ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス   作:オリゴデンドロサイト

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閑話 校長の疑念

 ダンブルドア視点

 

トロール侵入事件の少し後。

石の安否の確認のため呼び出していたセブルスに尋ねる。

 

「では、トロールは『死の呪文』で殺められておったのじゃな?」

 

「はい校長。愚か者三名を帰した後調べましたところ、トロールに外傷はありませんでした。しかし、トロールは死んでいた。こんなことができるのは死の呪文のみです」

 

「……そうか。しかしのう……」

 

「ええ。死の呪文が使えるのは、力の強い闇の魔法使いだけです」

 

「クィレルはどうじゃ?」

 

「トロールを入れたのは奴でしょうが、おそらく殺したのは別の者かと。クィレルは吾輩が見張っておりましたが、()()()()向かっておりませんでした」

 

セブルス達が着いた時には、現場には三人しかいなかった。

ハーマイオニー・グレンジャー。ロナルド・ウィーズリー。そして、ハリー・ポッター。

いずれの子も『死の呪文』など使えるものには思えん。たとえ高い魔力があったとしても、彼らにはそれを扱うだけの()は備わっておらん。

そうなると……

 

「別の誰かがあの場にいた。そういうことじゃな」

 

「ええ。現に奴らも何か隠している様子でした」

 

あの場には、三人以外の別の誰かがいたことになる。そしてその誰かがトロールを殺し、その場を去った。

そう考えると辻褄があう。

じゃが、それはそれで疑問が残る推理じゃった。

 

「何故彼らはその者を隠しているのじゃろうのぅ?」

 

「大方トロールを倒した手柄を独り占めしたかったのでしょう。奴の息子なら考えそうなことだ」

 

そう吐き捨てるセブルスを見ながら考える。

彼らがその人物を庇う理由はどうあれ、その人物が危険な人物である可能性は非常に高い。

死の呪文。

かつての暗黒時代、闇の帝王、そして死喰い人達が好んで使った呪文。その呪文によって多くの人々が苦しめられ、殺されていった。

あれを使うには、よほど強い魔力と、そして誰かを殺したいという強い()()()が必要になる。

そのようなものを持つ人間が危険でないわけがないのだ。

 

「死の呪文を使うには相当な実力が必要じゃ。それが出来るとしたら教職員、もしくは非常に優れた実力を持つ生徒だけじゃ。セブルスに心当たりはあるかの?」

 

「……いいえ、クィレルでない以上、吾輩には思いつきませんな」

 

「そうか……。そうじゃのう……」

 

教職員全員のことを、わしは昔から知っていた。

どの先生も闇にとらわれる様な者達ではない。

クィレルだけは昔から神経質でおどおどした態度だったため、よく周りからからかわれていた。そのため彼は周りを見返してやりたいという思いから闇の魔術に興味を持ってしまった。そんな彼は今おそらくトムとつながっているのじゃろうが……今回のことに関しては無関係じゃろう。

そうなると教師の中には犯人はいない。そうなると……。

実のところ、わしにはその人物に心当たりがあった。

 

ダリア・マルフォイ。

 

教職員が潔白な以上、疑いの目は生徒に向けねばならない。

しかし、一年生から七年生までの中で『死の呪文』を使える程実力があり、なおかつそれを学ぶことができる家庭環境を考えると……犯人は限られる。

 

そんなものはダリア・マルフォイしかおらん。

 

彼女の実力はよく教員からの報告にあがっていた。

なんでも、既にホグワーツ卒業レベルまで魔法を習得しているのではないか?

彼女はホグワーツ始まって以来の、わしに匹敵するレベルの秀才ではないか?

 

そんな話をよく先生方から聞いていた。

そして入学式の時感じたあの空気。あれはかつてトムに感じたものと同種のもの。

彼女を疑うには十分な判断材料に思えた。

 

無論これらは彼女の実力面の証拠であって、内面的な証拠ではない。

先生方は彼女のことを非常に優等生だと言っておった。

表情はいつも冷たいが、非常に真面目で、おごり高ぶった態度などとらないと。

 

じゃがわしはその報告でむしろ不安になった。

非常に真面目な優等生。それはかつてのトム・リドルを見ていた教師の全員が感じていた印象だった。

彼はその優等生な仮面の下に、強い残虐性を隠していた。そしてそのことにわし以外が気付くことはなかった。

 

もし彼女がトムと同じように、仮面の下に強い残虐性を隠していたら?今回の事件でそれが仮面の下から見え隠れしていたのでは?

 

どうしてもそう考えざるをえなかった。

トムがかつてホグワーツにいた頃、わしは彼の残虐性に気付いておりながら、その暴挙を止めることができなかった。

今度こそはあのような悲劇を繰り返してはならない。あの様な人物を間違った道に進ませてはならない。

 

「ところでセブルス。ダリア・マルフォイのことはどうなっておるのかの?」

 

石の話も終わり、いよいよセブルスが自室に戻ろうとするタイミングでそれとなく彼女のことを尋ねてみる。

 

「特に何も起こっておりません。寮内で何か傷害ざたがあったということはなく、おそらくあの手袋は以前の報告通り、魔法の暴走を抑えるものであるように思えますが」

 

彼女の手袋に関して、以前セブルスに監視を依頼しておったが、あれから今日まで特に何かあったという報告は受けておらん。それとなくセブルスが彼女のルームメイトに聞いてみたところ、あれは強すぎる魔法力を抑えるための道具と説明されたと報告しておった。

おそらく手袋と今回のことは無関係じゃろう。

 

「そうか、彼女のことで他に気になったことはあるかの?」

 

「いいえ、ありませんな。あれは非常に優秀な生徒です。名ばかりのポッターとは大違いだ。上級生を見てもあれ程優秀な生徒はいませんな。さすがは我がスリザリンです」

 

見た目と違い義理堅い所のあるセブルスは、昔から親交のあるルシウス・マルフォイの娘に気をかけておる。彼女が魔法薬学の成績も大変優秀であるということも含めると、お気に入りといってもいい程じゃろう。

じゃから今回の件は彼にはたよれん。

クィレルの件に集中させる必要があるのもあるが、何より目が曇ってしまう可能性があった。

 

セブルスの今しがた出て行ったドアを見つめながら考える。

現場に居合わせた三人の記憶を見れば早いのじゃが、三人に、特にハリーに会うのは()()はやい。

それに、結局彼女が本当に危険人物かどうかを確認できればよいのじゃ。

そのためにうってつけの道具を持っておる。

 

本来であればクリスマスあたりに、学校に残るであろうハリーにまず見せるつもりであったが……クリスマスでは彼女が帰ってしまう可能性がある。それ以降となると、今度は石の守りの計画が狂ってしまう。

ならば近いうちに、クリスマスになる前に、彼女に()()を見てもらうかのう。

そう思いながら、ワシはペットであるフォークスをなでるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セブルス視点

 

校長室からの帰り道。もうすっかり暗くなった廊下を歩きながら、先程の校長の言葉を思い返す。

 

『死の呪文を使うには、相当な実力が必要じゃ。それが出来るとしたら教職員、もしくは非常に優れた実力を持つ生徒だけじゃ』

 

非常に優れた生徒。しかも生徒にして、死の呪文が使える程の。

実のところ、我輩には一人だけ思い当たる生徒がいた。

 

ダリア・マルフォイ

 

彼女なら、実力的にも申し分なく、さらに家庭環境を思えば、死の呪文を知っていても何ら不思議はない。

もちろん「出来る」からと言って、それが「やった」という証拠にはならない。

だが、彼女しかやれるものがいないというのもまた事実だった。

 

だがふと考える。

たとえ彼女がやったとからと言って、彼女が本当に危険な人物といえるのだろうか。

確かに死の呪文は恐ろしく残忍で、それを操るということは、それだけで闇の魔法使いであると断言できるほどだ。

だが、彼女がやったであろうことは、その呪文とは違い、おそらく人助けといったものだったろうことが考えられる。

 

おそらく彼女は、トロールと戦っていた愚かな三人組を助けるためにあのようなことをしたのだろう。

そうでなければ死の呪文がどういったものかなど知らないであろう三人が、彼女を庇うということなどあり得ない。

そう思い、死の呪文を使ったかもという事実だけで、彼女のことを危険視するのに引け目を感じるのだ。

 

それに……スリザリンの中で授業を受ける彼女を見ていて思うのだ。

 

彼女は、どこか吾輩……()によく似ている気がするのだ。

何故かはわからない。だが、どこか自分の姿と彼女が重なってしまうのだ。

本来まったく似ていないであろう僕と彼女。

だがそのありようは、酷く似ているように感じられた。

 

……どちらにせよ、彼女のことは今後も注意深く見ていなければならない。

そう古くからの知り合いの娘のことを考えなら、マントをなびかせ、自室に向かって足を進めるのであった。

 

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