ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス 作:オリゴデンドロサイト
ハリー視点
ダンブルドアの訓練……とは名ばかりの授業は、しばらくは何の音沙汰もない状態だった。
かれこれ1ヵ月。ダンブルドアからの連絡は無い。
結局ダンブルドアの意図は何だったのか。ヴォルデモートの過去を知ることが、どうして奴と戦う道しるべになるのか。特に初回だけであれば、僕は奴の母親に関する記憶を覗き見しただけ。奴の生い立ちくらいしか分かっていない。僕には何一つダンブルドアの意図は分からなかった。
しかし、結局僕に出来ることは、ただダンブルドアを信じることのみだ。僕がいくら考えたところで、あの誰よりも偉大なダンブルドアの考えを真に理解することなど出来るはずがない。
もしダンブルドアの意図を少しでも理解できるとすれば、それは僕などではなく、僕の仲間の中で最も賢いハーマイオニーだけだ。
尤もその彼女も、初回の授業のことを話した直後は、
『敵を理解することは、それはそれで重要な事だと思うわ。でも……ダンブルドアはただそれだけのために、貴方を呼んだわけではないと思う。情報がまだ足りないわ。でも、それが必要だとダンブルドアが仰ったなら、そこには何かしらの意味が必ずある。それを私達は待つしかないわ』
『そうだね……。君の言う通りだ。……あと、くれぐれも、』
『何度も言われなくとも分かっているわよ。このことを誰にも……特にダフネやダリアに話すなと言いたいのでしょう? ……私はダンブルドアの杞憂だと思うけれど』
そんなことを話していた。でも、あれから随分時間が経った。頭脳明晰な彼女であれば何かしらの考察をしていてもおかしくはない。
しかし、
「ハリー、まだその本を持っているの? もう新しい教科書も手に入ったのでしょう? ならその落書き入りの教科書なんて返せるはずよ?」
「……ハーマイオニー、何度も言っただろう? 僕はこの本を手放す気はないよ」
最近の彼女には、そんなことを気軽に相談できる余裕などありはしなかった。
去年
「貴方は覚えていないの? 2年生の時の事件を引き起こしたのは、例のあの人の本だったのよ。貴方が疑っていたダリアではなくね。魔法の本は危険な物が多いのよ。今は無害に見えても、それが危険でない証拠はどこにもないわ。なら新しい教科書が届いたのなら、」
「危険な物であるもんか! この1ヵ月以上の間、僕の身に何一つ起こってないんだ! それにこれは昔から教室にあったものなんだぞ! なら大丈夫に決まってる!」
僕はその成績向上の唯一にして絶対の立役者を撫でつけながら、ハーマイオニーに反論を繰り返す。
『半純血のプリンス』。彼が一体何者なのか、それを調べる手段はどこにもない。彼が善良であったかそうでなかったか。彼の大量に書き残した知識からも、彼の為人を匂わせるものは見つかっていない。だが彼がどんな人物であったとしても、今の僕を大いに助けてくれているのは間違いないのだ。
ハーマイオニーは、それこそこの教科書の存在を打ち明けた瞬間から、一貫してこの古い教科書の存在を敵視し続けていた。ロンも最初こそ警戒した表情を浮かべていたけれど、時間が経てばその警戒心も薄らいだ様子だった。結局のところ、ハーマイオニーはこの本に嫉妬しているのだ。口では様々な理由を並べ立てているが、彼女は僕がズルをしていると思っているのが根本的な原因だろう。
大量の宿題と試験対策。そして古い教科書の存在に余裕を無くしつつあるハーマイオニーに、僕はダンブルドアの意図を尋ねることが出来ずにいた。
尤も余裕を無くしているのは、何も彼女だけの話ではない。僕にだってそう余裕があるわけではない。魔法薬学こそ順調とはいえ、代わりに『闇の魔術に対する防衛術』はあのスネイプが担当になっている。毎回嫌味を言われるストレスは、嘗ての魔法薬学の授業そのままだ。
そして隣にいるロンも、
「……そんなことより。ロン、大丈夫かい? 何か食べてないと、実力を発揮できないよ?」
「……」
今は僕どころかハーマイオニーより余裕のない一人だった。顔を蒼褪めさせ、ただジッと目の前の皿を眺め続けている。山の様に自分の皿に食事を取り分けている普段の姿とは大違いだ。
彼の姿を見て、慌ててハーマイオニーも僕の教科書から視線を戻しながら続ける。
「ロン、ハリーの言う通りよ。貴方は出来ることはやったわ。……それは下の子達より勉学の方に励まなくてはならなかったけれど、それでも貴方の出来ることは充分にしたのよ。実力だってハリーのお墨付きよ。なら、少しでも食べて、力をつけなきゃ」
ロンがここまで緊張している理由。それは彼が今日クィディッチのチームメンバー選抜試験を受けるためだ。
去年はアンブリッジにチームは解散させられていたが、奴が去ったことで当然チームは復活した。しかし去年のキャプテンであるアンジェリーナは卒業し、フレッドとジョージもホグワーツから文字通り飛び去った。アンジェリーナの指名で僕が次のキャプテンに選ばれたが、僕以外のメンバーは最初から選びなおさねばならない状況だ。
そこで新規チームメンバー選抜のため、僕は試験を開催することにしたわけだけど……応募者の中に何とロンがいたのだ。
そのことをロンから聞いた時、僕は本当に嬉しかった。親友であるロンがいれば、僕は何も恐れる必要はない。実力も一緒に飛んだことのある僕には十分に分かっている。彼が希望したポジションはキーパー。去年より背が高くなった彼にはピッタリのポジションだ。
しかし彼の今の表情を見ていると、その実力が遺憾なく発揮されるかは疑問を持たざるを得なかった。
ロンが本番で実力を出せるか。どれだけ友達だからといって、実力が発揮されず、他に彼以上のパフォーマンスを発揮する選手がいれば選ぶわけにはいかない。
僕は相変わらず顔の青いロンを見つめながら、彼には聞こえないように小さく溜息を吐く。
本当に余裕のない日々だ。宿題に授業、ダンブルドアのこと、そして何より日々悪化しつつある城の外の情勢。
せめてロンがチームに加入してくれれば、この余裕のない日々に明るいニュースとなるだろうに。僕だけではなく、ハーマイオニーのためにも。僕に出来ることは、そう心の中で願うことくらいだった。
ドラコ視点
こんなことをしている余裕が、果たして今の僕にあるのだろうか?
僕は目の前で箒を片手に騒ぐ生徒達を眺めながら、そんな益体のないことを考えていた。
僕は今、スリザリンチームのキャプテンとして競技場に立っている。目の前にはチームメンバー選抜試験に臨む寮生達。皆浮足立つばかりで、一向に僕の方を見ようともしない。要するにこいつらは僕のことを舐めているのだ。所詮はダリアのおまけ。妹の存在のお陰で、僕はキャプテンの座になれた。ダリアのくれた箒、ダリアの……スリザリン内での地位。全てはダリアのおこぼれ。決して僕の実力などではない。そうこいつらは考えているのだろう。
こいつらの考えていることは間違いではない。僕がシーカーとしてチームを勝利に導けたのはたったの1回だ。その1度の優勝すら、ポッターにはシーカーとして敗北している。本来であれば、僕も選抜試験を受けさせられるのが筋だろう。しかし、僕はこうしてキャプテンとして選抜試験を執り行う側に立っている。キャプテンに指名された理由に、ダリアの存在が大きく関係していることは疑いようがなかった。無論ダリアが直接そのような指示をしたわけではない。ただ周囲が勝手に忖度したに過ぎない。結果実力が伴っているとは言えないキャプテンが出来上がり、こうして選抜試験に臨む寮生達から僕は侮られているというわけだ。
だが、僕にはそんなことすらもはやどうでも良かった。侮られて僅かに苛立ちもするが、今僕とダリアが直面している問題に比べれば、もはや細やかすぎる問題だ。
ダンブルドアを殺す。この大問題に比べれば、全ては些細なことに過ぎない。
ホグワーツに戻ってから、僕は常にダンブルドアを殺す方法を考え続けていた。湧き上がる不可思議な恐怖感に蓋を被せ、ただ殺害方法のみを考え続ける。
しかし現実は非情だ。決意はあっても、そもそも方法が思いつかない。絶望的な実力差だとか、ダリアやグレンジャーの妨害だとか、ただそれだけの問題ではない。そもそもダンブルドアと接触することすら出来ないのだ。奴を見かけるのは大広間で食事を摂る時のみ。その機会も毎日決まったタイミングがあるわけではない。大広間には大勢の生徒や教師がおり、そんな状況で襲えるはずもない。グレンジャーの妨害を警戒する以前の問題だ。奴は最初こそ僕の方に時折視線を投げかけていたが、最近は他の事に気を取られていることの方が多いくらだ。僕が何も出来ずにいることに薄々気が付いているのだ。徒に時間だけが過ぎているのは分かっている。しかし、それが分かっていてもどうすることも出来ないのが現状だった。
本当に、僕はこんなクィディッチにかまけている余裕はあるのだろうか?
しかし、そんなことを考えていたとしても、僕はここに立っている。無論クィディッチで息抜きをしたいだとか、そんな下らないことを考えているわけではない。僕は今まで、必死にスリザリンのシーカーとしてそれなりの立場を築こうとしていた。それは全てダリアのため。彼女への誤解を解くために、僕自身に相応の説得力を持たせるために必要だと考えていたからだ。だが、その目論見は悉く意味を成さず、寧ろ裏目に出ている。もはや僕にとって、このシーカー兼キャプテンの地位に意味はない。だが、ダリアにとっては多少の意味が残り続ける。
僕がクィディッチに出れば、多少なりともダリアに楽しみを与えてやれる。……ダリアにダンブルドアを殺すため以外の時間を作ってやれる。僕が選手でなければ、ダリアはもはや競技場に来ることすらなくなるだろう。ダリアならば競技場での襲撃もあり得そうだが、僕が選手として試合に出ている以上、ダリアがその試合を蔑ろにすることはないはずだ。たとえ僕のクィディッチへの情熱が冷めきっていると、彼女が気付いていたとしてもだ。
いや……本当はこれも現実逃避の言い訳でしかないのだろう。本当は僕にも分かっている。どう言い訳したところで、僕は結局……今までとは違う行動を恐れたのだ。前に踏み出す勇気を持っていない。ダリアを言い訳に利用しているに過ぎない。
今までの僕が考えもしなかったことをしなければならないのに、それを考えることすら出来ていない。だからこそ僕は安直な言い訳に飛びつき、結局今まで同様、こんなクィディッチなんてお遊びに付き合う羽目になっているのだ。それは分かっている。分かっているのだ。だが、僕にはどうしても分からない。僕が本当はどうすればよいのか。どうすればダリアをダンブルドアを殺し、ダリアを救うことが出来るのか。僕にはいくら考えても分からない。今まではダリアが僕を正解に導いてくれた。しかし今回の問題で、ダリアが僕を導くことは絶対にない。頼っていいはずもない。ダフネも同様だ。ダリアはあいつを……それこそポッター達に無理に関わらせてでも、僕等の様に闇の陣営に踏み込ませないようにしているのだ。僕がダリアの努力を踏みにじるわけにはいかない。だから僕一人で正解に辿り着くしかない。だが、いくら考えても分からない……いざ行動を起こす勇気も持てない結果、僕は結局いつもと同じく、ただ周囲に流されてこの場に立っている。
これが正解であるはずがない。僕達に時間が残されているとは到底言えない。今こうしている間にも、タイムリミットは刻々と近づいている。解決策が微塵も見出されていない状況にも関わらずだ。
「……お前達、そろそろ整列くらいしろ。僕は忙しいんだ。とっとと選抜試験を始めるぞ」
しかしいくら考えたところで答えは出ないのだ。ここでただ立っているだけでは、それこそ時間の無駄でしかない。時間を無駄にできないのであれば、せめてこの時間を早く終わらせることを考えるべきだろう。
僕の静かな怒りを感じたのか、ようやく目の前の寮生達がノロノロと動き始める。一応僕の言葉を聞いているのは、やはりダリアの存在を恐れているからだろう。僕に向ける視線はどれも、僕を侮り切ったものばかりだ。しかしそれを無視し、僕はただ寮生達を睨みつけながら続ける。
「最初はチェイサーを決める。チームメンバーは全員、引退した選手からニンバス2001を受け継ぐことになる。その上……グリフィンドール生が馬鹿騒ぎしていたが、今年のキーパーはあのウィーズリーで
チェイサー希望の生徒が飛び始め、結果は直ぐにでも出始める。結果は散々だった。僕を侮っていた生徒の大半は、そもそも箒を真っ直ぐに飛ばすことすら出来ていない。僕が最初にシーカーとして選ばれた時に課された試験だ。つまり奴らの実力は僕以下であることは間違いない。僕はそんな奴らに見下されていたのだ。
だが、そんなことはやはりどうでもいい。そんなことに構っている余裕は僕には無い。要は選手の人数が確保できればそれでいいのだ。僕は淡々と結果を見つめながら、内心では全く試験とは関係ないことを考え続ける。いくら考えても答えの出ない問いを。もはや僕の中に、クィディッチに対する情熱は一欠けらも無く、ただダリアに対する義務感だけが僕をこの場に立たせていた。
そして何より……迫りくるタイムリミットに、僕の思考は確実に余裕を無くしつつあった。
何かしなければ。何か行動を起こさなければ、確実にこのまま終わってしまう。
そんな思いに僕は徐々に取りつかれつつあった。
ハーマイオニー視点
「いや~本当にあの時の僕は輝いてたと思うね。4回目のペナルティ・スロー、デメルザの奴がすごく厄介なシュートを投げてきたからね。ちょっとスピンがかかったシュートだった。でも、僕は防いだんだ。そしてマクラーゲンの奴は防げなかった。それどころか変な方向に飛んでた。あれじゃまるで『錯乱呪文』にでもかかったみたいだったよ」
「そ、そうね、ロン。貴方は凄かった。でも……その話はもう何回も聞いたわ。今は早くバタービールを頼みましょう」
『三本の箒』のテーブルに着きながら、私はロンの話を遮る。言葉通り何度も聞いた話であることもあるが、理由はそれだけではない。
ロンの言ったことは事実である。それこそが私が彼の話を遮った本当の理由だった。
……私はチームメンバー選抜試験の時、本当にコーマック・マクラーゲンに『錯乱の呪文』をかけたのだ。
それは衝動的な行動だった。
元々私はコーマックのことがあまり好きではなかった。ホグワーツ7年である彼は、以前からどこか鼻持ちならない印象を与える人物だった。顔立ちはそこまで悪くないけれど、口を開けば自慢ばかり。薄っぺらい人間性が常に透けて見える。その上女の子を見れば直ぐに口説こうとする。私を含めて何人もの女の子が声をかけられたことがあり、年々綺麗になっていくジニーなんてその倍は声をかけられていた。よほど頭の弱い女の子でない限り、彼にいい印象を抱くはずがない。
無論、彼のことが気に入らないだけで、私は衝動的に彼に嫌がらせをしたわけではない。私はただ……ロンがキーパーになって欲しかったのだ。嫌なコーマックではなく、私の……親友であるロンに。無神経で不器用。でも……友達のことを考えられる優しさを持っている。そんな彼の為人は私は知っている。彼のことを考えると……何故か胸が少し熱くなる。欠点ばかりが目に付くのに、何度も彼と喧嘩したと言うのに、いつも最後は彼のことを見てしまっている。今回だって、私は彼の頑張りを見ていたのだ。本人は隠しているつもりだったけど、彼がハリーのチームメンバーになろうと陰で努力しているのを知っていた。
結果、私はいつもは考えられないような、後から考えると卑劣としか言いようのない行動を取ってしまったのだ。
我ながら馬鹿なことをしたと思っている。ハリーはこの事実を黙認しているけれど、本来ならば許されるべきことではない。たとえ相手があのコーマックだとしても。
でも……それを分かっていても、私はやはり黙っている。こうして自分の罪を隠している。真実を知った時、ロンが傷ついてしまうから。
私は気まずい気持ちを抱えながらも、ロンに悟られない様に、素知らぬ顔をしてバタービールに口を付ける。そんな私に思わぬ方向から声がかけられた。
「やぁ、ハリー! おぉ! ミス・グレンジャーもおるな! これはタイミングが良かった!」
突然の呼びかけに振り返ると、丁度『三本の箒』に到着した様子のスラグホーン先生が立っていた。先生は入り口から真っ直ぐにこちらのテーブルに近づくと、
「丁度君達に招待状を送ろうと思っていたところなのだよ! 招待は他でもない、私の主催するパーティーに出席してもらいたくてね! ホグワーツ生活が始まってまだ少しだが、才能ある生徒が誰であるか、凡そ私にも分かってきた! だからその才能を磨くためにも、今度パーティーを開こうと思ったのだよ! 以前ホグワーツ特急で開いた『
「……え、えぇ、是非とも先生」
ハリーは一瞬胡散臭そうな表情を浮かべていたけれど、何とかそれを取り繕うことに成功していた。
そして私も、
「……勿論です、先生。
おそらくハリーと同じ表情を
ハリーはスラグホーン先生にあまりいい印象を持っていない。先生はハリーを才能のある人物と褒め、何かと特別扱いしようとしている。先生のハリーに対する評価は私も同意見。だけど、ハリーはそのあからさまな態度に、寧ろ自分がコレクションか何かとして扱われているように感じている様子だった。
そして、私自身もそれ程スラグホーン先生のことは好きではない。確かにハリーに対してと同様、先生は私のことも評価して下さっている。今までの魔法薬学の授業では考えられないことだ。そのことは素直に嬉しい。しかし、先生は私の大切な人達を……
「そうかそうか! 当日は君達の参加を楽しみにしているよ! では、あまり年寄りが若者の邪魔をしてはいかんからな! おお、マダム・ロスメルタ! ファイア・ウィスキーを貰えるかな!」
先生はそう言って機嫌よく去っていく。結局最後まで、ロンのことを見向きもしないまま。
スラグホーン先生の授業は何度もあり、既に先生の中でお気に入りの生徒、そうでない生徒ははっきりと分かれていた。お気に入りは徹底的に特別扱いし、そうでない生徒は時折存在そのものを忘れられる。そしてロンは残念ながら後者だった。
ロンもそれを分かっており、先程までの上機嫌が嘘のように俯いていた。気まずい空気がテーブルに満ちる。今日はロンのキーパー就任祝いであったのに、もはやそれを御祝出来る空気ではなくなった。でも、今のロンに何も声をかけることが出来ない。何を言ってもただの言い訳しにしかならず、その上……結局のところ、ハリーも私もスラグホーン先生の誘いを受けるしかない。ハリーはダンブルドアの指示で、スラグホーン先生と出来る限り交流を持たなくてはならない。未だにその目的は分からないけれど、ダンブルドアが仰るなら必要なのだろう。そして私も、ハリーを一人にしないために参加した方が良いと思う。他のメンバーは定かではないが、ハリーの参加が必要ならば、私も参加すればハリーのサポートが出来る。そう考えてのことだったけど、それはロンを寮に放っていくことに他ならなかった。
気まずい沈黙の中、ハリーはバタービールに長い間口を付けることで誤魔化そうとし、私は私でトイレの方に消えていくケイティ・ベルに強い関心を装った。しかし、いつまでも誤魔化しきれるはずもなく、ハリーは気まずそうに空になったグラスを置き、私は何故か
「バタービールも飲めたし……今日はもうこれでおしまいにして、学校に帰ろうか?」
遂に沈黙に耐えきれなくなったハリーの言葉に、私とロンは静かに頷く。
折角ロンがキーパーに選ばれた後のホグズミード行きだというのに、結局あまり愉快な遠足とは言えないものになってしまった。今日だけはと羽ペンと羊皮紙を置いて来たのに、その全てが無駄になってしまったのだ。天気も最初の段階から荒れ模様だったが、今は霙まで降り始めている。マントをしっかり体に巻き付けなおした後、私達は黙ってホグワーツを目指して歩き始める。
私達の誰も話そうとしないため、霙が降っている中でも、周囲の喧騒が良く聞こえていた。背後の『三本の箒』から漏れる笑い声、周囲のホグワーツ生の声。そして、
「リーアン! 貴女には関係ないわ! 私はこれを
背後のケイティの声。
あまりに激しい声音に、思わず私達は振り返る。するとそこには、私達の直後に『三本の箒』を出た様子の、ケイティと友人が何やら口論している姿があった。ケイティは同じグリフィンドール寮であり、チェイサーとしてクィディッチ・チームに参加している。それどころか、本人は
何かあったのかしら? こんな風に声を荒げて喧嘩する子ではなかったと思うけど。
そう私だけではなく、隣のハリーとロンも訝しがっていたところ、それは突然起こった。
ケイティが包みを引っ張り返し、その拍子に包みが地面に落ちた……その瞬間、ケイティの体が
飛び立つ瞬間の様に優雅に手を伸ばしている。しかし、その表情は両目を見開き、およそ優雅とは程遠いものだった。そして突然のことに呆然とする私達の視線の中、地上2メートルの空中で叫んだかと思うと、今度は叩き付けられるように地面に落下し、絶叫しながらのたうち回り始めたのだった。
咄嗟に私達はケイティに駆け寄る。何が起こっているのか全く分からない。でも、何か尋常でないことが起こっているのは確かだった。
「だ、駄目だ! 僕等じゃどうすることも出来ない! と、とにかく、誰か助けを!」
大声で周りに叫ぶハリーと共に、暴れるケイティを何とか抑え込もうとする。
そんな私の視界の端に、地面に落ちたままの包みが映りこむ。
そこには……包みの端は僅かに破れ、その中からオパールのネックレスが覗いていた。
それは間違いなく、以前ボージン・アンド・バークスで私も見た物であり……同時に、ドラコが購入していた物に他ならなかった。