兵装実験軽巡夕張【艦core】   作:逆流系男子

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夕張の鎖骨


製油所地帯沿岸:兵装実験5

「お、おいどうしたんだよ?夕張」

 

 

不意に夕張を見た摩耶は、状況に似つかない夕張の顔を見てギョッとする。

恐怖も絶望も感じさせない、【新しい玩具を持って燥ぐ童】のような顔。

 

「摩耶さん!私ちょっと試したいことがあるから、もう一回突っ込みます!」

「お、おいちょっと何する気だ!?」

「ごめん!時間ないから!」

 

最大出力のハイブースト。艤装で身体が強化されているとはいえ、

そのとてつもない負担は夕張を着実に蝕んでいく。

しかしその苦痛を、彼女は意に反さない。

 

「こんの勢いなら、空だって飛べるんじゃないかしら!?」

《無理です。あくまでも船ですから》

「あっはは!とんだ欠陥品ね!!」

 

興奮からか、思考ではなく口でそう叫ぶ夕張。

敵艦隊は夕張に向けて一斉に主砲をブチかます。

主砲に合わせて副砲と、雷巡チ級の雷撃が更に加わる。

 

 

直撃は何とか避けているが、弾着による破片や副砲が、幾つか夕張に突き刺さる。

速度もあってか、障壁はそれらを完全に緩和すること無く、直接夕張を削り取っていく。

 

腹部や腕から出血。しかし、それでも夕張は止まらない。

 

 

敵の魚雷網も掻い潜り、敵艦隊の懐にまで急接近する。

 

 

 

狙いは、複縦陣中列、ツ級を庇うように進行するリ級。

夕張はその速度のまま、さらにブーストによる加速を上乗せ。その速度であろうことか…

 

 

 

 

リ級の横っ腹を思いっ切り蹴り抜いたのだ。

 

 

 

 

リ級は何が起きたか、一瞬わからなかっただろう。

鉄と鉄が、勝ち割れたかのような甲高く、重い轟音。

リ級の身体はあり得ない方向にねじ曲がり、

周りのツ級やチ級を巻き込みながら進行方向とは逆に吹っ飛ぶ。

 

艦娘の脚力は、その重い艤装を支えるのに特に強化が著しい。

その脚力と凄まじい速度を乗せた蹴りを、相手の急所へと当てれば

相当なダメージを与えられるだろうというのは想像に難くない。

 

…最も、反動が無いわけではない。当の本人は気にしてはいないが、

実際その足の骨には大きくヒビが入ってしまっていた。

 

「大ッ成功!!そのまま逃さないわ!!」

 

 

夕張は敵艦隊の前列、中列の間を通りぬけ、ブーストの力で急停止。敵艦隊の方に身体を向けて

ガラ空きとなった相手の背中に、思うがままに弾を浴びせる。

 

 

一瞬にして陣形は乱れ、大混乱に陥る敵艦隊。

ル級二隻はこの想定外の事態に、その他三隻と距離を離してしまっていた。

 

そして後ろを取ることで、ツ級は無防備な姿を夕張に晒してしまうこととなり、

その弾幕をモロに受けることになってしまい、防空どころでは無くなる。

 

次々と艤装が爆発、比較的柔らかい部分にチェーンガンも突き刺さり、悲鳴を上げるツ級。

 

 

『む、無茶しやがって!!だが、良くやったぁ!!』

 

大きくUの字を描いて三隻と合流しようとするル級二隻に、摩耶は主砲を放っていく。

 

邪魔をするな!!と言っているかのように怒声を発しながら、ル級は摩耶に砲撃を開始する。

 

真っ直ぐに、快速を維持しながら進む摩耶には砲撃は当たらず、逆に速度を落とし、

無茶な方向転換を行っていたル級群は摩耶の砲撃を避けきれない。

 

旗艦のル級は、強化型すらも上回る装甲で攻撃をほぼ無傷で耐え抜くが、

もう一隻は一部の砲弾に耐え切れず、中破規模の爆発を起こす。

 

「感想聞きたいところだったけど、

残念ながらもうゆっくり聞けないみたい。じゃあね。楽しかったわ」

夕張はそう言い残し、三隻を置いてル級への追撃を開始する。

三隻の満身創痍な敵艦は、前方を見て、その台詞の意味を嫌でも知ることとなった。

 

『…さようなら。全機、魚雷投下』

 

混乱の中、既に雲龍の流星は三隻に向けて無慈悲な雷撃を放っていたのだ。

対空砲火をする暇など無かった為、流星全機の雷撃を許してしまっていた結果である。

 

 

三隻共、雷撃をまともに回避することは出来ず爆散。海の藻屑へと化した。

 

 

更に、双方からくる夕張の弾幕と摩耶の主砲によって、

中破したル級は耐え切れず、

大きな爆発の後、先ほど沈んだ三隻の後を追うようにして沈んでいった。

 

憎悪か、悲しみか、深海棲艦の言葉はわからない。

ただ、滅茶苦茶に副砲を撃ち乱し、

狂った咆哮を上げる旗艦ル級は、見るに耐えない有様であった。

 

『もう、お休み』

 

 

それを終わらせたのは、彗星達による爆撃である。幾ら強固な装甲でも、

今まで蓄積されたダメージに加え、そこからの爆撃による追撃は耐えられるものでは無かった。

 

 

3対6の無謀とも言える戦い。

無傷で終えられるものでは無かったが、戦場を制したのは夕張達、艦娘であった。

 

 

「…っ!終わったあ!」

 

ヘナヘナと力が抜けきり、倒れそうになる夕張。

 

「お、おいしっかりしろって!」

 

そんな夕張へと滑り寄る摩耶、遠方から雲龍も全速力で向かってくる。

 

 

「な、なんかごめんね摩耶。初の共同戦線なのに、最後色々勝手にやっちゃって」

「まぁ、結果オーライだ!でもあんな無茶するのは一言言ってからにしろって!心臓に悪ィわ!」

「えっへへ、ごめんね」

 

静寂に包まれた海域。緊張から開放された三人の労り合う声が、楽しそうに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ありえません。たかが艦娘如きに】

 

【あの二人は、本日付けで『海還り』の筈だったよねぇ。それがまさか、

運命に逆らって生き残っちゃうなんてさぁ!ぎゃはははは!!!】

 

【それに何故だ。何故『アレ』がまだあそこにいる。何故、『我々の管理』から外れている】

 

【秩序から外れ、我らの管理する力に抗い、破壊する者。それは何れ全てを壊す】

 

【我らの築き上げた世界を壊すものだとしたら、速やかに消去しなければなりません】

 

【そうだねぇ。…でも、面白い奴だよ。あの娘】

 

【発言の意味が不明です。我々に下された任務は、不確定要素を排除する事。それだけです】

 

【新入りさんは仕事熱心だねぇ~】

 

【…引き続き警戒が必要です。何時の日か、我らの役割が果たされる時まで…】




次回、新艦娘加わります。

それ終わったらしばらくは日常回で休憩したいかと
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