感想くれた人もありがとうございます。『書かなきゃ』と思いました(笑)
其れでは無駄話も程々に本編へ
6.天才襲来
あの後何とか仕事の山を片して………何て甘い妄想は叶わず、一夜経った今も仕事は片付かない。其れどころか新たな報告書やら何やら仕事は増えていく一方なので仕事が減る気配は無いに等しい。
前世からの因果……というか慣れで問題は全く無いのだが。
兵が代わる代わる入退室を繰り返して自らの仕事を果たしているがその顔は何処か心配そうだ。
『肩、揉みましょうか?』『仮眠とりますか?』『何か食べますか?』『水持ってきましょうか?』などなど、俺に対する気遣いなのか俺の顔を伺いながらよく尋ねてくる。
確かに死んだ様な顔で黙々と仕事を捌いていく人間がいるのだ、心配ぐらいするのか?まぁ、感謝はしているので問題は無い。
其れに最近漢方とやらに手を出した。あれは良い、気休めだとわかっていてもついつい飲んでしまう。中毒性とか無いと良いけど………まぁ、そのお陰で頭の回転も良くなり体調も少しマシになった。
その影響で感銘を受け、あまり手をつけていなかった薬学の発展が民の為にもなるだろうと乗り出した。俺自身も息抜きに独学で研究を進めた。
同じ様に仙術にも手を少し出したが不老不死とかはなる気はない、死ぬ時はちゃんと死にたい。それにその方法の1つに水銀を飲むってあったけど絶対中毒で可笑しくなって死ぬだろう。どうしても胡散臭いな。
あ、そういや俺って次も転生するのか?この記憶を保持したまま。其れは嫌だな………。
そうやって仕事したり、仕事したり、仕事したり、研究したり、少し寝たり、仕事したり、研究したり、仕事したりしてたらあっという間に半年は過ぎていた。
全く、時が経つのは早いぜ。
俺の薬学に関しての研究は仕事が溜まれば溜まるほど研究に対する意欲が湧いてきて、面白い様に進んだ。もう、趣味に薬の研究と書いても十分な感じだ。この前も出来が良かったのが凄く嬉しくて悪役の様に笑っていたらそれを見ていた部下や兵達にドン引きされていた。
後で聞いたところ『こいつ、遂に壊れたか?』と思われていたらしい。
そして流石に内政の一環としてやっていたからなのか、北郷達にも伝わった様だ。別にその事について深く考えていなかったが何故か北郷が変な行動をしていると兵達が言っていた。
何でも仕切りに食べ物や飲み物の中に毒が入っていないか確認したりしているそうだ。そう言えば薬学の研究に関しても俺がどんな事をしているか兵達に聞いていたらしい。
もっとも兵の7割程は北郷に好感情を抱いては無いので誰もぶっきらぼうに返していたらしいが、ある兵が北郷をからかうつもりで冗談半分に「毒でも作ってるんじゃないですか?」と言った時は顔を青くしたそうだ。そして『ま、まさか…俺も少帝みたいに毒殺されるのか……』とブツブツとつぶやいていた様だ。
其れを話のネタにしてあまり北郷を好いていない兵達は楽しんでいた様で兵の一人が俺にも話してくれた。
ってか確かに使い様によっては毒になるものも有るし、作ろうと思えば作れるけど毒殺なんてするつもりは全く無いのに……。それと少帝って誰だよ、前例でもあるって言うのか?其れともまた『天の知識』か?どちらにしろまた変な警戒されるだろうなぁ、最近は北郷はおろか他の上司達にも面会が出来なくなっている。
まぁ、好都合かな。此れで如何様にも政策を進められる……報告を聞く気が無いって事は好き勝手にさせてもらうぞ(暗い笑み)
そんな事があった数週間後、新しい文官が入って来たという噂を聞いた。と言うか兵から聞いた。最近は春華(簡雍)だけではなく色んな兵と良く話すからな。
如何やら名前は諸葛亮 孔明、鳳統 士元の二人らしい。何とあの水鏡先生(司馬徽)の教え子らしい。
生憎面識はないが水鏡先生は有名なので俺も会いたいと思っていた人物だ、出来ることなら水鏡先生の元で教えを乞いたかった。でも俺に才能は無いし凡庸だ、技能は有るが其れは前世と言うアドバンテージがあったからに過ぎない。時間さえ有れば誰にでも身につくものだろう。
俺の場合は必要に迫られたから荒削りなので凡庸以下だろうか。思えばそんな俺が教えを乞うなんておこがましいことかも知れないな。
はぁ、疲れているんだな。何時もよりネガティヴになりやすい……。
その点、その二人は天才だろう。もしくは其れに匹敵するものを持っているのだろう…………会うのが楽しみになってきた、上手くいけば俺の仕事も分配されて幾分か楽になりそうだ。
しかし、北郷がわざわざ登用したという事は『天の知識』からなのか、はたまた容姿からなのか……
何て考えていたら噂をすれば何とやら、その二人が挨拶に来たというでは無いか。俺は兵に二人を通すよう頼んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
諸葛亮、鳳統の両名は5日ほど前に劉備軍に加わったが未だに李儒には顔を見せてはいなかった。それは李儒が仕事が忙し過ぎて中々表に姿を見せない事が原因の1つであったがそれ以前に彼女達の方から会いに行こうと思わなかったのだ。
理由は至極簡単、北郷が色々吹き込んだからだ。
先ず、『会うな』と言われたのも有るが、『薄気味の悪いやつ』『如何しようもないクズ』『気持ち悪い』『悪事を働く』『酷い顔』『反乱を起こそうとしている』『毒殺』etc…
そんな事を北郷だけでは無く上司の面々から言われたら自然と面識のない人間だとしても嫌な印象を持ってしまう。鳳統に至っては恐怖すら抱いていた。
しかし、そんな彼女達の認識を改めさせたのは兵士達の話であった。兵達が休憩がてら小話をしているのを彼女らが耳にした時だった。
というのも今まで彼女達の接していた兵というのは北郷達よりの思考を持っていたり、李儒が気に入らないという者など色々あるが意図的に北郷達についている3割程の兵である。つまり、北郷達と同じ様な話ばかり聞こえてくるのである。
しかし、偶々彼女達が聞いたのは李儒よりの兵達。その話は苦労人李儒についての心配事や感謝であった。
その話について気になった彼女達は勇気を出して彼らに聞いてみた。李儒とはどういった人物かと。
常日頃から仕事に追われていて、最近は薬学に手を出して少し顔色が良くなってきたが心配だと一人の兵が言う。
李儒には北郷の暴挙から助けてもらったともう一人が言う。
李儒には自分も訳あって色々と助けてもらったのでいつか恩返しをしたいという言う兵もいた。
口々に李儒の話をする彼らには李儒に対する悪感情は全くなく、其れどころか北郷達の方と全く逆の話をしていた。その為何方が正しいのか確かめるべく、李儒の元へ向かった。
もっとも其れ以外にも一応古参の者らしいので此れから会うこともあるだろうし新参の自分達から一度挨拶をするのが礼儀だと諸葛亮が言ったからだ。そして初めこそ反対していた鳳統も渋々ついて行く事になった。
「し、失礼しましゅ。わ、私は諸葛亮 孔明と言います」
「お、同じく鳳統 士元です」
兵に通された奥には大きな机の上に大量の書類の束が山の様に積まれており、その奥の椅子にはいかにも顔色が悪そうでボサボサの黒髪に少しヨレた服を着た男がいた。
其れが李儒だろうとあたりをつけ二人は挨拶をする。すると男ーーー李儒は彼女達を見て驚いた顔を顔に浮かべたが此方に歩み寄り、見下ろす形になった視線を彼女達に合わせた。
「諸葛亮に鳳統か。俺は李儒 文優、今はここの政治やら軍師やらいろんなもんをやっている。簡単にいうと裏方担当と言ったところか……まぁ、宜しくな」
「はわわ、よろしくお願いしましゅ」
「よ、よろしくお願いします」
彼女達はまさに毒気を抜かれた気分であった。気さくな笑みを浮かべわざわざ自分たちに視線を合わせる李儒は北郷達が言っている様な者に思えなかったのだ。
勿論、演技の可能性も考えたが其れにしては自然体でさも当たり前の様な態度であった。確かに顔色が悪いので少し不気味に見えるが顔のパーツは悪くなく、醜いとは言えなかった。
其れよりも此れでマシになった方と言っていた方に驚いていた。
「おう、二人とも良く来てくれた………と言いたいところだがそうも言ってられない。この書類の束を見てわかると思うがうちの内政はキツキツだ。文官が全然いないから有難いは有難いんだが……」
李儒は如何にも言いいにくそうに目線をそらした。
「まさか……こんなに小さいなんてな………いや能力については疑ってないんだがな、その何て言うかここはキツイぞ多分君たちが思っている以上に。だから最初に言っておく止めておいたほうがいい、別の所の方が良いぞ。ほら例えば曹操殿のとことか。能力が有るなら喜んで召抱えらるだろう。あの人、女好きだし……いや幼女はアウトなのかなぁ?大丈夫だろ………まぁ、そういう訳だ」
李儒は如何にも幼そうな彼女達にはこの職場はキツかろうと何とか説得をしようと思っていた。内心で北郷をロリコンと罵りながら。しかし、彼女達の意思は意外にも硬く、結局は説得を諦め、自分が色々とサポートすれば良いと思う事にした。
対して彼女達はいきなり説得しようとしてきたので驚いたが覚悟は無論あったので其れをそれぞれ語ると『はぁ』と李儒に呆れを含んだ溜息を吐かれたがその後は俺の部下の中から優秀なのを何人か紹介しようと言ってくれた事に感謝の念を抱いた。
人見知りのせいか鳳統はあまり話さずまだ李儒を怖がっていたが其れでも悪い人ではない事は分かっており、部下を紹介してくれる事についても諸葛亮同様に感謝はしていた。
この事が北郷達に知れるのはまだ、先である。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「曹操様。例の件、調べて参りました」
「ええ、ご苦労様。下がって良いわよ」
「ハッ」
「…………………………ふーん」
曹操は報告書を纒めた紙を軽く流し読み小さく「面白いわね」とだけ呟いた。
「華琳様、其れは何ですか?」
「あの男についての報告書よ。読んでみなさい」
夏侯淵はその紙を受け取り読んだ。一緒にいた夏侯惇は「またあの男ですか!」と騒いでいるが曹操、夏侯淵共々其れを無視した。
報告書の内容を見て夏侯淵は「まさかッ」と驚きの声を隠せないでいた。
「いろいろ言いたい事がありますがまずあの男、元々あの地方の者では無かったのですね」
「ええ、其れに劉備軍に加わるまで地元では有名だったようね。まさか博士だったとは……優秀なのも頷けるわ」
博士。其れは政治の疑事に答える官職。弟子の教育も行う。其れが洛陽の博士の一人であればその優秀さは折り紙付きである。
その他にも其れなりの名声はあった。其れに地元の方でもその人望は厚く、弟子も何人か官僚として輩出している。
「その程の者が……と言うより将来を約束された様な者がわざわざ劉備軍に……しかも今よりも弱小な一介の義勇軍だったものに何故行ったのでしょう?」
「報告書から察するに李儒の祖父が問題ね。あまりあの男のことを良く思ってなかったらしいからあの男が李家を継ぐ事に堪えられなかったんじゃ無いかしら」
「確かに……李儒よりその従兄弟の李傕の方を可愛がっていたとありますし、現に李家の家督を継いだのは李傕です」
「そう、一応あの男が祖父に劉備軍に入れられた理由に恩があるとあったけど其れも真っ赤な嘘。事実その祖父と劉備軍の関係性は全くなかったわ」
「簡単に言えば邪魔だから厄介払いしたんですね。そしてあわよくば消えてくれれば良い……つくづく苦労人ですね、あの男は」
夏侯淵は思わず溜息を吐いた。苦労人気質なのは前回からわかっていたが此れほどまでとは……と哀れみを抑えられずにいた。其れとは対照的に曹操の方は淡々と其れをみ見て、むしろ所々笑みを浮かべていた。
「しかし思わぬ収穫があったわ。洛陽での人脈やコネや名声を持っているならいつかやる洛陽攻略やその統治もやり易くなる……」
「しかし、簡単に引き抜けるでしょうか?李儒があそこに居る理由はあそこが好きだからと言っていたらしいですし………」
「まぁ、気長に考えるわ。今直ぐでは無いわ、そのうちよ。其れと今日は荀彧という娘が士官に来てるんでしょう?先にそっちに行かないと。楽しみだわ」
先程、荀彧が士官に来たという報告が入ったのでそう言って曹操は準備をして足早に謁見の間へと長い間無視されて不貞腐れた夏侯惇と其れを「姉上、行きますよ」と言って引きずって行く夏侯淵を引き連れていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いやーそれにしても吃驚した。
あの『伏竜』『鳳雛』と呼ばれている二人があんなに小さい子達であったとは……。
時代ゆえに仕方ないことだし、今は男よりも女の方が有能とされているからあり得るが………な。
初めは緊張やら警戒やらされていたけど、話ができない訳ではないしむしろ此方に敵意を向けて来ないからとてもやり易かった。此れが北郷とかだったら会話のキャッチボールが成立しないからな。
いい娘達であったが心配だ。いや、ロリコンとかじゃ無いけど何て言うか年の離れた妹が俺にも………居たのか?そんな記憶があったかもしれ無い。今は何となくしか思い出せ無いからな。
其れは置いておいてついつい頭を撫でたくなる。やるときっと嫌われるからしないけどな
ここは厳しすぎる職場だが北郷もあの娘達には悪い扱いはしない……だろ?あとは俺が上手くサポートしてやればいいと思う。
そう言えば北郷関係で思い出した。
最近やたら俺に接触するのを嫌っていたので勝手に色々とやらせていただいた訳だが、其れは北郷も同じだった様で勝手に自分の私兵を作りやがったらしい。
確認したが俺を嫌っている奴らで構成されたものであった為、思わず寒気が走った。ああ言う連中が群れるとロクな事をしないのだ。頼むから俺の邪魔をしてくれるなよ。
しかし、何故だろう。嫌な予感がする。
こういうのをフラグと言うのか。この手の予感はだいたい当たるので恐ろしい。
何も起きなければ良いが……。
薬学に関する描写があるけど李儒は中毒になってないし、する気もないからね(汗)
あくまで彼は手段の一つとして捉えているよ。其れにしはハマりまくってるけど……。
質問を纏めて捌く
Q「主人公の救済はよ」→A「もう少し先ですね」
Q「主人公ストライキしろや」→A「社畜の悲しき性という奴です……現状に不満はあっても其れを改善する気はあまり有りません」
Q「蜀以外の劣化は有るの?」→A「基本的にキャラが変わったりはしても他の陣営は劣化はしないつもりです」
Q「李儒の派閥って誰居るの?」→A「厳密に言うと派閥はありませんが暗黙の了解みたいなもので自然と李儒よりの人達と北郷や劉備よりの人達が存在してます。中立の人達もある程度いるので其れを抜くと確かに趙雲と簡雍、半分以上の兵でしょうか。李儒に好意的な意識を持っている人達も加えると一部の街人や城の方で働いている人達ですかね」
此れからもよろしくお願いしますね。
※『曹全碑』のくだりは消去しました。