サブタイトルのナンバリングが無駄に多くなってる気がする
「いっつつ…」
「肩貸してやるよ。掴まりな、ほら」
摩耶、夕張共に【艤装だけ】の話ならば同程度の損害である。
しかし、夕張は艤装以上に肉体へのダメージが大きかった。
戦闘が終わり脳内物質の放出が弱まった事で、麻痺していた痛みが強まっていく。
『…聞こえる!?』
「…あぁ、ピスキー。……へへ。やってやったぜ?なぁ」
『…ひやひやさせるわ』
何故かはわからないが、戦闘中、提督は艦娘に指示はおろか、単なる会話すら出来なくなる。
海域へ出撃後、提督が行えるのは【進撃】か【撤退】の選択、
戦闘前の作戦指示、羅針盤妖精による航路選択である。
提督は艦娘の戦闘中、言ってしまえば指を咥えて見ていることしか出来ない。
もし戦闘で艦娘が窮地に立たされ、結果死ぬことになったとしても…
『撤退する?どうせ今回はテストのつもりであなた達を出したから。資材は二の次でいいわ』
「ま、待ってくださいピスケスさん。この先会敵ポイントは無いんでしょう?」
『…まぁ、そうね』
「だったら勿体無いじゃないですか。頂けるものは、頂いてから帰りましょうよ」
『大丈夫なの』
「艦娘は丈夫なの、知ってるでしょ?偉い人はこうも言ってるわ。『中破は無傷』…って!」
大破した艦娘は、敵との交戦で轟沈する危険性が非常に高い。
もしその先会敵する危険性が無いとしても、無理をして進撃している状態であるため、
資材回収ポイントに行き着く前に艤装が限界を超えて機能停止。
そのまま轟沈する可能性が無くはない。大破してしまったら撤退。提督の基本である。
『…まぁ一応、中破なら注意すれば進めるんだけどさ』
「じゃあ進みましょうよ!…というか、随分優しくなりましたねーピスケスさん。
キューブが来る前は、私の事平気で『モルモット』呼びしてたくせにさ」
『わ、悪かったわよ。あの時はさ、あんたが滅茶苦茶になるまで
薬物とか投与したりしたいって奴がいたから、あんまり感情移入するつもりなかったのよ』
「ひっ……ちょ、ちょっと…冗談キツすぎるわよ…」
真っ青になって震えながらそう言う。
キューブが来てくれて良かったと、心の底からそう思う夕張であった。
「…まぁ、さっきみたいなイレギュラーが出てきたように、
この先100%安全って訳でもねぇのは事実だ。
ピスキー。決めちゃってくれよ。あたし達はそれに従うさ」
『そうね、じゃあ…あ、ちょっと待ってくれる?』
【友軍艦隊】。それの接近を知らせるランプが点灯しているのに気づいたのだ
「…あ、アレかぁ!?」
「あ、ほんとだ!怪我してる。たいへーん」
「でもでも!!3人ちゃんといるよ!みんな生きてる!」
「…ちょっとまって、つまりあの情報通りの艦隊相手に
あの数だけで生き残ったってこと…?いや、ホッとしたけど…信じられないわ」
接近してくる四隻の艦娘。摩耶、雲龍の二人は彼女達の事を知っていた。
「五十鈴か!?な、何でここに!」
「あなたの提督から救援の要請があったのよ。可能な限り【最悪な状況】は避けたいじゃない?」
「あー、でも無事ってわかったら眠くなってきた。帰っていい?」
「ポーラも帰ってお酒飲みまーす」
「早く帰ってみんなでビール飲もう!!幸運な一日にかんぷぁい!!」
「あんた達好き勝手言ってんじゃないわよ!!」
来て早々、非常に喧しい4人。その様子を呆れながら眺める摩耶と雲龍。
「あの、あの方々達は…?」
きょとんとしつつ、摩耶にそう尋ねる夕張。
「あいつらか?あいつらは…」
「良く聞いてくれましたぁ!!私重巡!!ビール大好きプリンツ・オイゲンと!!」
「最近日本酒にも挑戦中、重巡、ポーラとぉ」
「酒と昼寝しか最近してない気がしなくもない重巡!加古!」
「「「で、このツインテ堅物ケチ臭お嬢様が
「誰がケチ臭いよ!!あんた達は酒飲み過ぎなのよ!!」
摩耶が教える前に各々、好き勝手に自己紹介を始める友軍艦娘達。
その様子に、乾いた笑いが漏れる夕張であった。
『ハッハー!それで俺が、この艦隊を束ねる提督って訳だな!!』
『…ごめんねリブラ。急に呼び出しちゃってね』
『わざわざ俺達を呼びつけたんだ、相当やばい状況だったみてぇだが、何とかなったようだな』
特徴的なダミ声で話す中年男性、リブラ提督。
ピスケスの戦友であり、直接的な戦線から外れた今でも提督として交流のある人物の1人だ。
『これから目標地点まで行って資材を回収しに行きたいんだけど、
想定外な敵もいた事だし、このまま護衛として同行して欲しいわ。
ちょっと依頼内容変わっちゃったけどいい?』
『最初の依頼よりかは楽な仕事だ!断る理由がねぇな。言っとくが報酬は安くしねぇぞ?』
『わかってるわよ。……じゃああんた達、もうちょっと頑張って貰うわよ』
進軍の号令と共に、彼女達は目標地点である『製油所地帯』へと向かっていった……
「ねぇ…何あれ?」
目標地点に到達早々、五十鈴は驚愕する。目の前にある物の、その巨大さに。
「…面妖な造形の人形さんね」
見慣れないその姿に、雲龍はそう呟く。
「原型留めてるのは初めて見るけどさピスキー、あれが【アーマードコア】って奴か?」
『似てるけど…あたしが知ってるのより一回りデカイわ。あれは、一体…?』
この海域に、目新しい資材など無いと思っていた。しかし違った。
目の前に鎮座する、ピスケスやリブラの知ってるものとは一回り大きい、二機の巨人。
白を基調としたカラーリング、そしてその形状から【天使】を思わせるような機体と、
全体的に鋭角的なフォルム、漆黒に染まったその姿から【悪魔】を連想させる機体。
組み合うようにして朽ち果てていたその姿に、
少女達と提督は暫くの間、目を奪われることになった。
【アーマードコア・ネクスト】。彼女達がその存在の正体を知るのは、まだまだ先の話である…
次で『製油所地帯沿岸』編は終わる…気がする。
あと新艦娘は出たけど新加入艦娘登場まで行けてないやん。つっかえ!!ごめんね
人物について
④リブラ
元ネタはACVのゾディアック、No.10。
元ネタではナニカサレタ存在だけど、
この作品で出てくるゾディアックは普通の人間で、基本的にナニモサレテナイ。
酒好きの気の利いた、艦娘に慕われる良き提督だそうだ。
ただし、酒に甘く幾度も酒盛りを派手に行おうとする悪い癖が有る。