ナザリックと共に   作:ファン・ジーター

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発見

 「どうなさいましたか?モモンガ様。」

 

 モモンガに近づき、先ほどよりも心配そうな声で同じ台詞を繰り返すアルベド。

 モモンガの脳はあまりの出来事に一瞬活動を停止したが、すぐに何かに抑制されたかのように穏やかなものになった。

 NPCと会話をしている。それは有り得ないことであった。NPCは所詮データでしかなく、先ほどまで付き従っていたのも所定のコマンドで命令したからである。

 しかし、他にこの異常事態を回避する術がないことから、一筋の望みをかけて訊ねる。

 

 「GMコールが効かないようだ。如何すべきだと思う?」

 「申し訳ありません、モモンガ様。無知な私はGMコールというものを存じ上げません。

  どうかこの失態を払拭する機会を頂ければ」

 「なっ!」

 

 ここでモモンガはあることに気づく。そうアルベドの言葉を思わず遮ってしまうほどのことだ。それはNPCの口が動いているということ。いや、NPCだけではない。自分の口も動いているのがはっきりと感じられる。

 さらに気づく。口に手を当て動いていることを確認しようとしたときに、その指が視界に入ったのだ。

 骸骨。肉も皮もない骨の指を見たとき、またもモモンガの脳は活動を停止した。そして、またもすぐに何かに抑制された。

 

 アルベドが不思議そうに、それでいて心配そうに見つめてくる。

 

 モモンガは今の状況について脳の細胞を総動員して考える。そもそも脳はないのだが-

 そして、2つの落とし所を見つける。

 

 1つはユグドラシル2のテストユーザーに選ばれたという説だ。

 この説が正しければ先ほどヘロヘロさんと話していたことが叶う。しかし、この説は間違っていると言わざるを得ないだろう。なぜなら、こうして仮想世界に閉じ込めることは電脳法で禁止されているからである。

 言い訳をしようと思えば出来るが、わざわざ法に触れる危険を冒してまですることではない。

 

 ではもう1つの説が正しいのか?いや有り得ない。先ほどの説よりも有り得ない。

 2つ目の説。それは仮想世界が現実になった可能性だ。

 

 まずは情報収集が先だろう。そう思い至り、命令してもいいものかと悩みながらも適任者の名前を呼ぶ。

 

 「....情報だ。-セバス」

 「はっ」

 

 セバスが頭をたれる。

 その姿を見て、自分が上位者であると自覚したモモンガは先ほどまでの悩みが解決したとばかりに堂々と命じる。

 

 「大墳墓を出、周辺地理を確かめ、もし仮に知的生物がいた場合は交渉して友好的にここまで連れてこい。交渉の際は相手の言い分を殆ど聞いても構わない。行動範囲は周辺1キロだ。戦闘行為は極力避けろ。」

 「了解いたしました。モモンガ様。」

 

 ナザリックの外に出ることが可能なのか。モモンガは疑問に思いながらも後回しにし、他のことに考えを巡らせる。

 情報収集も大事だが他にもしなければならないことが山ほどあるのだ。

 

 「アルベド。こっちに来い。」

 

 そう言って手招きすると、最初は何を言っているのか分からないといった顔だったはずが、一瞬で嬉々とした顔になる。

 

 「はいぃ、モモンガ様ぁ。」

 

 そう言って豊満な胸を強調するように近づいてくる。

 

 そう、これは必要なこと。ゲームではないと確認するために必要な手順なのだ。

 誰に向かってか分からない言い訳を内心で連発しながら、勇気を振り絞って尋ねる。

 

 「アルベド。」

 「はいぃ。」

 

 冷静に。冷静に。

 

「.....胸を触っても構わにゃい...ないな」

 

 無理でしたー。そもそも、彼女いない歴=年齢の魔法使いになりかけの男には荷が重すぎるって。

 

 そんな考えを他所にアルベドはあっさり了承する。

 モモンガは勇気を振り絞って、手を伸ばす。

 

 「ふにゅ」

 

 や、やわら....ゴホンゴホン。

 どうやら1つ目の説は完全になくなったようだ。なぜなら、これらの18禁に触れる行為は風営法など様々な法律に引っ掛かる恐れがあり禁止されているからだ。

 これで2つ目の説。仮想世界が現実になったという考えが信憑性を増してきた。当分は、この説を元に行動していく必要があるだろう。

 とりあえずは、他のプレイヤーの捜索だ。自分達だけが転移してきていると考えるのは愚か者の考えだ。

 それと、NPC達の忠誠を確かめる必要もある。とりあえずここにいるNPCは命令を実行しようとしてくれているが、他のNPCもそうとは限らない。

 

 「あぁ、モモンガ様。私は今ここで初めてを迎えるのですねぇ。」

 

 その声でモモンガは我にかえる。

 見るとそこには、身体をクネクネさせながら見悶えているアルベドと、呆れたような目付きで見てくるセバスの姿があった。

 

 そして、どれほどの間掴んでいたかも分からない右手を慌てて離す。

 

 「お、落ち着け。落ち着くのだ、アルベド。今は緊急事態だ。そのようなことをしている暇はない。」

 

 その言葉に一瞬で冷静さを取り戻したアルベドは謝罪し、命令を乞う。

 

 「アルベドよ。第四、第八を除く各階層守護者に1時間後に第六階層のアンフィテアトルムまで来るように伝えろ。アウラとマーレには私の方から直接伝えるから構わない。」

 「モモンガ様、お1つよろしいでしょうか。」

 「なんだ。」

 「ただいま第一階層には下等生物の侵入者がいます。この状況で第一階層守護者シャルティアに持ち場を離れさせることはできません。」

 

 忘れていた。転移してきたプレイヤーがこんなに早く見つかったのだ。これほど幸運なことはない。

 しかし、モモンガは悩んだ。今から行おうとしているのはNPCの忠誠度を測るための行為である。そこに連れてきてもよいのかと。

 

 「アルベド。とりあえず、そいつらは放っておけ。ただし、絶対に手出しをしないように各階層守護者に伝えろ。そのまま進んできたら、どうせ第六階層に来るんだからな。」

 「畏まりました、モモンガ様。」

 

 「それとセバス。もし侵入者が外に出た場合は、先ほど命じたとおりに対応しろ。念のため、メイド達も連れていけ。では皆の者、行動を開始せよ!」

 「「「「「「「「はっ」」」」」」」」

 

 

 

  ...................................................................................................

 

 

 

 「おい、どーなってんだ!サーバーダウンしねーじゃねーか!」

 

 怒りを含んだ声でザ・マッスルは言った。

 

 「コンソールも開かないし、GMチャットも強制アウトもできない。なんらかの異常が生じているのは確かだね。」

 

 それに対して魔女は冷静に今の状況を分析し、対処しようとしていた。これは彼女の良いところであり、悪いところでもあるだろう。今回の場合は明らかに前者であるのは言うまでもない。

 この言葉にザ・マッスルは幾分か落ち着き、とんざるとレジェンド・スターはあらゆる機能が使えないことを確認していた。

 

 この異常事態に6つの眼が1点に集中する。ギルド長であり、最も頭の切れるレジェンド・スターである。

 レジェンド・スターは暫し考えたあと、1つの結論を出す。

 

 「とりあえず、外に出よう。」

 

 6つの眼が集中していたからであろう。今まで冷静だった魔女があることに気付き、固まる。

 

 「......口が動いてる。」

 

 ここにいる全員がその言葉の意味に気付く。これはゲームでない可能性が高いと。現状の技術では口を動かすことは不可能なのだ。

 

 流石は頭の切れるギルド長だ。すぐに冷静さを取り戻し、早くここから出るように促す。ここはナザリック大墳墓。ユグドラシルの中でも指折りの危険地帯なのだから。

 僅かな時間でその判断をしたことに3人は流石だと感心する。

 そんな中、レジェンド・スターだけは恐怖を感じていた。いくら自分でも、ここがゲームではない可能性に気づいたときはかなり動揺したのだ。しかし、それは一瞬で何かに抑制されたかのように消えたのだ。

 賢い彼はある恐ろしいことを考えていた。自分の身体そして脳が天使へと変わっているのではないだろうか、と。昔読んだ、主人公が虎になってしまう100年以上前の物語のように。

 

 そんなことを考えながら足早に外へ向かう。幸いモンスターには遭遇しなかったが、外に出た瞬間、身体が硬直した。

 そこにはアンデットがPOPする沼地ではなく、一面に草原が広がっていたのだ。

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