兵装実験軽巡夕張【艦core】   作:逆流系男子

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夏イベ準備で間が少し空いちゃったんねん


戦場の相異

摩耶他三人は演習場へ来ていた。と言っても演習場とは名ばかりで、

機関に面する海辺をそのまま利用しているだけである。

 

既に朝霜、磯風は艤装を装着。思い思いに水上を滑走していた。

 

「へぇ、初めてにしちゃ良い動きだ」

「ほんとね。才能あるわ」

 

大抵の艦娘は、最初は何処と無くぎこちない動きをする。摩耶や雲龍も例外ではない。

しかし朝霜も磯風も、こちらから見て苦を感じさせない動きを見せる。

 

「おうお前ら!実は経験あるんじゃねぇか?」

「否。この磯風、こうした事は今回が初めてだ。だが…」

「だが?」

 

磯風は大きく弧を描きながら、速度を落とさずに旋回する。

その自身の挙動が何処と無く不満なのか、磯風はムッとしつつ言葉を続ける。

 

「似たような状況で、戦場を駆け巡っていたのでな。

それと比べれば…今の動きは非常に鈍重だ。不便で仕方ない」

「何だそりゃ?あたしはそうは思はねぇけどなー?

多分それ、『船としての記憶』だろ?あの頃よりは全然、

動きやすくなった気がするけどなぁ」

「船…とは違う。確か摩耶も見たのだろう?あの巨人を」

「あぁ、あれか…あれがどうかしたのか?」

 

磯風はゆっくりと速度を落とし、その場に留まる。

自身の今の有り様を確かめるようにその手を見つめ、ポツリと呟いた

 

「私は船ではなく、元々は巨人(あれ)であった気がするんだ」

「それはあたいも思ったことさ!」

 

止まっている磯風に接近し、傍らで止まりながら話に割り込む朝霜。

 

「でもまー色々と検査して、記憶が微妙に違ってる以外は、

摩耶や雲龍と同じ、何ら変わらない艦娘だって話がついたんだよなぁ」

「異なる記憶を持っているということで、提督には色々と質問攻めに合ったが、

私もハッキリと覚えているわけではない。

『身体がその戦場を覚えている』程度の記憶だからな」

「その辺の記憶事情は、あたしと同じか。

あたしも『船だった頃の記憶』なんて詳しい事殆ど覚えてないしな」

 

「…しかし、記憶の違いという共通点に加え、

この既視感。おそらく朝霜とは『その頃』に何かがあったのかもしれない」

「お?…おぉー!そうか!その発想は無かった!

初対面な筈のおめぇが何かムカつくのも納得だな!」

「そうか。不快にさせて悪かったな。詫びとしては何だが、

二度とそんな感情抱けぬように海に沈めてやろう」

「あぁん!?やんのかコラ!!」

「すぐ喧嘩すんな!子供かお前ら!」

「見た目は子供だけどね」

 

再び火花を散らし始める朝霜と磯風。その様子に呆れ返る摩耶は、

水上での移動は良しと判断したのもあり、思うところもあるので

次のステップに移る事にした。その内容は…

 

「『綺麗な友情は喧嘩から』ってな!!ズバリ『青春パート撃ち合い大作戦』!!」

「酷いネーミングね」

 

酷評する雲龍に少し心を痛めながらも、摩耶は話を続ける。

 

「よしお前ら!どちらかが大破するまで撃ち合え!!」

「なに?こいつを沈めても良いのか」

「だー!違う!一応あたし達は実弾で撃ち合っても、

大破未満なら艤装と服が吹っ飛ぶだけで済む!

取り敢えずお前らは、一回気が済むまでボコボコに

やり合ったほうが後々良いと判断した!」

「面倒くさくなっただけでしょ、摩耶」

「一々うっせーな雲龍!

…とにかくもう好きにやっちまえ!あ、でも大破したら止めに入るからな!」

 

ものすごく投げやりな提案だが、先程の水上でのスムーズな動きもあって、

摩耶は彼女達が好きにやり合い、どれ程の戦果が出せるのかに興味が湧いたため、

元々撃ち合いの訓練をするとしたらこうするつもりだった。

 

「へへへ!聞いたかよ磯風!ルールは無用だってさ!」

「…いい事を聞いたな。言葉に甘えて好きにやらせてもらおう」

「それに知ってるか磯風!艦娘は艤装がダメージを受けると!脱げるらしい!!」

 

 

「あんたを丸裸にして!性欲拗らせてる研究員達の前に放って!その仏頂面歪ませてやんよ!」

 

 

磯風に向けて指を指し、高らかに宣言する朝霜。

どこからか男の声援が聞こえてくる…気がした。

 

「下品だな。その口、閉じさせてやろう」

「やってみなよ!それ程に力があんならさ!」

 

実際の撃ち合いを想定して、両者は距離を取る。

自信あり気な口調、そしてさっきまでの戦闘におけるセンスを感じさせる動き。

摩耶と雲龍は、彼女らの撃ち合いにも大いに期待していた…

 

 

 

 

 

が、

 

 

 

 

 

「ねぇ摩耶。何時になったら当たるのかしら」

「あたしにも…わかんねぇよ…」

 

「磯風てめぇ動くな!当たらないだろうが!!」

「…まさか、これ程までに使いにくい、とは」

 

 

撃ち合いの結果は散々であった。15分は経ったが、今だに一発も当たる気配がない。

 

どうしてこうなってしまったのか?

まず一つに、彼女らの水上の動きに対して、その装備の命中率の低さにある。

裏を返せば、それ程までに回避などの動きは素晴らしい物があると言えるだろう。

だが、それだけならば5分に一回程度は当たる弾もあると思われる。

 

問題はもう一つの問題。『妖精さんと全く連携が取れていない』のが、

この異様な命中率の悪さに直結している。

 

『装填し、照準を定め、砲撃するのは妖精だ。だが、深海棲艦を殺すのは艦娘の決意にある』

 

誰かが言ったらしい言葉であるらしいが、

この言葉にもある通り一連の動作は妖精さんが行うものである。

艦娘の射撃は本来、妖精さんに指示を出し、砲塔の回転や射角の変更等を行う事が

撃ち合いに至っては極めて重要な要素である。

 

水上を駆る際、妖精さんとの連携について二人は説明を受けてはいたが、

動作が複雑になるにつれて細かい指示が出せていないみたいで、

二人は腕や体勢など、自分で動かせる範囲で照準を合わせようとしている。

結果的に無駄な動作が多くなり、この手の武器の扱いが慣れてないのも

加わってこの異様な命中率の低さを出してしまっているのだ。

 

装填が終わっていないのに『撃て』等の無駄な命令もあり、

彼女らの艤装の妖精さんがわちゃわちゃと艤装から這い出てきて、

二人にギャーギャーと文句を言い始めてきた

 

「な、何だよ!早く艤装に戻れって!」

「すまん、この磯風、お前たちの言っている意味が…って、うお!?」

「摩耶、何かあの娘達の艤装から火が出てきたわ」

「無理な命令出しすぎて自壊したのか…?良くわかんねぇけどお前ら!中止だ中止!!」

 

かくして二人の演習成果は、移動90点。砲撃0点で終わったのだった。

 

 

「『あたし達は船、妖精さんは乗組員』。どっかの艦娘が言った言葉で、あたしや雲龍は

それもあってか、そこまで苦労せずに扱っていけたんだけどなぁ」

「逆に私達は、『人型であることの移動』が最初、難しかった。

この辺りも、記憶の違いが関係するのかしらね」

「まぁ、あたし達も移動とかには慣れたし、妖精さんとの連携も数こなせばなんとかなるだろ」

「…済まん。少し自身の才能を過信していたようだ。指導をお願いしたい」

「あたいも頼むよ…いやぁ、頭ん中ではイケると思ってたんだけどさぁ」

 

 

時間はまだまだある。才能自体はあるので、艦娘としての戦い方をじっくり教えてあげれば

朝霜も磯風も、十分戦力として迎え入れられる優秀な戦士となるだろう。

 

摩耶と雲龍は、朝霜と磯風とで二組に別れ、マンツーマンで指導に入る。

 

 

朝霜と磯風、それぞれに師匠と呼べる存在が出来た瞬間でもあった。




人物について


⑪磯風
所属:ピスケス提督
ピスケスの元へ新たに加わることになった艦娘の1人。
小さい体には似合わない、武人のように戦いに対して真っ直ぐな性格。
船の記憶が無く、自身の名前も思い出せなかった為、
自身に適性のあった艤装『モデル:磯風』の名を名乗ることにしている。

⑫朝霜
所属:ピスケス提督
ピスケスの元へ新たに加わることになった艦娘の1人。
生意気で舌っ足らずなガキ大将のような性格。
船の記憶が無く、自身の名前も思い出せなかった為、
自身に適性のあった艤装『モデル:朝霜』の名を名乗ることにしている。
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