鬼ヶ島イベントの時間を削ってまで執筆してた俺を褒めろ!! え? 自業自得? ……良くわかってるじゃないか。
つか、今回のは長いです。 いつもの2倍近い長さです。
覚悟して読むがいい!!
観覧席の手すりにヤンキー座りをしている男の名は、クー・フーリン。
アイルランドの大英雄にして、魔槍ゲイ・ボルグの使い手。
突然現れた超級のサーヴァントに、マシュ達の脳内は警報が鳴りっぱなしになっている。
「俺に見つかったからには、どうしようもねぇよなぁ?」
獰猛な獣の様な視線を向けられます……マズいですね、ネロ陛下だけならまだしも、私がいては逃げ切るのは難しいでしょう。
「ほう……余を前にしての壮言大語、その勇気に免じて捕まってやらんでもないが……いかんせん、余とマシュには目的があるのでな」
「言ってくれるじゃねぇか……なら、その自信が本物かどうか見せてもらおうかぁ!!」
「一旦引くぞマシュ!!」
「ぅわっ!」
ネロ陛下は私の腕を掴んで、クー・フーリンさんの横をすり抜けるように飛び出しました。
さすがは俊敏値Aですね。 私がいてもその速度は殆ど落ちていません。
「マシュよ!移動は余に任せて、宝具の発動を!」
「は、はい! 真名……偽装登録!」
宝具を発動させた私達の前には、青い魔力で出来た壁のような物が出現しました。
しかし、この宝具は防御力を底上げする為のもので俊敏を上げたりする能力はないです。
一体、ネロ陛下は何を……
「余の背中にしがみつき、盾を背面に装備せよ! 出来ればスキルで更に防御を上げた方が良いぞ!」
「は、はい! ステータスアップ、頑張ります!」
「ダメ押しの皇帝特権、防御特化であげていくぞ!!」
そんなに防御のステータスをあげて何を?
地上に降り立ったネロ陛下は、背後に迫るクー・フーリンさんをチラリと一瞥すると……
「死ねぃ! クー・フーリンよ!!」
まさかの急ブレーキをかけました。
「ちょっ! そんな急に止まったらーーーぶほぉぉぉお!!」
案の定、クー・フーリンさんは私が背負っている宝具に激突しました。
顔面を強打したようですね、あれは絶対に痛いです……
地面を転げ回っているクー・フーリンさんが、少しだけ可哀想にも思えてきます。
しかし、なるほど……防御力をガン上げしたのはノーダメージで返り討ちにする為でしたか……めちゃくちゃな戦法にも見えますが、その卓越した戦闘技能には舌を捲くばかりですね。
「ふぅ…助かったぞ、マシュ。
いつまでもこんな大っぴらな場所にいる訳にもいかんな、さっさっと次の隠れ場所に移動せねばならんな」
「でしたら、この時代の剣闘士達にあてがわれる更衣室などに隠れては如何でしょう?
狭い空間でしょうし、足の速いサーヴァントから逃げるには都合が良さそうです」
「ふむ……では、そうしようか」
広場の各所にある扉を目指して歩き出す。
なんだかネロ陛下といると楽しいです。
むちゃくちゃだけど、私の事を気遣ってくれたり、平民である私にも友達のように話しかけてくれる……他はどう思ってるかは知りませんが、少なくとも私にとっては最高の皇帝ですね。
「おう……ちょっと待てや……」
「ーーーーほう? まだ生きていたとはな……痛くはないのか?」
ま、まさかまだ行動できるとは……耐久Aの私でも暫く行動したくなくなるほどのダメージだと思ったんですけどね……
「痛ぇよ!! あんな戦法取るなんて欠片も思ってなかったから、尋常じゃねぇくらいのダメージ受けたよ!!」
「そんな貴様にプレゼントをくれてやろう。
………すまんな、マシュ。
ーーーー全力で走ってくれ」
「は?」
ネロ陛下が大きく息を吸いましたね……あ、なんか予想できちゃったかもです。
「スカサハァァァァア!! ここにセタンタがおるぞぉぉぉぉお!!!」
お、おぉ……なんて大声なんですか…鼓膜が爆裂するかと思いましたよ……
「おまっ! なんて事しやがーーーー」
「探したぞ? セタンタ……何故私を追いかけて来ぬ? 久し振りに稽古をつけてやろうと思っていたのだがな」
「ではさらばだ!」
後ろでクー・フーリンさんが何かを叫んでいましたが、今は無視です。
とりあえずここはスカサハさんに任せてスタコラ逃げましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「師匠を無視しようとはいい度胸だな、セタンタよ」
「う、うるせぇ!あんたとは此処で決着をつけてやるぜ!
はぁぁぁあ!!
『
この時、クー・フーリンはテンパり過ぎて忘れていた。
自慢の武器が、にゃんにゃん棒と交換されていた事を。
ぷにっ
「……………」
「……………」
心臓を狙ったにゃんにゃん棒の一撃は、心臓の真上……つまりは、スカサハの胸をぷにっと突いた。
「師に破廉恥な行為を行うとは、偉くなったものだな……」
「あ、あの…師匠? これは……違うんーーー」
「言い訳無用!!
『
「ごめんなさっ!!」
クー・フーリン、リタイア。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、クー・フーリンさんを見殺しにした訳ですが、そんな些細な事は気にせず行きましょう。
私達は先に言っていた通り、剣闘士達の更衣室にやってきました。臭いです。ひたすらに汗臭いです。
「こ、ここはさすがの余も長居したくないな……」
「やはり場所を変えましょう……匂いが移ってしまうのは乙女として避けたいですしね……」
「うむ……」
あのネロ陛下ですら嫌がるレベルの汗臭さって……剣闘士達の入浴については、なんとかした方がいいのでは? と、本気で心配になってきますね……
それは兎も角移動ーーーーと、言いたいところですが、あれだけ騒いだ後、私達を補足してない訳がないですよね……
「ーーーー牛若丸さん」
「貴女達の匂いを追ってきました。 ネロ殿の気品溢れる匂いと、マシュ殿の可憐な香りはとても分かりやすいですからね」
扉の前に立っていたのは、現状、沖田さんと並ぶほどの速度を有する牛若丸さんその人でした。
一難去ってまた一難……おかしいですね、私の幸運はCとそこそこあるのに加えて、ネロ陛下に至ってはAランクもあるのに、ここまで災難が続くとは……
「ときに牛若丸よ、お主に似合いそうな防具を発見したのだが、着けてみる気はないか?」
「なんと! それは嬉しいですね。
今だけは触れないので、着けていただけますか?」
うわっ…ネロ陛下の考えが読めた気がします。 さっきのクー・フーリンさん撃退よりもエゲツない事をやりそうな予感が……
「ほれ、これよ」
ガポっ
ネロ陛下が牛若丸さんに被せたのは……剣闘士達が、普段身に付けているフルフェイスの兜です。
部屋の中に充満する匂いだけで立ち眩みがする物を、ただでさえ鼻が効く牛若丸さんに被せたりしたら……
「うっ……きゅう……」
あ、倒れました。 これは酷い、これは惨い。
鬼に接触出来ない以上何処かに移動させる事は出来ませんが、せめて兜だけは取っておきましょう。
下手すれば英霊の座に帰りかねません。
牛若丸、リタイア。
「ネロ陛下……些かやり過ぎでは?」
「うぅむ……これには余も、ちょっと反省」
「はい、気を付けて下さいよ?」
「うむ! 余に二言はない!」
「それよりも、残る鬼は後一人ですね……ブリュンヒルデさんとの戦闘を見る限りは、少しの油断も出来そうにないですよ……」
残る鬼は、剣客集団新撰組の中において、最強の剣士と名高い沖田 総司……よく一緒にレイシフトするのですが、彼女の宝具…というか第二魔法に匹敵する魔剣は如何なる防具を持ってしても防げないと………自慢してました。
「まぁ、それについては余に考えがある。
案ずるでない、余とマシュの二人にかかれば、どんな敵にも負けぬよ」
心強い言葉です……不安に思っていた気持ちが嘘の様に晴れやかになっていきます。
「さて、ではもう一度広場に戻るか」
「え? このまま時間切まで隠れていた方がいいのでは?」
「お主……マスターの言葉をちゃんと聞いておったのか?」
「は、はい。 そのつもりですが…」
「では分かるだろう? マスターは、一言も制限時間について語っておらぬぞ?」
あ………確かにそうです。
あのマスターの事ですから絶対に言い忘れだとかでは無いはずです。
「で、では他の方に任せるというのはどうでしょうか? 正直、一回も触られてはいけないという条件下で、あの沖田さんを打倒するのは至難の技ですよ?」
「それも却下だな。
その様子からすると、気づいておらぬのだろうが……先程から、悲鳴や物音が一切聞こえなくなっておる。
我等二人を残して全滅、もしくは、ほぼ全滅したと考えるのが打倒ではないか?」
「確かにそうですね……って事は、アルトリアさんやアルテミスさん、モードレッドさんや酒呑童子さん達も捕まったって事ですか!?」
「ま、それも広場に行ってみれば分かるであろう。 総司の性格からして、決着はああいう場で着けたいはずだからな」
「わかりました、行きましょう」
慎重な足取りで広場に向かう途中、私はこんな事を考察してみました。
もしも本当に私達以外の全員が捕まったと思うと……ゾッとしますね。
カルデアにいるサーヴァントの中でも、今挙げた四人以外にも絶対的な強者は何人もいます。
その誰もが捕まったとは……触れるだけで相手を捕縛する礼装とか作ったら、俊敏値の高いメンバーが最強になりますね。
ソロモンとかいう白黒ワカメも簡単に倒せそうです。
薄暗い廊下を抜け、広場に出ると、一瞬だけ太陽の光に目を瞑ってしまった。
「何をやっておるか!!」
ドンッ!
「きゃっ!」
突然ネロ陛下に突き飛ばされました。
目を開けるとそこにはーーーー
「さすがはネロ殿、己が身を持って仲間を救うとは……感服します」
ネロ陛下を捕獲している沖田さんがいた。
「ネロさん!!」
「ぬぅ…余とした事がここでリタイアとは……
まぁ良い、余の願いも叶った事だし、ここは素直に負けを認めるとしよう」
そう言い残して、ネロさんは強制的にレイシフトでカルデアに戻されました。
「さぁどうしますか、マシュさん?」
「わ、私一人で勝てる訳が……」
そう、不意打ちネロさんを打破したような人物相手に私一人で太刀打ち出来る訳がないです……ここまで生き残れたのも、ネロさんがいたおかげですし、ネロさんがいなければーーーー
「貴女はそれでもサーヴァントですか!?」
いいですか!? よく聞いて下さいよ!
ネロ殿は自分を犠牲に貴女を救ったんですよ!! それに報いなくて何が英雄ですか!!」
そ、そうだ……例えこの身は英雄の物じゃなくても、この体に宿る魂を侮辱する訳にはいかない!!
「ーーーー倒します! 私は貴女を倒して願いを叶えます!!」
私の覚悟が届いたのか、沖田さんは笑顔になる。
しかし、剣に手を添えた途端その空気がガラリと変わり、真剣な顔でこちらを睨みつけてくる。
「マシュ・キリエライト……行きます!!」
「新撰組一番隊隊長、沖田 総司……参る!!
ーーーーーゴフッ!」
えー………ここで吐血しますか? 倒れこんだまま動こうともしませんし……
「どうやら……叫びすぎたみたいです……ゴフッ……貴女の勝ちです、良く…頑張りましたね………バタリ」
バタリって自分で言う人を初めて見ました。
というか、え? これって本当に私が優勝で良いんですか?
ぶっちゃけ最後まで殆ど何もやってないですけど……
『おっ、優勝はマシュか、おめでとう!!
とりあえず、お前達二人以外は全員レイシフト済みだから、戻ってこーい』
先輩からの通信ですね……おめでとうと言われても全く実感が湧かないんですが、どうすれば良いんですかね?
まぁ…レイシフトも始まりましたし、帰ってお風呂入ってサッパリしたいです。
こうして、ドキッ! 英霊だらけの鬼ごっこ大会は幕を閉じた。
先ほどまで賑やかだったコロッセオは、サーヴァント達がやってくる前の、人っ子一人いな………
「私は……そんなに影が薄いのかね?」
人っ子一人だけはいた。
赤い外套を靡かせ、コロッセオの一番高い位置で両手を組んでいる哀れな男が一人、レイシフトされるのを待っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
カルデアに帰ってきた私を最初に迎えたのは先輩でした。
医務室に緊急搬送されるクー・フーリンさんを横目に、先輩が願い事について聞いてきました。
「で、マシュは何を叶えて欲しい?」
「………そ、その…私の願いはいいので、ネロさんのお願いを叶えてあげて下さい」
そう、私はネロさんがいなければここまで来れなかった。
だからこそ、私ではなくネロさんにこの権利を譲渡したいです。
「いや、余の願いは既に叶ってるからよいぞ? いやマジで」
「だってさ、どうする? マシュ」
「じゃ、じゃあ……先輩に、頭を撫でて欲しい……です」
うわー、何言ってるんでしょう、私。
周りの皆さんも微笑ましい目で見てますし……あぁっ恥ずかしい。
「い、いえっ、やっぱりなんでもーーーあっ……」
フワッ…と頭の上に先輩の大きな手が乗せられました。
温かくて、気持ちいいです……なんですかこれ、マイナスイオンでも出てるんですかね?
尋常じゃないくらい安心しますよ…
「はふぅ……」
「っと、そろそろ風呂でも入って来い、ネロとの積もる話もあるだろ?」
「あっ……」
先輩の手が頭から離れちゃいました……でもそうですね、ネロさんには感謝してもしきれないんですし。
とりあえずお風呂にいきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
カポーン………
「うはぁ……いい湯だのう、風呂はローマの特権だと思っていたが、カルデアの風呂はまた格別よ……」
「あ、と……今回はありがとうございました、ネロさん」
「良い良い、気にするな。 あれは、余が余の願いの為にした事、マシュが気にする必要はない」
本当にリラックスされてますね……かく言う私も今日はさすがに疲れたので、お湯がとても気持ちいいです。
「そういえば……ネロさんの願いって何だったんですか?」
「あぁ、それよ、そ・れ」
「それ?」
「マシュの余に対する呼び方。
余はマシュと呼び捨てにしておるのに、いつまでたっても陛下、陛下……それを今回の願いで強制的に直させてやろうかと思うてな」
そういえば……いつの間にかネロ陛下から、ネロさんに変わっていましたね。
気が付きませんでした……でもーーー
「ネロさん……いいですね、この呼び方」
「で、あろう? マシュよ」
「ぷっ……」
「ふっ……」
「「あはははははっ!」」
この日を境に、ネロさんとは更に仲が良くなりました。
今後も何かのイベントがあるときは、ネロさんと組んじゃいましょうかね? ふふふっ。
な? 長いでしょう?
マシュとネロの友情的な物を書きたくなったんだから仕方がない。
長くはなったけど、割と綺麗に纏められたと思う……本当なら3〜4話くらいで書いても良かったんだけど、それじゃあ短編とは言えなくなっちまうかなぁ…とちょっと後悔。
何ぃ? 赤い弓兵はどうしたって? ………彼の者は常に一人、剣の丘(剣闘士の舞台)で勝利に酔ってます。
きっと悪酔いです。
では、また次回。 マシュマシュ〜