元陸軍の下っ端が提督になりました   作:卍恭也卍

1 / 1
新人提督着任!

元陸軍の下っ端が提督になりました!1

 

日本某所、某鎮守府にて

 

「ねぇ明石。今日配属される司令官のこと

どう思う?」

 

「さぁ?元陸軍所属の人間ってことくらいしか聞いてないよ」

 

「そうか、なら少し楽しみにしてもいいのかな?」

 

木製の少し大きな机にスタンドライト、座り心地の良さそうな椅子以外に何も置いていない簡素な部屋、俗に執務室と呼ばれる部屋に、透き通る様な銀髪を腰まで伸ばした少女ともみ上げをぱっつんに切り揃え、後ろは隣の少女と同じく腰まで伸ばしたピンク色の髪の女性が並んでぼんやりとしていた。

理由は簡単だ、人材不足を嘆いていた現海軍の本拠地"大本営"からやっとこの鎮守府にも提督が指名され、今日着任の予定だった………はずなのだが現在〇七五九、大本営から本日〇八〇〇には提督が着任すると指示を受けていたのだが、来る気配が微塵もなかった。いや、まだ一分はある…あるのだが時間ギリギリ、もしくは丁度に到着するのは軍人としてどうなのだろうか?

元々着任しており、外部に宿舎があるのなら丁度に到着してもまだ問題にはならないだろう。だが今回は違う、今日初めてこの鎮守府に着任するのだ、それにもっと言えば二人ともまだ提督の顔も知らない。今日初めての顔合わせなのだ、それなのに遅刻もしくは遅刻未遂では第一印象は最悪なものとなるだろう、にも関わらず走ってくる様子もない。そんな状況でも二人は特に何か心配するでもなく、愚痴を言うでもなくぼんやりと待っていた。そうして時間は無情に過ぎ去り現在〇八〇〇。着任予定時間を時計は指し示していた。二人は一度時計で時間を確認し、続けて扉を確認して嘆息した。

 

「これは軍人としてどうなんだい?」

 

「陸軍はこうなんじゃない?私はよく知らないけど」

 

流石に痺れを切らしたのか先程まで少しわくわくしていた少女は呆れ顔をしてぼやく。時計が八時を指して三十秒は経過しただろうか、そこでやっと執務室の扉を叩く音が部屋に響き、扉が開かれた。

 

「やぁ、皆。待たせてごめんね。少し遅れちゃったよ」

 

開かれた扉の奥には、白を基調とした提督の制服…ではなく白い長着に青い袴、そして黒を基調とした簡素な羽織、を纏い、胸元には提督である証の最初に贈られた勲章が新品の様に輝いていた。否、紛れもなく新品なのである。それが指し示すのはすなわち…この提督は新人であるということである。

 

「「え?」」

 

だが、二人は提督が新人であることに反応するよりも先に、現在着任した提督の容姿を見て絶句していた。

年の頃はおそらく12歳前後、すなわち銀髪の少女と同じくらいの見た目であった。

 

時遡り数時間前

 

「さて、少し準備して新しい職場に行くとしますか」

 

陸軍の上司から、部署の移転を受けたのが二ヶ月前、移転部署を聞いたのが三週間前

 

「いやぁ、ほんと信じらんないな。

なんで俺に白羽の矢がたったんだか」

 

海軍から届いた制服…ではなく半分私服とかした和服に身を包み、黒の羽織に袖を通しつつ海軍から送られてきた文書に再度確認のために目を通す。

 

『元陸軍三等兵 鷹宮恭弥殿

貴君ヲ呉鎮守府ノ提督ニ任命スル』

 

A4用紙の中央にたった二行の司令の書かれた紙をぼんやりと見つめる。

 

「はぁ、たった二行にA4用紙って…単なる資源の無駄じゃねぇか。っても仕方ないな、そろそろ行くか」

 

小さなダンボールに詰められた少ない私物を玄関へ運びもう一度、もう訪れることのない部屋を見つめる。

 

「5年は世話になったっけか?

まぁ、小さい部屋だったけど居心地は良かったな。まぁ今日でさよならだ、お疲れ様」

 

どれだけ小さかろうが住めば都、基本的にお気楽な性格だが5年も住めば愛着くらいは湧くよな。

 

「ほんと"住めば都"とは、上手いこと言ったもんだ」

 

名残惜しい気持ちを強引に捨てて扉に鍵を貼り付け、新しい職場"呉鎮守府"へ向けて歩き出した。

 

道中、ガラの悪いおじさんもといスーツ着たお兄さんに金集られたり、10歳くらいの男の子に金擦られたり、自分の頭二つ分くらい背が高いどこぞの男子高校生に女の子と間違えられて襲われたり、息の荒いおじさんに迫られたり、キャーキャー言ってる女子高生に誘われたり、重そうな荷物抱えて杖付くお婆ちゃん助けたりと道草食ってる内に気付けば現在時刻が七時半を回っていた。

 

「うわ、どうしよ。たぶんあれが目的地だよなぁ」

 

ふらふらしているうちに目的地がある程度視認できる場所まで来ていたが、それでも2,3キロはありそうだった。

 

「距離にして2キロ半ってとこか、まぁなんとかなるでしょ」

 

焦って走り出すことなく、歩調を変えずのんびり歩く。焦るのダメ絶対。

 

のんびり歩いた結果かどうかはわからないが7時59分には鎮守府に辿り着くことはできた。いや、まぁ、走れば後5分は早かっただろうから、明らかに歩いたせいなんだけども…

 

「さーて、執務室はどこかなぁ…」

 

軽く辺りの建物を見渡し当たりをつけてから歩き出す。

 

「あれかな、あれだったらいいなぁ」

 

とりあえず高い建物!ということで、おそらく四階建てであろう木造の建物に入り、構造図を探す。

 

「お、あったあった…執務室は〜っと四階だな」

 

見つけて、四階に辿り着いた時点で8時

完全に遅刻だなこりゃ。

 

とりあえず執務室………あった。

 

「………」

 

んー、なんか緊張するな、まぁ気にせず明るく行こう!

軽く二回扉を叩き明るく挨拶しながら扉を開く。

 

「やぁ、皆。待たせてごめんね。遅れちゃったよ」

 

勢いよく開け放った扉の先には、綺麗な銀髪の女の子とピンク色の女の人が呆然とした表情で立っていた。

 

「「え?」」

 

意図せず声をハモらせて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。