舞巫女の転生譚   作:ジャック

3 / 4
入学編1

さらにあれから4年。美雪と一輝はこの春、2回目の一年生となる。一輝とは約5年振りの再会だ。会うのが楽しみでしょうがない。

(ふふふ。楽しみだなあー。同じ部屋になれるかな?この一年間は会えなかったもんなあー……見かけはしたけど。ボク1人だけ二年生になるのは嫌だからわざわざ留年までしたんだ。同じクラスになれなかったら泣きたくなる……さて。引越しだ)

自分の荷物をダンボール箱に詰めて、それをティティの上に乗せる。そして、美雪がティティの頭の上に乗せて貰えば、美雪印の引越センターの完成だ。しかもティティは固有霊装なのでかなりの重量を積めるというセールスポイントまであるのだ。本来ならば固有霊装は個人の理由で使用してはいけないのだが、美雪のティティと紅桜は能力があまり攻撃的では無い事が幸いして特別に認められているのだ。

渡された鍵の番号の部屋に着いたので、開けようとすると、鍵はもう既に空いていた。ガチャリと、ドアを開けて中に入ると其処には、燃え盛るような紅髪が特徴的な、破軍の制服を着た少女がいた。

(あー。やっぱり僕とステラさんは同じ部屋か。黒乃さんの方針的にそうなるよねえ〜)

新理事長である神宮寺黒乃の方針はただ一つ。絶対的な実力主義なのだ。

「やあ。よろしくね。ステラ・ヴァーミリオンさん。ボクは黒鉄美雪。美雪って呼んでよ」

だから、世界一の魔力保有者であるステラと、霊装を3つ所有しているというありえないことを成し遂げた美雪が同じ部屋になるのは当然だった。

「!ええ。よろしく。そう。あんたが日本で2人しかいないAランク学生騎士、ミユキ クロガネなのね」

両者共に微笑み合う。それは何もわからない者からしたら美少女同士が微笑み合うという、何とも絵になる光景だっただろう。だが、両者共に目の奥がギラついていた。それはただの微笑みを捕食者の獰猛な笑みへと変える。目の前のこの騎士と一度戦ってみたい。2人の気持ちは同じだった。だが、それも一瞬の事。

「ボクは今から荷物を整理するけど、ステラさんは?」

「ステラで良いわよ。あたしは荷物の整理はそこ其処終わってるから、一回シャワー浴びてくるわ」

「りょーかい」

「〜〜〜♪〜♪」

美雪が鼻歌を歌いながら荷物を整理し始めて、そろそろ終わるかな、という頃。ステラが風呂場から出て来た。

「出たわよー」

「ってなんて格好してるのさステラ!?」

あろうことか何とステラはバスタオルを巻いただけの格好で出て来た。皇族は皆ああなのだろうか。

「何よ。別に良いじゃない。女同士なんだし」

「いやまあそうなんだけどそういう問題じゃないっていうか!」

「良いわよ。私は気にしないから」

そう言ってステラはバスタオルを脱ぎ、服を着始めた。だが、ステラが下着を着終わったその時、

ガチャリ、とドアを開けて誰かが入ってきた。

「ぇ……」

「あっちゃー……」

「〜〜〜っっ!?///」

黒髪の少年、黒鉄一輝だった。美雪の兄弟でもあり、婚約者でもある彼だ。

一輝は困惑していた。

(え?何で?何でこんなことに?美雪も居るし。ここ僕の部屋だよね?)

何故自分の部屋に下着姿の少女と最愛の(ひと)が居るのか。故に。

「言いたいことは分かるっ!僕も見ちゃった事を見てないなんて言わない!だから、僕も脱ぐからおあいこって事にしよう!!」

唐突に自分の服を脱ぎ始めた。

「こんの馬鹿兄いいぃぃ!!!」

『馬鹿野郎っ!』

が、美雪とティティのアシスト(暴力行使)によって途中で止められた。

「うちの兄がごめん!本当にごめん!馬鹿なんだよ!不器用なんだ!」

「ちょっ、美雪頭がっ、グラグラすっ!うわっ」

美雪は一輝の頭を鷲掴み、無理矢理頭を下げさせながら。自分の頭を下げ必死に謝る。何せ相手は一国の皇女なのだ。下手をすれば大事になる。

『悪気はないんだ!コイツはちょっと頭がおかしいだけなんだよ!許してやってくれ!』

 

------------

理事長室。美雪と一輝は理事長、新宮寺黒乃に事情を説明していた。

「成る程な。下着姿を見てしまったので、自分も見せる事で相殺しようとしたと」

「ホント馬鹿ですよねー」

「ああ。真正の阿保だな」

2人とも呆れ顏で言い放つ。

「フィフティフィフティで紳士的なアイディアだと思ったんですけどねえ……」

「確かにある意味紳士的ではあるな」

「いや変態紳士と言う意味では無くてですね!?」

「まあ混乱するのは仕方ないと思うよ?でもさあ……服を脱ぐのは不審者の行動以外の何物でも無いからね?」

「つまり黒鉄は彼女の下着姿を見て我を忘れ、思わず服を脱いでしまったと」

「いやそう言う事になりますけど、その言い方はやめてくれません?僕が危ない人みたいじゃ無いですか……」

「実際危ない人だからね」

「そうだぞ黒鉄。シャワー浴びて、ルームメイトと着替えながら談笑していたと思ったらいきなり知らない男が入って来て衣服をキャストオフ。どうだ?」

「……………すんごく危ない人でしたね」

「だろう?まあお前に非はほとんどないが、仮にも相手は一国の姫だ。男としての度量をみせろよ」

「そうだよ一輝。それにボクにも言うことあるでしょ!」

「そうだね。久し振り、美雪。あとゴメンね。助かったよ。美雪があの時途中で止めて謝ってくれなかったらもっとひどい事になってた」

事故であるとはいえ、婚約者の前で別の女性を見て衣服を脱ぐのは失礼だろう。

「うんうん♪わかれば良いんだ」

「失礼します」

その時だ。件の、紅蓮の髪の少女。ステラ・ヴァーミリオンが入室してきた。

「ごめんっ!ステラさん!僕が見てしまった事は事実だ!煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」

「いっその事一思いにこんがり焼いちゃって!」

「ごめんちょっと美雪は黙ってて!」

「……潔いのね。まあ良いわ。ミユキがすごい謝ってくれたし、今回は特別にミユキに免じて許してあげるわ」

「本当かい!?ありがとう!」

何だ。案外話のわかる子じゃないか。

「ただし。今後アタシの半径1キロm圏内に近づかない事よ」

「それ退学しろってこと!?」

話が分かるというのは気のせいだったようだ。

「そうよ。死罪を免れただけでも美雪に感謝しなさい」

「いやでも、元はと言えば、僕の部屋で着替えをしてた君の責任でもあるじゃないか!?」

「何よ!出来ないっていうの!?煮るなり焼くなり好きにしろって言ったじゃない!」

「いや確かに言ったけどあれは言葉の綾と言うか……」

「ああ.、言い忘れていたが黒鉄兄妹とヴァーミリオンは同室だぞ」

唐突に黒乃から驚愕の真実を告げられる。

「あ、やっぱり?そんな気がしてたんですよねえ」

部屋は綺麗に片付けられていたが、ベッドの下には私物が置かれてあったのだ。それに気づいていた美雪としてはやっぱりそうだったのか。ラッキー。ぐらいの気持ちしかなかった。

「えええええ!?理事長!この変態とアタシが同じ部屋なんですか!?それに何で3人なのよ!」

「私の方針は知っているだろう?」

「完全な実力主義ですよね?」

黒乃の質問に美雪が答える。

「ああ。つまり、実力の近い者同士を同じ部屋にしているということだ」

「だったらなおさらおかしいじゃないですか。ステラさんは今年度ぶっちぎりのナンバーワン何でしょう?落第生でFランクの僕なんかと同じ部屋になるわけが無い」

(よく言うよ)……」

ステラにだって負けるつもりは無いくせに……という美雪の呟きは誰にも届くことは無かった。

「あんた留年生なの!?」

「お恥ずかしながらね。実技授業を受ける最低水準のランクに達していなかったんだ」

「あ、ボクも留年生だよ?」

「ええっ!?ミユキまで!?何でよ!あんたはAランク騎士でしょ!?」

「そう。そこだよ。今回の部屋割りの理由だ。世界最高の魔力、平均の30倍というありえない魔力を持ち、10年に1度の天才と言われるAランク騎士、ステラ・ヴァーミリオン。そして、魔力が足りずに実技授業を受けられず、留年した10年に1度の劣等生。Fランク騎士黒鉄一輝。最後に、ヴァーミリオンには及ばぬものの、平均の25倍という十分ありえない魔力を持ち、固有霊装を3つ持っていて何故持っているのかは研究者もわからずお手上げ状態のAランク騎士。だが、一度も公式試合に出た事が無く去年は七星剣舞祭出場を蹴り、さらには実技授業を必要無いと全く受けず留年した問題児、黒鉄美雪。お前達3人は、それぞれ別の理由で釣り合う者がいなかったんだ。で、釣り合う者が居ないのなら問題児共をいっぺんに集めておこうという事でお前達は同じ部屋になった」

「だから今年はちゃんと出ますって。去年は学校側が汚かったから出なかっただけで……」

「アタシは絶対認め無いわよ!この変態と同じ部屋だなんて!」

「そこでだ。騎士ならば騎士らしく、自分の力で道を切り開け。黒鉄とヴァーミリオン両名で決闘を行い、勝った方が部屋のルールを決める。どうだ?」

それは一輝にとっては願っても無いことだった。何せ、一国の姫との国際問題から、1人の騎士との決闘に持っていけるのだから。

「いいですね。やりましょう」

「んなっ!あんた勝てると思ってるの!?やるだけ無駄よ!」

「でも、勝負はやってみないと分からないから」

それはステラの心を焚きつけるには十分だった。

「いいわよ……そこまで言うならやってあげるわよ……ただし!負けたほうは勝った方に一生服従!いいわね?」

「えっいやそれはちょっと……」

「いいわね?」

有無を言わなさ無いステラのドスの効いた声に、一輝が折れた。

「はい」

「ねえ黒乃さん。人権とかの法的に、そんな事出来ないっていう事にステラは気付いてるのかな?」

「奇遇だな。私もそれはどうなるんだろうと思っていたところだ。まあ相手は一国の姫だ。向こうの国の法を変えるとかするんじゃないか?」

「そんなんで大丈夫なのか……」

そんな2人の会話があったとか無かったとか。

 

 




ありがとうございました!良ければ感想も書いて行ってくださると助かります!指摘、誤字報告等何でも募集しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。