ギリギリ13日だから許して!
「」は声に出ている会話を
()はメッセージでの会話を
"" は心の声を
表しています
仮想世界が現実になる。
そんな荒唐無稽な話をいったい誰が信じるだろうか。
モモンガだって信じたくはない。しかし現状、信じるにたる証拠が出てきている以上信じるほかないのだ。
異常事態である。
すべきことは山積みだ。
とりあえず、情報収集はセバスに任せた。1時間後には各階層守護者たちと会うことになっている。それまでに最低限のことはしておかなくてはならないだろう。
まずは、魔法が使えるかどうかだ。それは一足先に第六階層に行って確かめるつもりだ。そのためにはこの指輪が正常に機能するかを調べる必要がある。
リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン
これを保有している存在、ならびにその人物に触れている存在はナザリック内の名前の付いているほとんどの場所へ自由に転移でき、ナザリック外からの転移も可能という能力である
ナザリックでは一部を除いて転移を制限しているため便利なアイテムである反面、奪われれば簡単に侵入を許してしまう危険なアイテムでもある
第六階層へと転移するように指輪に祈る。
すると一瞬視界が真っ暗になり、次の瞬間には景色がガラリとかわっていた。
そこは薄暗く、通路を抜けた先には頑丈そうな格子戸、そこからわずかな光が漏れ出た、そんな場所であった。
どうやら問題なく転移できたようである。
ユグドラシルでの転移と同じ場所に転移できたことでそう確信する。
格子戸に近づくと、自動的に上に持ち上がるようにして開く。
通路に抜けた先にあったもの。それは、闘技場。
ローマ帝政期ものと同じ形をした円形闘技場<コロッセウム>。
そして、この場所につけられた名前は
円形劇場<アンフィテアトルム>
中央で演じる俳優は侵入者。何層にもなった無数の客席にいる観客はゴーレム。そして俳優の品定めをするかのように優雅に貴賓席に座るのはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーである。
そのまま歩き、中央まで来たところで歩を止める。
この階層を守護する双子の姉弟のことを考えながら、名前を呼ぼうとする。すると
「とぅ。」
貴賓席から跳躍してくる1人のダークエルフ。
6階建ての建物に匹敵する高さから飛び降りたにもかかわらず、足を軽く曲げるだけで完璧に着地する。
どんな一流の体操選手であっても真似できない肉体能力を見せたダークエルフは自慢げに微笑む。
「ぶいっ!」
そう言って見事なダブルピースを決めたあと、モモンガの元に駆け寄ってくる。
「いらっしゃいませ、モモンガ様。私たちの守護階層までようこそ。」
元気のいい声で自らの主人を歓迎する。容姿は一見すると少年のものであるが、その顔立ちには僅かに少女のものが見える。性別も女であった。
「うむ。ご苦労、アウラ。」
「苦労なんてそんな。至高の御方にお越しいただいたのですからお出迎えするのは当然です。」
「そうか。それよりも...」
その先を言おうとして、モモンガの言わんとしていることに気づいたのかアウラは後ろを向く。
「マーレ~。モモンガ様が来てくださっているのよ。早くしなさい!」
「ま、待ってよ~。おねえちゃ~ん」
「早く飛び降りなさい!」
「わ、わかったよ~」
アウラとそんなやり取りをしながら、オドオドしたダークエルフが飛び降りる。
こちらはアウラとは違い、ぐらつきながらも何とか着地に成功したといった感じだ。
スカートを抑えながら、手を横に振り走ってくる。
「お、お待たせしました。モモンガ様」
「うむ。」
マーレ。この階層を守護するダークエルフの双子の弟である。
スカートをはき、少女のような仕草をするが男である。
いわゆる男の娘というやつだ。
「アウラ、マーレよ」
「「はい」」
「1時間に各階層守護者をここに集めた」
「え、あいつも来るんですか?」
アウラが予想される来訪者の1人を思い浮かべ露骨に嫌そうな顔をする。
モモンガも誰のことを言っているのかすぐに分かった。
「ああ、すまんが我慢してくれ」
「謝罪なんてしていただかなくて結構です。私たちはモモンガ様の手足となって働くだけですから。申し訳ありません。モモンガ様の決定に口を挟んでしまって...」
「構わん」
モモンガはアウラを許し、もう一つの要件を切り出す。
「今日は実験もしにきた。全員が揃うまでにこいつの効果を確認しようと思ってな」
そう言ってスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掲げると、2人から歓声が上がる。
どのような魔法を使うのか告げると、すぐに必要なものを手配してくれた。
どうやら、この2人も忠誠を誓ってくれているようだ。そう判断したモモンガは意識を魔法の行使に向ける。
さて、どうやって魔法を発動させるのかな。そう思ったのも束の間、その方法はすぐに分かった。
心の奥底に意識を向ければ感じることができる。数多ある魔法の中から一つを選択する。
サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル《根源の火精霊召喚》
スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの火の宝玉に宿っている、レベル80後半のプライマル・ファイヤーエレメン/タルを召喚する魔法である。
"ふぅ、うまくいったみたいだな”
モモンガは魔法の行使がうまくいったことに安堵する。これで刃向かうものがいても、なんとか逃げる時間は稼ぐことができる。
プライマル・ファイヤー・エレメンタルと闘い危なげなく勝利したアウラとマーレに水を差しだし次にしなければならないことに考えを巡らせる。
魔法の行使が成功した今、残るはGMとの連絡である。
しかし、やはりコンソールは開きそうにない。
ふと思い付く。魔法が使えたのであればメッセージ《伝言》でGMと連絡を取ることが可能なのではないかと。
ユグドラシルではプレイヤー同士が連絡を取るための魔法だったが、GMチャット等の機能が失われている今、魔法によって代替されているかもしれない。
一筋の望みをかけて、GMに向けてメッセージ《伝言》を発動する。
糸のようなものが伸び、何かを探っているような感覚がする。しかし、それはつながることなく途絶えた。
どうやらGMにはつながらなかったようだ。
その後、ギルドメンバーにもメッセージ《伝言》を発信するが結果は同じであった。
最後にNPCとメッセージ《伝言》がつながるかを確認することにした。GMおよびギルメンとの連絡が取れない以上、現在忠誠が確認されているNPCと連絡を取ることは重要である。外の状況も気になっていたモモンガは情報収集に行っているセバスへとメッセージ《伝言》を発信した。
糸のようなものが伸びる感覚。しかし今度はすぐに何かにつながった。
(はい。なんでございましょうか、モモンガ様)
低音の老人の丁寧な言葉が聞こえる。
(セバスか?)
(はい)
(周辺の様子はどうだ?)
(それが.....少々問題が...)
(なんだ?)
(ナザリックの周りが以前のような沼地ではなく草原になっております)
(なに!?草原だと!)
(はい。また、半径1キロの範囲内に現地の知的生物は確認できませんでした)
(そうか)
(ただ、例の侵入者を発見しましたので只今より第六階層に向かうところでございます)
(分かった。私は彼らを客人として迎える。失礼のないように対応に当たれ)
(かしこまりました)
今まではサーバーダウンに失敗しゲームとしての機能から隔離されてしまった、それにともないなんらかの原因で五感が働き、NPCも動きだした、そう推測していた。
しかし、周辺の地理までかわっているのでは話は違う。ナザリックごとどこか別の場所に転移した可能性があるのだ。それがユグドラシルならいいが、全くの異世界に転移していたらかなり厄介である。
そんなことを考えていると、吸い込まれそうな闇がどこからともなくあらわれる。
「おや、私が1番でありんすか」
年齢に不相応な廓言葉を使い、フリフリのドレスを着た美少女がそう言いながら出てくる。
第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールンだ。
吸血鬼であり、その強さは守護者一。モモンガは前衛職ではないため普通に戦えば負けてしまうだろう。
はっきり言って一番危険な存在である。
シャルティアはモモンガの存在に気付くと小走りで近づいてくる。
モモンガはギルド武器を掴み、身構える。
しかし、予想された最悪の結果は訪れなかった。
「あぁ、我が君。わたしが唯一支配できぬ愛しの君。」
そう言ってモモンガに抱きついてきたのだ。
モモンガはなにが起こったのか分からず一瞬たじろく。
それを見たアウラが失礼だとシャルティアを怒っている声で我に帰る。
なんせリアルでは異性関係との関係はほぼ皆無だったのだ。抱きつかれてもどうしてよいか分からずフレーズしてしまったのだ。
いつまでも抱きついていたシャルティアにアウラが爆弾を投下する。
「偽乳」ボソッ
「なっ」
「さっきもパッドが外れるからわざわざ転移してきたんでしょ?」
あまりの恥ずかしさと怒りで思わずモモンガから手をはなし、アウラへと向き直る。
その後も口論が続くアウラとシャルティアをモモンガは目を細めて見ていた。
アウラを創造したぶくぶく茶釜とシャルティアを創造したペペロンチーノはリアルでは姉弟であり、よく喧嘩していた。今のアウラとシャルティアはそのときの状況と似ており、モモンガに懐かしい記憶を呼び起こさせるには十分だった。
そんな中、いきなり地面が凍り出す。
「騒ガシイナ、御方ノ前デ遊ビスギダ」
コキュートスだ。蟲王《ヴァーミンード》であり容姿は昆虫を二足歩行にしたものである。武人というコンセプトのもと武人建御雷によって創造された。第五階層の守護である。
コキュートスから指摘を受け冷静になったアウラとシャルティアはモモンガに謝罪する。モモンガはそれを受け入れると、コキュートスを労う。
「よく来たな、コキュートス」
「お呼びとあらば即座に」
今の返事で忠誠を誓ってくれていることは確認できた。
残るはあと1人である。もし彼が忠誠を誓っていなくても、ここにいる者が守ってくれるだろうから大丈夫だろう。
「皆さん、お待たせして申し訳ありませんね」
アルベドと共に歩いてくる悪魔の名はデミウルゴスである。妙にインテリめいた姿のとおりナザリック随一の知能を持ち、第七階層守護者という立場に加え防衛時のNPC指揮官という設定である。知略に優れているものの戦闘力はそれほど高くない。
アルベドとデミウルゴスがモモンガの前まで来ると他の守護者たちも集まる。
「では、皆至高の御方に忠誠の義を」
アルベドのその声が合図であったかのように全員が一斉に頭をたれた。
モモンガは守護者たちといくつか話を交わしたあと本題に入る。
「ナザリックは現在、原因不明の事態に巻き込まれている。既に周辺の調査を終えたセバスから報告された情報を伝える」
そうして、モモンガはナザリック周辺が草原になっていることを告げる。また、侵入者がこちらにむかっていることも。
「ではモモンガ様迎撃体制を整えます」
「....私は彼らを客人として迎える」
アルベドの物騒な言葉に対しモモンガは重大なことを告げる。
「なぜでございましょう、モモンガ様。相手はこの地を汚した侵入者。客人としてもてなす道理がございません」
「一つ。現在、この地に転移したことが確認されているのはナザリックのもののみだ。何か情報を得られるかもしれない。二つ。もしこの地に彼らの仲間がいた場合厄介なことになる。三つ。ナザリックには人間種がいないため何かの役に立つかもしれん」
「.....かしこまりました。」
なんとか納得させることができたモモンガは今後の予定を伝える。
「アルベド、デミウルゴス両名の指揮のもとナザリックの警備レベルを最大に引き上げろ。彼らがここに来たら、私は自室にて対談する予定である。何かあればメッセージ《伝言》でアポを取った後確認しにこい。」
「お待ちください、モモンガ様。いくら客人になったと言えども元は侵入者でございます。せめて護衛をお付けください。」
「そうだな、セバスとプレアデス達に護衛を任せることにする。心配せずともよい」
アルベドはこのとき頭をたれながら、地面に向かって嫉妬に満ちた表情をしていたのだがモモンガは全く気づいていなかった。
「お待たせいたしました、モモンガ様」
守護者達との話し合いが終わり、見計らったようなタイミングでセバス達が現れる。
先頭のセバス、後方のプレアデス達に挟まれるような形で彼らは姿を見せる。
1人の天使と3人の人間。
そして1人のアンデット。
絶対的強者が顔を合わせた瞬間である。
この出会いが後に世界に大きな影響を及ぼすことになるなど、彼らは知る由もない。
今後は1週間に1話を目処に投稿していくつもりです。
7/14 誤字脱字修正しました。
ミスがたくさんありました。本当にすみません!
炬燵猫鍋氏さんご報告ありがとうございました!