ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス   作:オリゴデンドロサイト

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クィディッチ(前編)

 ダリア視点

 

ハロウィーンでのトロール侵入事件から数日。11月に入り、いよいよ外の空気が冷たくなってきた。だが中はというと気温は低いのに、生徒の醸し出す空気は非常に熱い。

クィディッチ・シーズンの到来である。

しかも注目の対戦カードはグリフィンドール対スリザリン。いつも仲の悪い寮同士が合法的に潰しあえるということで、二寮とも大変熱くなっている。廊下で会えば喧嘩する程度だったのが、この時期に入ると容易に殴り合い、呪いの掛け合いに発展するらしい。

そんな中、スリザリンは特にハリー・ポッターを狙い、小競り合いを起こしていた。

彼がシーカーになったことはどうやら『極秘』だったらしいのだが、グリフィンドールの隠しきれない表情と態度によって、もはやホグワーツ中が知るところとなっていたのだ。

そして騒がしい日常が過ぎ、いよいよ試合当日。

 

「ダリアは今日観戦に行くの?」

 

朝食を食べながら、隣に座っていたダフネが尋ねてくる。

ハロウィーンから数日の間、お兄様とダフネはいつも以上に私に気を遣っていた。

まるで割れ物のような扱いに何かあったのだろうかと首をかしげていたのだが、最近ようやく元通りの態度になりつつある。

 

「はい。あまりに長く続くようなら途中で帰りますが、なるべく最後まで観ようと思っていますよ」

 

今日は私がホグワーツに入学して初めて行われる、自寮のクィディッチ試合だ。

クィディッチにあまり興味がない上に日光のこともあるので、最初は行くつもりなどなかった。だが、あまりにはしゃいでいるお兄様の微笑ましい様子を見ていて、自分も行ってみようかなと思うようになったのだ。そのことをお兄様に伝えると、日光のことで私の心配をしているようであったが、自分の楽しみにしているものを、いつもは興味がなさそうな妹の私も楽しみにしているというのが、内心とてもうれしい様子だった。

 

「今日はよく晴れてるし、大丈夫なの?」

 

「ええ。ですからしっかり日光対策をしていく予定です」

 

「そう。でもどこで観るつもりなの? 生徒席はたぶんごった返しているよ」

 

「それなんですが、実はスネイプ教授のご厚意で、教員席で観ることになりまして」

 

周りが混んでいると、私の持っている日傘が少し邪魔になる。それにクィディッチの試合ということで皆大変興奮しているため、何かしらの事故も起こりやすくなる。

そう思っていたところ、先日スネイプ先生が私を心配して、教員席で観ないかと誘ってくださったのだ。

これは渡りに船だと思い、すぐ了承の返事をしていたのだ。

 

「そうなんだ。教員席で暴れそうな人といったら、マクゴナガル先生くらいかな。だからあの人から遠くにいれば大丈夫かな」

 

いつもは冷静なマクゴナガル先生だが、その実かなりのクィディッチ狂いだと聞いている。試合の最中に興奮して、教員席で暴れている姿が時折見られるとかなんとか。

そんな話をしながら朝食を食べ終えると、いよいよ学校中の生徒がクィディッチ競技場に向かう時間となった。

教員席に向かうためお兄様達と別れる直前、お兄様が少しだけ心配そうな声をかけてくる。

 

「ダリア。何かあったらすぐにスネイプ教授に相談して帰るんだぞ」

 

私がクィディッチを見に行くと言った時から、うれしいと言えどもやはり心配そうな様子のお兄様に、私は苦笑しながら返した。

 

「大丈夫ですよお兄様。あまり長時間いるわけではありませんから」

 

「そうだな……。だが、絶対はないからな。何かあればすぐ帰るんだぞ」

 

そう最後まで心配そうなお兄様達と別れ教員席の方に向かう。

教員席の方に向かうと、入り口の辺りでスネイプ教授が私を待ってくださっていた。

 

「申し訳ありません。お待たせしてしまいましたか?」

 

「かまわん。吾輩も今来たところだ。それより……」

 

そうおっしゃって、先生は私の下から上まで確認する。そしてどうやら合格だったらしく、一つ頷きながら先生は続けた。

 

「対策は万全のようだな。教員席の端の方は少し日陰になっているからそこに座るように。ただ、それでも万全ではないかもしれん。何かあったらすぐ申し出るように」

 

「はい。お心遣い感謝いたします」

 

本当にスリザリンにはいい先生だ。私の体のことがなければ素直になつけたのだろうか。そんな益体のないことを考えながら、先生と教員席の階段を登っていると、ふと嫌な香りがすることに気が付いた。

なんだろうと顔をしかめながら登っていると、臭いはどんどんきつくなってくる。

 

忘れていた。

日常的にあの授業のことをあまり考えないようにしていたのがあだとなった。

そう言えばそうだ。()()も一応教員なのだった。

そう自分の迂闊さを呪いながら階段を登り切り、教員席にたどり着く。

 

そこには多くの先生方と共に、あのニンニク教師も座っていた。

 

「お、おや、マ、マルフォイさんも、このせ、席なのですか?」

 

到着したばかりだが、私は早くも帰りたくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラコ視点

 

「ねえ、今思い出したんだけど……教員席ってことは、クィレル先生もあそこにいるんじゃないの?」

 

「あ……」

 

隣のダフネが呟いた言葉に、今自分もその事実を思い出した。

慌ててゴイルが持っていた双眼鏡を奪い取り、ダリアがいるであろう教員席の方を見る。

 

そこには出来る限り端の方の日陰に入っている、思いっきり顔をしかめたダリアの姿があった。

 

「ダリア、大丈夫かな?」

 

そう尋ねるダフネに返事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダリア視点

 

顔をしかめている私を心配して、スネイプ先生が、

 

「大丈夫か?」

 

と声をかけてくださったが、ここまでして下さった以上、すぐに帰ることなどできない。

あの臭いが苦手なだけで特に問題はありませんと伝えると、先生はどこかまだ心配そうな表情をしながらご自分の席に向かわれた。

私はあらかじめ先生が空けてくださっていた日陰の席につくと、自分に臭い対策呪文をかける。不幸中の幸いは風通しの良い屋外であるため、授業程臭いに悩まされることはないだろう。

そう人心地つきながら、会場を見渡す。

グリフィンドールの旗の中には、『ポッターを大統領に』という謎の旗もあったが、基本的にスリザリンとグリフィンドールの生徒達は自分達の寮の色旗を盛んに振っている。

そして今回の試合にはいないレイブンクローとハッフルパフの生徒たちは、それぞれ勝ってほしいチームの旗を振っているようだった。

 

つまり他二寮も赤色の旗を振っていた。

 

スリザリンも嫌われたものだなと思いながら観客席を見ていると、いよいよ試合が始まる様子だった。

グラウンドに両方のチームが出てくる。

上から見ても、唯一の一年生選手であるハリー・ポッターは、他の選手に比べてやはり一際小さな選手に見えた。一方スリザリンのキャプテン、マーカス・フリントはその中でも一際大きく見えた。

 

審判のマダム・フーチの声に従い、選手が全員箒にまたがる。

そして審判が笛を吹き、全員が一斉に空へと舞い上がる。

 

試合がいよいよ始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラコ視点

 

双眼鏡でダリアの様子を確認していたが、どうやら無事日陰に入ることが出来た上に、その表情はいつもの無表情に戻っている。どうやら臭い対策も成功している様子だ。

それをダフネと共に安心していると、いよいよ試合が始まった。

 

「さあいよいよ試合開始です! さてクアッフルはたちまちアンジェリーナ・ジョンソンの手に! なんて素晴らしいチェイサーでしょう! その上かなり魅力的です」 

 

「ジョーダン!」

 

「失礼しました、先生」

 

会場に響き渡る実況に、僕は思わず漏らした。

 

「あのふざけた実況はなんとかならないのか……」

 

実況席にはグリフィンドールのリー・ジョーダンが座っており、そのグリフィンドール贔屓の内容にマクゴナガルが叱咤を飛ばしていた。だが先生自体もかなりのグリフィンドール贔屓なので、果たして本当に止める気があるのかは定かではない。

 

「仕方がないよ。実際彼しか実況に向いている人はいないんだって」

 

隣のダフネも若干あきれた様子で返してくる。

そんなこんなしているうちに、スリザリンは相手に先制点を許してしまった。

思わず漏れ出るため息。他の三寮は大歓声をしている。

しかしその後、スリザリン独自のプレースタイルで、得点は30点対20点でスリザリンのリード。途中ポッターがスニッチを見つけて捕まえようとしたが、マーカス・フリントの邪魔によってなんとか事なきを得ていた。まあ、他寮からはブーイングの嵐だったが。

 

その後も順調にスリザリンが得点を重ねていく。その間、僕らは何もできないポッターを眺めながらせせら笑っていた時……それは起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダリア視点

 

ポッターの動きが何かおかしい。先程から箒が彼を振り落とそうとしているかのように、出鱈目な動きをしている。

飛行訓練の様子からして、彼がそんな動きをするとは思えない。まして箒の故障ということもないだろう。あれは最近発売されたばかりのニンバス2000だ。そう簡単に壊れる様なものではない。

 

だとすると考えられるのは一つ。

闇の魔術だ。

 

悪戯で行うにはあまりにも高度な呪文。やっているとしたら教員だろう。そう思いあたりを見回す。なるべく鼻をそちらに向けたくないので、クィレル先生だけ見ないように顔を動かしていると、ふとスネイプ先生がポッターをじっと見つめ、ぶつぶつと呪文を唱えているのに気が付いた。

最初はまさか先生が呪いをかけているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

闇の魔術を勉強している私にはわかる。あれは解除の呪文だ。

必死にポッターを見つめ、解除の呪文を唱えている先生の額には冷や汗が流れており、あまり余裕がないことが窺えた。おそらく、あのままではポッターが振り落とされるのも時間の問題だろう。

 

先生は今回私のことで、ずいぶん気を遣ってくださった。それに何より彼はお父様のお友達だ。

 

誰が呪いをかけているかは知りませんが、ここはお手伝いしますかね。

そう思い、私もポッターを見て、解除の呪文を唱え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロン視点

 

スネイプがハリーに呪文を唱えているのを見つけたハーマイオニーが、

 

「私に任せて」

 

そう言って教員席の方に走って行ってしまった。

僕は双眼鏡をハリーに向ける。先程はものすごい勢いで箒が震えていたが、今は少し震えが収まっているようだ。だが未だハリーは片手で箒にぶらさがっている状態であり、まだ油断ができるような状態ではない。

兄貴たちが自分の箒に乗り移らせようとするもダメな様子だ。ゆっくりとだが箒が上の方に上がってしまっている。

このままでは本当にハリーが落ちてしまう。

 

「はやくしてくれ、ハーマイオニー」

 

そう祈るように呟きながら、今ハリーに呪いをかけているだろうスネイプの方に双眼鏡を向ける。先程まで必死な様子で呪いをかけていたが、今はなぜか少し落ち着いた様子だった。未だにハリーを見つめ、口は絶えず何かを呟いている様子だったが。

それを憎々しげに覗いていると、ふと視界に白いものが映った。

なんだろうとそちらに視線を向ける。

 

そこには……なぜか教員席に座っているダリア・マルフォイが、スネイプと同じようにハリーをじっと見つめ、何か呪文を唱えている姿があった。

 

 

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