悪徳博士(偽)でおくる三国志。   作:大里

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2.なんだかんだで平和です

街へ出るとガヤガヤと騒がしい人の声や物音が聞こえてきた。

 

 

 

「いやー賑わってるなぁ」

 

この街は俺が政権?を握る前と比べるとかなり発達し、賑わい、豊かになった。自惚れで無ければこの風景を作り出したのは俺だ。もっともこの街の住民や部下など人がいてこそだが、其れでもこの結果は素晴らしいものだと思いたい。

 

「これも李儒様の手腕のおかげですよ」

 

しかし………

 

「んな事ねぇよ。俺は最善を尽くしただけだ、優秀な奴はもっと上手く立ち回ってるさ」

 

俺はこの言葉に否を唱えた。そう、例えこの結果が素晴らしいものに見えても何処かしら穴はあり、所詮俺は最善を尽くしただけに過ぎない。優秀な奴ならもっと人をうまく使うだろうしもっと革新的なアイデアを思いついたかも知れない。

 

其れに人員の不足、資金の枯渇、上司の奔放さ等まだまだあるがあげればキリがない。そんな爆弾を抱え込んだまま進めた政策を良かったと言っていいものだろうか?

 

そういった点から言うと俺は駄目駄目だ。三流にもなっていやしない

 

だからこそ勘違いしてはいけない

 

「(そんな事は無いと思いますが…………)」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いいえ、唯の独り言です」

 

「そうか」

 

こういった様に兵士(名は簡 雍(かんよう)と言うらしい)と軽く会話をしながらフラフラの身体をたまに支えてもらいながらも目的地へむかって行った。

 

 

 

「さぁ、安いよ安いよ。お、李儒様じゃねぇかまた不景気な面ァしてんな」

 

「不景気は余計だ。まぁ、疲れてるのは否定しないがな」

 

「ガハハ、過労死なんざすんなよ?そうだ、これ持ってけあまりもんで悪りぃけどよ。それ食って精をだしな」

 

「ある意味笑えねぇジョークだな」

 

「ジョークなんだそりゃ?」

 

「ああ、いや忘れてくれ。ありがとな、精々死なないように頑張るわ」

 

 

街の連中の一人に声をかけられた。といっても此処には北郷が来る前の平和な時、強いて言えば視察と言って仕事から抜け出した時や休日には良く世話になったものだ。

 

 

俺は一応だが結構な地位にいるので初めは警戒されたり恐がられたりしたが、俺は何かと人に舐められるタイプの様で大概最後には自然体で話してくる。まぁ、それこそ気を使われるのはそこまで好きでは無いので困ってはいない。

 

 

歩きながらさっき貰った物を確認すると少量の野菜と果物が入っていた。

 

 

「後で、女官にでも言って調理してもらうか」

 

そう独りで呟きまた歩みを進める。するとまた知り合いにあった。

 

 

「あ、おじさん久し振り」

 

「お、張《ちょう》のとこの坊主じゃねぇか。っか俺はおじさんじゃねぇ」

 

「でもおじさん、自分の顔見た事ある?酷い顔してるよ」

 

「はぁ、未だ18なのにこの言われよう」

 

「おじさんここ最近ちゃんと寝てないでしょ」

 

「まぁ、大人には大人の事情って奴があるのさ」

 

「ふーん、また遊んで貰うんだから死なない様にね、約束だったじゃん」

 

「ああ、そうだった悪いな。この仕事終わったらまた遊んでやるよ」

 

「……それ前も言ってた」

 

「悪りぃ悪りぃ、ま、そのうちな」

 

 

お次は知り合いの子どもであった。俺が平和だった時(北郷が来る前)にちょっと遊んでやったら妙に懐かれたのを覚えている。この前まで暇な時間に遊んでやっていたのだが、最近は如何も北郷一行のせいで忙しく相手をしてやれなかった。

 

悪いとは思うが今の俺にそんな余裕は無い。只でさえこの前の戦の後処理だけでも忙しいのに、そこに北郷の尻拭いときた。俺の予定は大火事だ。前も言っていたと睨まれてしまったがこればかりは仕方が無いので。いつもの様に誤魔化した。

 

その後も街の連中には見かけるたび声を掛けられ目的地へ行くのに少し時間がかかった。そして皆、口を其れえて『大丈夫か?』『死ぬなよ』と言ってくる。

 

幾ら俺の見た目が酷いからって言い過ぎだ。見た目だけだと思っているのは俺だけなのだろうか?なんだかんだで皆、心配してくれていると思っておく。

 

そして、その頃には目的地に着いていた。場所は結構大きな商家、此処は知り合いがやっているのでいつも此処で売っている。

 

「これはこれは李儒様ではありませんか。またいつものですか?」

 

「そうだ。早速で悪いがこれを頼む」

 

店長の挨拶も程々に俺は売る私物を渡した。

 

「では早速」といい店長は鑑定に入る。手慣れているらしく五分ほどで終わった。

 

店長は

 

「本日もありがとうございます。少し色をつけておきますね」

 

「いつも済まんな」

 

「いえいえ、李儒様が手を差し伸べてくれなければ今の私は居ません。ちょっとの恩返しとでも思っておいて下さい」

 

店長のこの口振りにはちゃんと訳がある。此処の店長は元難民なのだ。たまたまこの街に来たのだがやはりいつの時代も難民は歓迎されないようで中々仕事や住む場所が見つからなかった。そこに俺が声を掛けた。

 

少し話を聞いて俺は商人に向いているなと思い、資金の獲得も含めて俺の私物で商業をさせて見たところこれが大当たり、莫大な資金が手に入り、其れから店長はこの地に居場所を得て独立まで果たした。少しくらいは人を見る目はかると自負している俺としても予想外だったが俺も店長も助かってるし結果オーライと言う奴だろう。

 

かくしてこの店長には世話になっている。先程のやり取りからも分かるように代金に色をつける、つまりは少し多めに払ってくれたり物資を優先して渡してくれたりと色々とサービスをして貰っている。

 

いまの財政はこの店長が無ければ早々に破綻していただろう。昔の恩があるとは言え俺はこの店長にこう良くして貰っているのに対し申し訳ない気持ちになる

 

しかし店長は何時も『恩が有りますので』の一点張り。きっと店長は人情味があって皆から好かれているであろう。その温情に縋っている自分が情けなくなるが曲がりなりにも上に立つ人間だ。責任は拾って割り切るところは割り切らなければならない。

 

そう言えば北郷達もここに足を運んだと言う話を聞いた。

 

「なぁ、店長。北g……御使い様達が来たって話を聞いたんだが」

 

危ない危ないいつも通り北郷と言いそうになった。途中で言い直したから大丈夫だろう。

あんなんでも上司だ。下手な発言をするとまずいかも知れない

 

店長の反応はと言うと一瞬だけ思い出す様に嫌な顔をした。その顔をみて俺はまた北郷達が問題を起こしたと察する事が出来てしまった。

 

「あの方々は……あまり深くは言いませんがとても不愉快な方々でしたね」

 

お、おう。温厚な店長が此処まで嫌がるとは北郷達、お前ら何をやらかしたんだ?いや、店長の顔に深くは追求するなと書いてあるから聞かないけど。

 

「そ、そうか。すまんなうちの上司が」

 

「いえ、李儒様は悪くありません……おっと話し込んでしまいましたお時間大丈夫でしたか?」

 

「ああ、ちょっと人を待たしてるんでな。ありがとう、また来るよ」

 

 

「はい、またいつでもいらして下さい」

 

店長に別れの挨拶をし、来た道を小走りに城《職場》に帰った。その間にも声を掛けられたので少し時間を食ってしまったも知らない。

 

「あ、李儒様、お疲れ様です」

 

その際もまた知り合いにあった。それは俺の部下で文官の者だった。本当に今日は知り合いのエンカンウント率(決して敵ではない)が高いなぁと思った

 

「大丈夫か?顔色悪いし、ふらふらだぞ?」

 

「だ、大丈夫です」

 

「はぁ、そんな無理をするな。後の仕事は俺がやっとくから今日は帰って休みな」

 

「し、しかしそれでは李儒様が!」

 

「俺はいいんだよ。それに仕事の途中で倒れられても困るしな………お、そうだ。これ貰いもんで悪りぃがやるよ、早く復帰しろよ?」

 

「……はい、わかりました」

 

「おう、お大事にな」

 

いやーいつもの癖で言っちまったなぁ。いや、今の俺は上司なんだ、只でさえ忙しくて倒れる文官が多いが自分の知り合いには俺の様になって欲しくはないからな

 

「李儒様、良かったのですか?仕事も増えましたし、それにアレは李儒様が貰ったものじゃあ……」

 

「ん?そんなんいいんだよ、ああ言う奴は俺が一番良く理解している。それにアレぐらいしてやらないで何が上司だ。人の上に立つ人間は下の人間に支えられて存在しているのだからな」

 

「はぁ…李儒様はそう言う方でしたね」

 

「そうさ、俺は俺さ。他の奴がどう思おうとな……。さ、早いとこ戻ろうぜ、いい加減星が痺れを切らしてる頃だろうしな」

 

 

そう話を切り、俺たちは星の元へと急いだ。

 

 

今日も変わらぬ平和な日々だ。

 

………星怒ってないといいけど

 




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