あぁ・・・ロイさんが動くNPC達をみたらどう思うかなぁー。
紳士服のナイスミドルキャラのセバスのことはブレイブルーのヴァルケンハイン関連で結構お気に入りで、ファイティングポーズをいろいろとらせて見てたし。
シャルティアの日傘の装備解除のエフェクトも、レイチェルのものを参考にして口出ししてたし。
アルベドにヤンデレ属性を盛り込もうとしてさすがにやめたのは見てたけど、あれもしかしたら最初から設定されていたんじゃ・・・今思えば、ちらっと出ていたような・・・
そう思いながらモモンガが《ゲート/転移門》をくぐり抜けた先にロイはいた。
「よかった、ロイさん、ナザリックへ帰りましょう」
そういって手を伸ばすと
「オマ オマエ モモ ガ アオ 蒼ォ!」
突然ロイが襲いかかってきた!
「えっ? 何が」
その時、残りの守護者たちが《ゲート/転移門》をくぐってきた。
「!!? ウワァァァアアア!」
そして、襲いかかろうとしていた蟲の手を引っ込めて逃げ出した。
「!? またか! 今度は何が悪かったんだ!」
即座に《精神安定化》が働き、冷静な思考が戻ってくる。
(待てよ、ギルドメンバー用のコンソールには表示されていなかったが、すでに精神系の魔法を食らっているとしたら?
可能性としては有り得る。《メッセージ/伝言》が通じなかったのもその影響かもしれない。ロイさんに精神魔法を使えるようなレベルの敵が近くにいるのか?
なんにせよ今は長距離転移のクールタイム中だ)
モモンガは《シューティングスター/流れ星の指輪》があることを確認し、貴重なアイテムを消費することに迷いを感じながら発動した。
「《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》ロイさんを正常に戻せ!」
だが、《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》は
そして、何の影響も及ぼすことなく、ロイはどこかに消え去ってしまった。
(無効化された!? いや、ただ無効化されただけなら《シューティングスター/流れ星の指輪》の使用回数は消費されているはずだ。
発動しなかった、だとすればすでにその願いが叶えられているということか。つまり、ロイさんは初めから正常であった・・・?)
考え込むモモンガに、アルベドから声がかかった。
「いかがなされましたか、モモンガ様」
「いかがも何もあるか!? ロイさんに錯乱魔法が掛けられているんだぞ!?」
そうだ、あれが正常であるはずがない。出会った時こそロールプレイの一環で錯乱プレイをしていたが、それでもあれみたいに本気で狂っていたわけじゃない。俺の知っているロイさんはもっとフレンドリーで、一緒にゲームをするのを楽しむ人だった
「しっ、しかしモモンガ様、あのお姿が、
「なっ・・・・・」
《ユグドラシル》時代NPCが本拠地から出られなかった以上、NPCたちがナザリック外でのギルドメンバーの様子を見たことはないはずだ。なのに、間違った認識だとしてもロイさんの外での様子を知っている、だと?
「・・・その、ナザリック外でのロイさんの姿、というのは?」
「はい、自分に勝ち目がない場合真っ先に逃げること、特に複数相手は分が悪いこと、一人が相手ならレアアイテムを求めて襲い掛かると」
それはロイさんのプレイスタイルだ。戦うときはなるべく1対1にこだわるロイさんは複数相手は逃げ出していた。ただ、召喚によって手数を増やして一人前の相手は相手をするし、勝ち目が薄くても1対1なら、勝ち目が存在する限り戦っていた。
「それは、ロイさんやギルドメンバーから直接聞いたのか?」
「いえ、
そういうものである認識・・・設定か。
わざわざ個別、またはNPC全員の設定を改変するということも考えにくい。
「・・・お前たちが、ロイさんのことを
「はい。皆、ロット=カーマイン様の事をアラクネ様と呼んでおります。」
アラクネの設定か。いや、待てよ?
アラクネの設定を知らないはずのNPCがなぜロイさんの名前ではなくアラクネの名前で呼んでいる?
「・・・何か私どもの認識に間違いがございましたら、すぐに修正いたします」
「いや、いい。お前たちは何も悪くない。ナザリックへ戻るぞ」
モモンガは《ゲート/転移門》を開く。
「今起こっていることがわかった」
◆◆◆
モモンガは今一度ギルドメンバーのコンソールを起動し、そこでロイの項目を開いた。
モモンガの考察が正しければ、ここにロイの人格を元に戻す手がかりがあるはずだ。
「やはりか」
そこには「アラクネ」の設定がコピーアンドペーストを疑う様に書いてあり、要約すると
ロット=カーマイン
「化け物の姿となった彼は「アラクネ」の通り名で呼ばれる」
「人としての姿と理性と記憶を失い、言葉が途切れ途切れに成り、何を言っているのか理解し辛い」
「
それと
「格闘ゲームキャラとして、1対多を嫌う」
ロイさんが企業からもらったアラクネの外装を設定したときには、キャラ設定が外装データに付随していた。
そこにロイさんが遊びで自分のプレイスタイルを追加したんだろう。
ただ、
ロイさんは初めから正常だった。ただ、NPCが自身に設定された通りの動きや感情を持つように、ロイさんはアラクネの設定に振り回されていたんだ。そしてNPCは設定でナザリックの外に出たロイさんの性格を補完していたから、集団で行くとロイさんに逃げられると考えて俺の行動に疑問を持った。
デミウルゴスは俺の目的と手段が食い違っていると考えたけど、俺とNPCとの認識に気づけなかったから、なにかほかに深い考えがあると思い、そのまま容認したんだろう。俺は万能じゃないっていう意識改革もしていかなくちゃな。
ロイさんの設定を読み進めていくと、元のロイさんを戻す手がかりがあった。
本当に、ブレイブルーのアラクネの行く末がハッピーエンドで、ロイさんも自作NPCを残してくれて助かったというところか。
『アラクネはライチによって元の科学者としての姿を取り戻す』
ロイの恋人のライチ=フェイ=リンは、化け物となってしまったロイを元に戻すためさまざまな手段をとる。
それによって最終的に、ライチが近くにいる間は人としての姿と知性を取り戻すことができる、という設定だ。
ロイさんのビルドには《不定形の粘液/ショゴス》が含まれており、人間態をとることも可能になっている。
そして、ロイさんは企業からもらった外装データを適用し、自分の部屋の中にNPC「ライチ=フェイ=リン」を作っている。
ロイさんのこだわりで種族は人間となっているが、異形種のみで固められたギルドホームで一人だけ人間NPCを作ると空気が読めないと思ったのか、なるべく部屋の外に出さないようにしていたし、レベルも低く設定していたみたいだ。
ロイさんの設定を読み終わったので、さっそくライチを呼ぶことにした。
◆◆◆
グラマラスな肉体とチャイナ服の組み合わせからファンの間では北半球と称される、黒髪ポニーテールの女がやってきた。肩にはテイムして外装を整えた小型パンダ「ラオチュウ」がくっついている。
「ライチ=フェイ=リン、御身の前に。」
うーむ、キャラ設定は外装データ付属の設定から変えていないと思うけど、忠誠心はデフォなんだな。
「よく来たなライチ。早速で悪いが、お前の創造主のロイさんが外で暴れていてな、お前の力を借りたい。」
「ロイが!? ロイが帰ってきていたのですか!?」
そのライチの言葉にアルベドは怒り、
「至高の御方、それも自分の創造主に対して何たる口のきき方ですか!?」
レベル差からくる圧倒的な迫力に内心怯えつつも、
「何でしょうかアルベド様、私はロイの恋人です。」
「至高の御方の恋人だとしても、敬う気持ちはあるでしょう!?」
「私はロイのことを誰よりも愛していますし、ロイからこのように話すように命じられて、私もそれを受け入れています。アルベド様にとやかく言われる筋合いはありません」
「ぐっ、至高の御方から命じられているのであれば」
そこでアルベドは噛み付くのをやめた。
話が脱線してきたので、モモンガは修正する。
「話し方うんぬんの話は今はいい。ライチ、お前が近くにいればロイさんの姿と知性が人に戻るということはわかっているな?」
「はい、私がロイに触れることで元に戻ります。」
「触れることで、か。・・・触れた瞬間元に戻るということか?」
「いえ、何十秒か触れ続けなければ戻りません。私に力があったときはロイと戦ってから元に戻したのですが」
ライチはブレイブルーの設定をそのまま持ってきたから、格闘ゲーム時代の記憶を持っているのか。
だが今はレベル差のせいでライチ自身が戦うことはできない。
ライチに噛み付いてきそうなアルベドを手で制しながら話を続ける。
「わかった。・・・ロイさんを元に戻すとしても、誰かが一度無力化しなければならない。それも、数の暴力では1対1を好むロイさんはすぐに逃げてしまう」
そしてモモンガは決意した。
「私がロイさんを倒す。1対1で」