VRMMORPG《ユグドラシル》がサービスを終了するカウントダウンが終了しようとしたその時、幸運というべきか、不幸というべきか、一人の男がVR装置に体をゆだねる。
『ああ、もう、かったるいなぁ!』
彼は上司との酒盛り、ゴマすりを深夜まで続けており、彼自身もまた酒を飲まされていた。
まあ、聞く人が聞かなくとも、今のご時勢『24時前に終わるなんて幸運だなぁ』と言われることだろう。
だが、他人と比較するしないにかかわらず、不快なものは不快なのだ。
酔った足で家に到着すれば、ろくにシャワーを浴びることもなく、VR装置に直行し、不快な気持ちを洗い流そうとする。
今時VR装置には《ユグドラシル》以外にもさまざまなゲームがダウンロードされており、大量にある項目の中からひとつを思い浮かべるだけでプレイ開始できるようになっている。
さらに、メール機能や電話機能などの連絡機能どころか、ダイブしたまま仕事に使う機能も完備してある。
だが、酔っているのか、その思考能力はおぼつかない。
自分が目当てとするゲームを意識する前に、ひとつのメールに目が行く。
それはモモンガからのゲーム招待メールであった。
『ブレイブルー、起動ぉ!』
そう叫んだ彼は、電脳世界にダイブする。
・
・
・
『なんだ・・・?』
本来ならば、小奇麗にまとまった空間にたくさんの筐体が並んでいる、ある意味異質な空間がそこにあるはずだった。
だが、彼が想定していたような機械的なロビールームではなく、どこまでも広がる空と草原がそこにはあった。
『これは・・・ココは 緑色の草原、青色の空? 青い、蒼 あお アオ・・・』
そして彼の意識は途絶えた。
◆◆◆
時は前後して、カルネ村ではガゼフ・ストロノーフ抹殺の命を受けていた陽光聖典が、突如来訪したアインズらの手によって追い詰められていた。
召喚された天使の攻撃はまるで通用せず、ニグン・グリッド・ルーインは切り札を切ることにした。
「最高位天使を召喚する!時間を稼げ!」
追い詰められたニグンは懐から《魔封じの水晶》を取り出す。
「これはまずいな、アルベド」
「承知しました」
最高位天使による攻撃を危惧したアインズは、防御体制を整える。
最も、本来中に封じられている《威光の主天使/ドミニオン・オーソリティ》ではほんのわずかなダメージしか与えることはできないが。
「見よ、これが最高位天「クケケケケケ!アオ アオッ!」ッ!?」
ニグンが《魔封じの水晶》を掲げた瞬間、それを待っていたかのように何者かが転移してくる。
「まさか、あれは!?」
アインズは驚愕した。もう会えないと思っていた顔だったから。
それは、常に流動する不定形な黒いズタ袋の体に、白い埴輪の仮面をとってつけたような奇怪な姿かたちをしていた。
「ぐあぁ!?」
それはニグンの手の中にある《魔封じの水晶》を腕ごと喰い去っていく。
もっとも、アインズらにとってはニグンのことなんぞもはやどうでもいい。
「ロイさん!」
「アラクネ様!」
◆◆◆
そう、彼のプレイヤーネームは《ロット=カーマイン》、愛称は"ロイ"。彼はかつて発売されていた格闘ゲーム"BLAZBLUE"に登場する"アラクネ"の姿を再現している。
初めはプレイヤーネームを"アラクネ"にしようとしたが、これが固有名詞に入っている場合が多かったため、紛らわしいという理由でNGとなった。そこで仕方なく、"アラクネ"の本名である"ロット=カーマイン"を採用した、という経歴を持っている。
そんな彼の容姿は立派な異形種であり、かつて異形種狩りの被害にあっていた彼は、ギルド《アインズ・ウール・ゴウン》のメンバー入りを果たしている。
◆◆◆
「よかった、こっちに来ていたんですね、ロイさん!」
そういってアインズは、彼がニグンの腕を喰いちぎった事を忘却の彼方へ投げ捨てて、ロイに近寄る。
「ウワァァァァ!?」
ロイは怯えたように叫び、地面にもぐって消えていく。
「え、ちょ、待ってください!どうして逃げるんですか!」
アインズにとってはこの異世界に一人で転移したと思っていた最中、久しぶりに会うギルメンだ。かなり冷静さを失っていたのだろう。
「《メッセージ/伝言》!・・・くそ、繋がらない!警戒されているのか!?」
だが、アンデッドの基本能力《精神作用無効》により、冷静な思考能力が戻ってくる。
そうして、ふと現在の自分の装備を確認してみる。
どんな敵が来ても対応できるようにほぼ完全装備であるうえ、《嫉妬する者たちのマスク》によって顔が隠されている。
さらに、後ろのアルベドは完全装備であり、ギルドホームでの美しい面影はない。
これではプレイヤーキルしにきたと勘違いされてもなんらおかしくなかった。
「あの、アインズ様・・・」
「・・・ああ。至急ロイさんが転移した先を探す。ナザリックへ戻るぞ」
突然のギルドメンバーとの再会で話し方が崩れたことがすこし恥ずかしくなったアインズだが、気を取り直し、いなくなったロイを捜索するため《ゲート/転移門》を開いた。
「・・・承りました」
そうしてカルネ村から脅威は消え去った。
「・・・命拾いした」
行間の空け方など不満があればご指摘ください。
1話あたり2000文字以上を目安にしていますが、話を切りたい所がまちまちなので、次話は5000文字ぐらいいってると思います。
ユグドラシル関連のものはなるべく《》を使い、それ以外の固有名詞は""を使うようにしていますが、次回以降崩れることもあると思います。
オーバーロード大百科は神。