、すぐできるとは思っていません。今まで授業を受けた寮で、できた生徒はほとんどいませんでした」
ですが、先生は続ける。
「昨日授業のあったスリザリンで、唯一できた生徒がいました。ミス・マルフォイです。彼女一人だけが、マッチ棒を針に変えることができました。それがこれです」
そう言って取り出したのは一本の針だった。しかも、よく見れば針の柄の所に細かな装飾が施されている。
針……よね?
「こんな見事な変身術を施したのは、今まで私が見てきた中で彼女一人だけです」
おそらく寮の対抗心をあおって、諦めかけている生徒を奮い立たせようとしたのだろう。
その効果は覿面で、諦めかけていた生徒も、
『スリザリンなんかに負けるか!』
と言わんばかりに杖を振り出した。
ダリア・マルフォイ。
それはこの一週間でよく、グリフィンドール内でも、授業内でも耳にすることの多い名前だった。
グリフィンドール内では悪口が主流だ。
あんな冷たい女みたことない!
兄の腰ぎんちゃくだ!
勉強だけできるが性格がねじまがってる!
大体そんな風の悪評が多かった。
そして授業内。
いくつかの授業を受けた中で、スリザリンが先に受けた授業のほとんどの先生が彼女の名を口にするのだ。
あんな優秀な生徒は見たことがない!
彼女はすぐにこんなことができた!
などなど
彼女のことを、本当に優秀で驚いたといわんばかりに語るのだった。
闇の魔術に対する防衛術からだけは聞かなかったけど。
このことがなおさら、グリフィンドールの彼女に対する敵対心をあおっていた。
狡猾が売りのスリザリンとグリフィンドールの仲は、とにかく悪い。
その中でもスリザリン内で特に目立つダリア・マルフォイがやり玉にあがることが多かった。
彼女は目立つ。
髪は綺麗な白銀で、肌は白く、顔立ちはとてつもない美人だ。おまけに優秀だと先生達が言っている。しかし絶望的に無表情なのと、その薄い金色の瞳が冷たい雰囲気を醸し出していることが玉に瑕だった。
だからこそ美人だが冷たい雰囲気の彼女がスリザリンに入ったことで、やっぱりあいつは冷たく、狡猾な奴なんだという風になっているのだ。
かくいう私も、スリザリンのことは好きではない。
狡猾だからというわけではなく、彼らの純血主義が、私の彼らを嫌う理由だった。
この一週間、私はスリザリンの生徒からよく嫌がらせをされ、そしてことあるごとに無視されていた。
初対面のはずなのにどうしてだろうかと思っていると、同じルームメイトのパーバティ・パチルが教えてくれた。
彼らスリザリンは全員、『純血主義』なのだと。
純血主義。魔法を学ぶのは、魔法族出身の者でなければいけないという考え方。
こんな考えを持っている彼らは、私のようなマグル出身を認めようとはしないのだと言われた。
そんな彼らのことを好きになれるはずもなく、私は彼らのことを、彼らが私のことを嫌っているように、嫌いになった。
でも、ふと思う。
彼女も……ダリア・マルフォイも本当に純血主義なのだろうか?
彼女と初めて会ったのはホグワーツに向かう汽車の中。
その時話した彼女は、冷たい雰囲気を醸し出していたが、その実、話してみると意外に普通の対応だった。
あの時はまだ私がマグル生まれだと知らなかっただけで、もうおそらく知っているだろう今はその表情と同じく私に冷たくあたるのだろうか。
そう思うのだけど、どうしても組み分けの彼女の後ろ姿が私の脳裏をよぎる。
あのどこか悲しそうな背中を。冷たい雰囲気とは裏腹に、どこか寂しさすら感じさせる姿を……。
「どうかしたのですか、グレンジャー?」
「!? いえ、どうやればうまくいくか考えていました!」
考え事で集中できていなかったらしい。今まで考えていたことを頭の隅に追いやり、今は授業に集中する。
「落ち着いてやればできます。あなたも他の先生から優秀だと褒められていますよ、グレンジャー。あなたなら、落ち着いてやりさえすればできるでしょう」
「はい!」
私も頑張ってきたかいがあったのか、先生に優秀だと言ってもらっているらしい。
それがたまらなくうれしく思いながら、目の前のマッチ棒に集中する。
そうよ、私だって頑張っているんだから、ダリア・マルフォイに負けるもんですか!
そう奮起する私の中には、ダリア・マルフォイに対する他のグリフィンドール生のものとは違った、純粋なライバル心だけがあった。
そのあと、授業終わり直前になって、私は二人目の成功者になった。我がことのように喜んでくださる先生に渡した針は、ダリア・マルフォイがやったほど見事な針ではなかったけど、確かに銀色をした針だった。
???視点
「クィレルよ。して、どうであった、俺様の語った少女は?」
「は、はいご主人様。確かにマルフォイ家の娘は非常に優秀との噂でございます。ホグワーツ始まって以来の優秀さだと、まだ一週間もたっていないのに噂になるほどです……。ご、ご主人様。どうして彼女のことを? か、彼女がどうなさったのですか……?」
「お前には関係がない、クィレルよ。お前は今まで通り、石を手に入れることだけを考えればよい」
「は、はい……」
そう言って
この俺様がこんな姿でいいはずがない。はやく石を手に入れなければ……。
眠りにつく直前、かつて俺様が
ルシウスめ、俺様を探すことはしなかったが、あれの教育だけはしっかりやっているようだな。
石を手に入れるためとはいえ、この体の持ち主はあまりにも愚かだ。
うっかりあれのことを教えようものなら、所かまわずあれに頼るだろう。
そうなればあれの有用性が下がってしまう。あれを使うのは、もう少し先になってしまいそうだ。
そして再び、深い眠りにつくのだった。